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【第三章】
【第五話】雇用契約(メンシス・談)
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“彼女”が、“カーネ”として生きていく事を決めた。
——その瞬間を鮮明に映し出す木製の小さなフレームが一階の事務室の机の上に置かれている。彼女の一挙手一投足を見逃さずに済む方法が何かないかと、随分前に作ったマジックアイテムだったが、結局長年使わずにいた物だ。そのフレームに映し出されている様子に心を躍らせながら、これからカーネに書いて貰う書類を用意する。雇用契約書の他にも婚約証明や婚姻届なんかも混ぜてしまったが、ぐっと堪えて書類の大半は机の中に戻した。
勤務時間に行動の報告義務、仕事に関連する物の全てを支給する旨や給与に関しても記載していく。彼女の名前を記載する欄は空白とし、形式を整えていく。高待遇でこの屋敷に縛り付け、他には目移りしないようにしておくつもりだ。
「…… ひとまずはこんな所か」
書き上げた書類を見直しながら考えるのは、どうしたってカーネの事だ。
突如家出をした彼女に合わせて急拵えでこの環境を用意した為、今はシェアハウスの掃除くらいしか頼める仕事がないから、空き時間で私達の距離を詰めていく事は充分可能だろう。仕事を理由にこの家に閉じ込め、出掛ける時には必ず同伴するとしても安全の為だと言えば聞いてくれるに違いない。交友関係の一切無いカーネの一番近くにずっとずーっと居れば、いつかは心も開け渡してくれるはずだ。蜂蜜みたいにドロドロとした愛情で溺れさせ、またそうなるように甘やかすだけ甘やかしていかねば。
「…… ふふっ」
つい笑いが溢れてしまう。この先はずっと傍に居られるのだと思うとそれだけで嬉しさが胸の奥から込み上げてくる。そんな自分の様子が部屋の鏡に映ったが、彼女への底知れぬ執着心のせいで仄暗い笑みになっていた。だがすぐに視線を逸らし、己の姿は見なかった事にした。
◇
「お待たせしました。すみません、なかなか今回の契約で使えそうな書類が見当たらず、結局一から書いていたら時間が掛かってしまって」
声を掛けながら寝室の扉を開けて室内に入る。彼女の行動を全て監視出来るマジックアイテムのおかげで知ってはいたが、荷物整理はとっくに終わっていて、カーネは飛び跳ねるみたいにしてベッドから立ち上がった。ララは欠伸をしながらベッドに寝そべったままでいる。私はララが見えていない体でいるから、その愛らしさにうっかり表情を崩さぬ様に気を付けたまま言葉を続ける。
「サインが必要なので、リビングの方に移動しましょうか」
「はい。今行きます」と言い、カーネがスカートの裾を整える。ベッドの端に座っていただけなので別段乱れてはいないのだが、どうにも気になるみたいだ。そんな仕草さえも可愛く思える。少し前までは息を吸う姿を見ただけでも殺したい程に憎い存在だったというのに、中身が違うだけで随分と様変わりするものだ。
「お茶でも淹れましょうか」
「あ、私が淹れます」と声掛けながら私の後をついてくる姿が、母親を追いかける子犬みたいだ。ララ経由で左手首に着けさせた鈍色のブレスレットをいっそ首に着けさせて鎖で繋ぎ、自分の胸の中に引っ張ってしまいたくなる。
「いえいえ、今日は僕が淹れますよ。でも隣でキッチン周りに何があるのか覚えてもらってもいいですか?掃除以外にも、何か頼む事もあるかもしれないので。——あ、でもそれって、契約違反になっちゃいますよね」
