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帝国編
22 よく出来ました
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顔色の悪い帝国の王が部屋にやって来たのはディランが居ない時だった。居たらずっとお尻に突っ込まれていたから突っ込まれて居ない時と言った方が正しいかもしれない。
ディランが行く時、「貴方が居ない時に王が来たらどうすればいいんだ⁉」とすがり付いたら、「暫く帝国の王は忙しいだろうから来ない」と言っていたのに……どうするんだ?この数日間俺は色んな体位でどういう動きをするかは学んだが、お茶の入れ方は習っていないが?
「……お前に手を出したからなのか?……俺は神の逆鱗に触れたのか……。」
そう言って椅子に座ると帝国の王は頭を抱え踞った。
あの厳つい帝国の王が落ち込んでいる。これは優しい俺は何かしてあげなければなるまい。しかし、何をどうしたらよいのか……。
ふと遠い記憶が蘇る。
あれはまだ俺が恐怖心や道徳心があった幼い頃。転んで泣いていた俺に母上は――。
俺は記憶をなぞり帝国の王を抱き締め、背をポンポンと叩いた。
「大丈夫。大丈夫。」
王の体の震えが収まっていく。うむ、正解だった。私はまた一つ優しき人々に近付いたようだ。
「……顔に傷が残らず良かった。――俺は何て事をしてしまったのだ。」
帝国の人間特有のヘーゼル色の瞳を潤ませ俺の頬に手を添えた王は何やら俺にした事を後悔しているらしい。そんなに思い詰めるとは……。
「大丈夫です。ディラン殿が綺麗に治癒してくれました。」
今はどこも痛くないのだから震えて泣くほど後悔しなくてもいいんだ。
「……ディラン……そういう事か。……伝説は本当だった。……俺は人間兵器の逆鱗に触れたのだな。」
力なくそう呟くと帝国の王は部屋を後にした。何かを背負っている背中だ。
帝国の王の沈みようにこっそりグッド・ラック!の親指を立て送り出した俺は優しき人々にかなり近付いている。
それから程なくして今度は下僕がやって来ると訳の分からない甘ったらしい言葉を散々吐いた後、王命により新居を用意したのでそこに今すぐ移れと言った。
高い身分も与え使用人も沢山用意したと言われ、怖いからいらないし、最初に用意してくれた家がいいと駄々をこね通し移動した。私は悪役だぞ?そんなに使用人が居たら命を狙われるかもしれないじゃないか。ガクブル。ガクブル。
バタバタと移動し、夜になって下僕が帰るとディランが現れた。
「場所が変わったんだな。少し探した。……まぁ、ほんの少しだが。」
無表情だが焦っているのが分かって、可愛くなりクスリと笑ってしまった。
「……食事は済んだか?すぐに犯したい。」
「おか!?ええ?……下僕が用意してくれたから食べたが……犯すって、女ではあるまいし……えっ?まさか私は犯されていたのか?今までしていたのはまさかSEXなのか?」
ディランは不機嫌そうに深く首肯くと俺に近付いた。
「やはり気付いていなかったか……今まで何だと思っていたのか気になるが、こんな夜遅くまで下僕と居たとは一人にしておけないな。貴方に触ったら塵と化す結界を張っておくか……。」
俺は後退り首を振った。
「男同士でSEXは出来ないだろう?……入れるところが……ああ!お尻かぁ!!!⁉……確かにあれはSEXだな。……なんという事だ。男同士でSEXが出来るとは、そうと知っていたら少年であったディラン殿を手篭にしておいたのに、いっ!!――」
かなりの力でチョップをされあまりの痛さに踞る。
「俺はその手の冗談が大嫌いだ。よぉーく覚えておけ。」
冷気を出しながらディランが俺の腕を掴み立たせる。
「だって私は貴方に初めて会った時、あの時貴方はまだ少年だったか……うん、美しさに息が止まるかと思ったのだ。男同士でSEX出来ると知っていたら確実に手に入れようとした事だろう。……そうか、私はあの時からディラン殿に恋をしていたんだな。」
俺の体を引き寄せディランは耳元で囁く。
「――それで?」
期待のこもった声色に導かれるように俺は伝えた。
「私は、ディラン殿が好きだ。」
ディランの肩に頬を寄せ目を伏せた。
「大変よく出来ました。」
出来の悪い生徒を初めて誉めるかのようにそう言うとディランは俺を優しく抱き締めた。
幸せだなぁ――まてよ。これは俺達は両思いで今幸せ一杯という事か?……怖い!この幸せが壊れるのが怖すぎる!
