いつか殺し合う君と紡ぐ恋物語

月咲やまな

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第二章

【第八話】二日目の夜の攻防戦②

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 先に風呂場に向かった焔が湯船に浸かり、ほっと息を吐く。
 檜風呂ではなくても掛け流しの温泉だというだけで浸かると癒される。足や手の指先にじんわりとお湯の温もりが染み込んでいくおかげでとても気持ちがいい。これで地酒や夜景の見える窓でもあれば、月見酒でも洒落込みながら楽しむ事が出来て尚良かったのだが、残念ながら風呂場はそういう構造ではないし、酒も無い。だが『もしかしたら窓くらいなら、リアンに頼めば簡単に造れるのでは?なんたって此処は“ゲーム世界”なのだしな』と思いながら、お湯の中で手足をぐぐぐっと伸ばした。

「周辺に灯りなんか何も無いし、きっと外は星も綺麗なのだろうな」

 誰に言うでもなく、ぽつりとこぼす。
 すると丁度良いタイミングでリアンが入って来て、「えぇ、向こうの窓から見える夜空は絶景でしたよ」と返事をした。
 腰にはタオルを巻いており、手には何やら玩具っぽい物の入る桶を抱えている。持っているそれは一体何なんだ?と焔は気になったが、子供っぽい反応をしたりはしなかった。
「やっぱりそうか。今からでも風呂場に窓を造ったりは出来るのか?」
「出来ますが…… 明日の昼間とかでも良いですか?」
「まぁ、構わないが」
 何でだろうか?と思いつつもあっさりと諦める。
 今すぐにでも星や月が見られないのは残念だが、きっと何かしらの理由があるのだろうと判断した。

(まぁ、そもそも、真っ裸のままクラフト系の作業なんかしたくもないよな)

 勝手に納得し、湯船の中で少し端に避けてスペースを空ける。
 すると、簡単に体を洗ったリアンがいそいそとした様子で、焔の隣に並ぶ様にして湯船の中に入ってきた。
「…… ふぅ」
 体が一気に温まり、気持ちも一緒に解れていく気がする。焔だけでなく、リアンにとっても一日で一番好きな瞬間だった。
 広めに造った湯船ではあるが、リアンの体格が大きめなので二人の腕が軽く触れ合ってしまっている。だが実は、離れようと思えば、まだちょっと反対側の方に多少の余裕があるので離れることも出来なくは無い。だけどリアン側にそうするつもりがないので、彼は温泉の温かさと焔から感じる体温の心地良さを感じながら、ぼぉっと天井を見上げた。
 手には玩具の入った桶を抱えたままだった為、その中身が気になる焔がチラチラとリアンの方に顔を向ける。目隠しが湿気のせいで湿っていて、うっすらと、綺麗に閉じられた目蓋と長いまつ毛が何となく見て取れた。

(やっぱ素顔が気になるなぁ…… 。見た目を鬼にしているくらいだ、三白眼とかなのだろうか?)

 訊いても答えてくれる気がしないので、黙ったまま再び息を吐く。
 リアンが首を軽く傾けて筋を伸ばし、足などの指先もついでに伸ばしていると、痺れを切らした焔が桶を指差し、「その玩具っぽい物は何だ?」と訊いてきた。

「あぁ、コレですか?ちょっと材料が余っていたので作ってみたんです。木製になってしまったので色も無く、少し味気ないですが、“アヒルちゃん”ですよ」

 風呂場によく似合う黄色いアヒルちゃんそっくりに形作られた玩具を手に持ち、ほらっとリアンが焔に見せる。
 すると彼は「おおおおっ」と、珍しくかなり嬉しそうな色で声を上げた。が、咳払いをして気持ちを落ち着けようとする。

