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最終話
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内科の階に戻り、一緒に夜勤についている奴の元へと小走りで急ぐ。
「悪い、いきなり抜けて」と言いながら部屋に入ると葛葉と一緒にお茶を飲んで座っていた。
「宮川先生、おかえりなさい」
……コイツはいったい何を。
二人の様子を見て、顔が青ざめ少しイラッとした。
「この子から今さっき聞いたよ、弟さん無事だったみたいでよかったな」
「……え、まぁ」
返事が投げやりになる。
『何でお前は姿を出したままでいるんだ⁈』
口に出さずとも、意思疎通が出来るからと渡された首にかかるネックレスを触りながら考える。
『ご、ごめんなさい。急いで戻ったらまだ昴さんが居なくて……姿をまだ消していなかったもんだから捕まっちゃって』
『アホ!あれほど絶対に姿見せるなと言ったのに』
『力を使ったばかりだったから、……治療中だったので、怪しまれない様ゆっくりやるので随分消費しちゃって』
そうだった、葛葉は今まで全力で仁を救おうとしてくれたのに。文句なんかを言う立場じゃ無いのに、俺はいったい何をやってるんだ。
「いやーしかし、こんな美人の看護士いたか?」
同僚の言葉に、体がビクッと震えた。
「……いただろ、覚えてないか?」
上手い嘘が出ず、適当な事を言ってしまった。k
「あー……すまん、サッパリわからん」
「科が違いますからね。あ、私ももう戻らないと!では失礼します」
逃げねばならぬ空気を察し、葛葉が焦りを隠さぬまま声をあげ、そそくさと退散していく。
「ああ。お疲れ様!」
返事をした俺も不自然さ全開で、自分が情けなく思える。だが、精神的疲労があるせいか、もう色々面倒くさい。
タタタッと葛葉が廊下を駆けて行く。廊下を曲がり姿が一度見えなくなったが、すぐに体を透明化した狐の状態で戻って来た。首が項垂れ、誰がどうみても申し訳なさそうな顔をしている。
「いやーさっきの子すごい美人だったな、眠気なんか一気に飛んだよ」
「そ、そうだな」
話を合わせただけの俺の言葉を額面通りに受け取ったのか、葛葉が照れくさそうに両手で目元を隠していた。
夜が明け、交代の医師が出勤してくる。引継ぎをして帰ろうとしたが、仁の容体が気になったので俺は帰宅前に一度弟の病室に寄って行く事にした。当然の様な顔で、一緒に葛葉もついて来る。
コンコンと病室のドアをノックすると「どうぞ」と母さんの明るい声が返ってきた。引き戸を開け、中に入る。
「兄さん!」
起きていた仁と目が合うと、元気そうに笑っていた。
「——怪我なんかするな!何やってんだ!」
「だ、第一声がそれって……冷たいなぁ」
仁にギョッとした顔をされたが、文句を言いたくってしょうがない。
「お前のおかげで色々あったんだよ」
俺がそう言うと、仁の視線が明らかに脚元に居る葛葉の方へ移った。
「へぇーでも、災い転じてなんとやら……だったんじゃないの?」
「んなっ!」
コイツはどこまでわかってるんだ⁈
視線が葛葉の方へいったって事は、仁もコイツの姿が見えているんだろうか?
「貴方は仕事で疲れてるだろうし、もう先に帰りなさい。仁には私達がついてるから」と母さん。
「神社の方は?」
「大丈夫、ちゃんと交代を頼んでおいたから俺も今日はこっちに居るよ」
部屋にある丸椅子に座りながら、父さんが言った。
「そうか、わかった。じゃあ、悪いけど俺はこれで。明日また顔出すよ」
「あれ?明日は休みじゃなかった?兄さん」
「ああ。でも心配だしな」
「心配いらないって。兄さんだってわかってるだろ?」
自分に何が起きたのか知っているかの様な仁の口振りに少し驚いたが、弟も少し人とは違う事を思い出し、すぐに納得した。
「ゆっくり休みなよ、ずっと仕事で大変だったんだから」
「わかったよ、そうする。明後日には顔出すから」
「うん、良い子で待ってるよ」
子供みたいな悪戯な笑顔をされちょっと複雑な気分になるも、仁が元気になった事が嬉しくてたまらない。よかった、本当に……本当に。
病室を出て、葛葉と共に廊下を歩く。
『なぁ、仁はその姿のお前でも見えるのか?』
『仁さんは小さい頃からずっと、昴さんと同じ様に色々なモノが見えてますからね』
『え?そうなのか?』
『昴さんみたいに追払う力はないですけどね。その分今回みたいに……ちょっと大変な事もあるみたいですよ』
『知らなかった』
『互いに知らないんじゃないかな。人に言って信じてもらえるものじゃないって思ってるから。見えない人にはいくら言ってもわからないですからね』
『まぁそうだな』
俯いて歩いていると「おはようございます」と声をかけられた。看護師の草壁だ。『またかっ』と思いつつも、きちんと「おはよう」と返す。
「今からお帰りですか?」
「ああ。そっちはこれからか、頑張って」
視線を合わせずそう言い、立ち去ろうとする。
「あ、あの!」
「ん?」
「ありがとうございます、仕事頑張りますね」
ニコニコ笑いながら草壁が言う。俺は何か期待させるような事でも言っただろうか。
「んじゃ、俺はもう眠いから帰るな」
「はい!お疲れ様でした」
ブンブンと手を振り、草壁が俺を見送る。隣を歩く葛葉がひどく不機嫌そうだ。
『怒ってるのか?』
『当たり前です!人の夫に気軽に声をかけるだなんて……しかも、何度も何度も何度もっ』
葛葉がすっかり奥さん気取りだ。まぁ実際形式的にはそうなってしまったんだが、戸籍的には俺はまだ独身な訳で、正直ピンとこない。妻……ねぇ。どう扱っていいのかサッパリだ。
駅前まで歩き、帰路につく。バスを降りた辺りで俺は鞄から首輪を出して「姿出してくれるか?手伝いに来てくれてる人に、お前も一緒に帰宅した所を見せておかないといけないんだ」と言った。
これだけデカイ奴が一緒じゃないとなると、今どこにいるんだと騒がれても面倒だ。ちょっと心配性なんだよな、いつも手伝ってくれてるおばさんは。
葛葉が何度も頷き、周囲に誰も居ないタイミングで姿を出す。タイミングをきちんと心得てくれてるのはありがたい。
首に首輪を付け、鎖を持つ。最近では家を出る時はいつもこうなのでずいぶん慣れてきたつもりでいたんだが——今はコイツが俺の妻(仮)なんだと思うと、複雑な気分になってきた。
いくら狐の姿だとはいえ、自分の妻っぽい者に首輪を付けて鎖でつないでるなんて……一番最初に感じた背徳感に苛まれつつも、何かゾクゾクしたものが走る感じがする。なんだろうか?この感じは。
「おかえりなさい、仁ちゃんの容態はどうなの⁈」
俺達が境内に入るなり、庭先にいた手伝いのおばさんに速攻で捕まった。きっと、ずっと誰かが帰ってくるのをここで待っていたのだろう。心配してくれるのはありがたいんだが、外で待たなくてもいいだろうに。
「大丈夫ですよ、容態は安定してますし。ウチはいい医者が揃っていますからね」
「そうなの?よかったわ本当に!」
ボロボロとおばさんが涙を流し喜ぶ。ハンカチを差し出すと、ちょっとビックリした顔をされた。
「ありがとね、昴ちゃんも優しくなったわねぇ……何かいいことでもあったのかい?」
ハンカチを貸しただけでそう言われる俺の評価とは一体……。しかも、いいことがあると優しくなるというもんでもないと思うが。
「俺夜勤明けで眠いんで、俺はこれで。ハンカチは差し上げますから」
そう言い、返事も聞かずに俺達は家に入って行った。
部屋に入るまで、ずっと葛葉の鎖を外さずに来てしまった。いつもなら玄関で即外し、自分の鞄の中へ入れるんだが、なんとなくそんな気分になれない。
うつ伏せの状態で、ベットに倒れこむように横になる。葛葉がスゥッと姿を変え、人間の状態になり、ベット横に座ってきた。
俺の握る鎖と首輪につながれたままの状態の葛葉。それを横目で見ているうちに、モヤモヤとした気分になってきた。
「添い寝してあげましょうか?」
ニコニコと葛葉が笑う。添い寝……ねぇ。
ゴロッとベットの上で転がって向きを変え、仰向けになると、葛葉が上から顔を覗き込むように俺を見詰める。改めて見ても並みの美人のレベルではない。目の色が左右で違うのも、何故か今ならとても魅力的に見える。白い肌も、銀に近い髪の色も、声にすらも惹きつけられる感じがする。
最初はあんなに嫌いだったんだがなぁ。時間が俺の気持ちを変えたのか、夫婦となる事を受け入れた事で心境が変わったのか——そんな事はもうどうでもいいか。
本当はもう、複雑に考える必要なんてないのかもしれない。葛葉とは契約めいた形ではあったが、結婚した訳だし。
葛葉が俺をどう思っているのは十分わかってる。俺を伴侶として選んできたくらいだ。
じゃあ、俺はどうなんだろうか?少し前とはまた違った心境にある自分の心。だがそれは、愛とか恋とかといった類のモノなんだろうか?
