【道徳心】【恐怖心】を覚えた悪役の俺はガクブルの毎日を生きています。

はるか

文字の大きさ
上 下
12 / 22
帝国編

12 ディラン推し

しおりを挟む
信じられない事にテントが無いという事は敷物を引いただけで寝るという事らしいと気付いたのは男がゴロンと横になった時だった。

「用意が出来ました。どうぞご寛ぎ下さい。」

このころような場所で寝かせようというのになんと押し付けがましい事だ。誰がこの様なところで寛げるものか。

不敬である。

「お前も一緒に寝てしまったら危険が迫ったらどうするのだ?」

俺は怒りを噛み殺し尋ねた。

「ご心配には及びません。この辺に危険な生物は居ませんし、万が一の為に結界石でお守りしますよ。さっ、夜は長い事ですし、神に愛されし国の話をお聞かせ下さい。」

……なら一人で夜営をしたらいい。

その夜は男をディランに朝まで眠らせて貰い、夕食もディランの館で取ることにした。

「――何故私をそんなに見ているのだ?」

ディランに見つめられてナイフとフォークの手を止める。

「また薄汚れてきた。……今日は風呂に入れよう。」

「そうか?では頼もう。」

そうして俺は久しぶりに快適な夜を過ごした。

朝、ゆっくりと寝てから男の元へ戻った。男はイビキをかいて寝ていた。

「ディラン猫、起こしてくれ。」

「にゃっ。」

ディラン猫の目が怪しく光ると男が目を覚ました。

「……?おはようございます。早いですね。……何か綺麗になってません?」

男が不思議そうに俺を見る。

そんなに誉めても優しき人々の話は少ししかしてやらないぞ? 

そうやって俺の初めての帝国の旅は山あり谷ありで過ぎていった。途中150㎞で村に着いたが特に疲れてもいなかったので素通りした時は男が泣きそうな顔をしていたが、どうでもいい事だ。そして国境を出てから3ヶ月を経った頃に帝都に着いた。

「世話になったな。」

ん?国境警備隊長、少し痩せたか?

「グレン殿、神に愛されし国の話をたくさん聞かせて下さってありがとうございました!たまにカチンとくる事もありましたが、意外といい人なんですね。……噂は当てにならないなぁ。」

男が少し寂しそうに頭を掻いた。湿っぽいのはなんだかむず痒いから嫌だ。

「私もカチンとくる事は多々あったが、お前との旅は心地よいものだった。……これをあげよう。礼はお前が無事に国境に帰る事だ。」

俺は男にある紙を手渡し踵を返し振り返らなかった。

「?……こっ、これは!!!?」

男の手には男が肌身離さず持っていたディランの絵。

帝国では優しき人々の絵が流行しているらしく男はディランの絵を持っていた。その絵はディランが可愛らしくデフォルメされていて「誰だこれは!?」とグレンは見せられた時大爆笑した。人生で初めてこんなに笑ったと言っても過言ではない。

その絵にはいつの間にかディランのサインがしてあった。

「にゃーん。」
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました

美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!

君に望むは僕の弔辞

爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。 全9話 匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意 表紙はあいえだ様!! 小説家になろうにも投稿

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

心からの愛してる

マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。 全寮制男子校 嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります ※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください

今世はメシウマ召喚獣

片里 狛
BL
オーバーワークが原因でうっかり命を落としたはずの最上春伊25歳。召喚獣として呼び出された世界で、娼館の料理人として働くことになって!?的なBL小説です。 最終的に溺愛系娼館主人様×全般的にふつーの日本人青年。 ※女の子もゴリゴリ出てきます。 ※設定ふんわりとしか考えてないので穴があってもスルーしてください。お約束等には疎いので優しい気持ちで読んでくださると幸い。 ※誤字脱字の報告は不要です。いつか直したい。 ※なるべくさくさく更新したい。

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

精霊の港 飛ばされたリーマン、体格のいい男たちに囲まれる

風見鶏ーKazamidoriー
BL
 秋津ミナトは、うだつのあがらないサラリーマン。これといった特徴もなく、体力の衰えを感じてスポーツジムへ通うお年ごろ。  ある日帰り道で奇妙な精霊と出会い、追いかけた先は見たこともない場所。湊(ミナト)の前へ現れたのは黄金色にかがやく瞳をした美しい男だった。ロマス帝国という古代ローマに似た巨大な国が支配する世界で妖精に出会い、帝国の片鱗に触れてさらにはドラゴンまで、サラリーマンだった湊の人生は激変し異なる世界の動乱へ巻きこまれてゆく物語。 ※この物語に登場する人物、名、団体、場所はすべてフィクションです。

【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。

N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間 ファンタジーしてます。 攻めが出てくるのは中盤から。 結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。 表紙絵 ⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101) 挿絵『0 琥』 ⇨からさね 様 X (@karasane03) 挿絵『34 森』 ⇨くすなし 様 X(@cuth_masi) ◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。

処理中です...