「これがあの有名な“アヒルちゃん”か」

 普段通り淡々と言い、今も落ち着いた口調を心掛けているっぽいが、顔付きが見事に緩んでいるので喜んでいる事がはっきりとわかる。
「それっぽいだけですけどね。でもちゃんと浮くんですよ」
「風呂といえばコレっていうイメージが最近はあるが、本当にある所は初めて見るぞ。元の世界での風呂なんて無駄に立派なだけで、玩具の類を置いておく、粋な奴はいなかったからな」
「紛い物ですけどね」

(最近って程最近の玩具ではないような気がするんだが。しかも、玩具がある風呂は粋だろうか?…… まぁ、そう思う焔が可愛いからいいけどな)

「まぁまぁ、そう何度も茶々を入れるな。木製だろうが黄色くなかろうが、見た目が同じである以上、コレは風呂場の定番品である“アヒルちゃん”だ。いいな?」
 大きめのアヒルと小さなアヒル達を湯船の端にずらりと並べ、焔が言い切った。
 予想よりもいい反応をしてもらえ、かなり嬉しい。いいとこ『この玩具は知ってるぞ』くらいの返事があればいい方かと思っていただけに、より一層この反応が愛おしく思え、リアンの口元も綻んだ。

「…… だが、よくコレをお前が知っているな」

 ぎくりとしてリアンの体が一瞬硬直した。
 焔ならば自分がコレを知っていよう気にもしないと思っていただけに、言い訳なんか全く考えていなかったのだ。

「まさか異世界でまで風呂の定番だとは思わなかったぞ。流石だな、黄色いアイツの人気度は」
 リアンの返事を待つ事なく焔が話し続ける。どうやら先程の発言は、質問では無かった様だ。

「…… まぁ、元の世界へ戻ってもわれには子供がいる訳でもなし。立ち位置的にもこういった物に触れる機会がそもそも無かったんじゃが…… 感謝する、リアン。ちょっと童心に返った気がするぞ」

 童心に返った気がすると言うだけあってか、焔の言葉遣いまでが少し古臭くなっている。
 そんな焔に対して軽い違和感を覚えつつも、リアンは彼の楽しそうな雰囲気に容易く呑み込まれ、そんな瑣末事はすぐにどうでもよくなった。
「喜んでもらえて嬉しいです。私もこういった物の存在は知っているのですが、触れる機会そのものは、なかなか無かったので…… 」

「では、互いに初めて同士なのだな」と言って、焔がニッと子供っぽく笑う。

 そんな表情を見てリアンは、階段の上で感じた衝動を、胸の奥で再度思い出してしまった。
 とくん、とくん——どくんっ!
 と、規則的だった心臓の音が早くなり、不規則になったようにすら感じられる。下腹部に血や熱が集まり、主人の肌に触れてしまいたい衝動で頭がふらついた。

「さてと、そろそろ体でも洗っておくか」

 リアンの変化に何も気付かぬまま焔が立ち上がり、彼の前に雪が如く艶やかな肌を遠慮なく晒す。腰に何かを巻いている訳でも無いので、お尻の綺麗なラインまでもを存分に見る事が出来てしまったせいでリアンは全身の血が沸騰したみたいになり、もう今にも鼻血を出す寸前だ。


 洗い場の腰掛けに焔が座り、桶にお湯を溜めて、石鹸で体を洗う用意をする。シャワーなどの設備までしっかり用意されており、比較的現代風で使い易そうだ。
「昨日も思ったが、お前はすごいな。異世界に飛ばされてまで現代風の設備を使わせてもらえるとは思ってもいなかったぞ」
「便利な物は極力採用した方が何かと楽ですからねぇ」と言いながら、リアンも湯船の中で立ち上がる。そして、シャワーに手を伸ばそうとしていた焔の手に手を重ねた。
「ん?」
 何だ?と思いながらほむらが真上を見あげると、ニコニコと不自然なくらいにいい笑顔を浮かべるリアンと目が合った様な状態になった。

