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【第五章】
【第七話】身に覚えのない夫④
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「…… ——で、今朝やっと、彼が眠っている間に隙を見て『仕事に行って来ます』と書き置きを残して家を出られたんです」
すっかり茹で蛸と化した顔を両手で隠し、俯きながら更紗が言った。ここ数日の記憶と、その都度感じた矛盾点を伝える為だったとはいえ、夜の事情まで告げた事に対し面映い気持ちでいっぱいだ。
「えっと、それはとても大変でしたね…… 」
クルスから気不味そうに同情混じりの眼差しを向けられたが、目を合わせる事なんか当然出来ない。十日間もずっと明け方近くまで散々狭いベッドで犯され続けてましたなんてヒト様に話したい内容じゃなかったのだが、改めて他者に話す事で、更紗は少しだけ自分の置かれている状況を再確認出来た気がした。
「あと、ですね…… 。彼の言葉の端々から想像するに、どうやら私達は学生時代からの幼馴染らしいのですが……私、そもそもこの街の出身じゃないんです」
そっと顔から手を離し、更紗はさっきよりも少しだけ顔を上げたが、流石に視線だけはクルスから逸らしたままぽつりぽつりと言葉を続けた。
「その、地元で色々あって…… 県外へ、その、つ、追放…… される形で…… 単身、鞄一つで此処まで来たので…… 幼馴染なんて存在が、この街に居る事自体あり得ないんです」
「なるほど。確かにそういった経緯だと、そんな話をされても不審にしか思えませんね」
「ですよね…… 。——あ、でも!私、犯罪者とかじゃないんです!濡れ衣を着せられて!誰も私の言い分は聞いて、くれ…… なく、て。それで逃げるみたいに、此処に…… 」
「別に疑ったりなんかしませんよ。真面目に働いている姿を知っていますからね」
(逃亡あるいは追放された犯罪者であれば、この街へ辿り着く前に高確率で魔物の餌食になっているからな。此処まで来られた時点で、彼女は罪を犯した者では無かったのだろう。たとえ嘘だったくても軽犯罪以上である可能性は相当低いな。まぁ…… たまに運悪く善人でも襲われるから、彼女がそうはならなかったのは幸いだった)
クルスは獣人型である為、街を出た犯罪者達の末路を知っている。彼女がどういった理由でそんな目に遭ったのかはわからないが、今は関係の無い事だと追求する気はない。
「…… ありがとうございます」
(優しいヒトだなぁ…… )
顔に着けている烏の仮面のせいで口元以外の表情はわからないまでも、クルスの優しい声色のおかげで更紗がほっと胸を撫で下ろした。
勤め先の精肉店に客として来ていたクルスへの第一印象は、彼の仮面と軍人的な格好や風貌のせいで『怖いヒトかも』だった。そのせいで出来るだけ彼とは関わるまいと暫くの間ずっと警戒していた。だが、嬉しそうに精肉店で売っている揚げたてコロッケを店の一角に置かれたベンチに座って頬張る姿を何度も見掛け、『実はちょっと可愛いヒトなのでは?』と感じていた更紗の直感は正しかったみたいだ。魔装具店の店主不在の看板を見た時はどうなる事かと不安を抱いていたのだが、どうやら杞憂で終われそうだ。
「彼が元々居た街から追いかけて来た、といった可能性は?」
「そういった感じの再会をした記憶は全くありません」
そう言って、更紗が首を横に振った。ずっとずっと彼とは一緒だった記憶と、絶対にそんなことはあり得ないと思う気持ちとが頭の中で喧嘩している。
「もしかしたら私が忘れているだけで実はちゃんとこの街で再会したのだとしても、そんな理由でこの街まで来たので、誰かと交際なんかしている余裕なんて当然無いですし、そもそも私は日々の生活で金銭的にも精神的にも精一杯なんです」
楽しいながらも忙しい日々を振り返りつつ一息つき、更紗が言葉を続ける。
「あと、夫婦の割に、部屋には一人分しか無い物の方が多いですし、彼の趣味も好みも何にもわからないんです。あ、でも…… 物に関しては、『新婚だから順次買い揃えている最中だ』と言われると、そうかなって気もしてきて…… 正直自信がありません」