失敗したかなとでも思っていそうな顔をカーネに向けると、彼女は必死に「いいえ!大丈夫です」と否定してくれる。
「慣れたら、仕事は掃除だけとなると時間を持て余してしまいそうですし、色々頼んで貰えた方が私も気が楽なので」
「…… 良いんですか?『色々』頼んでも」
「はい、大丈夫ですよ。精一杯お勤めさせて頂きます」
両の手をぎゅっと握って気合を入れるとか、私を悩殺する気か?と思ってしまったせいで咄嗟に何も反応を返せなかった。仕草の一つ一つが可愛くてしょうがない。周囲の顔色を伺う事なく自然体でいてくれる事も嬉しくって堪らない。
私の言葉の真意も知らずに安請け合いしまった点もだ。
「あ、りがとうございます。えっと…… ティーポットはこの吊り棚の中にあって——」
嬉しさを隠しつつ、一つ一つ丁寧に、手狭なキッチンの説明をしながら同時にコンロで小さな鍋を使ってお湯を沸かす。その様子を物珍しそうな瞳でカーネが見ている。シリウス公爵家の旧邸では魔石が無くて使えなかった設備だから、間近で見られて楽しいのだろう。
(もっと彼女に喜んで欲しいな…… )
このコンロだけじゃない。この建物中に魔石をセットしたマジックアイテムをそこかしこに設備し、もうこの家から出たくないと思えるくらい便利な設えにしてあるので、是非とも怠惰な生活に溺れて欲しい。監視システムもしっかり完備している点には気が付かないままでいてくれるとありがたいが、まぁバレてもどうとでもなるか。
リビングにあるローテーブルに契約書と筆記具、お茶を淹れたカップを二つ並べる。この部屋のソファーは二人掛けの物だけなので、そこに二人で並んで腰掛けると少し脚が触れてしまう。私的には大歓迎なのだが、カーネは気恥ずかしいのか、隅っこに寄ろうと必死になっていた。
(どうやらこれは、テオ達が私に気を利かせて小さめのソファーを選んだみたいだな)
「あー…… すみません。僕の図体が大きなせいで狭いですよね」
本心を隠して申し訳なさそうに言うと、「いいえ」と言ってカーネは首を横に振った。
「大丈夫です。ただその…… 人の体温に慣れていないので、ちょっと戸惑っているだけなので」
俯きながら本心を伝えてくれた。そんなものにカーネが慣れていたら、その相手を殺している所だったので嬉しい報告だ。
(ララやロロが相手なら許せるが、他は絶対に無理だからな)
「じゃあ、このままでも?」
「…… っ」
口をへの字にしてちょっと考えている。顔もちょっと赤いが、覚悟が決まったのか、「は、はい」と返してくれ、互いの脚がぴたりとくっついた。
「では、このまま説明を始めますね」
手書きの契約書を手に取って給与の説明などを始める。月末にその一月分の賃金を支払う事、仕事中に着る服などは全て支給し、勤務時間は八時半から十七時で休憩は日に二回で一時間づつ、外出時には絶対に報告するなどといった内容を小難しい文章で書いたものを優しく読み解いていく。
「掃除をすると手が荒れますからハンドクリームも支給しますね。休憩時のお茶やお菓子もこの後買いに行きましょうか。そうそう、夜の外出は控えてください。この辺は貴族のタウンハウスが多いので昼間の治安は良いのですが、飲食店が並ぶ地区からも近いので、酔っ払いなどがどうしたって闊歩していますから。なので、どうしても出掛けたい時は僕が同行します」
『至れり尽くせりネェ、フフッ』と、いつの間にやらベランダに続く窓の側で寝そべっていたララが笑う。激しく同意すると言いたそうな顔をしてカーネも契約書をじっと見ていた。
(…… やり過ぎた、か?)