「私が洗って差し上げますよ、焔様」

「自分で出来るぞ?」
「いやいやいや。焔様、今絶対に全身を石鹸だけで洗おうとしていたでしょう」
「…… あぁ、そうだな」
「やっぱり!駄目ですよ、ちゃんとしないと。なので私が洗って差し上げますね」

(まぁ、髪を洗わせるくらいならいいか)

 そう思いながら、念の為目隠しが外れてしまわ無いように術をこっそりとかけておく。意図的にリアンが外そうとはしないとは思うが、コレで万が一の事故も防げるので一安心だ。

「じゃあ頼むか」
「喜んで!」

 まずはシャワーで髪を濡らし、ソフィアが村で買ってきてくれたシャンプーで髪を洗う。柚子の様なさっぱりとした香りがする物だったからか、焔はちょっと嬉しそうだ。
「お好きな香りでしたか?」
「あぁ、柑橘系の香りは好ましいと思う。懐かしいというか…… 馴染み深い香りだ」
「そうなのですね。私も好きですよ、柚子や蜜柑などは不思議と懐かしさも感じられますし」
「そうなのか?意外だな、召喚魔なのに」
 ふっと笑い、洗いやすい様にと焔が軽く俯く。
 目元を隠す布のせいで髪が洗いづらいのだが、俯いた事で強調されたうなじのラインの素晴らしさのせいで、色々リアンの中でどうでもよくなってしまった。
「目隠しにシャンプーが染み込んで、気持ち悪くは無いですか?染み込んで痛いですとか」
「ガッツリと目を閉じているから大丈夫だ。洗いにくいだろうが、このままやってくれないか?」
 どうしてここまで頑ななのだろうか?とリアンは疑問に思いながらも、「わかりました」と素直に頷く。そして、丹念に焔の頭を洗い、コンディショナーも使って手入れをきちんとやり終えた。

「ちょっと一度シャワーを借りていいか?布の部分をゆすぎたいんだ」
「了解です」と答え、リアンがシャワーを焔に譲った。
 シャワーから出てくる無尽蔵なお湯で目隠しに染み込んでしまった色々な成分をしっかりと濯ぎ落とし、元の位置へ戻す。さて次は体を洗おうかと思い、今度こそ石鹸に手を伸ばそうとしたのだが、あるべき場所に石鹸はもう無い。

「お次は体ですね!」

 元気いっぱいなリアンの声が背後から聞こえ、焔は嫌な予感がした。
「自分で出来るぞ」
 キッパリと言い切ったのだが、「まあまあまあ」と言いながらリアンは泡立った手拭いで焔の背中を洗い始める。

「いや、待て。本当に自分で——」

 悪巧みをしてやいないかと不安で振り返ったが、リアンの表情はいたって普通だった。高揚しているふうでもなく、純粋に親切心で洗っていますと言った雰囲気ですらある。
「どうかしましたか?」
 小首を傾げられ、「いや…… 何でもない」と答えつつ、焔が体を前に戻す。疑って悪かったなと思いながらじっとする。だが——そんな姿を背後から見つつ、リアンはニヤリと笑った。

(見た目の割に純真だよなぁ、お前は)

 ゾクゾクゾクッと背筋が震え、心が躍った。腰に撒いたタオルの中ではもうイチモツがギンギンに勃っていて、いつ何時快楽を得られるのかとヒクついている。乱れそうになる呼吸を無理矢理整え、冷静なフリをしながら綺麗な黒髪から繋がるうなじのラインや背筋、肩甲骨などを丁寧に洗い切った。

(このまま流れで尻も洗ってやりたいが、お楽しみは後にするか…… )