単身者が暮らすには充分な広さの住まいだが、二人で暮らすには狭過ぎる。ベッドもシングルサイズなせいで細身同士であろうがどうしたって狭くって、抱き合って寝ないとスペースが足りないし、常に彼の足がはみ出ている。着替えを取る為に開けたクローゼットの中には男性物の服だって全然無かったし、歯ブラシだとかといった真っ先に買い揃えてありそうな日用品すらもあの家には置かれていなかった。
「…… んー。体感的には話していた感じ、更紗さんが記憶障害を患っているとは思えません。可能性としてあり得そうなのはもう、魔法で記憶を操作されているといった所でしょうかね」
「でも彼はヒト型なので、魔法は使えませんよね?」
クルスの考えに対して更紗が疑問を投げ掛けた。
「あぁ、ヒト型でしたか。すみません、勘違いをしていました。相手の具体的な特徴といえば、細身の高身長であり、金髪アシメショートの不思議な瞳の青年というくらいでしたから。魔法要素のある内容の話だったので、てっきりエルフ型かと。でも…… 彼はヒト型、ですか…… 」
クルスが口元に手を当て、眉間に皺を寄せながら小さく唸った。
不思議な瞳を持つ者は獣人型に多く存在しているので獣人の特徴としてあげる事が出来る。“ヨミガエリ”であれば獣人型であっても魔法が使えるから、あり得ない話ではない。
だがカイトなる人物がヒト型であるとなると、魔法を使う事など理論上絶対に不可能だ。
ヒト型の両親から産まれようとも、魔力を有する身体だった時点でその者は全てエルフ型と分類される外観的特徴を有する。なので問題の相手と性行為にまで至った更紗がヒト型と、エルフ型を見間違える事などないだろう。それは獣人型であっても同じはずだ。となると、何らかの効果を持った魔装具で記憶を操られていると見るのが一番可能性が高い。だがそんな類の魔法を付与した魔装具の販売や作製は犯罪に利用されかねない為禁止されている。そもそも作れそうな者自体ほとんどおらず、この近隣ではエルナトくらいなものだろう。
(…… だが、そんな物は作ってないぞ?じゃあ一体どうやって…… )
在庫帳や制作記録を思い返してみても、その類の注文を受けた記載を見た記憶が無い。その為いくら考えてもわからず、クルスは一旦その疑問を据え置く事にした。
「…… そうだ。更紗さんの親類縁者にエルフ型だった者が居たりはしますか?」
「確か…… 母方にエルフ型のヒトがいたと聞いた気がします。曽祖父とか、その辺りだったかと」
「あぁ、やっぱりそうでしたか」
「よくわかりましたね」
「貴女が魔法に対して抵抗力を持っているみたいだったので。魔法を使えないまでも、血縁者にエルフ型がいた事があると、ごく稀に魔法がかかりにくい体質になる事があるんです。多分度重なる頭痛はそのせいでしょう」
「そ、そうだったんですか…… 」と言った更紗は、随分と複雑な心境の様だ。有難いような、有り難く無いような…… 。かけられるたびに起こる頭痛は酷いものだったし、結局最後は魔法にかかるのであれば、意味の無い能力でしかない気がする。
「まず結論から言いますと、残念ながら記憶や精神に作用する魔法防御力を付与した魔装具なんて物は取り扱っていません。そもそもその類の魔法はご法度なので、防御する必要も無いというが理由です」
エルナトも含め、エルフ型の者が皆馬鹿正直にそのルールを守っているかはに関しては疑問しかないが、店側の建前ではそういう事になっているのでそう告げておく。
「そうなんですね…… 。どうしよう」
俯き、途方に暮れる更紗に対し、クルスが言葉を続けた。
「なので代わりに、魔力を高める魔法を付与してある魔装具を身に付けてみてはどうかと」
「…… 魔力を、高める?」
「そうです。折角ご自身に魔法への高い抵抗力をお持ちなんですから、それを強化してみれば、記憶を保持出来るかもしれませんよ」
「より一層頭痛が悪化したりとかは…… 」
「正直な話、全く検討がつきません。相手の使う魔法がどのくらい強制力のあるものか次第ですね」
楽観的な話はせず、クルスはきちんと推測を述べた。
