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幕前
静かにしめやかに縁は結ぶ 参
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「特殊とは?お聞きしても?」
(足りない情報に思考が追いつかない、情報を引き出さなくては、自分を選びまた期日が厳守とは何なんだ?)
動揺を悟られない様、短く、端的に、言葉を選ぶ橘は海千山千の両名に見破られている事すら気がつかない程、動転していた。
嗚呼、聴こえていたのかい?参ったなぁ
わざとらしく困り顔を見せる晴政に、わざわざ聴こえる様にしたんだろうがと、谷中は咳払いをして見せる。
この友人、晴政と言う男は身内に入れるか否かでスルリと仮面が剥がれ、悪意の無い親愛なる戯れや言葉遊びを仕掛けるのだから。
政権下での晴政は、氷華のごとく情等一切考慮せず切り捨てると厳しいと評判の男であった。
短い遣り取りであっても、人となりを見極める手腕は流石、裏で政権を左右する一族の当主である。
愛娘を任せ、定められた運命からも守ってくれるだろう・・・と。
いつも伏せ目がちで、自信無く微笑む愛娘の姿を思い出しつつ、聞いたからには逃がさないし、逃げる事や断る事は赦す気は無いと、決意の籠った視線を向け、話し始める。
我が家自体が特殊で、ね?
軽くつむがれる言の葉の音階は、継がれる言の葉に似合わず重く重く響き渡る。
己の呼吸音や鼓動音までが大きく聞こえる気がする程の、部屋の静寂。
実際には、晴政の声だけが音として部屋を支配しており、左京は緊張と、未知への恐怖心からなのか、ごくりと喉が鳴っていた。
そう、あれは娘と息子を授かった時だったか。
こくりと、酒を傾け喉を潤した晴政は遠くを見る表情を見せた。
「妻と私は喜び幸多かれと深く深く願ったのだよ。
息子はある意味で心配は無いのだが、娘の美夜子はね。」
言葉を切ると、困った様な悲しみを潜ませ手にしている盃を手慰む様に指先で転がしていた。
「信じられないかもしれないが、目を合わせた相手の真の心の声が聞こえるんだ。」
上司の谷中が息を呑んだのが伝わってきた。
左京の膝の上に置いた両手こぶしは、自身の動揺を鎮めようと、更にキツく結ばれる。
爪が手の平に食い込んでいた。
ふふ、信じられないってのが人の常さ。
気にして無いから、っと片手をさらりと降り作り笑いを零す晴政に、動揺を無作法を、無礼を許されたのだと知る。
「ただ、ね?」
「君達が、どう思うかどうかはどうでも良い。」
「真実、美夜子は目を通して相手の真意を知る。良くも悪くもだ。」
幼子というものは、疑う事をしらない。
不思議と思い、知りたいと思う事は言葉に出すだろう。
それが、良い事か、悪き事に繋がるかなど考えもせず。
「みやこは、しねばよかったのにってどういうこと?かあさま。」
美夜子が、乳母の1人を指差して無邪気に妻に問うたのだ。
「あの人が言ってたよ?いまはね、こころがきこえてるの?っていってるよ?ばけもの?ってなぁに?」
侍従をさらに指差し
「あっちの人は、みやこは、いらないこだって、にいさまだけだったらよかったって、どうして?」
と・・・ね。
「それからだ、使用人を近づけ無くなり、一族の前にも姿を余り出さなくなった。化け物、いらない子供と、聴こえない声が、美夜子にだけ聴こえる環境。美夜子があの子が人と目を合わせなくなり、自らを愛される事は無いと思い込む様になった。」
ふう、と一つ息を吐き晴政はこてりと首を傾ける。
「私たち家族の言葉は、慰めにもならないが根気よくいくつもりだったんだよ。」
だけど、事情が変わったんだと渇いた笑いを溢す晴政の表情には苛立ちが混ざっていた。
(足りない情報に思考が追いつかない、情報を引き出さなくては、自分を選びまた期日が厳守とは何なんだ?)
動揺を悟られない様、短く、端的に、言葉を選ぶ橘は海千山千の両名に見破られている事すら気がつかない程、動転していた。
嗚呼、聴こえていたのかい?参ったなぁ
わざとらしく困り顔を見せる晴政に、わざわざ聴こえる様にしたんだろうがと、谷中は咳払いをして見せる。
この友人、晴政と言う男は身内に入れるか否かでスルリと仮面が剥がれ、悪意の無い親愛なる戯れや言葉遊びを仕掛けるのだから。
政権下での晴政は、氷華のごとく情等一切考慮せず切り捨てると厳しいと評判の男であった。
短い遣り取りであっても、人となりを見極める手腕は流石、裏で政権を左右する一族の当主である。
愛娘を任せ、定められた運命からも守ってくれるだろう・・・と。
いつも伏せ目がちで、自信無く微笑む愛娘の姿を思い出しつつ、聞いたからには逃がさないし、逃げる事や断る事は赦す気は無いと、決意の籠った視線を向け、話し始める。
我が家自体が特殊で、ね?
軽くつむがれる言の葉の音階は、継がれる言の葉に似合わず重く重く響き渡る。
己の呼吸音や鼓動音までが大きく聞こえる気がする程の、部屋の静寂。
実際には、晴政の声だけが音として部屋を支配しており、左京は緊張と、未知への恐怖心からなのか、ごくりと喉が鳴っていた。
そう、あれは娘と息子を授かった時だったか。
こくりと、酒を傾け喉を潤した晴政は遠くを見る表情を見せた。
「妻と私は喜び幸多かれと深く深く願ったのだよ。
息子はある意味で心配は無いのだが、娘の美夜子はね。」
言葉を切ると、困った様な悲しみを潜ませ手にしている盃を手慰む様に指先で転がしていた。
「信じられないかもしれないが、目を合わせた相手の真の心の声が聞こえるんだ。」
上司の谷中が息を呑んだのが伝わってきた。
左京の膝の上に置いた両手こぶしは、自身の動揺を鎮めようと、更にキツく結ばれる。
爪が手の平に食い込んでいた。
ふふ、信じられないってのが人の常さ。
気にして無いから、っと片手をさらりと降り作り笑いを零す晴政に、動揺を無作法を、無礼を許されたのだと知る。
「ただ、ね?」
「君達が、どう思うかどうかはどうでも良い。」
「真実、美夜子は目を通して相手の真意を知る。良くも悪くもだ。」
幼子というものは、疑う事をしらない。
不思議と思い、知りたいと思う事は言葉に出すだろう。
それが、良い事か、悪き事に繋がるかなど考えもせず。
「みやこは、しねばよかったのにってどういうこと?かあさま。」
美夜子が、乳母の1人を指差して無邪気に妻に問うたのだ。
「あの人が言ってたよ?いまはね、こころがきこえてるの?っていってるよ?ばけもの?ってなぁに?」
侍従をさらに指差し
「あっちの人は、みやこは、いらないこだって、にいさまだけだったらよかったって、どうして?」
と・・・ね。
「それからだ、使用人を近づけ無くなり、一族の前にも姿を余り出さなくなった。化け物、いらない子供と、聴こえない声が、美夜子にだけ聴こえる環境。美夜子があの子が人と目を合わせなくなり、自らを愛される事は無いと思い込む様になった。」
ふう、と一つ息を吐き晴政はこてりと首を傾ける。
「私たち家族の言葉は、慰めにもならないが根気よくいくつもりだったんだよ。」
だけど、事情が変わったんだと渇いた笑いを溢す晴政の表情には苛立ちが混ざっていた。
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