 流石に頰が赤くなるのまではどうにも出来ず、もう振り返らないでくれる事を願いながら、そっと生唾を飲み込む。そして手拭いから泡をこそぎ取ると、泡だらけになった手を焔の前側に伸ばして、そっと鎖骨に触れた。
「うわっ」
 珍しくひどく驚いた声をあげ、焔の体が跳ねる。
 そんな彼の肩にリアンが顎を乗せて、後ろから前面をガッツリと見ていた。太腿、股間、引き締まった腹筋などが眼福過ぎてニヤけてしまう。体を擦り寄せてしまいたいがそれだけはまだ早いと思い、ぐっと堪える。
「すみません、くすぐったかったですか?」

「あ、いや。前は流石に自分で洗うから、手拭いをわた…… んくっ」

 泡でぬるっとした指先が乳首に触れ、変な声が焔から溢れた。
「な、なんで手で洗っているんだ?」
「布が乳首に擦れたら痛いかなと思いまして。手だと、丁寧に洗えますしね」と言いながら、両方の乳首を優しく二本の指でリアンが挟んだ。
「んあっ」
 大きく口を開け、焔が背中を逸らせる。
 耳の側で淫猥な声が聴けた事で、リアンの滾る陰茎から先走りがたらりと流れ落ちた。
「ははっ、どうしたんですか?そんないやらしい声を出して。私はただ体を洗っているだけですよ?」
 意地の悪い声色で言い、焔の耳をはぐっと甘噛みする。すると彼は「ひうんっ」と言いながら全身を震わせて再び仰け反った。はあはあと雑な呼吸を繰り返し、力の抜けてしまった体をリアンが支える。こうなればもうこっちのモノだと言わんばかりに、リアンは焔の胸を丁寧にねちっこく洗い続けた。

「ピンク色の綺麗な乳首がすっかり熟れて赤くなってしまいましたね。ツンッと愛らしく尖ってますけど、もしかして気持ち良かったですのですか?」

「貴様の、せい…… だろうがっ」

 睨みつけている様な空気感を漂わせ、軽く後ろを振り返りながら憎々しげに焔が言う。
 だがペッタリと張り付いた目隠しのせいで鋭い視線は感じられないし、頬や耳を真っ赤にした顔を見せられても、微塵も怖くはない。それどころか目隠しのせいでSMプレイ的な興奮要素しか持っておらず、リアンは嬉しそうに顔を寄せ、焔の口を唇で塞いだ。

「んっんんっ…… んぐっ…… んぁ」

 舌が激しく絡み合い、快楽にひどく弱い焔の反応が段々とリアンの望む方向へと変化していく。彼の下腹部もすっかり勃起していて、かなりいやらしい形になっている。先走りもぷくりと溢れ出し、早く弄って欲しそうにヒクつきだした。

 チュッと軽い音をたてながら、リアンが唇を離す。
 そして悪どい笑みを浮かべながら焔の陰茎に手を伸ばすと、耳元で「すっかり元気になってしまいましたね、焔様?」と囁いた。
 指先で輪郭をそっと撫で、下から上へとゆっくり焦らしていく。亀頭部分は指の腹で優しく撫でて、溢れ出している先走りを塗ったくる様に伸ばしていった。

「どうして欲しいですか?コレ。放置は…… お辛いのでは?」

 腰が浮き、早くソレを弄って欲しいと言わんばかりに揺れている。そんな快楽に弱い主人の姿を見て、益々リアンの胸が高鳴り、嬉しさから全身が震えた。
 可愛い、愛おしい、白い肌のそこかしこに喰らいつき、滾る欲望を無理矢理にでも胎内にも似た箇所にねじ込み、激しく揺さぶって、快楽を貪り尽くしてしまいたい。そんな考えで頭の中が支配され、リアンは石鹸でよく滑る自分の胸を焔の背中にピタリとくっつけて擦り合わせた。高揚する焔の体温が心地よく、胸の尖りがしっとりとした肌のおかげでとても気持ちがいい。

「…… 早く、さ、触ればいいだろうがっ」

 声が震えてとても小さい。
 しかも発言が上から目線だが、それすらもリアンにはもう愛おしく感じる。いじらしくすら思えてくるのだから、もう今のリアンは使い物にならなさそうだ。

