異世界の管理人

ぬまちゃん

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若いドラゴンと長老

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長老!
貴方が異世界の役所でたらい回しにされたと聞きました。

我らドラゴン一族としては、役所に抗議すべきではありませんか?

この世界の最上位に君臨する生物として、たらい回しの様な振る舞いをされる事は、許し難い行為として、役所に対して断固たる処置を求めるべきです。

そうしなければ、ドラゴン一族としてのケジメがつきません。


多くの若いドラゴン達が、息巻いてドラゴンの長老の所にやって来た。
しかし長老は若いドラゴン達をたしなめて言った。


息巻いているお前達に問う。

最上位の生物とは一体誰の事だ?
まさか、頻繁にやって来る人間達の魔法や剣技で簡単にやられる生物の事ではなかろうな?


イヤ、
それは…

我々が弱いのではありません。

この世界に転生して来る人間族の騎士が放つ魔法や剣技が凄すぎるのです。
彼らは見かけは弱そうに見えるのですが、持ってくる物が桁外れなのです。

彼らの盾は、我々の炎を完全に防ぎます。
彼らの鎧は、我々の爪から彼らの体を完璧に守ります。
彼らの魔法は、我々が空を飛ぶよりも早く移動しますし、彼らの仲間の傷を一瞬で治します。
彼らの剣は、我々の強力な鱗を簡単に貫くのです。


しかし、その強い魔法や武具は人間が作ったのであろう?
誰か別の部族が作って人間族に与えた訳ではないであろう。
例え生身の人間族が弱いとしても、我々より強い武器を作れるのであれば、それを使う事を非難出来るわけがないだろう。
自分たちが弱ければ、それを補える武器を持ってくるのは、当然ではないか。
お前たちは、自分たちの弱さを人間達が作った武器の強さのせいにしているだろう。
それでは、その強い武器を作ったのが人間達ならば、我々よりも人間族の方が強いという事にならないだろうか?


長老は、静かに若いドラゴンに語りかけた。
しかし、その言葉の中には、若いドラゴン達に対して、自分たちが最上位の生物であるという奢りがあるのではないのか?
という事に対する問いかけの想いも含まれていた。


お前たちは、生まれながらにして、最強の生き物であるが故に、その地位にあぐらをかいていないか?

人間族を見てごらん、
彼らは生まれた時は非力な生物で一匹で生きていくことさえ出来ない。
だから産んだ親は子供を育てる事に全力を注ぐ。
時には、子供のために親が命さえかけて守ろうとする。

そこまでして成人した後でさえも、トラやライオンの様な強力な牙や爪を持たず、走る速度は馬よりも遅い。
生物としては、非常に弱い。
しかし、その非力さを道具を作る事で補っている。

我々の様に、生まれた時から世界を支配する法則を知るすべはない。

しかし、書物により世代を超えて道具を作る知識を受け継いでいるのだ。

人間世界から転生して来る人間達は、その道具を作る力が強くなっただけだと思わないのか?

人間達は、生身の自分達がどれだけ弱いのかを正しく理解している。
だからこそ、日々の生活の中で努力をして、少しづつ強い道具を作って来ているのだ。


それに比べて、我々ドラゴン族は、生まれながらに最上位の生物だからといって、アグラをかいて生き続けていたら、これからどうなると思うのだ?

世界の法則は、永遠にドラゴン族が最上位の生物であると書いてあるわけではないぞ。
強いものが、この世界を治める、としか書かれていない筈だ。

お前達、若いドラゴン達に、その危機意識はないのか?


長老の言うことには、たしかに一理あるとは思います。
しかしながら、たかが人間族に、我らドラゴン族が滅ぼされるとは思えません。

若いドラゴンが反論した。


よろしい。
そう思うのなら、お前が人間世界に転生して、人間達の力を見極めて来い!

長老は、その若いドラゴンを人間世界に送り出す使者とする事に決めた。

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