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帝国編
11 強化担
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パッカパッカと馬に股がりここから一番近いという村へ出発したが、10㎞くらい程進んだだけでもとても辛い道程だった。もう110㎞は進んだろう?と思って聞いたら10㎞だと言われた時の心の傷からまだ立ち直れていない。見張りの為に付いてきた国境警備隊の隊長は同じく馬に乗っているが疲れを感じさせないから流石強い帝国の人間だと思った。
「馬が二頭いるのだから馬車にしたら良かったのに。」
前を行く男が俺を振り返り蔑んだように鼻でフフンと笑った。
……本当に醜い男だ。
「お前を歩かせて俺だけ馬で行く予定だったんだ。馬を貸してやっただけでも有り難く思え。」
俺だけ歩く?
縄に縛られ馬に乗った男に連れられていく自分を想像しようとして……想像出来なかった。
「私は1㎞も歩いた事がないから150㎞も歩くなんて1年かかるかもしれない。結局お前が痺れを切らして馬に乗せてくれただろう。……それにしても股が痛いな。もう耐えられそうにない。馬も休憩が必要だろう?」
「誰が乗せるか!何年かかろうが途中で死に絶えようが歩かせろとの命令だったんだ。この国の人間は皆お前の事が嫌いなんだよ!……おい!勝手に止まるな!あっ!?こら!降りるんじゃない!」
「降りてしまったのはしょうがない。テントも無いがここで夜営しよう。……所でどうして私は会ったこともない帝国の人間にそんなに嫌われているんだ?」
国の中枢を担う輩とは会って会話をしたことがあるが会ったことのない帝国の民にまで嫌われているとは……まぁでもどうでもいいが。
男は諦めたように「夜営ってまだ昼だろうが。」と言いながら馬から降り木陰に馬を繋いだ。それに習い俺も繋いでみる。
「バカ!そんな結び方じゃ逃げる!貸せよ。――お前が嫌われている理由?そんなの神に愛されし真っ白な美しい国でお前が唯一の黒い染みだからだ。帝国は彼等を苦しめてきたお前を排除し魔の手から優しき人々を開放したんだ。」
興奮して鼻息が荒いから本当に本当に気持ち悪い。
「そ、そうか、帝国の人々はあの優しき人々が好きなのだな?――でもあの人達バカばかりだぞ?」
俺は優しき人々のありえへん話をした。国の予算を半分使ってユートピア作ろうとしたとか……。
「!?」
俺が話を終えるとポカーンとして聞いていた男は顔を真っ赤にしてプルプルと震え下を向いた。
何だ?怒ったのか?ちょっとは盛ったが嘘ではないぞ?
「――何ソレ、尊い。……優しき人々は天然なんだなぁ。______超レア情報感謝します。もう今日は夜営しましょう。」
ニコニコと笑いながら男は夜営の準備を始めた。
尊?天然?……そんな事より国境警備隊長の男、笑顔になると中々可愛いではないか。
「にゃーん。」
敷物をなかなか引いてくれないので木陰に立って考えているとディラン猫がすり寄って来た。
「――勿論お前の方が美しいし可愛い」
俺はかがむと気持ち良さそうに頭を撫でられているディラン猫にそっと囁いた。
「馬が二頭いるのだから馬車にしたら良かったのに。」
前を行く男が俺を振り返り蔑んだように鼻でフフンと笑った。
……本当に醜い男だ。
「お前を歩かせて俺だけ馬で行く予定だったんだ。馬を貸してやっただけでも有り難く思え。」
俺だけ歩く?
縄に縛られ馬に乗った男に連れられていく自分を想像しようとして……想像出来なかった。
「私は1㎞も歩いた事がないから150㎞も歩くなんて1年かかるかもしれない。結局お前が痺れを切らして馬に乗せてくれただろう。……それにしても股が痛いな。もう耐えられそうにない。馬も休憩が必要だろう?」
「誰が乗せるか!何年かかろうが途中で死に絶えようが歩かせろとの命令だったんだ。この国の人間は皆お前の事が嫌いなんだよ!……おい!勝手に止まるな!あっ!?こら!降りるんじゃない!」
「降りてしまったのはしょうがない。テントも無いがここで夜営しよう。……所でどうして私は会ったこともない帝国の人間にそんなに嫌われているんだ?」
国の中枢を担う輩とは会って会話をしたことがあるが会ったことのない帝国の民にまで嫌われているとは……まぁでもどうでもいいが。
男は諦めたように「夜営ってまだ昼だろうが。」と言いながら馬から降り木陰に馬を繋いだ。それに習い俺も繋いでみる。
「バカ!そんな結び方じゃ逃げる!貸せよ。――お前が嫌われている理由?そんなの神に愛されし真っ白な美しい国でお前が唯一の黒い染みだからだ。帝国は彼等を苦しめてきたお前を排除し魔の手から優しき人々を開放したんだ。」
興奮して鼻息が荒いから本当に本当に気持ち悪い。
「そ、そうか、帝国の人々はあの優しき人々が好きなのだな?――でもあの人達バカばかりだぞ?」
俺は優しき人々のありえへん話をした。国の予算を半分使ってユートピア作ろうとしたとか……。
「!?」
俺が話を終えるとポカーンとして聞いていた男は顔を真っ赤にしてプルプルと震え下を向いた。
何だ?怒ったのか?ちょっとは盛ったが嘘ではないぞ?
「――何ソレ、尊い。……優しき人々は天然なんだなぁ。______超レア情報感謝します。もう今日は夜営しましょう。」
ニコニコと笑いながら男は夜営の準備を始めた。
尊?天然?……そんな事より国境警備隊長の男、笑顔になると中々可愛いではないか。
「にゃーん。」
敷物をなかなか引いてくれないので木陰に立って考えているとディラン猫がすり寄って来た。
「――勿論お前の方が美しいし可愛い」
俺はかがむと気持ち良さそうに頭を撫でられているディラン猫にそっと囁いた。
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