異世界の管理人

ぬまちゃん

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異世界転生課、主任

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最近は、ぽんぽん異世界に転生する奴が多すぎるから、俺たちの仕事も休みなしだぜ。
昔は、百年に一人いるかどうかだったのに、なんで最近は毎日のように転生する奴がいるんだ?

だれか、転生の技を吹聴しているんだろうか…
それともまさか、チラシの戸別配布とかやっている奴はいないよな?


「そういえば主任、オイラ、この間久しぶりの休みに町の本屋に行って来たのですけど……」

「ああ、この間有給使って遊びに行ってたって、その事か。お土産とか言って、薄いエッチな本を随分買って来てただろう?」

「まあまあ、主任。その件は置いといて………町の本屋には、ライトノベルとかのジャンルの棚が出来てて、そこの小説の半分ぐらいが転生の話でしたよ!結構買う人が多いみたいで、そこから転生の技がじゃじゃ漏れしてるんじゃ無いですか?だって、累計100万部とかですからね」

「なんだよーそれ。外の世界では、そんな物を本にしているのか?それじゃあ、この忙しさはこれからもずっと続くのか?」

係りの一人が文句を言うと。

「お願いだから、もうこれ以上忙しくしないでほしいな!俺たちだって、飯も食えば、トイレにも行くし。たまにはユックリ有給取りたいよ」

別の担当者も、それにつられるように愚痴をもらす。

「だいたい、なんでもかんでも、魔法で片付くほど世の中はうまく出来てないんだぜ?誰だって、そんな事考えれば、直ぐに分かるさ。異世界に転生すれば、チャラになるとか。異世界に転生すれば、好きな事出来るとか。そんな上手い話、ある訳無いじゃん。そんなの詐欺だよな」

「オレオレ詐欺じゃなくて、異世界サギか?それも面白いな。とにかくお願いだから、異世界とか転生とか、魔法とか、全部やめてほしいよ」

「だって、異世界に行くには、異世界側に転入届を出して、現在世界には転出届を出さなきゃあいけないのに、なんで最近の若者は誰もやらないんだ?」

「魔法だって、ちゃんと魔法許可証を申請しておかないと、無許可魔法として犯罪になるのを知らないのか?どこの世界にだって、その世界の法則があるから、その世界に行くには事前にオリエンテーションを受けないとだめなんだ」

「異世界から見たら、外来種と同じだからな。そんなものを野放しにしたら、その異世界を破壊しかねない。みんな、そんな事も考えずに、転生して好き勝手やっていやがる」


「主任~。なんか、溜まってませんか?凄く、心が黒いですよ。主任のオーラ、黒色を通りこして、どす黒色です。
これに触れたらどんな善人も悪に染まりそうな感じです」


「おはようございます~!」

別の担当者オフィスに入って来る。

「うわぁ!主任の背後から、冥界の門が開いてる。や、や、や、ヤバイ!誰か来てくれー、ボク1人では閉められないですー!冥界の住人が出てきちゃいますーー!」

ドヤ、ドヤ、ドヤ、………

「ヤバイぞ!塞げ!塞げ!塞げ!」

悲鳴を聞いて周りからみんな集まってきて、主任の背後の門を閉めた。


「主任ー!落ち着いてくださいー。お願いだからーッ」

ちょっと遅れて、受付の女の子も、髪を振り回しながら走り込んで来た。走るたびに、大きな胸が揺れて、可愛い顔立ちの女の子だ。でも、唯一の弱点は彼女の髪の毛一本一本が蛇になっている事だ………

普段は、髪の毛を後ろで束ねてシニヨン(ポニーテールみたいなお団子にした髪型)にしてから、キャップを被せている。時々、髪の毛が何本か解れてキャップから出ると、受付に来たお客様が石になってしまう事故が起きる。

転送課の大騒ぎを聞きつけて、大慌てで受付から走ってきたいみたいだ。途中でキャップが飛んで、シニヨンが解けて、髪の毛がボサボサになっている。

廊下で不用意に彼女の髪を見た者は、石になっていた。

転送課で最初に彼女が乱入した瞬間に、無意識に彼女の髪を見た犠牲者数名が石になった。しかし、皆んな慣れたもので、彼女の胸までしか見ない。顔は可愛いが、顔を見ようとすると彼女の髪の毛も見えてしまうからだ。

誰だって石になる危険を冒してまで、彼女の顔を見る度胸は無い………胸も大きくて顔も可愛いのだ。だから受付を任されている訳だ。


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