今、容姿を見ていてドキドキとした気持ちを抱えているのは、ただ彼女に欲情しているだけじゃないのか?だったら、これを発散したら……少しは己の心を見ることが出来るんじゃないだろうか?
「……どうしました?さっきから、ずっと黙ったままですけど」
そう言う葛葉の首につながる鎖を引っ張り、自分の方へと近づける。「きゃぁっ」と言いながら倒れる体。寸での所で腕で体を支え、俺にぶつからないよう、葛葉が咄嗟に踏ん張った。
息がかかる位に近い。口付けだって容易く出来そうだ。
「……昴……さん?」
不思議そうな顔でこちらをじっと見てきたので、後頭部に手を回し、唇に口付けてみた。
「んっ……」
甘い声が葛葉から洩れる。あんなにイヤだと思った初めてとは違い、ゾクゾクするような感覚が体に走る。
もっと、もっと近くに——そんな欲求が生まれ、鎖を引き、自分から体をより密着させる。完全に、俺に葛葉が覆い被さる状態になり、彼女が嬉しそうに俺の肩にしがみ付いてきた。
葛葉の腰に手を回して固定すると、ぐるんと体勢を反転させ、俺が上になる。腕で上半身を支え、脚を葛葉の脚の間へ入れ、全身を彼女から離す。
その間、唇はずっと離さずにいた。舌を割り込ませると、それはすんなりと中に入り、葛葉の方から貪欲に舌を絡めてきた。
もう異物感も感じない、そこにあるのは葛葉の柔かいな甘い感触のみだ。自然と互いの息があがり、体温が上がっていくのがわかる。
「……はぁ」
ゆっくりと口を離し、上半身を起こす。
眼鏡を外して、ベットサイドにある棚にそれをのせた。ぼんやりする視界。ハッキリ見えるくらいまで葛葉に近づき、また貪る様に唇を重ねる。
葛葉が俺の首に腕を回し、脚を俺に擦りつけてきた。フサァッとしたふわふわした尻尾が脚にあたる。頭を触ると、耳まで出てきていた。
獣の様な耳を撫でてやると、ピクピクッと動き、何だか可愛い。耳を舐め、穴に舌を入れながら耳の外側は指で撫で上げる。
「んぁっ……アァッ」
頬を染め、葛葉が気持ちよさそうに身を捩る。
「……気持ちいいのか?」
耳元で息がかかるように囁くと「ふぁっ」と大きな声が返ってきた。
「返事になってないだろう?それじゃ」
意地悪い声色で囁く。
「……き、きもちいぃ……です」
震える声で、どうにかこういにか答えたといった感じだ。
「お前は耳が弱いのか?」
「……ぇ?……ぁ……んっ」
ビクッとするばかりで、言葉らしい言葉が出ていない。目が虚ろで、葛葉はもう息も絶え絶えになっている。
耳を弄っていた手を下へと移動させ、鎖骨を指でなぞりつつ、葛葉の白いワンピースに手をかける。だが、どこをどう脱がせていいのかよく構造がわからない。
「……これ、脱げないか?」
「……えっ」と、恥ずかしそうな表情をして、葛葉が顔をそむける。
「頼むよ、お前なら簡単だろう?……それに狐の時は、いつも裸じゃないか」
胸に手をあてた状態で言う。少し手に力を入れただけで、葛葉が背を反らす。
「直接触りたいな……葛葉に」
そう言った瞬間、カァッと一瞬で葛葉の頬が林檎の様に真っ赤になった。
「可愛いなお前は」
朱に染まる頬をペロッと舐める。すると、葛葉がはにかむような笑顔になった。
「……か、かわいい?嬉しいです、やっとこの私も認めてくれるんですね」
「お前が美味しかったら、認めてやるよ」
ニッと笑い、スカートの裾を捲りあげ、太股に触れる。
「昴さんって……意外と卑猥な方だったりします?」
葛葉が口元を手で隠し、照れくさそうな顔で俺を見上げる。
「どうだろうな?こういった欲求は皆無だったから、自分じゃわからない」
くわっと葛葉の目が大きくなる。
「驚いたのか?」
こくこくと、驚きを隠す事なく素直に何度も葛葉が頷く。
「人間嫌いな奴が、どうやって女とやれっていうんだよ」
「そ、そうなんですけど……でも、昴さんなら……かっこいいし……その……」
「お前がもっと早く目が覚めていたら、この歳まで何も無しって事はなかったかもな」
「……それは、どの歳で会っていても、私を好きになってくれたかもって事ですか?」
「さぁな。それはわからん。でもお前は人じゃないし、『好きだ』って言われりゃ、こっちはお前が嫌いでも、欲求不満を解消出来るからと割り切って抱けただろうなとは思うぞ」
「ひ、ひどぃ!」
悲しそうな顔を葛葉がする。少し虐めが過ぎたか。
誤魔化す様に太股を撫で上げながら、頬に口付ける。
「冗談だよ、お前はもう俺の伴侶なんだろう?もっと自信持てよ」
そう言った瞬間、葛葉の尻尾がパタパタと動く感じがする。嬉しいのか、わかりやすい奴だなぁ。
スッと葛葉の着ていたワンピースが消え、下着姿になる。白い上下のそれだけになった姿に、ゴクッと息を呑んだ。
「細いだけだと思ってたんだが、スタイルはよかったんだな」
「あ、改めて言わないで下さいっ。恥ずかしいじゃないですか」
顔を隠し、体を丸めてしまった。尻尾で体を覆い、出来るだけ見えないようにと必死に隠す。
「別に他に誰がいるわけでもないんだ気にするなよ」
「昴さんが見てるのが問題なんですっ」
「俺以外になら平気なのか?」
少しムッとしてしまった。
「そ、そうじゃなく……」
尻尾の付け根が見える。ニッと笑いながらツツツとそこを撫でると「ひゃああぁっ」と叫びながら、葛葉が涙目になった。
「へぇ……やっぱり弱いんだ?」
舌で尻尾の生える部分をペロッと舐めると、益々甲高い声で可愛く鳴く。
「ふあぁぁっ……だめっ……ああっ」
「そんな事言いながら、下着に染みできてるぞ?」
「……ふぇ?」
「ほら……」と言いながら、葛葉の恥部をショーツの上から軽く押す。くちゅっという淫猥な音が聞こえ、奥の方から絶え間なくとろりと蜜が流れ出ているのがわかる。
「やぁぁっ」
恥ずかしそうに葛葉がぎゅっと目を瞑る。
「目を閉じようが事実は隠せないぞ?」
尻尾の付け根を舐めたままそう言い、恥部を指で擦りあげる。その度に卑猥な水音が部屋に響き、俺の体も段々と熱を上げていく。
背広のズボンが窮屈で仕方がない。びくっと葛葉が震える度に鎖がジャラッという音をたてる。その音に興奮し、ゾクリとした。
