ショタ神様はあくまで『推し』です!

月咲やまな

文字の大きさ
上 下
48 / 61
【幕間の物語・③】

右近と左近②

しおりを挟む
「「巴巫女神様!」」
 二羽が急に振り返り、声を綺麗に揃え、左近と右近が巴の名を呼ぶ。これからカムイの待つ部屋まで行こうと共に歩いている最中だったのだが、今日はいつもとは違って、何やら巴に相談がありそうな様子だ。
「何でしょう?」
 歩みを止め、小首を傾げながら巴が訊くと、左近が「……御主神様のお世話のコツを私共にお教え頂けませんか?」と真剣な眼差しを彼女に向けた。
「……コツ、ですか」

(えっと、そんなものは無いなぁ……)

 そのせいで巴が返答に困っていると、右近が眼下に広がる広大な森を翼で指し示した。
「巴巫女神様が奉仕をなさる様になって以来、驚く程早い速度で“神域”の塗り替え作業が進んでおります。いらっしゃる前と後では、下の様子が雲泥の差なのです。これにはやはり何か大きな理由があるとしか……」

 左近の言葉に右近も頷く。どうやら二羽共同じ事を考えているみたいだ。
 巴よりも一週間程早くカムイは宵闇市の“土地神”として就任し、同時期に彼の眷属となった左近と右近は神経も気力も神通力をも削られていく塗り替え作業の助けになればと、必死に世話係の仕事を勤めた。だが、前任神・稲雀大神の元に仕えていた時の様に舞を披露してみたり、俳句を披露したり、茶を立てたりしてみても良い反応は得られなかった。親が子供を見守る様な、機嫌次第では興味の欠片も無さそうな……。そんな態度や無関心さを目の当たりのすると、何をするべきで何を行えばカムイの励みや助けになるのか皆目見当も付かずに困り果てていたのだ。

(これならば、当たり散らされた方がまだマシだ)

 そう思う瞬間も多々あった。
 舞などの技能は『いずれは此奴らも“人の世”に戻るだろうから、芸の一つも身に付けておいた方が良いじゃろう』という稲雀大神の配慮から学ぶ事になったのだが、そういった意図も知らず、長年に渡り女神に披露してきたものだった為、『これこそが世話係の勤め』だと思っていた。なのにそれを喜んではもらえないとあってはどうしたらいいのかと悩みに悩んでの質問であった。

 それらの奉納を楽しんで頂けている気がしない。彼等はそう素直に巴に話した所、彼女は成る程と一度深く頷き、「それならば、何もしないでお茶だけお出しして、あとはもう放置しておいてはどうでしょう?」と告げた。

 何もしないを、行う。

 意味がわからず二羽は困惑したが、週末にそれを実行してみた所、自分達が必死に行動していた時よりも塗り変わっていく範囲が広かった。巴が来ている平日とは比べ物にならぬものではあるものの、あれこれと悪戦苦闘していた時よりも確実に広がっていたのだ。
 ——これにより二羽の巴に対する信頼度がぐんと上がった。その『おかげ』か、はたまた『せい』と言うべきか。カムイの新たな“神域”の秘匿性が一層高くなり、カムイの暴走行為が外界に知られる心配は皆無となったのであった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

思い出してしまったのです

月樹《つき》
恋愛
同じ姉妹なのに、私だけ愛されない。 妹のルルだけが特別なのはどうして? 婚約者のレオナルド王子も、どうして妹ばかり可愛がるの? でもある時、鏡を見て思い出してしまったのです。 愛されないのは当然です。 だって私は…。

拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした

結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【ある日僕の元に許婚から恋文ではなく、婚約破棄の手紙が届けられた】 僕には子供の頃から決められている許婚がいた。けれどお互い特に相手のことが好きと言うわけでもなく、月に2度の『デート』と言う名目の顔合わせをするだけの間柄だった。そんなある日僕の元に許婚から手紙が届いた。そこに記されていた内容は婚約破棄を告げる内容だった。あまりにも理不尽な内容に不服を抱いた僕は、逆に彼女を遣り込める計画を立てて許婚の元へ向かった――。 ※他サイトでも投稿中

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

捨てられた王妃は情熱王子に攫われて

きぬがやあきら
恋愛
厳しい外交、敵対勢力の鎮圧――あなたと共に歩む未来の為に手を取り頑張って来て、やっと王位継承をしたと思ったら、祝賀の夜に他の女の元へ通うフィリップを目撃するエミリア。 貴方と共に国の繁栄を願って来たのに。即位が叶ったらポイなのですか?  猛烈な抗議と共に実家へ帰ると啖呵を切った直後、エミリアは隣国ヴァルデリアの王子に攫われてしまう。ヴァルデリア王子の、エドワードは影のある容姿に似合わず、強い情熱を秘めていた。私を愛しているって、本当ですか? でも、もうわたくしは誰の愛も信じたくないのです。  疑心暗鬼のエミリアに、エドワードは誠心誠意向に向き合い、愛を得ようと少しずつ寄り添う。一方でエミリアの失踪により国政が立ち行かなくなるヴォルティア王国。フィリップは自分の功績がエミリアの内助であると思い知り―― ざまあ系の物語です。

【完結】召喚された2人〜大聖女様はどっち?

咲雪
恋愛
日本の大学生、神代清良(かみしろきよら)は異世界に召喚された。同時に後輩と思われる黒髪黒目の美少女の高校生津島花恋(つしまかれん)も召喚された。花恋が大聖女として扱われた。放置された清良を見放せなかった聖騎士クリスフォード・ランディックは、清良を保護することにした。 ※番外編(後日談)含め、全23話完結、予約投稿済みです。 ※ヒロインとヒーローは純然たる善人ではないです。 ※騎士の上位が聖騎士という設定です。 ※下品かも知れません。 ※甘々(当社比) ※ご都合展開あり。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

処理中です...