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【番外編】
こぼれ話・地図
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とある休日の午後。シェアハウスの三階にある管理人の居住スペースのソファーにカーネが座っている。手には此処、ウォセカムイ地区を詳細に描いてある地図を持っていて、じっとそれを読んでいる。ララは窓辺で暖かな陽射しを堪能しながらゆるりと惰眠を貪っている様だ。
「何を見ているんですか?」
カーネの手元を軽く覗き込み、メンシスが訊く。手には温かな飲み物が入るマグカップを持っていて、「こちらに置いておきますね」と声を掛けながらテーブルにカップを置いた。そして当然の様に隣に座り、そっと太ももをくっつける。
「この地域の地図を読んでいたんです。この近隣には何があるか、何処にどんなお店があるのかくらいは頭に入れておこうかと思いまして」
「なるほど。勉強家なんですね」
シェアハウスの裏手からはセレネ公爵邸を、その広大な庭を挟んだ状態で仰ぎ見る事が出来る程の近さにあるが、幸いにして違う地域なので目の前の地図には描かれていない為、相変わらずカーネは気が付いていないままだ。庭掃除の為に外に出る事はあっても、この付近は貴族達のタウンハウスも多いし、貴族出身である彼女自身豪華な邸宅は見慣れた対象でしかないので別段気にも止めていない。『シリウス邸や他の建物よりも大きい建物が遠くにあるなぁ』くらいには思っているが。
「一人で外に出掛けて、もし迷子になってシスさんに迷惑をかける事態になると恥ずかしいので…… 」
顔を見合わせて二人がははっと笑ったが、そもそも一人で出掛けさせてなどもらえないので無駄な努力である。だが事実を突き付ける様な無粋な真似をする気は無く、ただただメンシスは微笑んでいて、彼女の努力する姿を喜んでいる。
「此処がシェアハウスのある区域で、あっていますか?」と言い、カーネが地図を指差す。
「そうです。この道を北の方向へ進むと——」
「あ、前に行った商店街のある通りですよね?」
「はい。あの商店街で一通りの物が手に入りますから、この地区だけを覚えておけば困る事は無いかと思いますよ」
暗に『何があろうがこの地区からは出たら駄目だよ』とメンシスが釘を刺す。だがカーネは察する事なく、地図に視線を落としたままだ。
「この、赤く塗られた建物や区画はどういった場所なんですか?」
「貴女は、このウォセカムイ地区が聖女生誕の地である事はご存知ですか?」
「…… い、いいえ。すみません」
彼が聖女・カルムを敬愛していると知っている為、カーネは気まずい気持ちになった。だがメンシスは微塵も気にする事なく「問題ありませんよ」と笑顔を返す。“カルム”の生まれ変わりである“カーネ”が何を知らずとも、無知に苛立ちなど感じるはずがない。
「その赤い色で縁取られた建物などは全て“カルム”が生前関わった事のある場所で、今は保護対象となっているんです。産院、生家、通っていた学校、近くにあった図書館やよく訪れていた親戚の家、礼拝に行っていた教会、買い物をした店の跡地などが対象となっています。元々は国の管理下にあったり、個人所有だった物件だったのですが、今では『とある貴族』が管理下に置き、長年歴史的な研究を重ねているそうです」
もちろん『とある貴族』はセレネ公爵家の事である。
まだ“メンシス”が“大神官・ナハト”であった時に国と交渉して計画的に全ての権利を手に入れた物ばかりだ。“聖女・カルム”ら三人の遺体は手に入らなかったが、せめて遺品はと、出来うる範囲で買い占めた。本心としてはそれこそ全てを占有してしまいたい心境であったのだが、それだと、多くの道路や主要な建築物、王城までもが対象となってしまう。多彩な才能のあった彼女が関わった形跡があまりにも国の随所に散らばり過ぎていた為、その場では一旦諦めて、じわじわと五百年程の時間を掛けてセレネ公爵家の支配範囲を広げていく事を選んだ過去の自分を、メンシスは段々と褒めてやりたい気分になってきた。
「…… それにしても、対象範囲が随分と多いんですね」
「ん、んー…… 。でもまぁ、この街全てが“カルム”が造り上げた作品みたいなものなので、これでも随分と厳選した方だと思いますよ。でも…… 多い、ですか」