白いショーツを避けて恥部に少し指を入れ、ゆっくりを奥へ沈めていく。
「あっ!んあああっ」
口を開け、葛葉が仰け反る。四つん這いになり、お尻を突き上げるような状態になりながら、気持ちよさそうに悶えている。
「その体勢はいいな、お前は尻尾があるし。指も入れやすい。なんかイヤラシイな。もっと奥を触って欲しくて、こうしたのか?」
「ちがっ……ぁああああっ」
「嘘言え、ぐちゅぐちゅいってるぞ?ココは」
膝をついて、葛葉の恥部をかき回すように指を入れる。
「これも消してもらえるか?もっとよく見たいんだ」と言いながら、ショーツを軽く引っ張る。
「……は、はずかしいです」
「じゃあ、止めるか?」
必死に葛葉がイヤイヤと顔を横に振る。俺はその姿を見て、罰するように指の動きを止め、一気に引き抜いた。
ビクッとする葛葉の体。
するとすぐにスゥッと下着も消え、すっかり葛葉の体を覆うものは無くなった。
「イイコだな葛葉は。いやらしくてホント可愛いよ」
初めて触る女性の敏感な部分に好奇心が刺激され、楽しくてしょうがなくなってきた。
昼間の明りに卑猥な部分は全てしっかりと見え、指でラインを撫でながらつい観察してしまう。襞の部分を舌で舐め、もう片方の手で外輪を撫でる。俺の動き一つ一つに敏感に反応し、葛葉が鳴いた。
少しプクッとした膨らみがある部分があったので、皮を軽くよけると小さな突起が出てきた。
コレはもしかして……。そう思いながら肉芽を軽く舐める。
「んあああっ!ダメっ……ぃあっ」
嬌声が大きくなり、奥から溢れ出る蜜の量も多くなった感じがする。
「ああ、コレがアレか」
ニヤッと笑い、俺は肉芽を重点的に責めあげる。
引っ切り無しに葛葉から洩れる喘ぎ声。相当気持ちがいいみたいで、葛葉の全身が震え、太股にまで蜜が滴り落ちる。
「随分濡れるんだな、ベットに水溜りができそうな勢いだぞ?」
「いわな……いやぁぁ……」
葛葉が涙目でこちらを見てくる。
その表情にドキッとした。強い衝動が沸き起こる感じがし、改めて自分は今欲情しているんだなと実感させられる。
欲望のままに指の動きを少し早くすると「だめっんああああっ」と叫び、ビクビクッと葛葉が体を痙攣させ、ベットにバタッと倒れこんだ。
「……ぇっ」
指が抜け落ち、葛葉の体がまだピクピクいっている。
そんな姿を見て、俺は頬をかきながら少し考える。獣耳に近づき「イったのか?」と直球で訊くと、葛葉が力無く頷いた。
「……へぇ」
「『へぇ』って何です?」
蕩けた顔のまま、葛葉がゆっくりとこちらを見る。
「狐でも、イクんだなと思って」
「私はただの狐じゃないですもん」
拗ねたような声で言われた。
「悪かったよ。そうだな、ただの狐なら……こんなに胸とかもないしな」
「んあぁっ」
仰向けにさせ、胸に触る。
「こんなに男を誘うような腰もしていなければ——」
腰を撫で、恥部へと手を伸ばす。
「ココだって、こんなふうに濡らしたりもしないよな」
解れきった恥部にゆっくりと指を入れる。
「ぁぁぁんっ!」
「まだ、こんなにグチャグチャいって……俺がそんなに欲しいのか?」
「……ほ、欲しいです」
「淫乱」
「……い、淫乱でもいいから、昴さんと……ひ、一つになりたいですぅ」
ニッと笑い「ダメだ」と言い放つ。
「折角なんだ、もっとじっくり……いたぶってやらないとな」
元来持ち合わせている悪戯心が擽られる。葛葉の全てが俺を魅了し、もっと虐めてやりたい衝動が沸き起こる。
鎖をぐいっと力強く引っ張り、葛葉の上半身を起こさせる。
「んくっ」
首が苦しかったのか、葛葉が短い声をもらした。
「大丈夫だ、もっと気持ちのいい事をするだけさ」
唇にキスをおとし、首輪につながる鎖で葛葉の腕を縛る。
「こんな事しなくても、私は逃げませんよ?」
「コレが嫌なら自分で取ればいいだろう?葛葉には簡単なはずだ」
葛葉が口をへの字にしつつ黙る。
「あはは、お前だってこうされていたいんじゃないか。でも、そうじゃないとな」
トンッと葛葉の体を押して、ベットへと寝かせる。鎖骨を指で撫で、胸の膨らみを舐めると、そのたびに何度も震える葛葉の体。
ぴんっと立つ桜色の乳首を指で摘み、軽く引っ張る。
「やぁぁっ」
体を捩り、葛葉が俺から逃げようとした。
「おい。逃げたらもっとやるぞ?」
ギュッと強めに引っ張り、もう片方の乳首をきつく吸い上げる。
「ァァァァッ」
なんだ、気持ちいいんじゃないか。赤く染まる頬と、うっとりする瞳で簡単にそうだとわかった。
乳首から首筋へと口を移し、赤い花のような跡が残るように強く吸う。初めてつけた跡を満足気にしばらくの間見詰め、そっと舐めあげた。
まるで自分の所有物のような紅い跡。見ているだけでとても心地いい。なんだろうな、この満足感は。
両手を鎖で縛られたままぎこちなく体を軽く起こし、葛葉が俺の首に口を付けてきた。そして彼女も、俺がやったようにきつく吸い、赤い跡を残す。
「……これで浮気はできませんよね」
ニコッと可愛く葛葉が微笑む。
「出来るぞ」
「ええええっ」
予想外の答えだったのか、焦ったような顔で驚いたような声をあげる。
「あはは、しないよ。大丈夫だ……今までだって無理だったんだ、この先だってお前以外は抱けないだろうさ」
人間嫌いだからとかそんな理由だけじゃない。この吸い付くような肌の質感。透明で傷一つないない体と、甘い声。こんな上質な女性はそうそういないだろう。それを今俺は独占し、自由に弄べる。そう思うだけで興奮が更に増し、体を一つにせぬままでいる事が辛くなってきた。このまま入れるのは癪なんだが、これ以上耐えるのは自分が無理そうだ。
葛葉の唇にキスをおとす。
その間にチャックを下げ、はちきれそうなまでに熱く滾る己の怒張を曝す。脚を大きく開かせ、間に入り、それを恥部へ当てがうと、葛葉が軽く背中を反らした。
「まだ俺が欲しいか?」
問いに対し、葛葉が何度も頷く。
「お前は万年発情期みたいだな」
クスクスと笑い、先走りにより濡れる怒張で葛葉の恥部の入り口を焦らすように擦りあげる。
