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05 Utubaデビュー
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ツンツン。白く冷たい手が俺の頬に触れる。今日も今日とて君達は人がいいね。
俺が落ち込んでいるのが分かるのかい? 大丈夫。Ωと診断された頃から覚悟はしてたんだ。そうなったら舌を噛みきってやろうってね。男に入れられるなんて絶対に嫌だ。本能のままに貪り合う前に俺は――
ツンツンツンツン……。
「痛、痛いよ」
死んじゃ駄目って? それ君達が言う? ……本当に君達は優しいね。ありがとう。
パーンッ。
あ、昇天した。俺の部屋に来る霊は俺に少しのちょっかいを出した後に暫くすると例にもれず昇天していく。姿は見たことないけど絶対に居るんだ。人のいい霊達が――
「――何それぇ。心霊スポットじゃん。今度、地方心霊Utubaのテツちゃん連れてくーるね」
「え、困ります」
だから人がいいんだって。パリピαなんか来たら怖がっていなくなっちゃうだろう?
「――サトゥくんとマスかきあった日、俺ぇ。夜中に背中蹴られたんだよねぇ。あれがそうかぁ。結構デンジャラスじゃん」
「え、人違いです」
俺の幽霊アパートに来る霊達は揃いも揃って人がいいんだ。そんな他所様の背中を蹴るなんて、ないないない。
「……サトゥ君って、罪だよねぇ」
風早はそんな世間話をした後、また出張で暫く現れなかった。スーツどうしよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
だ、だって、撮影させてくれたら1万円くれるって言うから。
『――さぁ、今日も始まりました。心霊の旅。ここは地元の人なら知る人ぞ知る心霊スポット。通称、幽霊アパート。そしてその住人、佐藤(仮名)さん。佐藤さんは毎晩霊障に悩まされているそうです。早速検証に入りましょう』
アパート前でのかっこいいオープニングから俺の質素な部屋に変わる。テツちゃんが俺の部屋での検証に入った。
『……うおっ……やめっ、い、てててて、あーーっ』
10分の検証のはずがものの数分で出てくるテツちゃん。
『いや、映ってたかな。映ってたら番組初だよ。凄い数の霊から憎しみを向けられ、攻撃されました。あれ以上いたらどうなっていたか。佐藤さん、これは引っ越した方がいいですよ』
ボロボロになったテツちゃんが俺を心配してくれている。
『い、いやいや、彼等もちょっとびっくりしただけじゃないですかね。いつもは人がいい霊達なんですよ』
[ちょんまげヘアでサングラスをかけたイケメンボイスの佐藤さんは何処か浮世離れした雰囲気で霊の事を語る]
ボサボサヘアだったら会社に俺だとばれてしまうと俺が言うとピンク色のゴムで髪を結ばれた。風早はちょんまげした俺の顔を難しい顔で見た後、自分の頭の上に乗っていたサングラスを俺につけ「うん。アロン・ドランみたい」なんて言ってニッコリ。
『――ご協力お願いできますか?』
『……は、はい』
[そして、住人の佐藤さんが検証に入った事で我々は驚くべき光景を目の当たりにすることになる]
――バチバチバチ……パーンッ。
[もう一度ご覧いただこう。……お分かりいただけただろうか。佐藤さんが部屋に入るとオーブが牽制し合うようにまとわりつき、そして――弾けたのである。検証を終え佐藤さんは語る]
『人のいい彼等は俺のよき理解者なんです。引っ越し? しませんよ。するわけがない』
[そう言ってアパートの一室に戻る佐藤さんの背中は少し大きく見えたのだった。the end]
「ーー再生回数ミリオンいきましたっ。ウェーイ」
風早のスマホでUtubeを見せてもらった。確かに100万回再生と書いてある。
「か、風早。もう一回見たい」
1回じゃよく分からなかった。どれがオーブなんだ。
「……すずきくん。ちょんまげ。かわうぃーねぇ。」
あれからちょんまげの利便性を肌で感じてから家では専らちょんまげしてる。
「変な所触られてぇ、履歴のエロ動画見られたら恥ずかすぃーからぁ。俺が見せてあげるね?」
畳に体育座りで見ていた俺の後ろに回った風早は、後ろから抱き締める格好で俺の座椅子になってもう一度見せてくれた。近いがパリピだから仕方がない。肩に顎を乗せられて耳をペロっとされてもパリピだからな。
流れでまた前をグチョグチョされたけど、パリピだからな。でもやっぱり怖くなって「や、やだ。入れないで」って言ったら。いつもは秒で「ないから」とか言うのに――
「……善処します」
って言われたから猛々しかったのが縮みあがったよね。
俺が落ち込んでいるのが分かるのかい? 大丈夫。Ωと診断された頃から覚悟はしてたんだ。そうなったら舌を噛みきってやろうってね。男に入れられるなんて絶対に嫌だ。本能のままに貪り合う前に俺は――
ツンツンツンツン……。
「痛、痛いよ」
死んじゃ駄目って? それ君達が言う? ……本当に君達は優しいね。ありがとう。
パーンッ。
あ、昇天した。俺の部屋に来る霊は俺に少しのちょっかいを出した後に暫くすると例にもれず昇天していく。姿は見たことないけど絶対に居るんだ。人のいい霊達が――
「――何それぇ。心霊スポットじゃん。今度、地方心霊Utubaのテツちゃん連れてくーるね」
「え、困ります」
だから人がいいんだって。パリピαなんか来たら怖がっていなくなっちゃうだろう?
