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【幕間の物語・②】
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シェアハウスの一階にある事務室でメンシスが仕事をしていると、コンコンッと扉をノックする音が聞こえた。
「——入れ」
カーネは寝室で寝ていると確信しているメンシスは、無機質な印象の声を返す。
「失礼致します」
「失礼しまーす」
テオ、リュカの二人が事務室に入て来た。テオは腕に数十枚程度の紙束を抱えており、リュカは宿屋で働いていた時と同じ格好をしている。
室内に入るなり、「あれ?耳と尻尾が出てますよ」と言いリュカが自分の頭を指差した。
「そんなに油断してると、あの方に見られちゃいますよ?」
「彼女の前で下手な油断はしていない。大丈夫だ」
彼らに視線を合わせる事なく、メンシスはそう返した。
「…… もしかして、自らがルーナ族である事を、もうあの方に打ち明けたのですか?」
テオに訊かれ、「あぁ」とメンシスは短く答えた。
「お早いですねぇ。昨日の今日だっていうのに、もうですか?」
リュカに指摘され、メンシスはフッと笑う。
「あぁ。『油断』して、つい『うっかり』バレてしまった。運良くそんなシチュエーションに持ち込めそうだったからな」
「わざと、ですか。まぁアリですね」とリュカが何度も頷き、「流石です、シス様」とテオが目を輝かせる。
「『重大な秘密』は関係をより深く、親密なものにするからな。カーネも私に、この国の出身で、婚約者から逃げた事とその理由を教えてくれた」
「このペースだと夫婦になれる日も近そうですね」
そう言って、テオが右目のモノクルをキラッと輝かせる。
「…… いや、流石にそれは」というリュカのツッコミは、二人に聞き流された。
「——で?お前達は仕事で来たのか?それとも、シェアハウスの部屋を確認しに来ただけか?」
「「その両方です」」とテオとリュカが同時に答える。
「じゃあ、まずは話を聞こうか」
「はい」と言い、テオがモノクルを指先でクイッと軽く上げた。手に持っていた紙束をメンシスの前に出し、一歩後ろに下がる。
「詳細はこちらに書いてあります。——概略を軽く申し上げますと、聖女候補の乗る馬車を事故と見せ掛け、ティアンにカーネ様を殺害させた功績を上げた者の移送が完了しました。心を病んでいる事を理由にひとまずは入院処置ということにしています。精神病院の方には姿を似せた自動人形を配備し、当人は別の国で全く違う生涯の記憶を与えて新しい人生を送る準備を進めておきました」
「身代わりの自動人形は同じ言葉ばかり呟くだけの粗悪品ですが、神殿からの使者や王家から様子を見に来る様な役人程度を扉越しに騙すには充分かと。頃合いを見て、自殺したとして処置しておきます」と、リュカがテオの報告を捕捉する。
「そうか。功績をあげた彼らには手厚い保護を頼む」
「「了解です」」
「それにしても、ロロ様は上手い事やりましたねぇ」
「そうですね。ロロ様が五大家出身の神官達の恨心をそっと煽って下さった功績はかなり大きいです」と、テオがリュカの言葉に激しく同意した。
姿を隠したままそっと神官達に近づき、ルーナ族達が呼ぶ所の“スティグマ”を持たぬ者達の耳元で巧みに数多の言葉を囁き、恨心を煽りに煽り、“聖女候補”に危害を加える様に立ち回った。それが結果的に無駄に辛抱強い“ティアン”に“カーネ”殺しをさせるに至った為、ニ人はしばらくの間この場に居ないロロをひたすら褒め続けた。
その後も二、三仕事の話などをし、一段落して今日は解散という流れに。テオとリュカはシェアハウスに用意された自室に生活感を感じさせる物を少し置き、その後はまた仕事に戻るとの事だった。
「お疲れ様でした。ところで、シス様はまだお休みにはなられないのですか?」
テオはそう訊き、チラリと視線を壁掛け時計の方へやった。針はもう夜中の一時を指しており、外はシンッと静まり返っている。
「寝られる訳がないだろ、カーネの下着を見たんだぞ?」
真剣な表情で言われ、そうなった流れが想像出来ないリュカが固まる。だがテオは「それならば致し方ないですね」と真面目に頷き返した。
「お前は、メンシス様の言葉ならホントなんでも肯定すんのな」
呆れ顔をしているリュカの側で、「今は、“シス”様ですよ」と訂正を求める。心からメンシスに心酔しているからか、何故呆れ顔をされているのかテオにはさっぱり理解出来ていない。
「足まで美味しいとか…… 思い出すだけでもうギンギンだ」
鼻の下を押さえているメンシスの手が血まみれになっている。着ている白いシャツにまで血が滴り、完全に殺人を完遂した後の犯人みたいだ。
「…… シス様。その発言、完全にオヤジっすよ」
メンシスにハンカチを差し出し、テオが「それを言うなら我々もそうですよ。全ての記憶がある分、私達の方がご老人です」と言う。
「否定はしないが、少なくともオレは、オヤジくさい発言はしねぇぞ」と返したリュカの言葉はまた華麗にスルーされた。
「んでも、どうにかして少しでも寝て下さいね。寝不足の頭じゃ碌なことになりませんから」
「あぁ、わかっている」とメンシスがリュカに頷いて応える。
「獣化でもして彼女の隣で休む…… と、ソレはソレで、襲ってしまいそうだな」
「いっそもう、この流れでロロ様とララ様のお身体をお作りになっては?」
テオの発言に『それだ』と言いたげな顔をメンシスが向け、「駄目!駄目ですよ、シス様!今回もお心まで全て手に入れると、息巻いていたのを思い出して下さい!」と大慌てで止めに入る。唯一の良心であるリュカは苦労が絶えないが、こんなやり取りを楽しいと思いながら夜は更けていった。