「アクセサリーの類は普段していますか?」
「いいえ。そんな余裕もありませんでしたし…… 」
(そういった類の物は…… 全部と言っていい程、あの子の物だったから…… 。一つだけ持たせてくれていたペンダントも家を出る時に取られちゃったし)
そう続くはずだった更紗の言葉は、声には出さずにそのまま飲み込んだ。
「でしたら急に何かを身に付け始めたら不審がられるかもしれませんね」
「そんな…… じゃ、じゃあ一体どうしたら」
「そうですねぇ…… 。丁度、希望の魔法が付与されている物の中で、小さな丸いペンダントがあるんです。なのでそれを飾りボタンに改造して、衣類の端っこにでも着けてしまえば目立たないのではないかと」
「そうですね、それならいける気がします!」
「ただ、常時発動する魔法なので魔力の補充が週一くらいのペースで必要ですが、大丈夫ですか?」
「うぐっ」
財布の中身が七音並みに火の車な為、更紗は一瞬どうするべきか迷ってしまった。だが、あの無理矢理記憶を書き換えられる気持ち悪さを思い出し、しっかりとした動きで頷き、「お願いします」と答えた。
「わかりました。一応サーチ系の魔法を使われでもしない限りは魔法が発動している痕跡が見付からない効果も付与されているのですが、出来るだけ相手の目に付かないよう気を付けて下さいね」
「わかりました」
「じゃあ少しお待ち下さい。すぐに加工してお渡ししますから」
「え?でも、店主さんは今不在ですよね?」
更紗の記憶では確か、この店の加工品は全てエルナトの手作りのはずだ。同居している獣人型のクルスは魔物の討伐で家を空けている事が多く、たまに店番をするくらいなものだと近所のおばさん達から聞いた事があったので不思議でならない。
「あぁ、実は俺もこのくらいの加工ならやれるんです。でも他に知られると色々面倒なんで、此処だけの秘密でお願いします」
ちょっと子供っぽい笑みを烏の仮面の下に浮かべながら、クルスが口元に指を立てた。そんな彼の姿を見て更紗は『…… 夫だと言い出した相手が、クルスさんだったら良かったのに』と、ほんの少し、本当にちょっと、一瞬だけ考えてしまった事は墓場まで持って行こうと固く誓った。
すっかり茹で蛸と化した顔を両手で隠し、俯きながら更紗が言った。ここ数日の記憶と、その都度感じた矛盾点を伝える為だったとはいえ、夜の事情まで告げた事に対し面映い気持ちでいっぱいだ。
「えっと、それはとても大変でしたね…… 」
クルスから気不味そうに同情混じりの眼差しを向けられたが、目を合わせる事なんか当然出来ない。十日間もずっと明け方近くまで散々狭いベッドで犯され続けてましたなんてヒト様に話したい内容じゃなかったのだが、改めて他者に話す事で、更紗は少しだけ自分の置かれている状況を再確認出来た気がした。
「あと、ですね…… 。彼の言葉の端々から想像するに、どうやら私達は学生時代からの幼馴染らしいのですが……私、そもそもこの街の出身じゃないんです」
そっと顔から手を離し、更紗はさっきよりも少しだけ顔を上げたが、流石に視線だけはクルスから逸らしたままぽつりぽつりと言葉を続けた。
「その、地元で色々あって…… 県外へ、その、つ、追放…… される形で…… 単身、鞄一つで此処まで来たので…… 幼馴染なんて存在が、この街に居る事自体あり得ないんです」
「なるほど。確かにそういった経緯だと、そんな話をされても不審にしか思えませんね」
「ですよね…… 。——あ、でも!私、犯罪者とかじゃないんです!濡れ衣を着せられて!誰も私の言い分は聞いて、くれ…… なく、て。それで逃げるみたいに、此処に…… 」
「別に疑ったりなんかしませんよ。真面目に働いている姿を知っていますからね」
(逃亡あるいは追放された犯罪者であれば、この街へ辿り着く前に高確率で魔物の餌食になっているからな。此処まで来られた時点で、彼女は罪を犯した者では無かったのだろう。たとえ嘘だったくても軽犯罪以上である可能性は相当低いな。まぁ…… たまに運悪く善人でも襲われるから、彼女がそうはならなかったのは幸いだった)