「ちがっ……中にいれ……んあぁぁっ」
「入れなくても気持ちよさそうじゃないか。このままでいてやろうか?」
「んんんっ」
「ほら、こんなにまた溢れてくる。中なんて弄ったら、また簡単にイクんじゃないのか?」
滾るモノを下へとずらし、もっと意地悪をしてやろうと、わざと双丘に潜む蕾にあてがった。
「ちがっ!そっちはいやぁぁぁっ」
本気で俺が後ろに入れようとしているのだと思ったのか、葛葉が嫌がって暴れようとする。その弾みで、一気にズブッと葛葉の恥部へ怒張が挿入されてしまった。
「うあっ!」
予想外の刺激に戸惑い、大きな声が出る。
「あああああんっ。いぃ……気持ち……いっ」
あられもない声をあげ、喜ぶ葛葉。
「そんなにいいなら自分で動けよ」
葛葉の腕を引っ張り、俺の上へ跨る様に座らせる。更に深く奥に挿入され、気持ちよさに葛葉が喘いだ。
「も、もうちょっとお前は手加減できないのか?」
きつく締め上げてくる膣の刺激に、耐えるのがキツイ。繋がるという行為が、ここまで気持ちのいいものだとは正直微塵も思っていなかった。
何度も貪欲に求め合う奴等がいるのが、少しわかった気がする。性的行為に溺れるなんて動物以下だとまで思い、卑下していたんだが……この感触に自分までもが溺れてしまそうだ。
ずくずくと音をたてながら、葛葉が嬉しそうに腰を振る。
「あっ……んあっ……んんっ」
その姿を見ているだけで達してしまいそうなくらいに、もう限界まできていた。
目をギュッと瞑り、刺激から気をそらせようと何度もするも、耳から入る喘ぎ声はどうにもできない。それを止めさせようと唇で葛葉の口を塞ぐが、今度は舌の感触が気持ちよ過ぎる。
自然に胸に手が伸び、動き揺れるそれを丁寧に揉む。自分からも腰を動かし、葛葉がもっと喜ぶようにと刺激を与える。
「もっ……とっ……欲しいです。……昴さ……ん」
懇願し、葛葉がギュッと俺に抱きつく。
「もっと、か……」
きついな、正直。初めての男に酷な要求をするもんだ、コイツはまったく。
動く葛葉の体を持ち上げ、恥部から怒張を引き抜く。
「いやぁぁっ」
突然無くなった刺激に、葛葉が戸惑いの声をあげた。
「な、なんで?」
目を潤ませ、縋るような瞳で俺を見詰める。
「もっと欲しいんだろう?」
葛葉をうつ伏せにさせ、腰を持ち上げる。そして、俺は一気に蜜で濡れそぼる恥部の中へと怒張を穿った。肌のぶつかる音と、卑猥な水音が部屋中に響く。
「ああああっ!……昴さ…んっあ!」
「こっちの方が、お前にはしっくりくるんじゃないのか?」
ずくっ……グチュッ……と、耳奥に響く音にすら感じてしまう。
「もう……だめぇ……ああああっ」
ギュギュッとそもそも狭隘な膣内がより狭くなり、俺の怒張を強く抱き締める。
「ぅ……くっ!」
びくびくと痙攣する葛葉の体の動きに合わせ、自分も欲望を最奥へと押し込む。俺達は異種族なんだ、子の心配も無いだろうと思い、白濁とした欲望の全てを中へ吐き出した。
「はあはあはあ……」
息を切らせ、葛葉の恥部から怒張を引き抜く。初めての快楽に、体の余韻がすぐには消えなかった。
ベットの上でへたりと座り込むと、葛葉が気だるげな体を引きずりなが、側へと寄ってきた。
「昴さん……大好きですよ」
葛葉が照れ臭そうにニコッと笑う。その笑顔のまま、果てたばかりのイチモツを口に含んできた。
「ばか!何やってんだお前はっ」
柔かく温かい口内。クネクネと動き、舐めてくる舌がまるで違う生き物のようだ。膣とはまた違う気持ち良さがある。唾を多く絡め、吸い付いたり、舐めたりするもんだから、果てたばかりだというのにまたすぐに勃起しだしてしまった。
「ま、まさか、まだ欲しいのか?」
「えぇ。だって、もっと昴さんを感じたいんですもん」
俺が夜勤明けだって、コイツ忘れてるんじゃ?
「大丈夫、何度だって元気にさせてあげれますから。私そういう技も身につけていますので」
俺をベットへと寝かせ、微笑みながら葛葉がが跨り、自らの恥部に怒張をあてがう。
「そういう問題じゃなく……うぁっ」
ずぶっ……——と、俺の言葉も聞かず腰を下げ、ゆっくりと膣内へと入れていく。
「ああああっ!き……きもちぃぃ」
葛葉の嬉しそうな顔と歓喜の声を聞き、己の怒張が更に硬さを増す。少し呆れるも、気持ちよさに抗えず、もっと……もっと……と自分も腰を動かし快楽を求める。
「好き……すき……昴さ……ん」
「ああ、わかってるよ」
何度も何度も腰を動かしながら、葛葉が言う。
「でも、好きなのは俺じゃないくて、コレなんじゃないのか?」
腰を掴み、奥深くへと突き上げる。
「ああああっ!」
びくびくと全身が痙攣し、葛葉がまた果てる。
「簡単にイクんだな」
「……こ、昴さんの……きもちいぃから」
男冥利に尽きる発言をされ、俺までつい張り切ってしまいそうだ。
——互いの欲望が満たされるまで続くかのように思われた、獣の交尾の様な行為。だがそれは、葛葉の「……お腹が空きました」の一言で終わりを告げ、俺は大声で笑い出してしまった。
「んな格好で、色気の無い事を急に言うなよ」
「だ、だって……」
「葛葉は、人間の精気を吸って腹を満たしたりはしないのか?」
「伴侶からはしませんよ、ずっと一緒にいたいですからね」
そう言って、葛葉が優しく微笑む。
「そうか。……でも、他の奴からも吸うなよ?こういった事は……その……」
「しませんよ。ううん、できないかな。大好きな相手でないと、もう出来ない」
葛葉がギュッと強く抱きつく。
「だからいつか、……好きだって、昴さんも言って下さいね?」
「……まぁ、気が向けば、いつか……な」
葛葉が夕飯を作る間、少しでも寝ておこうとベットに横になる。体は疲れているはずなのに、全く眠れない。
色々な事が変わってしまった。半年前に会ったばかりの女の伴侶になったり、その女が実は子供の頃に飼っていたはくおうと同一のモノだったりと、素直には信じられない事ばかりだ。
でも、全てが真実だ。
この瞳の変化も、まだ体に微かに残る余韻も、全てが本当にあった事だと嫌でもわからせてくる。
これで本当によかったんだろうか?
