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【二人目の“純なる子”エピソード】

来世は推しカップルの私室の壁になりたいボクの話②

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「あれ?ボク、この広場なんか見た事ある気がするー」
 和菓子屋に向かう途中通った道の景色を見て、真礼が立ち止まった。
「あぁ、ここならマヒロ様が満を持したかの様にご降臨された場所ですよ」
「——や、やめてよ!あの演出はボクじゃないって。召喚獣のウルススが勝手にやったのです。あのやろぉいらぬ事しやがって、もう完全に黒歴史だよぉ…… あぁぁぁっ」
 頭を抱え、真礼が大袈裟に仰け反る。
 この世界へ来た時の事は、鮮明に覚えているが、真礼は思い出すのも恥ずかしい。彼の言う通り、召喚獣・ウルススの手により過剰演出が施されたせいで、完全に黒歴史という言葉以外当て嵌めようの無い訪れ方をしてしまったからだ。

 あの日は——真礼が通学路で召喚獣に見初められ、なんやかんやのやり取りが召喚獣との間にあった後、互いの了承の上で真礼は異世界転移する事になった。
 この世界へ降り立った初めての場所は、ルプス王国の北方にあるエゾ地方で一番大きなカムイという街だ。
 人が最も多い大広場に、天からの使者ばりの神々しい演出の元、真っ白い羽根の舞う中、地上に降ろされ、北方の島全域を真礼は一瞬で解呪してしまった。
 その時の彼は『マジで異世界召喚キターァ!え?なになに?しかもこの世界、男性カップル多くね?多いよね、気のせいじゃないよね?——つまり、ここは異世界っちゅー名の天国か!』と、自分の欲望全開だったにはだったのだが、純真にこの世界への愛しい気持ちで心が満ちていたおかげで本領を発揮し、解呪に至ったのだ。
 なのに今は、その気持ちが逆に力を制御しているのだから、純なる子の解呪する力は随分とデリケートなもののようだ。
 まぁ、単純に『救う気ねぇし、帰りたくねぇし、堪能したいし!』と思っている部分のせいかもしれないが。


「はいはい、もう行きますよ」
 黒歴史を思い出し、恥ずかしさに悶える真礼の体をヴァントが持ち上げて、肩に乗せた。
「うわ!——おぉぉっ、たっかぁ!この高さ高さだと、周り全部見えるねぇ。すごいじゃなーい」
 二メートル半近い身長の肩に乗せられて、真礼が歓喜の声をあげる。
 脚をバタバタさせて喜んだので、「痛いのでおやめ下さい」と脚を押さえ付けられてしまった。
「貴方は子供ですか、まったく…… 」
 そうぼやきながらも、真礼が怖くない様にとゆっくり歩く。素でヴァントに気遣われてしまい、なんだが背中がむず痒くなり、真礼がしかめっ面になった。

「君さぁ、モテるでしょ」

 ヴァントの頭に腕を乗せ、軽く彼に寄り掛かかる。
「まさか」
 何を言い出すんだか、と言いたげにヴァントが笑った。
 そんなヴァントの様子を見て、真礼がほっと息を吐く。だが、こんな気持ちになる自分にイラッともしてしまう。相反する複雑な気分のせいで、彼の口元がへの字になった。
「ふーん…… 。まぁいいや、大福買って帰ろう!うん」
「はいはい」

 ヴァントが返事をし、和菓子屋へと再び歩き出す。
 店先で大福を大量に購入すると、二人は神殿へと戻って行った。


【続く】
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