【道徳心】【恐怖心】を覚えた悪役の俺はガクブルの毎日を生きています。

はるか

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優しい国編

05 うんうん……って許可出来るかーい!

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そっと胸に両手を当てる。大きく息を吸い込んでふぅっと吐く。何度か繰り返しているうちにクラクラしてきた。酸欠だ。

「……何をしている。」

得体がしれなくて不気味だという顔をして俺を見るディラン。

怖くて心を落ち着かせないと仕事に行けないのだよ。

「……よし、よろしく頼む。」

ディランが魔法を唱えると俺達二人の姿は屋敷から消え、城の宰相室に現れた。テレポートって便利だな。魔法という特技をディランしか使えないのが難点だが一家に一台欲しい所だ。いや待て、そんな事になったら俺は急に現れた刺客に簡単に殺されるだろう。ガクブル、ガクブル。

ギュっとディランの袖を掴むと少し見上げる。

「この力を持つのが、ディラン(だけ)で良かった。」

俺を見下ろし何故だか固まるディラン。

「……気持ち悪い。」

それは大変だとそのまま袖を引きソファへ座らせる。

「桶を持って来るから、そのまま座って居るのだぞ?」

そそくさと部屋を出ようとした所で止められた。

「吐き気は治まったのか?」

俺が不思議そうにディランを見ると奴は俺を胡散臭そうに見ている。この美しい顔は表情豊かで面白いなぁ。

「お前、誰だ?」

俺は首を傾げディランを見た。

「この国の宝、宰相のグレンだが?ディラン殿、本当に大丈夫か?貴方に何かあって私を守れなかったら大変だ。」

「……紛れもないグレン宰相閣下だな。」

何がだ?まぁ大丈夫ならよかった。

ディランがあれから常に俺と行動を共にしている為、何故犬猿の仲の二人が一緒に!?今度は何を企んでいるこの極悪宰相め!と人々は思っている所だろう。

この俺とディランの組合せは天変地異の前触れかもしれぬと神に祈る者まで現れたらしい。

「宰相閣下、議会のお時間です。」

きた。

議会への呼び出しだ。俺が居なければ始まらない。

皆の悪意に晒されて注目されるのは本当に辛い。

隠居したい。
隠居したい。
隠居したい。

「……分かった。」

俺の心中の葛藤が見えるかのようにディランが俺をじっと見て大人しく付いて来てくれる。
思うところはあるだろうに俺をしっかりと守ってくれるし頼りになる奴だ。

議会が始まると優しい人々は俺の様子を伺いながら長々と何か話していた。

「……従って宰相閣下に許可を頂きたいと思うのですか、いかがでしょ「許可する。」」

「そうですね。許可などいただける訳が……えっ、許可!!?」

優しい人々がする事だ間違いはないだろう。もう許可でいい。何でもいい。

許可、許可、許可!!

俺は隠居したいんだ。

|ωΦ)チラッ ・・・・(¯﹃¯๑)

「えっ?貧困街への炊き出しに国の予算1年分を当てる?」

なにそれ?バカなのか?

「さっき、宰相閣下が二つ返事で許可していた。」

針の筵の議会をマッハで終わらせ宰相室に戻った俺はディランからその話を聞いて急いで許可を取り消したよね。

いや~優しい人々はアホだわ。俺、当分隠居出来ないわ。
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