人ではないモノを妻に持ち、俺はこの先葛葉とどう向き合えばいいんだろうか。
「ご飯できましたよ!さぁ一緒に食べましょう?」
眠れぬ頭で色々考えていると、可愛い笑顔を振りまきながら俺の事を部屋まで呼びに来て、葛葉がベットで寝ていた俺に犬のようにじゃれついてきた。
近い距離で見詰め合い、どちからともなく交わすキス。
「さて、どうするかな」
「何がですか?」
「……いや、なんでもない」
答えの出せていない疑問は胸の奥にしまいしまい込み、口にはしなかった。
葛葉の頭をよしよしと撫で、一緒にベットから降り居間に向う。
「俺より先に死ぬなよ?」
「私は大丈夫ですよ。昴さんは……長生きして下さいね」
「じゃあ長生きできるようなもの食わせてくれな」
「任せて下さい!いっぱい健康メニューをコピーしてきますから!」
尻尾を振りながら歩く葛葉が可愛くて、このままずっと続くであろうコイツとの生活に期待が湧いてくる。今までの、失う辛さに縛られただけの人生とは違う生き方が出来るかもしれない。
生きていこう、死ぬ事のない妻と共に。
『お前が好きだ』という言葉は、俺が死ぬ時にでも言ってやろうか。
【終わり】
「悪い、いきなり抜けて」と言いながら部屋に入ると葛葉と一緒にお茶を飲んで座っていた。
「宮川先生、おかえりなさい」
……コイツはいったい何を。
二人の様子を見て、顔が青ざめ少しイラッとした。
「この子から今さっき聞いたよ、弟さん無事だったみたいでよかったな」
「……え、まぁ」
返事が投げやりになる。
『何でお前は姿を出したままでいるんだ⁈』
口に出さずとも、意思疎通が出来るからと渡された首にかかるネックレスを触りながら考える。
『ご、ごめんなさい。急いで戻ったらまだ昴さんが居なくて……姿をまだ消していなかったもんだから捕まっちゃって』
『アホ!あれほど絶対に姿見せるなと言ったのに』
『力を使ったばかりだったから、……治療中だったので、怪しまれない様ゆっくりやるので随分消費しちゃって』
そうだった、葛葉は今まで全力で仁を救おうとしてくれたのに。文句なんかを言う立場じゃ無いのに、俺はいったい何をやってるんだ。
「いやーしかし、こんな美人の看護士いたか?」
同僚の言葉に、体がビクッと震えた。
「……いただろ、覚えてないか?」
上手い嘘が出ず、適当な事を言ってしまった。k
「あー……すまん、サッパリわからん」
「科が違いますからね。あ、私ももう戻らないと!では失礼します」
逃げねばならぬ空気を察し、葛葉が焦りを隠さぬまま声をあげ、そそくさと退散していく。
「ああ。お疲れ様!」
返事をした俺も不自然さ全開で、自分が情けなく思える。だが、精神的疲労があるせいか、もう色々面倒くさい。
タタタッと葛葉が廊下を駆けて行く。廊下を曲がり姿が一度見えなくなったが、すぐに体を透明化した狐の状態で戻って来た。首が項垂れ、誰がどうみても申し訳なさそうな顔をしている。
「いやーさっきの子すごい美人だったな、眠気なんか一気に飛んだよ」
「そ、そうだな」
話を合わせただけの俺の言葉を額面通りに受け取ったのか、葛葉が照れくさそうに両手で目元を隠していた。
夜が明け、交代の医師が出勤してくる。引継ぎをして帰ろうとしたが、仁の容体が気になったので俺は帰宅前に一度弟の病室に寄って行く事にした。当然の様な顔で、一緒に葛葉もついて来る。
コンコンと病室のドアをノックすると「どうぞ」と母さんの明るい声が返ってきた。引き戸を開け、中に入る。
「兄さん!」
起きていた仁と目が合うと、元気そうに笑っていた。
「——怪我なんかするな!何やってんだ!」
「だ、第一声がそれって……冷たいなぁ」
仁にギョッとした顔をされたが、文句を言いたくってしょうがない。
「お前のおかげで色々あったんだよ」
俺がそう言うと、仁の視線が明らかに脚元に居る葛葉の方へ移った。
「へぇーでも、災い転じてなんとやら……だったんじゃないの?」
「んなっ!」
コイツはどこまでわかってるんだ⁈
視線が葛葉の方へいったって事は、仁もコイツの姿が見えているんだろうか?
「貴方は仕事で疲れてるだろうし、もう先に帰りなさい。仁には私達がついてるから」と母さん。
「神社の方は?」
「大丈夫、ちゃんと交代を頼んでおいたから俺も今日はこっちに居るよ」
部屋にある丸椅子に座りながら、父さんが言った。
「そうか、わかった。じゃあ、悪いけど俺はこれで。明日また顔出すよ」
「あれ?明日は休みじゃなかった?兄さん」
「ああ。でも心配だしな」
「心配いらないって。兄さんだってわかってるだろ?」
自分に何が起きたのか知っているかの様な仁の口振りに少し驚いたが、弟も少し人とは違う事を思い出し、すぐに納得した。
「ゆっくり休みなよ、ずっと仕事で大変だったんだから」
「わかったよ、そうする。明後日には顔出すから」
「うん、良い子で待ってるよ」
子供みたいな悪戯な笑顔をされちょっと複雑な気分になるも、仁が元気になった事が嬉しくてたまらない。よかった、本当に……本当に。
病室を出て、葛葉と共に廊下を歩く。
『なぁ、仁はその姿のお前でも見えるのか?』
『仁さんは小さい頃からずっと、昴さんと同じ様に色々なモノが見えてますからね』
『え?そうなのか?』
『昴さんみたいに追払う力はないですけどね。その分今回みたいに……ちょっと大変な事もあるみたいですよ』
『知らなかった』
『互いに知らないんじゃないかな。人に言って信じてもらえるものじゃないって思ってるから。見えない人にはいくら言ってもわからないですからね』
『まぁそうだな』
俯いて歩いていると「おはようございます」と声をかけられた。看護師の草壁だ。『またかっ』と思いつつも、きちんと「おはよう」と返す。
「今からお帰りですか?」
「ああ。そっちはこれからか、頑張って」
視線を合わせずそう言い、立ち去ろうとする。
「あ、あの!」
「ん?」
「ありがとうございます、仕事頑張りますね」
ニコニコ笑いながら草壁が言う。俺は何か期待させるような事でも言っただろうか。
「んじゃ、俺はもう眠いから帰るな」
「はい!お疲れ様でした」
ブンブンと手を振り、草壁が俺を見送る。隣を歩く葛葉がひどく不機嫌そうだ。
『怒ってるのか?』
『当たり前です!人の夫に気軽に声をかけるだなんて……しかも、何度も何度も何度もっ』
葛葉がすっかり奥さん気取りだ。まぁ実際形式的にはそうなってしまったんだが、戸籍的には俺はまだ独身な訳で、正直ピンとこない。妻……ねぇ。どう扱っていいのかサッパリだ。
駅前まで歩き、帰路につく。バスを降りた辺りで俺は鞄から首輪を出して「姿出してくれるか?手伝いに来てくれてる人に、お前も一緒に帰宅した所を見せておかないといけないんだ」と言った。
これだけデカイ奴が一緒じゃないとなると、今どこにいるんだと騒がれても面倒だ。ちょっと心配性なんだよな、いつも手伝ってくれてるおばさんは。
葛葉が何度も頷き、周囲に誰も居ないタイミングで姿を出す。タイミングをきちんと心得てくれてるのはありがたい。
首に首輪を付け、鎖を持つ。最近では家を出る時はいつもこうなのでずいぶん慣れてきたつもりでいたんだが——今はコイツが俺の妻(仮)なんだと思うと、複雑な気分になってきた。
いくら狐の姿だとはいえ、自分の妻っぽい者に首輪を付けて鎖でつないでるなんて……一番最初に感じた背徳感に苛まれつつも、何かゾクゾクしたものが走る感じがする。なんだろうか?この感じは。
「おかえりなさい、仁ちゃんの容態はどうなの⁈」
俺達が境内に入るなり、庭先にいた手伝いのおばさんに速攻で捕まった。きっと、ずっと誰かが帰ってくるのをここで待っていたのだろう。心配してくれるのはありがたいんだが、外で待たなくてもいいだろうに。
「大丈夫ですよ、容態は安定してますし。ウチはいい医者が揃っていますからね」
「そうなの?よかったわ本当に!」
ボロボロとおばさんが涙を流し喜ぶ。ハンカチを差し出すと、ちょっとビックリした顔をされた。
「ありがとね、昴ちゃんも優しくなったわねぇ……何かいいことでもあったのかい?」
ハンカチを貸しただけでそう言われる俺の評価とは一体……。しかも、いいことがあると優しくなるというもんでもないと思うが。
「俺夜勤明けで眠いんで、俺はこれで。ハンカチは差し上げますから」
そう言い、返事も聞かずに俺達は家に入って行った。
部屋に入るまで、ずっと葛葉の鎖を外さずに来てしまった。いつもなら玄関で即外し、自分の鞄の中へ入れるんだが、なんとなくそんな気分になれない。
うつ伏せの状態で、ベットに倒れこむように横になる。葛葉がスゥッと姿を変え、人間の状態になり、ベット横に座ってきた。
俺の握る鎖と首輪につながれたままの状態の葛葉。それを横目で見ているうちに、モヤモヤとした気分になってきた。
「添い寝してあげましょうか?」
ニコニコと葛葉が笑う。添い寝……ねぇ。
ゴロッとベットの上で転がって向きを変え、仰向けになると、葛葉が上から顔を覗き込むように俺を見詰める。改めて見ても並みの美人のレベルではない。目の色が左右で違うのも、何故か今ならとても魅力的に見える。白い肌も、銀に近い髪の色も、声にすらも惹きつけられる感じがする。
最初はあんなに嫌いだったんだがなぁ。時間が俺の気持ちを変えたのか、夫婦となる事を受け入れた事で心境が変わったのか——そんな事はもうどうでもいいか。
本当はもう、複雑に考える必要なんてないのかもしれない。葛葉とは契約めいた形ではあったが、結婚した訳だし。
葛葉が俺をどう思っているのは十分わかってる。俺を伴侶として選んできたくらいだ。
じゃあ、俺はどうなんだろうか?少し前とはまた違った心境にある自分の心。だがそれは、愛とか恋とかといった類のモノなんだろうか?