「此処まで研究の対象範囲が多岐だと、研究の為というよりも——」
一呼吸置き、カーネが彼の顔を見上げる。
「聖女様に、執着しているみたいですよね」
うぐっ!とメンシスが声を詰まらせた。至極ごもっともな感想だが、本人に言われるとかなり手痛い。
「い…… イヤだったりします?嫌いになったりとか、します⁉︎」
(嫌いも何も、研究者とやらが誰かも知らないし、どこの貴族の方かもわからないのに…… )
そうとしか思えず、カーネはただただ返答に困る。だが、人は過去から学ぶべきだ。研究対象が『聖女』と限定的なものであったとしても、きっとその生き様や仕事ぶりから学び取れる事も多いに違いないと考え、カーネはニコッと笑みを浮かべた。
「いいえ。歴史を尊び、学ぶ姿勢は大事ですから」
「そ、そうですよね!僕もそう思います!」
大きめな声をあげ、メンシスがカーネの両手をギュッと握る。この先も聖女の遺物をコレクション化してもいいと本人から許可を得たような気分だ。
「興味がおありなら、今度行ってみますか?」
「でも、保護区域なんですよね?」
「えぇ。でも伝手がありますから、貴女になら、いくらでもご案内しますよ」
伝手も何も、彼が現在の管理責任者なので何も問題は無い。
「うーん…… 」とこぼし、カーネが少し思い悩む。だが彼女は、「いえ、特に思い入れもないので結構です」と言って提案を断った。“聖女”という立場に憧れもなく、名前と経歴を本で少し齧っただけの者の人生を巡る様な事をしても正直面白いとは思えない。体が入れ替わり、神力にも目覚め、“聖女”としての資格を持ってしまっている今は尚更避けたい対象でもあるからだ。
「そうですか、わかりました」
「すみません、せっかくお誘い頂いたのに」
申し訳なさそうにカーネが俯く。メンシスとしてはこうやって堂々と手を握っていられるだけで満足で、なんの不満も抱いてはいない。
「お気になさらず。興味の無い場所に行っても、面白くも無いですからね。——なので今度、綺麗な景色でも見に行きましょうか」
「景色、ですか?」
「はい。夜景とか、海とか」
「良いですね、行ってみたいです」
「決まりですね」と言い、メンシスが微笑みを浮かべる。今日はコレクションを得続ける許可を得た(気がする)し、次のデートの約束を取り付ける事も出来き、メンシスにとってはとても素晴らしい休日となった。
【番外編 こぼれ話・地図・完】
「何を見ているんですか?」
カーネの手元を軽く覗き込み、メンシスが訊く。手には温かな飲み物が入るマグカップを持っていて、「こちらに置いておきますね」と声を掛けながらテーブルにカップを置いた。そして当然の様に隣に座り、そっと太ももをくっつける。
「この地域の地図を読んでいたんです。この近隣には何があるか、何処にどんなお店があるのかくらいは頭に入れておこうかと思いまして」
「なるほど。勉強家なんですね」
シェアハウスの裏手からはセレネ公爵邸を、その広大な庭を挟んだ状態で仰ぎ見る事が出来る程の近さにあるが、幸いにして違う地域なので目の前の地図には描かれていない為、相変わらずカーネは気が付いていないままだ。庭掃除の為に外に出る事はあっても、この付近は貴族達のタウンハウスも多いし、貴族出身である彼女自身豪華な邸宅は見慣れた対象でしかないので別段気にも止めていない。『シリウス邸や他の建物よりも大きい建物が遠くにあるなぁ』くらいには思っているが。
「一人で外に出掛けて、もし迷子になってシスさんに迷惑をかける事態になると恥ずかしいので…… 」
顔を見合わせて二人がははっと笑ったが、そもそも一人で出掛けさせてなどもらえないので無駄な努力である。だが事実を突き付ける様な無粋な真似をする気は無く、ただただメンシスは微笑んでいて、彼女の努力する姿を喜んでいる。
「此処がシェアハウスのある区域で、あっていますか?」と言い、カーネが地図を指差す。
「そうです。この道を北の方向へ進むと——」
「あ、前に行った商店街のある通りですよね?」
「はい。あの商店街で一通りの物が手に入りますから、この地区だけを覚えておけば困る事は無いかと思いますよ」
暗に『何があろうがこの地区からは出たら駄目だよ』とメンシスが釘を刺す。だがカーネは察する事なく、地図に視線を落としたままだ。
「この、赤く塗られた建物や区画はどういった場所なんですか?」