クルスは獣人型である為、街を出た犯罪者達の末路を知っている。彼女がどういった理由でそんな目に遭ったのかはわからないが、今は関係の無い事だと追求する気はない。
「…… ありがとうございます」
(優しいヒトだなぁ…… )
顔に着けている烏の仮面のせいで口元以外の表情はわからないまでも、クルスの優しい声色のおかげで更紗がほっと胸を撫で下ろした。
勤め先の精肉店に客として来ていたクルスへの第一印象は、彼の仮面と軍人的な格好や風貌のせいで『怖いヒトかも』だった。そのせいで出来るだけ彼とは関わるまいと暫くの間ずっと警戒していた。だが、嬉しそうに精肉店で売っている揚げたてコロッケを店の一角に置かれたベンチに座って頬張る姿を何度も見掛け、『実はちょっと可愛いヒトなのでは?』と感じていた更紗の直感は正しかったみたいだ。魔装具店の店主不在の看板を見た時はどうなる事かと不安を抱いていたのだが、どうやら杞憂で終われそうだ。
「彼が元々居た街から追いかけて来た、といった可能性は?」
「そういった感じの再会をした記憶は全くありません」
そう言って、更紗が首を横に振った。ずっとずっと彼とは一緒だった記憶と、絶対にそんなことはあり得ないと思う気持ちとが頭の中で喧嘩している。
「もしかしたら私が忘れているだけで実はちゃんとこの街で再会したのだとしても、そんな理由でこの街まで来たので、誰かと交際なんかしている余裕なんて当然無いですし、そもそも私は日々の生活で金銭的にも精神的にも精一杯なんです」
楽しいながらも忙しい日々を振り返りつつ一息つき、更紗が言葉を続ける。
「あと、夫婦の割に、部屋には一人分しか無い物の方が多いですし、彼の趣味も好みも何にもわからないんです。あ、でも…… 物に関しては、『新婚だから順次買い揃えている最中だ』と言われると、そうかなって気もしてきて…… 正直自信がありません」
単身者が暮らすには充分な広さの住まいだが、二人で暮らすには狭過ぎる。ベッドもシングルサイズなせいで細身同士であろうがどうしたって狭くって、抱き合って寝ないとスペースが足りないし、常に彼の足がはみ出ている。着替えを取る為に開けたクローゼットの中には男性物の服だって全然無かったし、歯ブラシだとかといった真っ先に買い揃えてありそうな日用品すらもあの家には置かれていなかった。
「…… んー。体感的には話していた感じ、更紗さんが記憶障害を患っているとは思えません。可能性としてあり得そうなのはもう、魔法で記憶を操作されているといった所でしょうかね」
「でも彼はヒト型なので、魔法は使えませんよね?」
クルスの考えに対して更紗が疑問を投げ掛けた。
「あぁ、ヒト型でしたか。すみません、勘違いをしていました。相手の具体的な特徴といえば、細身の高身長であり、金髪アシメショートの不思議な瞳の青年というくらいでしたから。魔法要素のある内容の話だったので、てっきりエルフ型かと。でも…… 彼はヒト型、ですか…… 」
クルスが口元に手を当て、眉間に皺を寄せながら小さく唸った。
不思議な瞳を持つ者は獣人型に多く存在しているので獣人の特徴としてあげる事が出来る。“ヨミガエリ”であれば獣人型であっても魔法が使えるから、あり得ない話ではない。
だがカイトなる人物がヒト型であるとなると、魔法を使う事など理論上絶対に不可能だ。
ヒト型の両親から産まれようとも、魔力を有する身体だった時点でその者は全てエルフ型と分類される外観的特徴を有する。なので問題の相手と性行為にまで至った更紗がヒト型と、エルフ型を見間違える事などないだろう。それは獣人型であっても同じはずだ。となると、何らかの効果を持った魔装具で記憶を操られていると見るのが一番可能性が高い。だがそんな類の魔法を付与した魔装具の販売や作製は犯罪に利用されかねない為禁止されている。そもそも作れそうな者自体ほとんどおらず、この近隣ではエルナトくらいなものだろう。
(…… だが、そんな物は作ってないぞ?じゃあ一体どうやって…… )
在庫帳や制作記録を思い返してみても、その類の注文を受けた記載を見た記憶が無い。その為いくら考えてもわからず、クルスは一旦その疑問を据え置く事にした。