私的には全然足りないくらいだと思うのだが、いきなり攻め過ぎただろうか。だが、比較対象の無いカーネでは私の話した契約内容が常識の範囲外なのか否か測りかねているみたいだ。
『高待遇だシ、アタシは問題無いと思うわヨ』
毛繕いしながらララが言う。その言葉を聞いた途端に「わかりました。サインはここですか?」と書類の一番下を指差してカーネが訊いてきた。単純で可愛い。判断材料が他に無いおかげで完全にララの手の内だ。
そんな二人の様子を見ていると、ララとロロの二人をこの世界にきちんと迎え入れる日もそう遠くはない気がした。
——その瞬間を鮮明に映し出す木製の小さなフレームが一階の事務室の机の上に置かれている。彼女の一挙手一投足を見逃さずに済む方法が何かないかと、随分前に作ったマジックアイテムだったが、結局長年使わずにいた物だ。そのフレームに映し出されている様子に心を躍らせながら、これからカーネに書いて貰う書類を用意する。雇用契約書の他にも婚約証明や婚姻届なんかも混ぜてしまったが、ぐっと堪えて書類の大半は机の中に戻した。
勤務時間に行動の報告義務、仕事に関連する物の全てを支給する旨や給与に関しても記載していく。彼女の名前を記載する欄は空白とし、形式を整えていく。高待遇でこの屋敷に縛り付け、他には目移りしないようにしておくつもりだ。
「…… ひとまずはこんな所か」
書き上げた書類を見直しながら考えるのは、どうしたってカーネの事だ。
突如家出をした彼女に合わせて急拵えでこの環境を用意した為、今はシェアハウスの掃除くらいしか頼める仕事がないから、空き時間で私達の距離を詰めていく事は充分可能だろう。仕事を理由にこの家に閉じ込め、出掛ける時には必ず同伴するとしても安全の為だと言えば聞いてくれるに違いない。交友関係の一切無いカーネの一番近くにずっとずーっと居れば、いつかは心も開け渡してくれるはずだ。蜂蜜みたいにドロドロとした愛情で溺れさせ、またそうなるように甘やかすだけ甘やかしていかねば。
「…… ふふっ」
つい笑いが溢れてしまう。この先はずっと傍に居られるのだと思うとそれだけで嬉しさが胸の奥から込み上げてくる。そんな自分の様子が部屋の鏡に映ったが、彼女への底知れぬ執着心のせいで仄暗い笑みになっていた。だがすぐに視線を逸らし、己の姿は見なかった事にした。
◇
「お待たせしました。すみません、なかなか今回の契約で使えそうな書類が見当たらず、結局一から書いていたら時間が掛かってしまって」
声を掛けながら寝室の扉を開けて室内に入る。彼女の行動を全て監視出来るマジックアイテムのおかげで知ってはいたが、荷物整理はとっくに終わっていて、カーネは飛び跳ねるみたいにしてベッドから立ち上がった。ララは欠伸をしながらベッドに寝そべったままでいる。私はララが見えていない体でいるから、その愛らしさにうっかり表情を崩さぬ様に気を付けたまま言葉を続ける。
「サインが必要なので、リビングの方に移動しましょうか」
「はい。今行きます」と言い、カーネがスカートの裾を整える。ベッドの端に座っていただけなので別段乱れてはいないのだが、どうにも気になるみたいだ。そんな仕草さえも可愛く思える。少し前までは息を吸う姿を見ただけでも殺したい程に憎い存在だったというのに、中身が違うだけで随分と様変わりするものだ。
「お茶でも淹れましょうか」
「あ、私が淹れます」と声掛けながら私の後をついてくる姿が、母親を追いかける子犬みたいだ。ララ経由で左手首に着けさせた鈍色のブレスレットをいっそ首に着けさせて鎖で繋ぎ、自分の胸の中に引っ張ってしまいたくなる。
「いえいえ、今日は僕が淹れますよ。でも隣でキッチン周りに何があるのか覚えてもらってもいいですか?掃除以外にも、何か頼む事もあるかもしれないので。——あ、でもそれって、契約違反になっちゃいますよね」
失敗したかなとでも思っていそうな顔をカーネに向けると、彼女は必死に「いいえ!大丈夫です」と否定してくれる。
「慣れたら、仕事は掃除だけとなると時間を持て余してしまいそうですし、色々頼んで貰えた方が私も気が楽なので」