「貴女は、このウォセカムイ地区が聖女生誕の地である事はご存知ですか?」
「…… い、いいえ。すみません」
彼が聖女・カルムを敬愛していると知っている為、カーネは気まずい気持ちになった。だがメンシスは微塵も気にする事なく「問題ありませんよ」と笑顔を返す。“カルム”の生まれ変わりである“カーネ”が何を知らずとも、無知に苛立ちなど感じるはずがない。
「その赤い色で縁取られた建物などは全て“カルム”が生前関わった事のある場所で、今は保護対象となっているんです。産院、生家、通っていた学校、近くにあった図書館やよく訪れていた親戚の家、礼拝に行っていた教会、買い物をした店の跡地などが対象となっています。元々は国の管理下にあったり、個人所有だった物件だったのですが、今では『とある貴族』が管理下に置き、長年歴史的な研究を重ねているそうです」
もちろん『とある貴族』はセレネ公爵家の事である。
まだ“メンシス”が“大神官・ナハト”であった時に国と交渉して計画的に全ての権利を手に入れた物ばかりだ。“聖女・カルム”ら三人の遺体は手に入らなかったが、せめて遺品はと、出来うる範囲で買い占めた。本心としてはそれこそ全てを占有してしまいたい心境であったのだが、それだと、多くの道路や主要な建築物、王城までもが対象となってしまう。多彩な才能のあった彼女が関わった形跡があまりにも国の随所に散らばり過ぎていた為、その場では一旦諦めて、じわじわと五百年程の時間を掛けてセレネ公爵家の支配範囲を広げていく事を選んだ過去の自分を、メンシスは段々と褒めてやりたい気分になってきた。
「…… それにしても、対象範囲が随分と多いんですね」
「ん、んー…… 。でもまぁ、この街全てが“カルム”が造り上げた作品みたいなものなので、これでも随分と厳選した方だと思いますよ。でも…… 多い、ですか」
「此処まで研究の対象範囲が多岐だと、研究の為というよりも——」
一呼吸置き、カーネが彼の顔を見上げる。
「聖女様に、執着しているみたいですよね」
うぐっ!とメンシスが声を詰まらせた。至極ごもっともな感想だが、本人に言われるとかなり手痛い。
「い…… イヤだったりします?嫌いになったりとか、します⁉︎」
(嫌いも何も、研究者とやらが誰かも知らないし、どこの貴族の方かもわからないのに…… )
そうとしか思えず、カーネはただただ返答に困る。だが、人は過去から学ぶべきだ。研究対象が『聖女』と限定的なものであったとしても、きっとその生き様や仕事ぶりから学び取れる事も多いに違いないと考え、カーネはニコッと笑みを浮かべた。
「いいえ。歴史を尊び、学ぶ姿勢は大事ですから」
「そ、そうですよね!僕もそう思います!」
大きめな声をあげ、メンシスがカーネの両手をギュッと握る。この先も聖女の遺物をコレクション化してもいいと本人から許可を得たような気分だ。
「興味がおありなら、今度行ってみますか?」
「でも、保護区域なんですよね?」
「えぇ。でも伝手がありますから、貴女になら、いくらでもご案内しますよ」
伝手も何も、彼が現在の管理責任者なので何も問題は無い。
「うーん…… 」とこぼし、カーネが少し思い悩む。だが彼女は、「いえ、特に思い入れもないので結構です」と言って提案を断った。“聖女”という立場に憧れもなく、名前と経歴を本で少し齧っただけの者の人生を巡る様な事をしても正直面白いとは思えない。体が入れ替わり、神力にも目覚め、“聖女”としての資格を持ってしまっている今は尚更避けたい対象でもあるからだ。
「そうですか、わかりました」
「すみません、せっかくお誘い頂いたのに」
申し訳なさそうにカーネが俯く。メンシスとしてはこうやって堂々と手を握っていられるだけで満足で、なんの不満も抱いてはいない。
「お気になさらず。興味の無い場所に行っても、面白くも無いですからね。——なので今度、綺麗な景色でも見に行きましょうか」
「景色、ですか?」
「はい。夜景とか、海とか」
「良いですね、行ってみたいです」
「決まりですね」と言い、メンシスが微笑みを浮かべる。今日はコレクションを得続ける許可を得た(気がする)し、次のデートの約束を取り付ける事も出来き、メンシスにとってはとても素晴らしい休日となった。
【番外編 こぼれ話・地図・完】
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