「…… そうだ。更紗さんの親類縁者にエルフ型だった者が居たりはしますか?」
「確か…… 母方にエルフ型のヒトがいたと聞いた気がします。曽祖父とか、その辺りだったかと」
「あぁ、やっぱりそうでしたか」
「よくわかりましたね」
「貴女が魔法に対して抵抗力を持っているみたいだったので。魔法を使えないまでも、血縁者にエルフ型がいた事があると、ごく稀に魔法がかかりにくい体質になる事があるんです。多分度重なる頭痛はそのせいでしょう」
「そ、そうだったんですか…… 」と言った更紗は、随分と複雑な心境の様だ。有難いような、有り難く無いような…… 。かけられるたびに起こる頭痛は酷いものだったし、結局最後は魔法にかかるのであれば、意味の無い能力でしかない気がする。
「まず結論から言いますと、残念ながら記憶や精神に作用する魔法防御力を付与した魔装具なんて物は取り扱っていません。そもそもその類の魔法はご法度なので、防御する必要も無いというが理由です」
エルナトも含め、エルフ型の者が皆馬鹿正直にそのルールを守っているかはに関しては疑問しかないが、店側の建前ではそういう事になっているのでそう告げておく。
「そうなんですね…… 。どうしよう」
俯き、途方に暮れる更紗に対し、クルスが言葉を続けた。
「なので代わりに、魔力を高める魔法を付与してある魔装具を身に付けてみてはどうかと」
「…… 魔力を、高める?」
「そうです。折角ご自身に魔法への高い抵抗力をお持ちなんですから、それを強化してみれば、記憶を保持出来るかもしれませんよ」
「より一層頭痛が悪化したりとかは…… 」
「正直な話、全く検討がつきません。相手の使う魔法がどのくらい強制力のあるものか次第ですね」
楽観的な話はせず、クルスはきちんと推測を述べた。
「アクセサリーの類は普段していますか?」
「いいえ。そんな余裕もありませんでしたし…… 」
(そういった類の物は…… 全部と言っていい程、あの子の物だったから…… 。一つだけ持たせてくれていたペンダントも家を出る時に取られちゃったし)
そう続くはずだった更紗の言葉は、声には出さずにそのまま飲み込んだ。
「でしたら急に何かを身に付け始めたら不審がられるかもしれませんね」
「そんな…… じゃ、じゃあ一体どうしたら」
「そうですねぇ…… 。丁度、希望の魔法が付与されている物の中で、小さな丸いペンダントがあるんです。なのでそれを飾りボタンに改造して、衣類の端っこにでも着けてしまえば目立たないのではないかと」
「そうですね、それならいける気がします!」
「ただ、常時発動する魔法なので魔力の補充が週一くらいのペースで必要ですが、大丈夫ですか?」
「うぐっ」
財布の中身が七音並みに火の車な為、更紗は一瞬どうするべきか迷ってしまった。だが、あの無理矢理記憶を書き換えられる気持ち悪さを思い出し、しっかりとした動きで頷き、「お願いします」と答えた。
「わかりました。一応サーチ系の魔法を使われでもしない限りは魔法が発動している痕跡が見付からない効果も付与されているのですが、出来るだけ相手の目に付かないよう気を付けて下さいね」
「わかりました」
「じゃあ少しお待ち下さい。すぐに加工してお渡ししますから」
「え?でも、店主さんは今不在ですよね?」
更紗の記憶では確か、この店の加工品は全てエルナトの手作りのはずだ。同居している獣人型のクルスは魔物の討伐で家を空けている事が多く、たまに店番をするくらいなものだと近所のおばさん達から聞いた事があったので不思議でならない。
「あぁ、実は俺もこのくらいの加工ならやれるんです。でも他に知られると色々面倒なんで、此処だけの秘密でお願いします」
ちょっと子供っぽい笑みを烏の仮面の下に浮かべながら、クルスが口元に指を立てた。そんな彼の姿を見て更紗は『…… 夫だと言い出した相手が、クルスさんだったら良かったのに』と、ほんの少し、本当にちょっと、一瞬だけ考えてしまった事は墓場まで持って行こうと固く誓った。
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