「…… 良いんですか?『色々』頼んでも」
「はい、大丈夫ですよ。精一杯お勤めさせて頂きます」
両の手をぎゅっと握って気合を入れるとか、私を悩殺する気か?と思ってしまったせいで咄嗟に何も反応を返せなかった。仕草の一つ一つが可愛くてしょうがない。周囲の顔色を伺う事なく自然体でいてくれる事も嬉しくって堪らない。
私の言葉の真意も知らずに安請け合いしまった点もだ。
「あ、りがとうございます。えっと…… ティーポットはこの吊り棚の中にあって——」
嬉しさを隠しつつ、一つ一つ丁寧に、手狭なキッチンの説明をしながら同時にコンロで小さな鍋を使ってお湯を沸かす。その様子を物珍しそうな瞳でカーネが見ている。シリウス公爵家の旧邸では魔石が無くて使えなかった設備だから、間近で見られて楽しいのだろう。
(もっと彼女に喜んで欲しいな…… )
このコンロだけじゃない。この建物中に魔石をセットしたマジックアイテムをそこかしこに設備し、もうこの家から出たくないと思えるくらい便利な設えにしてあるので、是非とも怠惰な生活に溺れて欲しい。監視システムもしっかり完備している点には気が付かないままでいてくれるとありがたいが、まぁバレてもどうとでもなるか。
リビングにあるローテーブルに契約書と筆記具、お茶を淹れたカップを二つ並べる。この部屋のソファーは二人掛けの物だけなので、そこに二人で並んで腰掛けると少し脚が触れてしまう。私的には大歓迎なのだが、カーネは気恥ずかしいのか、隅っこに寄ろうと必死になっていた。
(どうやらこれは、テオ達が私に気を利かせて小さめのソファーを選んだみたいだな)
「あー…… すみません。僕の図体が大きなせいで狭いですよね」
本心を隠して申し訳なさそうに言うと、「いいえ」と言ってカーネは首を横に振った。
「大丈夫です。ただその…… 人の体温に慣れていないので、ちょっと戸惑っているだけなので」
俯きながら本心を伝えてくれた。そんなものにカーネが慣れていたら、その相手を殺している所だったので嬉しい報告だ。
(ララやロロが相手なら許せるが、他は絶対に無理だからな)
「じゃあ、このままでも?」
「…… っ」
口をへの字にしてちょっと考えている。顔もちょっと赤いが、覚悟が決まったのか、「は、はい」と返してくれ、互いの脚がぴたりとくっついた。
「では、このまま説明を始めますね」
手書きの契約書を手に取って給与の説明などを始める。月末にその一月分の賃金を支払う事、仕事中に着る服などは全て支給し、勤務時間は八時半から十七時で休憩は日に二回で一時間づつ、外出時には絶対に報告するなどといった内容を小難しい文章で書いたものを優しく読み解いていく。
「掃除をすると手が荒れますからハンドクリームも支給しますね。休憩時のお茶やお菓子もこの後買いに行きましょうか。そうそう、夜の外出は控えてください。この辺は貴族のタウンハウスが多いので昼間の治安は良いのですが、飲食店が並ぶ地区からも近いので、酔っ払いなどがどうしたって闊歩していますから。なので、どうしても出掛けたい時は僕が同行します」
『至れり尽くせりネェ、フフッ』と、いつの間にやらベランダに続く窓の側で寝そべっていたララが笑う。激しく同意すると言いたそうな顔をしてカーネも契約書をじっと見ていた。
(…… やり過ぎた、か?)
私的には全然足りないくらいだと思うのだが、いきなり攻め過ぎただろうか。だが、比較対象の無いカーネでは私の話した契約内容が常識の範囲外なのか否か測りかねているみたいだ。
『高待遇だシ、アタシは問題無いと思うわヨ』
毛繕いしながらララが言う。その言葉を聞いた途端に「わかりました。サインはここですか?」と書類の一番下を指差してカーネが訊いてきた。単純で可愛い。判断材料が他に無いおかげで完全にララの手の内だ。
そんな二人の様子を見ていると、ララとロロの二人をこの世界にきちんと迎え入れる日もそう遠くはない気がした。
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