「いいですよ、焔様。でも私の手では持て余してしまうくらいにご立派ですからねぇ…… あぁ、腹立たしい」

 相変わらず撫でるだけで、しっかりとは愛撫しない。焦らしに焦らされ、焔はもう自分の体を完全に支えきれなくなってきた。
「ならもういい。自分で——」と、自分の陰茎へ手を伸ばそうとしたが、その手はリアンに捕まれ、両腕を後ろに引っ張られてしまった。そしてさっきまで背中を洗う時に使っていた手拭いをまた取ると、リアンはそれを使って彼の両手首を拘束した。

「駄目ですよ?私が居るのに。あぁでも…… 焔様のオナニーならいつか見てみたいですねぇ。かなり淫靡で卑猥でしょうから、興奮し過ぎてしまいそうですけども」

「——は⁉︎」
 お前は何をして、何を言っているんだと言わんばかりの声をあげたが、耳をカプッと噛まれただけですぐに全身が蕩けてしまう。昨日初めて触れ合った者同士とは思いえぬ程に的確な攻めだった。

(…… コレだけ快楽に弱いとなると、とっくに経験はあるんだろうな。——くそっ!)

 自分が初めてでは無いだろうなと思うと、憎々しい気持ちになる。相手の性別はわからないが、どっちであろうが殺してしまいたい。が、今はそれをさておき目の前の快楽を貪ろうと、焔の細い首筋を舐め回した。
「はは、石鹸の味がしちゃいますね」
 でも流してしまうのは惜しい。すべすべした感触が気持ちよく、何度も体を擦り寄せてしまう。

 もっと気持ちよくなりたい。

 ここまでくると考える事はどちらも同じだ。
 リアンは後ろ手になっている焔の手の中に自身の勃起した陰茎を触れさせると、耳元で「しっかりと掴んでいて下さいね、焔様」とお願いする。
「そうしたら、焔様のその、凶悪なチンコもたっぷり愛してあげますから」

「へ?は…… ?こ、この変態がっ」

 茹で蛸並みに顔を真っ赤にし、焔が吐き捨てるみたいに言ったが、手ではしっかりとリアンの陰茎を包み込んでやった。
「あははっ。いいですね、その言葉…… 腰にきますよ」
 主人に罵られ、ぞくりとリアンの体が震える。
 確かに今の状況はかなり卑猥だ。風呂用の椅子に座る焔の後ろに膝をついて座り、後ろ手で縛られている掌の中で今にも弾けてしまいそうな陰茎を握らせ、先走りがヨダレの様にダラダラと流れている亀頭部分は焔の綺麗な尾骶骨部分に当たっている。このまま腰を振れば、確実に気持ちがいい。愛らしい蕾付近へ射精出来るのだと思うだけでも興奮する。

「そのまま、もう少しだけ強く握って、ちょっと擦ってくれると嬉しいんですけど…… 駄目ですか?」

 自分も焔の陰茎をしっかりと手で掴み、下から上へゆっくり擦りながらお願いしてみる。すると焔は返事をしないまま、いや…… 出来ないままに、指示通り手を不器用に動かし始めた。
 拙い感じが不規則な動きになり、かえって気持ちがいい。爪は綺麗に仕舞われていて恐怖心も無いし、つい腰を振ってしまう。

「あ、いい…… 気持ちぃ…… ほむ、ら…… さまぁ」

 快楽に溺れ、受け身側の様な声をリアンが口にする。
 その声を聴き、耳の奥がワザついた焔は片手だけ陰茎から離すと、リアンの会陰部や袋へ先走りや石鹸でぬるぬるとする指先をやり、揉んだり撫でたりをし始めた。