今、容姿を見ていてドキドキとした気持ちを抱えているのは、ただ彼女に欲情しているだけじゃないのか?だったら、これを発散したら……少しは己の心を見ることが出来るんじゃないだろうか?
「……どうしました?さっきから、ずっと黙ったままですけど」
そう言う葛葉の首につながる鎖を引っ張り、自分の方へと近づける。「きゃぁっ」と言いながら倒れる体。寸での所で腕で体を支え、俺にぶつからないよう、葛葉が咄嗟に踏ん張った。
息がかかる位に近い。口付けだって容易く出来そうだ。
「……昴……さん?」
不思議そうな顔でこちらをじっと見てきたので、後頭部に手を回し、唇に口付けてみた。
「んっ……」
甘い声が葛葉から洩れる。あんなにイヤだと思った初めてとは違い、ゾクゾクするような感覚が体に走る。
もっと、もっと近くに——そんな欲求が生まれ、鎖を引き、自分から体をより密着させる。完全に、俺に葛葉が覆い被さる状態になり、彼女が嬉しそうに俺の肩にしがみ付いてきた。
葛葉の腰に手を回して固定すると、ぐるんと体勢を反転させ、俺が上になる。腕で上半身を支え、脚を葛葉の脚の間へ入れ、全身を彼女から離す。
その間、唇はずっと離さずにいた。舌を割り込ませると、それはすんなりと中に入り、葛葉の方から貪欲に舌を絡めてきた。
もう異物感も感じない、そこにあるのは葛葉の柔かいな甘い感触のみだ。自然と互いの息があがり、体温が上がっていくのがわかる。
「……はぁ」
ゆっくりと口を離し、上半身を起こす。
眼鏡を外して、ベットサイドにある棚にそれをのせた。ぼんやりする視界。ハッキリ見えるくらいまで葛葉に近づき、また貪る様に唇を重ねる。
葛葉が俺の首に腕を回し、脚を俺に擦りつけてきた。フサァッとしたふわふわした尻尾が脚にあたる。頭を触ると、耳まで出てきていた。
獣の様な耳を撫でてやると、ピクピクッと動き、何だか可愛い。耳を舐め、穴に舌を入れながら耳の外側は指で撫で上げる。
「んぁっ……アァッ」
頬を染め、葛葉が気持ちよさそうに身を捩る。
「……気持ちいいのか?」
耳元で息がかかるように囁くと「ふぁっ」と大きな声が返ってきた。
「返事になってないだろう?それじゃ」
意地悪い声色で囁く。
「……き、きもちいぃ……です」
震える声で、どうにかこういにか答えたといった感じだ。
「お前は耳が弱いのか?」
「……ぇ?……ぁ……んっ」
ビクッとするばかりで、言葉らしい言葉が出ていない。目が虚ろで、葛葉はもう息も絶え絶えになっている。
耳を弄っていた手を下へと移動させ、鎖骨を指でなぞりつつ、葛葉の白いワンピースに手をかける。だが、どこをどう脱がせていいのかよく構造がわからない。
「……これ、脱げないか?」
「……えっ」と、恥ずかしそうな表情をして、葛葉が顔をそむける。
「頼むよ、お前なら簡単だろう?……それに狐の時は、いつも裸じゃないか」
胸に手をあてた状態で言う。少し手に力を入れただけで、葛葉が背を反らす。
「直接触りたいな……葛葉に」
そう言った瞬間、カァッと一瞬で葛葉の頬が林檎の様に真っ赤になった。
「可愛いなお前は」
朱に染まる頬をペロッと舐める。すると、葛葉がはにかむような笑顔になった。
「……か、かわいい?嬉しいです、やっとこの私も認めてくれるんですね」
「お前が美味しかったら、認めてやるよ」
ニッと笑い、スカートの裾を捲りあげ、太股に触れる。
「昴さんって……意外と卑猥な方だったりします?」
葛葉が口元を手で隠し、照れくさそうな顔で俺を見上げる。
「どうだろうな?こういった欲求は皆無だったから、自分じゃわからない」
くわっと葛葉の目が大きくなる。
「驚いたのか?」
こくこくと、驚きを隠す事なく素直に何度も葛葉が頷く。
「人間嫌いな奴が、どうやって女とやれっていうんだよ」
「そ、そうなんですけど……でも、昴さんなら……かっこいいし……その……」
「お前がもっと早く目が覚めていたら、この歳まで何も無しって事はなかったかもな」
「……それは、どの歳で会っていても、私を好きになってくれたかもって事ですか?」
「さぁな。それはわからん。でもお前は人じゃないし、『好きだ』って言われりゃ、こっちはお前が嫌いでも、欲求不満を解消出来るからと割り切って抱けただろうなとは思うぞ」
「ひ、ひどぃ!」
悲しそうな顔を葛葉がする。少し虐めが過ぎたか。
誤魔化す様に太股を撫で上げながら、頬に口付ける。
「冗談だよ、お前はもう俺の伴侶なんだろう?もっと自信持てよ」
そう言った瞬間、葛葉の尻尾がパタパタと動く感じがする。嬉しいのか、わかりやすい奴だなぁ。
スッと葛葉の着ていたワンピースが消え、下着姿になる。白い上下のそれだけになった姿に、ゴクッと息を呑んだ。
「細いだけだと思ってたんだが、スタイルはよかったんだな」
「あ、改めて言わないで下さいっ。恥ずかしいじゃないですか」
顔を隠し、体を丸めてしまった。尻尾で体を覆い、出来るだけ見えないようにと必死に隠す。
「別に他に誰がいるわけでもないんだ気にするなよ」
「昴さんが見てるのが問題なんですっ」
「俺以外になら平気なのか?」
少しムッとしてしまった。
「そ、そうじゃなく……」
尻尾の付け根が見える。ニッと笑いながらツツツとそこを撫でると「ひゃああぁっ」と叫びながら、葛葉が涙目になった。
「へぇ……やっぱり弱いんだ?」
舌で尻尾の生える部分をペロッと舐めると、益々甲高い声で可愛く鳴く。
「ふあぁぁっ……だめっ……ああっ」
「そんな事言いながら、下着に染みできてるぞ?」
「……ふぇ?」
「ほら……」と言いながら、葛葉の恥部をショーツの上から軽く押す。くちゅっという淫猥な音が聞こえ、奥の方から絶え間なくとろりと蜜が流れ出ているのがわかる。
「やぁぁっ」
恥ずかしそうに葛葉がぎゅっと目を瞑る。
「目を閉じようが事実は隠せないぞ?」
尻尾の付け根を舐めたままそう言い、恥部を指で擦りあげる。その度に卑猥な水音が部屋に響き、俺の体も段々と熱を上げていく。
背広のズボンが窮屈で仕方がない。びくっと葛葉が震える度に鎖がジャラッという音をたてる。その音に興奮し、ゾクリとした。
白いショーツを避けて恥部に少し指を入れ、ゆっくりを奥へ沈めていく。
「あっ!んあああっ」
口を開け、葛葉が仰け反る。四つん這いになり、お尻を突き上げるような状態になりながら、気持ちよさそうに悶えている。
「その体勢はいいな、お前は尻尾があるし。指も入れやすい。なんかイヤラシイな。もっと奥を触って欲しくて、こうしたのか?」