「――サトゥくんとマスかきあった日、俺ぇ。夜中に背中蹴られたんだよねぇ。あれがそうかぁ。結構デンジャラスじゃん」
「え、人違いです」
俺の幽霊アパートに来る霊達は揃いも揃って人がいいんだ。そんな他所様の背中を蹴るなんて、ないないない。
「……サトゥ君って、罪だよねぇ」
風早はそんな世間話をした後、また出張で暫く現れなかった。スーツどうしよう。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
だ、だって、撮影させてくれたら1万円くれるって言うから。
『――さぁ、今日も始まりました。心霊の旅。ここは地元の人なら知る人ぞ知る心霊スポット。通称、幽霊アパート。そしてその住人、佐藤(仮名)さん。佐藤さんは毎晩霊障に悩まされているそうです。早速検証に入りましょう』
アパート前でのかっこいいオープニングから俺の質素な部屋に変わる。テツちゃんが俺の部屋での検証に入った。
『……うおっ……やめっ、い、てててて、あーーっ』
10分の検証のはずがものの数分で出てくるテツちゃん。
『いや、映ってたかな。映ってたら番組初だよ。凄い数の霊から憎しみを向けられ、攻撃されました。あれ以上いたらどうなっていたか。佐藤さん、これは引っ越した方がいいですよ』
ボロボロになったテツちゃんが俺を心配してくれている。
『い、いやいや、彼等もちょっとびっくりしただけじゃないですかね。いつもは人がいい霊達なんですよ』
[ちょんまげヘアでサングラスをかけたイケメンボイスの佐藤さんは何処か浮世離れした雰囲気で霊の事を語る]
ボサボサヘアだったら会社に俺だとばれてしまうと俺が言うとピンク色のゴムで髪を結ばれた。風早はちょんまげした俺の顔を難しい顔で見た後、自分の頭の上に乗っていたサングラスを俺につけ「うん。アロン・ドランみたい」なんて言ってニッコリ。
『――ご協力お願いできますか?』
『……は、はい』
[そして、住人の佐藤さんが検証に入った事で我々は驚くべき光景を目の当たりにすることになる]
――バチバチバチ……パーンッ。
[もう一度ご覧いただこう。……お分かりいただけただろうか。佐藤さんが部屋に入るとオーブが牽制し合うようにまとわりつき、そして――弾けたのである。検証を終え佐藤さんは語る]
『人のいい彼等は俺のよき理解者なんです。引っ越し? しませんよ。するわけがない』
[そう言ってアパートの一室に戻る佐藤さんの背中は少し大きく見えたのだった。the end]
「ーー再生回数ミリオンいきましたっ。ウェーイ」
風早のスマホでUtubeを見せてもらった。確かに100万回再生と書いてある。
「か、風早。もう一回見たい」
1回じゃよく分からなかった。どれがオーブなんだ。
「……すずきくん。ちょんまげ。かわうぃーねぇ。」
あれからちょんまげの利便性を肌で感じてから家では専らちょんまげしてる。
「変な所触られてぇ、履歴のエロ動画見られたら恥ずかすぃーからぁ。俺が見せてあげるね?」
畳に体育座りで見ていた俺の後ろに回った風早は、後ろから抱き締める格好で俺の座椅子になってもう一度見せてくれた。近いがパリピだから仕方がない。肩に顎を乗せられて耳をペロっとされてもパリピだからな。
流れでまた前をグチョグチョされたけど、パリピだからな。でもやっぱり怖くなって「や、やだ。入れないで」って言ったら。いつもは秒で「ないから」とか言うのに――
「……善処します」
って言われたから猛々しかったのが縮みあがったよね。
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