ガクブル、ガクブル。
そうして俺のガクブルの毎日は続いていく。
それが幸せな人生。ガクブルの毎日。
ディランが行く時、「貴方が居ない時に王が来たらどうすればいいんだ⁉」とすがり付いたら、「暫く帝国の王は忙しいだろうから来ない」と言っていたのに……どうするんだ?この数日間俺は色んな体位でどういう動きをするかは学んだが、お茶の入れ方は習っていないが?
「……お前に手を出したからなのか?……俺は神の逆鱗に触れたのか……。」
そう言って椅子に座ると帝国の王は頭を抱え踞った。
あの厳つい帝国の王が落ち込んでいる。これは優しい俺は何かしてあげなければなるまい。しかし、何をどうしたらよいのか……。
ふと遠い記憶が蘇る。
あれはまだ俺が恐怖心や道徳心があった幼い頃。転んで泣いていた俺に母上は――。
俺は記憶をなぞり帝国の王を抱き締め、背をポンポンと叩いた。
「大丈夫。大丈夫。」
王の体の震えが収まっていく。うむ、正解だった。私はまた一つ優しき人々に近付いたようだ。
「……顔に傷が残らず良かった。――俺は何て事をしてしまったのだ。」
帝国の人間特有のヘーゼル色の瞳を潤ませ俺の頬に手を添えた王は何やら俺にした事を後悔しているらしい。そんなに思い詰めるとは……。
「大丈夫です。ディラン殿が綺麗に治癒してくれました。」
今はどこも痛くないのだから震えて泣くほど後悔しなくてもいいんだ。
「……ディラン……そういう事か。……伝説は本当だった。……俺は人間兵器の逆鱗に触れたのだな。」
力なくそう呟くと帝国の王は部屋を後にした。何かを背負っている背中だ。
帝国の王の沈みようにこっそりグッド・ラック!の親指を立て送り出した俺は優しき人々にかなり近付いている。
それから程なくして今度は下僕がやって来ると訳の分からない甘ったらしい言葉を散々吐いた後、王命により新居を用意したのでそこに今すぐ移れと言った。
高い身分も与え使用人も沢山用意したと言われ、怖いからいらないし、最初に用意してくれた家がいいと駄々をこね通し移動した。私は悪役だぞ?そんなに使用人が居たら命を狙われるかもしれないじゃないか。ガクブル。ガクブル。
バタバタと移動し、夜になって下僕が帰るとディランが現れた。
「場所が変わったんだな。少し探した。……まぁ、ほんの少しだが。」
無表情だが焦っているのが分かって、可愛くなりクスリと笑ってしまった。
「……食事は済んだか?すぐに犯したい。」
「おか!?ええ?……下僕が用意してくれたから食べたが……犯すって、女ではあるまいし……えっ?まさか私は犯されていたのか?今までしていたのはまさかSEXなのか?」
ディランは不機嫌そうに深く首肯くと俺に近付いた。
「やはり気付いていなかったか……今まで何だと思っていたのか気になるが、こんな夜遅くまで下僕と居たとは一人にしておけないな。貴方に触ったら塵と化す結界を張っておくか……。」
俺は後退り首を振った。
「男同士でSEXは出来ないだろう?……入れるところが……ああ!お尻かぁ!!!⁉……確かにあれはSEXだな。……なんという事だ。男同士でSEXが出来るとは、そうと知っていたら少年であったディラン殿を手篭にしておいたのに、いっ!!――」
かなりの力でチョップをされあまりの痛さに踞る。
「俺はその手の冗談が大嫌いだ。よぉーく覚えておけ。」
冷気を出しながらディランが俺の腕を掴み立たせる。
「だって私は貴方に初めて会った時、あの時貴方はまだ少年だったか……うん、美しさに息が止まるかと思ったのだ。男同士でSEX出来ると知っていたら確実に手に入れようとした事だろう。……そうか、私はあの時からディラン殿に恋をしていたんだな。」
俺の体を引き寄せディランは耳元で囁く。
「――それで?」
期待のこもった声色に導かれるように俺は伝えた。
「私は、ディラン殿が好きだ。」
ディランの肩に頬を寄せ目を伏せた。
「大変よく出来ました。」
出来の悪い生徒を初めて誉めるかのようにそう言うとディランは俺を優しく抱き締めた。
幸せだなぁ――まてよ。これは俺達は両思いで今幸せ一杯という事か?……怖い!この幸せが壊れるのが怖すぎる!
ガクブル、ガクブル。
そうして俺のガクブルの毎日は続いていく。
それが幸せな人生。ガクブルの毎日。
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いつも更新ありがとうございます。
ご感想ありがとうございます。
お読みくださり感謝です。
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