「ちがっ……ぁああああっ」
「嘘言え、ぐちゅぐちゅいってるぞ?ココは」
膝をついて、葛葉の恥部をかき回すように指を入れる。
「これも消してもらえるか?もっとよく見たいんだ」と言いながら、ショーツを軽く引っ張る。
「……は、はずかしいです」
「じゃあ、止めるか?」
必死に葛葉がイヤイヤと顔を横に振る。俺はその姿を見て、罰するように指の動きを止め、一気に引き抜いた。
ビクッとする葛葉の体。
するとすぐにスゥッと下着も消え、すっかり葛葉の体を覆うものは無くなった。
「イイコだな葛葉は。いやらしくてホント可愛いよ」
初めて触る女性の敏感な部分に好奇心が刺激され、楽しくてしょうがなくなってきた。
昼間の明りに卑猥な部分は全てしっかりと見え、指でラインを撫でながらつい観察してしまう。襞の部分を舌で舐め、もう片方の手で外輪を撫でる。俺の動き一つ一つに敏感に反応し、葛葉が鳴いた。
少しプクッとした膨らみがある部分があったので、皮を軽くよけると小さな突起が出てきた。
コレはもしかして……。そう思いながら肉芽を軽く舐める。
「んあああっ!ダメっ……ぃあっ」
嬌声が大きくなり、奥から溢れ出る蜜の量も多くなった感じがする。
「ああ、コレがアレか」
ニヤッと笑い、俺は肉芽を重点的に責めあげる。
引っ切り無しに葛葉から洩れる喘ぎ声。相当気持ちがいいみたいで、葛葉の全身が震え、太股にまで蜜が滴り落ちる。
「随分濡れるんだな、ベットに水溜りができそうな勢いだぞ?」
「いわな……いやぁぁ……」
葛葉が涙目でこちらを見てくる。
その表情にドキッとした。強い衝動が沸き起こる感じがし、改めて自分は今欲情しているんだなと実感させられる。
欲望のままに指の動きを少し早くすると「だめっんああああっ」と叫び、ビクビクッと葛葉が体を痙攣させ、ベットにバタッと倒れこんだ。
「……ぇっ」
指が抜け落ち、葛葉の体がまだピクピクいっている。
そんな姿を見て、俺は頬をかきながら少し考える。獣耳に近づき「イったのか?」と直球で訊くと、葛葉が力無く頷いた。
「……へぇ」
「『へぇ』って何です?」
蕩けた顔のまま、葛葉がゆっくりとこちらを見る。
「狐でも、イクんだなと思って」
「私はただの狐じゃないですもん」
拗ねたような声で言われた。
「悪かったよ。そうだな、ただの狐なら……こんなに胸とかもないしな」
「んあぁっ」
仰向けにさせ、胸に触る。
「こんなに男を誘うような腰もしていなければ——」
腰を撫で、恥部へと手を伸ばす。
「ココだって、こんなふうに濡らしたりもしないよな」
解れきった恥部にゆっくりと指を入れる。
「ぁぁぁんっ!」
「まだ、こんなにグチャグチャいって……俺がそんなに欲しいのか?」
「……ほ、欲しいです」
「淫乱」
「……い、淫乱でもいいから、昴さんと……ひ、一つになりたいですぅ」
ニッと笑い「ダメだ」と言い放つ。
「折角なんだ、もっとじっくり……いたぶってやらないとな」
元来持ち合わせている悪戯心が擽られる。葛葉の全てが俺を魅了し、もっと虐めてやりたい衝動が沸き起こる。
鎖をぐいっと力強く引っ張り、葛葉の上半身を起こさせる。
「んくっ」
首が苦しかったのか、葛葉が短い声をもらした。
「大丈夫だ、もっと気持ちのいい事をするだけさ」
唇にキスをおとし、首輪につながる鎖で葛葉の腕を縛る。
「こんな事しなくても、私は逃げませんよ?」
「コレが嫌なら自分で取ればいいだろう?葛葉には簡単なはずだ」
葛葉が口をへの字にしつつ黙る。
「あはは、お前だってこうされていたいんじゃないか。でも、そうじゃないとな」
トンッと葛葉の体を押して、ベットへと寝かせる。鎖骨を指で撫で、胸の膨らみを舐めると、そのたびに何度も震える葛葉の体。
ぴんっと立つ桜色の乳首を指で摘み、軽く引っ張る。
「やぁぁっ」
体を捩り、葛葉が俺から逃げようとした。
「おい。逃げたらもっとやるぞ?」
ギュッと強めに引っ張り、もう片方の乳首をきつく吸い上げる。
「ァァァァッ」
なんだ、気持ちいいんじゃないか。赤く染まる頬と、うっとりする瞳で簡単にそうだとわかった。
乳首から首筋へと口を移し、赤い花のような跡が残るように強く吸う。初めてつけた跡を満足気にしばらくの間見詰め、そっと舐めあげた。
まるで自分の所有物のような紅い跡。見ているだけでとても心地いい。なんだろうな、この満足感は。
両手を鎖で縛られたままぎこちなく体を軽く起こし、葛葉が俺の首に口を付けてきた。そして彼女も、俺がやったようにきつく吸い、赤い跡を残す。
「……これで浮気はできませんよね」
ニコッと可愛く葛葉が微笑む。
「出来るぞ」
「ええええっ」
予想外の答えだったのか、焦ったような顔で驚いたような声をあげる。
「あはは、しないよ。大丈夫だ……今までだって無理だったんだ、この先だってお前以外は抱けないだろうさ」
人間嫌いだからとかそんな理由だけじゃない。この吸い付くような肌の質感。透明で傷一つないない体と、甘い声。こんな上質な女性はそうそういないだろう。それを今俺は独占し、自由に弄べる。そう思うだけで興奮が更に増し、体を一つにせぬままでいる事が辛くなってきた。このまま入れるのは癪なんだが、これ以上耐えるのは自分が無理そうだ。
葛葉の唇にキスをおとす。
その間にチャックを下げ、はちきれそうなまでに熱く滾る己の怒張を曝す。脚を大きく開かせ、間に入り、それを恥部へ当てがうと、葛葉が軽く背中を反らした。
「まだ俺が欲しいか?」
問いに対し、葛葉が何度も頷く。
「お前は万年発情期みたいだな」
クスクスと笑い、先走りにより濡れる怒張で葛葉の恥部の入り口を焦らすように擦りあげる。
「ちがっ……中にいれ……んあぁぁっ」
「入れなくても気持ちよさそうじゃないか。このままでいてやろうか?」
「んんんっ」
「ほら、こんなにまた溢れてくる。中なんて弄ったら、また簡単にイクんじゃないのか?」
滾るモノを下へとずらし、もっと意地悪をしてやろうと、わざと双丘に潜む蕾にあてがった。
「ちがっ!そっちはいやぁぁぁっ」
本気で俺が後ろに入れようとしているのだと思ったのか、葛葉が嫌がって暴れようとする。その弾みで、一気にズブッと葛葉の恥部へ怒張が挿入されてしまった。
「うあっ!」
予想外の刺激に戸惑い、大きな声が出る。
「あああああんっ。いぃ……気持ち……いっ」
あられもない声をあげ、喜ぶ葛葉。
「そんなにいいなら自分で動けよ」
葛葉の腕を引っ張り、俺の上へ跨る様に座らせる。更に深く奥に挿入され、気持ちよさに葛葉が喘いだ。