「——入れ」
カーネは寝室で寝ていると確信しているメンシスは、無機質な印象の声を返す。
「失礼致します」
「失礼しまーす」
テオ、リュカの二人が事務室に入て来た。テオは腕に数十枚程度の紙束を抱えており、リュカは宿屋で働いていた時と同じ格好をしている。
室内に入るなり、「あれ?耳と尻尾が出てますよ」と言いリュカが自分の頭を指差した。
「そんなに油断してると、あの方に見られちゃいますよ?」
「彼女の前で下手な油断はしていない。大丈夫だ」
彼らに視線を合わせる事なく、メンシスはそう返した。
「…… もしかして、自らがルーナ族である事を、もうあの方に打ち明けたのですか?」
テオに訊かれ、「あぁ」とメンシスは短く答えた。
「お早いですねぇ。昨日の今日だっていうのに、もうですか?」
リュカに指摘され、メンシスはフッと笑う。
「あぁ。『油断』して、つい『うっかり』バレてしまった。運良くそんなシチュエーションに持ち込めそうだったからな」
「わざと、ですか。まぁアリですね」とリュカが何度も頷き、「流石です、シス様」とテオが目を輝かせる。
「『重大な秘密』は関係をより深く、親密なものにするからな。カーネも私に、この国の出身で、婚約者から逃げた事とその理由を教えてくれた」
「このペースだと夫婦になれる日も近そうですね」
そう言って、テオが右目のモノクルをキラッと輝かせる。
「…… いや、流石にそれは」というリュカのツッコミは、二人に聞き流された。
「——で?お前達は仕事で来たのか?それとも、シェアハウスの部屋を確認しに来ただけか?」
「「その両方です」」とテオとリュカが同時に答える。
「じゃあ、まずは話を聞こうか」
「はい」と言い、テオがモノクルを指先でクイッと軽く上げた。手に持っていた紙束をメンシスの前に出し、一歩後ろに下がる。
「詳細はこちらに書いてあります。——概略を軽く申し上げますと、聖女候補の乗る馬車を事故と見せ掛け、ティアンにカーネ様を殺害させた功績を上げた者の移送が完了しました。心を病んでいる事を理由にひとまずは入院処置ということにしています。精神病院の方には姿を似せた自動人形を配備し、当人は別の国で全く違う生涯の記憶を与えて新しい人生を送る準備を進めておきました」
「身代わりの自動人形は同じ言葉ばかり呟くだけの粗悪品ですが、神殿からの使者や王家から様子を見に来る様な役人程度を扉越しに騙すには充分かと。頃合いを見て、自殺したとして処置しておきます」と、リュカがテオの報告を捕捉する。
「そうか。功績をあげた彼らには手厚い保護を頼む」
「「了解です」」
「それにしても、ロロ様は上手い事やりましたねぇ」
「そうですね。ロロ様が五大家出身の神官達の恨心をそっと煽って下さった功績はかなり大きいです」と、テオがリュカの言葉に激しく同意した。
姿を隠したままそっと神官達に近づき、ルーナ族達が呼ぶ所の“スティグマ”を持たぬ者達の耳元で巧みに数多の言葉を囁き、恨心を煽りに煽り、“聖女候補”に危害を加える様に立ち回った。それが結果的に無駄に辛抱強い“ティアン”に“カーネ”殺しをさせるに至った為、ニ人はしばらくの間この場に居ないロロをひたすら褒め続けた。
その後も二、三仕事の話などをし、一段落して今日は解散という流れに。テオとリュカはシェアハウスに用意された自室に生活感を感じさせる物を少し置き、その後はまた仕事に戻るとの事だった。
「お疲れ様でした。ところで、シス様はまだお休みにはなられないのですか?」
テオはそう訊き、チラリと視線を壁掛け時計の方へやった。針はもう夜中の一時を指しており、外はシンッと静まり返っている。
「寝られる訳がないだろ、カーネの下着を見たんだぞ?」
真剣な表情で言われ、そうなった流れが想像出来ないリュカが固まる。だがテオは「それならば致し方ないですね」と真面目に頷き返した。
「お前は、メンシス様の言葉ならホントなんでも肯定すんのな」
呆れ顔をしているリュカの側で、「今は、“シス”様ですよ」と訂正を求める。心からメンシスに心酔しているからか、何故呆れ顔をされているのかテオにはさっぱり理解出来ていない。
「足まで美味しいとか…… 思い出すだけでもうギンギンだ」
鼻の下を押さえているメンシスの手が血まみれになっている。着ている白いシャツにまで血が滴り、完全に殺人を完遂した後の犯人みたいだ。
「…… シス様。その発言、完全にオヤジっすよ」
メンシスにハンカチを差し出し、テオが「それを言うなら我々もそうですよ。全ての記憶がある分、私達の方がご老人です」と言う。
「否定はしないが、少なくともオレは、オヤジくさい発言はしねぇぞ」と返したリュカの言葉はまた華麗にスルーされた。
「んでも、どうにかして少しでも寝て下さいね。寝不足の頭じゃ碌なことになりませんから」
「あぁ、わかっている」とメンシスがリュカに頷いて応える。
「獣化でもして彼女の隣で休む…… と、ソレはソレで、襲ってしまいそうだな」
「いっそもう、この流れでロロ様とララ様のお身体をお作りになっては?」
テオの発言に『それだ』と言いたげな顔をメンシスが向け、「駄目!駄目ですよ、シス様!今回もお心まで全て手に入れると、息巻いていたのを思い出して下さい!」と大慌てで止めに入る。唯一の良心であるリュカは苦労が絶えないが、こんなやり取りを楽しいと思いながら夜は更けていった。
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