「んな?ま、待って下さい焔様っ。——あ、そんな…… そこまで、んっ」

 双丘近くにまで指がギリギリ届き、蕾付近をくるっと撫でられる。そこまで先にはされてなるものかとリアンは気を取り戻すと、焔の勃起した陰茎を容赦なくいたぶり始めた。
「駄目ですよ、流石にソレは反則ですっ」
「あぁぁっ、んぐっ」
 急にまともに手淫されたせいで、焔の目の前でチカチカと火花が散った様な錯覚を感じた。
「そ、んな、強くいじ、るなっ」
「でも気持ちいでしょう?」
「…… っ」
「ちょっと痛いくらいの方が、焔様は反応がいい気がしたのですが、やはり正解の様ですね」
 自身も快楽を貪りながら、焔の肩と背中にペタリとくっつき、彼の射精を促そうと丁寧に愛撫を続ける。石鹸のぬるつきが汗などで随分と損なわれてしまっているのが残念でならないが、滑りを足している様な余裕は無かった。
「も、離せ。このままだと床に…… 出して、しま…… くっ」
「あぁ、飲んでほしいのですか?イヤラシイ主人ですねぇ」

「魔力のほ、じゅうで、シて…… いるんじゃ、ないの、か?」

 息も絶え絶えに問われたが、リアンは返事に困った。『そうだ』と言えば、この状況を許してもらえるのだろうか?でも、『好きだからこうしていたいんですよ』と言いたい気持ちの方がずっと上だ。愛おしいから抱きたいし、乱したいし、もっと触れ合いたいのだと言って、会ったばかりの焔が自分を受け止めてくれるのだろうか?と不安になる。本物の恋愛シミュレーションゲームならばそんな事まで気にせずに好感度のまま対応出来るが、此処はあくまでもそれをベースにした世界なだけであって、主人公側にも都合というものがあろう。
 悶々と色々考えながらも手だけはちゃっかり動かしていたせいで、焔の限界がもう目前だ。

「も、無理だっ。で、出るっ、い、いくっ」と言った声がリアンの耳に届いたと同時に彼の手の中で焔の陰茎は一気に弾け、ドクンドクンッと脈打ちながら大量の白濁とした精液を風呂場の床へと吐き出していった。

「…… エロッ」

 大きく開脚した脚といい、震える体や白濁液の吐き出される光景やらが眼福過ぎて目が離せない。うっとりとした眼差しでいると、自身の高揚感もピークに達し、焔の手に無意識のまま少し力が入っただけで、彼までもが射精してしまった。
 赤く染まる焔の白い肌に勢いよく白濁液がぶつかる。それが尾骨を流れ、お尻のラインを伝って落ちていく様子はもう、再度即勃起してしまうくらいに淫楽そのものの光景だった。

 肩で息をして、焔が手の力を緩めて体を前に倒していく。
 状況が恥ずかしくってならず、顔をあげている事が出来ない。射精後なのに勃起はまだ鎮まらず、焔は自身の体の淫乱さを恥じて唇を噛んだ。

(リアンは精液を飲まなかったが、コレは、魔力の補充では無いのか?)

 行為の意味がわからず、頭の中が混乱する。
 自分の体の反応も受け止めきれぬままでいると、同じように治りのつかないリアンが、理性を失った瞳をしながら焔の前側へと移動してきた。

「すみません、焔様。間に合わずに精液を無駄にしてしまって…… 。なので、もう一度よろしいですか?」

 脚の間へと座り、精液で汚れながらも硬く勃起したままになっている焔の陰茎を優しく片手で掴み、長い舌を出してペロリと舐める。スッと細められた切れ長な青い瞳で見上げられ、焔はその妖艶さにゾクッと背中を震わせた。

「し、仕方ないな…… それなら。もう一回だけだぞ?」

 興奮した雰囲気を漂わせながら言われ、リアンの心が益々興奮に打ち震える。
 この状況を許してしまった事で、彼らはその後何度も何度も互いを貪り合ってしまったのだった。
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