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1章:私は貴方を諦める
愛される幸せ〜家族愛〜
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どれ程眠りに落ちていたのでしょうか。
甘いミルクの匂いに混じる花の香りに、ゆるゆると意識は覚醒し、視界に映る小さな手を開いたり閉じたりしていると、やはり昨夜の事は夢では無かったのだと痛感したのです。
何処かに居るのだろう番の貴方を思うとチクリチクリと胸の奥が痛みます。
諦めると、貴方を忘れるのだと
番の呪縛なのでしょうか、貴方を思わないと決めたのは私ですのに。
もう一度胸の奥に掛けた鍵を幾重にも増やしておきます。
ふぅっと小さなため息を溢すと目尻から滴が溢れ伝って行くのを感じました。
「あらあら、お腹が空いてしまったのかしら」
昨夜泣き叫ぶ私を優しくあやしてくれた声がします。
パチパチと瞬きを繰り返すと目尻をその人の指先が、そっと拭って下さいます。
「ステラ、可愛いわたくしの天使」
優しく抱き上げ、額を合わせると私に微笑み掛ける表情は愛しい愛しいと、深い愛情が溢れ伝わり何かが満たされていく様でした。
「お母様ずるいよ、僕にも抱かせて」
小さな手が、ぴょんぴょんと見え隠れしています。
私を抱いてくださっているのがおかあさまなのですね。
「リチャード、落とさないと誓えるのかしら?」
クスクスとおかあさまが乳母の手に私を渡しながら、声の主に話しかけている様です。
見ようと身動ぐと、察してくれたのか乳母が抱き抱え直して下さいました。
あ、おかあさまと同じ色の金の髪が短く切り揃えられ、ところどころくるくると巻いた巻き毛は、光を浴びて煌めいています。
喜びと少し不貞腐れた色を写している瞳は、アイスブルーに煌めいてとても愛らしい男の子です。
少し頬を膨らませ、頭を撫でられながらこちらをチラチラ見ています。
彼がリチャードなのでしょう。
私は思わず手を伸ばしていました。
ふわふわの彼の髪をおかあさまの様に触って見たかったのです。
「あーぁ、あーあ」
私の伸ばしている手に破顔した彼は、破壊的に美少年でした。
「お母様、早く!ステラが僕を呼んでる!」
嬉しくて堪らないと手を伸ばしてくれる、彼の指先をきゅっと掴みました、乳母が抱きやすい様に彼に私を渡しながら注意点を伝えております。
「きつく抱きしめてはいけませんよ。
大きなお声は驚いて泣いてしまわれますから、優しく囁く様に呼びかけて下さいませ」
私中身は大人ですので、驚いて泣くのは致しませんよ?
視線が下がり、視界は彼の顔でいっぱいです。
恐る恐る、まるで壊れ物を扱う様に私を細い腕で抱きとめ、柔らかく仄かに赤く染まった頬で優しく頬擦りして下さいました。
「ステラ、お兄ちゃんだよ?可愛いい僕のお姫様。大好きだよ」
私は嬉しくて嬉しくて、私も大好きだとありがとうと言葉を返したいのに、言葉になりません。
握る指先を離し、精一杯の気持ちを届けたくて、彼の顔に手を伸ばしてペチペチ叩きます。
「あーぁ、あーぁ、あぁぁ、きゃっきゃっ」
「お母様!ステラが僕を大好きだって!」
更に破顔し頬にキスの嵐です。
ちょっとおにいさま、嬉しいですが私は恥ずかしくて堪りません。
部屋の中は、仲睦まじい2人と嬉しそうに2人を見つめている大人達によって暖かく優しさに包まれていました。
後に、おとうさまがおにいさまと私の争奪戦をしていた時には、私は乳母によって夢の中へと旅立っていたそうです。
甘いミルクの匂いに混じる花の香りに、ゆるゆると意識は覚醒し、視界に映る小さな手を開いたり閉じたりしていると、やはり昨夜の事は夢では無かったのだと痛感したのです。
何処かに居るのだろう番の貴方を思うとチクリチクリと胸の奥が痛みます。
諦めると、貴方を忘れるのだと
番の呪縛なのでしょうか、貴方を思わないと決めたのは私ですのに。
もう一度胸の奥に掛けた鍵を幾重にも増やしておきます。
ふぅっと小さなため息を溢すと目尻から滴が溢れ伝って行くのを感じました。
「あらあら、お腹が空いてしまったのかしら」
昨夜泣き叫ぶ私を優しくあやしてくれた声がします。
パチパチと瞬きを繰り返すと目尻をその人の指先が、そっと拭って下さいます。
「ステラ、可愛いわたくしの天使」
優しく抱き上げ、額を合わせると私に微笑み掛ける表情は愛しい愛しいと、深い愛情が溢れ伝わり何かが満たされていく様でした。
「お母様ずるいよ、僕にも抱かせて」
小さな手が、ぴょんぴょんと見え隠れしています。
私を抱いてくださっているのがおかあさまなのですね。
「リチャード、落とさないと誓えるのかしら?」
クスクスとおかあさまが乳母の手に私を渡しながら、声の主に話しかけている様です。
見ようと身動ぐと、察してくれたのか乳母が抱き抱え直して下さいました。
あ、おかあさまと同じ色の金の髪が短く切り揃えられ、ところどころくるくると巻いた巻き毛は、光を浴びて煌めいています。
喜びと少し不貞腐れた色を写している瞳は、アイスブルーに煌めいてとても愛らしい男の子です。
少し頬を膨らませ、頭を撫でられながらこちらをチラチラ見ています。
彼がリチャードなのでしょう。
私は思わず手を伸ばしていました。
ふわふわの彼の髪をおかあさまの様に触って見たかったのです。
「あーぁ、あーあ」
私の伸ばしている手に破顔した彼は、破壊的に美少年でした。
「お母様、早く!ステラが僕を呼んでる!」
嬉しくて堪らないと手を伸ばしてくれる、彼の指先をきゅっと掴みました、乳母が抱きやすい様に彼に私を渡しながら注意点を伝えております。
「きつく抱きしめてはいけませんよ。
大きなお声は驚いて泣いてしまわれますから、優しく囁く様に呼びかけて下さいませ」
私中身は大人ですので、驚いて泣くのは致しませんよ?
視線が下がり、視界は彼の顔でいっぱいです。
恐る恐る、まるで壊れ物を扱う様に私を細い腕で抱きとめ、柔らかく仄かに赤く染まった頬で優しく頬擦りして下さいました。
「ステラ、お兄ちゃんだよ?可愛いい僕のお姫様。大好きだよ」
私は嬉しくて嬉しくて、私も大好きだとありがとうと言葉を返したいのに、言葉になりません。
握る指先を離し、精一杯の気持ちを届けたくて、彼の顔に手を伸ばしてペチペチ叩きます。
「あーぁ、あーぁ、あぁぁ、きゃっきゃっ」
「お母様!ステラが僕を大好きだって!」
更に破顔し頬にキスの嵐です。
ちょっとおにいさま、嬉しいですが私は恥ずかしくて堪りません。
部屋の中は、仲睦まじい2人と嬉しそうに2人を見つめている大人達によって暖かく優しさに包まれていました。
後に、おとうさまがおにいさまと私の争奪戦をしていた時には、私は乳母によって夢の中へと旅立っていたそうです。
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