極上αだった俺が突然Ωになって(本当はなってない)パリピαに面白がられる話

はるか

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01 俺様極上αの誤算

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 αだからだ。他者が俺にかしずくのも、目が合えば反らされるのも、αだから当たり前の事だった。強者であるαは弱者であるΩを守り、一生囲い続ける。俺も例にもれず、番が生まれた時から決まっていた。父の会社の子会社の社長の娘。透けるような白い肌にこぼれ落ちそうな大きな瞳はいつも潤んでキラキラしていた。肩に手を置くだけでも赤面して自分の父の後ろに隠れるような深窓の令嬢――。





 「――ああ。面倒だ」



 胸も育ってない初な少女に有限な時間を費やす気はなかった。結婚はする。けれど俺はαだ。世界中の美女から求められる存在。一人に縛られるなんて勿体ない。



 極上のα。



 「――今日、この日、この時、この場所で俺に出会えた奇跡に神に感謝するといい」



 胸の大きな腰の細い美女の赤い唇に齧り付きながら足を股の間に差し込んだ。



 「――ああんっ」



 それだけで腰砕けになった美女を今日もホテルのスイートに連れ込む。



 『人生の春? いいや。俺はαなんだ。これが当たり前の人生だろ? 知り合いには運命の番だとかに夢中なαもいるが、俺にしたらαなのに一人に絞るなんて職務怠慢だ。αは優れて生まれてきたのだから世界中の美女を幸せにしないといけないんだ。ちなみに男のΩは下の下の下……。生まれてきた事に絶望して一生を暗い地下室でおくるしかない。だって、尻が濡れるんだぞ? それはお漏らしと何が違うんだ? アーッハッハッハ……』



 「や、やめろっ。止めてくれっ」



 俺の秘密の日記をつらつらと朗読する深窓の令嬢に俺は耳を塞ぎながら懇願した。



 「あら? どうしてですの? αとは思えないほど稚拙で可愛らしい日記でしてよ? ふふふ」



 「はぁ。こ、これは違うんだ。んんっ」



 薄っぺらい俺の日記をヒラヒラと俺の顔前にちらつかせる令嬢の腕を取ろうとすれば彼女のボディガードに呆気なく取り押さえられ床に顔を押し付けられた。



 「うぐぅっ。んあっ」



 トロリと尻から何かが溢れ出てきて、あられもない声を床に向かって吐き出す。



 「あらあら。大変だわ。榊はαなのです。お兄様のΩが反応してしまいましたね」



 何で、どうして。



 「婚約者ですもの。お兄様の事は知っていますわ。臥竜院おじ様の会社が破綻前にお父様の会社に吸収合併された事も――」



 這いつくばされている俺の周りを人差し指を唇にチョンチョンとしながら楽しそうに歩く彼女は顔色もよく、深窓の令嬢というより、イタズラ好きの少女のようだ。



 「お兄様が今朝それを知ったのは、清純派アイドルのミルルと仲良く3ラウンド中のベッドの上だった事も――」



 彼女はふふふ。と笑いながら今度は飛び石を飛ぶように周りだした。



 「おじ様に生まれて初めて頬を打たれたお兄様が私の元へ着のみ着のまま追い出された事も――」



 フワフワと楽しそうだった彼女はピタリと止まると床とお友達をしている俺の顔の前にペタンと座った。


 「――お兄様が先週Ωと診断された事も存じてましてよ?」



 彼女はサラリと艶やかな黒髪を揺らしてニコリと顔を傾けた。



 「っ。違うっ。それは間違いだっ。ふざけた診断をした医者はクビにしてもう一度検査をしているっ。今日にも結果が出るだろう――」



 「――榊」



 鈴のような可愛らしかった声がトーンダウンしてボディガードを呼ぶと、ボディガードは俺を押さえながらガサゴソと頭上で音をさせながら彼女に何かを差し出した。



 「臥竜院がりゅういん紫貴しき第1の性 M 。第2の性――」



 「――Ω」



 違うっ。そんなはずはない。とボディガードを押し退け、婚約者から者類を奪い取った。



 「……そん、な。嘘だ」



 何度目をこらしてもそこにはΩの文字が印字されていた。



 1週間前体調が優れず主治医に診て貰った。奴は首を捻りながら念のためと簡易的なセクシャル検査をした。結果はΩ。ふざけるなと専門機関で隅から隅まで調べさせた。結果は今日だったのか。



 「お兄様、大変。地下室に隠れなくては、ね。ああ、でももうお兄様にはお家がないのでしたわね。だから婚約者の私の元へいらしたのよね?」



 俺はガタガタと震えながら得体の知れない存在となった婚約者を見つめることしか出来なくなっていた。



 「ΩとΩでは結婚出来ませんものね。婚約は慎んで破棄させていただきます。」



 αとΩの婚約は契約だ。父も藁をも掴む気持ちで俺を彼女の元へやったのだろう。しかし、Ωの男は子を成せない。こうなっては契約も無効になる。



 「あ、う、その……」



 「――榊、臥竜院様のお帰りよ」



 婚約者だった彼女はいつもの潤んだ瞳ではなく、ほの暗い冷たい瞳を俺に向けた。



 俺はボディガードに腕を取られるとそのまま外へ強制的に追い出された。







 side  苛烈なΩ





 「――ふふふ。あのα尊Ω卑男とやっとおさらば出来たわ。ああっ、空気が美味しい」



 「あそこまでなされる必要があったのでしょうか」



 男を外へ追い出した榊が珍しく主に意見を述べた事に少女は目を見張った。



 「あら、惑わされたのね。確かにあの顔でΩだなんてαにとっては堪らないでしょうね。本当に顔だけは極上ですもの」



 「申し訳ありません。対ヒート用の抑制剤は常に服用しているのですが」



 万が一にも主である少女を襲わないように。しかし、臥竜院紫貴への欲望は抑えがたかった。仕事中でなかったら無茶苦茶にしていただろう。あんなクソ男に忌ま忌ましいと拳を握るボディガードに少女は微笑んだ。



 「大丈夫よ。疑似Ω薬の効果は1週間。お兄様は今頃αに戻ってるわ。榊が惑わされる事は2度とないわ」



 Ωとして生をうけた少女は見た目は何処から見ても儚く可憐なΩだが、実はΩらしからぬ苛烈な性格だった。生まれた時から決まっていた最上級のαである婚約者の紫貴が虫酸が走るほど嫌いだった。自分を脆弱な底辺の存在だと見ている硝子玉のような美しい瞳。を蔑んでいるの? αというだけで何も努力もしない下半身の緩い猿がこのを下に見ている。許さない。完膚なきまでに叩き潰さないと気が済まなかった。



 チリリ。



 叩き潰したからにはもう用はない。なのに、榊が惑わされた事で痛み分けのような気持ちになった。



 「――ふっ。本当に忌ま忌ましいこと。」



 少女は言葉とは裏腹に涼やかに笑った。















 政財界へ影響力のあった臥竜院家失脚。日本中をそのニュースが駆け巡った頃。臥竜院紫貴は名を母方の名字である山田に変えた。

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