「も、もうちょっとお前は手加減できないのか?」
きつく締め上げてくる膣の刺激に、耐えるのがキツイ。繋がるという行為が、ここまで気持ちのいいものだとは正直微塵も思っていなかった。
何度も貪欲に求め合う奴等がいるのが、少しわかった気がする。性的行為に溺れるなんて動物以下だとまで思い、卑下していたんだが……この感触に自分までもが溺れてしまそうだ。
ずくずくと音をたてながら、葛葉が嬉しそうに腰を振る。
「あっ……んあっ……んんっ」
その姿を見ているだけで達してしまいそうなくらいに、もう限界まできていた。
目をギュッと瞑り、刺激から気をそらせようと何度もするも、耳から入る喘ぎ声はどうにもできない。それを止めさせようと唇で葛葉の口を塞ぐが、今度は舌の感触が気持ちよ過ぎる。
自然に胸に手が伸び、動き揺れるそれを丁寧に揉む。自分からも腰を動かし、葛葉がもっと喜ぶようにと刺激を与える。
「もっ……とっ……欲しいです。……昴さ……ん」
懇願し、葛葉がギュッと俺に抱きつく。
「もっと、か……」
きついな、正直。初めての男に酷な要求をするもんだ、コイツはまったく。
動く葛葉の体を持ち上げ、恥部から怒張を引き抜く。
「いやぁぁっ」
突然無くなった刺激に、葛葉が戸惑いの声をあげた。
「な、なんで?」
目を潤ませ、縋るような瞳で俺を見詰める。
「もっと欲しいんだろう?」
葛葉をうつ伏せにさせ、腰を持ち上げる。そして、俺は一気に蜜で濡れそぼる恥部の中へと怒張を穿った。肌のぶつかる音と、卑猥な水音が部屋中に響く。
「ああああっ!……昴さ…んっあ!」
「こっちの方が、お前にはしっくりくるんじゃないのか?」
ずくっ……グチュッ……と、耳奥に響く音にすら感じてしまう。
「もう……だめぇ……ああああっ」
ギュギュッとそもそも狭隘な膣内がより狭くなり、俺の怒張を強く抱き締める。
「ぅ……くっ!」
びくびくと痙攣する葛葉の体の動きに合わせ、自分も欲望を最奥へと押し込む。俺達は異種族なんだ、子の心配も無いだろうと思い、白濁とした欲望の全てを中へ吐き出した。
「はあはあはあ……」
息を切らせ、葛葉の恥部から怒張を引き抜く。初めての快楽に、体の余韻がすぐには消えなかった。
ベットの上でへたりと座り込むと、葛葉が気だるげな体を引きずりなが、側へと寄ってきた。
「昴さん……大好きですよ」
葛葉が照れ臭そうにニコッと笑う。その笑顔のまま、果てたばかりのイチモツを口に含んできた。
「ばか!何やってんだお前はっ」
柔かく温かい口内。クネクネと動き、舐めてくる舌がまるで違う生き物のようだ。膣とはまた違う気持ち良さがある。唾を多く絡め、吸い付いたり、舐めたりするもんだから、果てたばかりだというのにまたすぐに勃起しだしてしまった。
「ま、まさか、まだ欲しいのか?」
「えぇ。だって、もっと昴さんを感じたいんですもん」
俺が夜勤明けだって、コイツ忘れてるんじゃ?
「大丈夫、何度だって元気にさせてあげれますから。私そういう技も身につけていますので」
俺をベットへと寝かせ、微笑みながら葛葉がが跨り、自らの恥部に怒張をあてがう。
「そういう問題じゃなく……うぁっ」
ずぶっ……——と、俺の言葉も聞かず腰を下げ、ゆっくりと膣内へと入れていく。
「ああああっ!き……きもちぃぃ」
葛葉の嬉しそうな顔と歓喜の声を聞き、己の怒張が更に硬さを増す。少し呆れるも、気持ちよさに抗えず、もっと……もっと……と自分も腰を動かし快楽を求める。
「好き……すき……昴さ……ん」
「ああ、わかってるよ」
何度も何度も腰を動かしながら、葛葉が言う。
「でも、好きなのは俺じゃないくて、コレなんじゃないのか?」
腰を掴み、奥深くへと突き上げる。
「ああああっ!」
びくびくと全身が痙攣し、葛葉がまた果てる。
「簡単にイクんだな」
「……こ、昴さんの……きもちいぃから」
男冥利に尽きる発言をされ、俺までつい張り切ってしまいそうだ。
——互いの欲望が満たされるまで続くかのように思われた、獣の交尾の様な行為。だがそれは、葛葉の「……お腹が空きました」の一言で終わりを告げ、俺は大声で笑い出してしまった。
「んな格好で、色気の無い事を急に言うなよ」
「だ、だって……」
「葛葉は、人間の精気を吸って腹を満たしたりはしないのか?」
「伴侶からはしませんよ、ずっと一緒にいたいですからね」
そう言って、葛葉が優しく微笑む。
「そうか。……でも、他の奴からも吸うなよ?こういった事は……その……」
「しませんよ。ううん、できないかな。大好きな相手でないと、もう出来ない」
葛葉がギュッと強く抱きつく。
「だからいつか、……好きだって、昴さんも言って下さいね?」
「……まぁ、気が向けば、いつか……な」
葛葉が夕飯を作る間、少しでも寝ておこうとベットに横になる。体は疲れているはずなのに、全く眠れない。
色々な事が変わってしまった。半年前に会ったばかりの女の伴侶になったり、その女が実は子供の頃に飼っていたはくおうと同一のモノだったりと、素直には信じられない事ばかりだ。
でも、全てが真実だ。
この瞳の変化も、まだ体に微かに残る余韻も、全てが本当にあった事だと嫌でもわからせてくる。
これで本当によかったんだろうか?
人ではないモノを妻に持ち、俺はこの先葛葉とどう向き合えばいいんだろうか。
「ご飯できましたよ!さぁ一緒に食べましょう?」
眠れぬ頭で色々考えていると、可愛い笑顔を振りまきながら俺の事を部屋まで呼びに来て、葛葉がベットで寝ていた俺に犬のようにじゃれついてきた。
近い距離で見詰め合い、どちからともなく交わすキス。
「さて、どうするかな」
「何がですか?」
「……いや、なんでもない」
答えの出せていない疑問は胸の奥にしまいしまい込み、口にはしなかった。
葛葉の頭をよしよしと撫で、一緒にベットから降り居間に向う。
「俺より先に死ぬなよ?」
「私は大丈夫ですよ。昴さんは……長生きして下さいね」
「じゃあ長生きできるようなもの食わせてくれな」
「任せて下さい!いっぱい健康メニューをコピーしてきますから!」
尻尾を振りながら歩く葛葉が可愛くて、このままずっと続くであろうコイツとの生活に期待が湧いてくる。今までの、失う辛さに縛られただけの人生とは違う生き方が出来るかもしれない。
生きていこう、死ぬ事のない妻と共に。
『お前が好きだ』という言葉は、俺が死ぬ時にでも言ってやろうか。
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