ショタ神様はあくまで『推し』です!

月咲やまな

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【幕間の物語・②】

一緒に入浴

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 とある日の夜。食事を終え、お次は順番に入浴しようと準備をしていた時の事だ。
「今日は一緒に入浴せぬか?」
 バスタオルを腕に抱えているカムイが着替えの用意をしている最中だった巴を見上げながらそう言った。
「…… 一緒に?」
 同居する事になって数日。毎日入浴は別々だったから彼はまだ小さいが一人で体を洗えるはずだ。なのにどうしてそんな要求をして来るのだろう?と巴は不思議に思う。

(大丈夫そうだったけど、実は不安だったのかなぁ)

 そういえば弟妹達が同じくらいのサイズだった時はまだまだ一緒にお風呂に入ってあげていたなと昔を思い出し、懐かしさも相まって巴はカムイに「うん、いいよ」と返してしまった。思い出に浸ってしまっているからか、彼はちゃんと中身と外見が一致しているのだろうか?などといった疑問はすっかりすっ飛んでしまっているみたいである。

 自分でお願いしておきながら、どうせ断られるだろうと考えていたのだろう。カムイは目を見開き、しばらく黙る。「——いいのか?」と少し大きめの声で返したのは不自然に数秒の間が開いた後だった。
「狭いけど、平気?」
 矮小だと文句を言いたくなる程ではないが、所詮は単身者向け物件のお風呂だ。女性である巴ですら脚を伸ばして入る事が叶わないサイズなので二人で入るとなると流石に狭い事が気に掛かる。
「平気じゃ」
 明らかにソワソワとした様子でカムイがそう返す。そして巴の服を掴み、風呂場に彼女を引っ張って行った。


       ◇


 簡単に汗だけをお湯で流し、カムイが先に湯船に浸かる。交代で体を洗おうと決め、まず最初は巴が体を洗う事になったのだが、先程から視線が気になってしょうがなかった。
「…… どうしたの?何か気になる事でもあった?」

(あ…… やっぱり、この黒いのが気になるのかな)

 きっと体中にある呪いらしき黒い痕跡が気になっているに違いないと巴は考えた。初めて見せた時には『見事だ』『綺麗だ』と言ってはくれたが、所詮は社交辞令だったのかもしれないとも。

「相変わらず、綺麗だなと思ってな」

 予想外の返答だったせいで巴は一瞬返事に困ってしまった。呪いかもしれないっていうのに、怖いとも思わないなんてさすがは“神様”だ。
「…… ぅ。あ、ありがとう」
 弟妹達と入る感覚でつい、タオルも巻かずに全裸のまま風呂場に入ってしまった事を彼女は後悔した。彼の体は五歳程度のサイズではあるが中身が何歳なのかは巴には不明なままだ。訊いてよいものなのかもわからず今まで流してきたが、駄目元ででも訊いておくべきだったかもしれない。

 髪を洗い、体をボディタオルで撫であげている時も彼はじっと見てくる。そのせいで巴は妙な気分になってきた。視姦されているとまではいかないが、視線が肌を撫で滑っていく様な錯覚が彼女を襲う。

(——っ!もう今日はテキトウに洗って、パッと交代しよう!)

 洗顔もそこそこに、「交代しようか!」と巴が言う。そして顔をカムイの方へ向けた瞬間、無自覚にゴクリと大量の唾を飲み込んでしまった。湯船にしっかりと浸かり、長い白髪を適当に後ろで結い上げている彼の姿を見たからだ。水が滴り、お湯で血行の良くなった肌と濡れる唇が何故か不思議と色っぽい。湯船に寄り掛かる仕草やその表情は完全に大人のそれだ。
「もういいのか?」
 邪魔な髪をかきあげながらそう訊く仕草にすらも妙な艶がある。『もう二度とカムイ君とはお風呂に一緒には入らないぞ!』と巴が瞬時に誓った程、全てが全て五歳程度の小さな子が持つべき風貌からはかけ離れていた。
「うん」
 片腕で大きめな胸を出来るだけ覆い、脚で秘部を必死に隠しながら湯船に浸かる。その間の一挙手一投足を全て見られている様な気がして、巴はまだお湯に浸かってもいないのにもうのぼせて倒れてしまいそうだ。

 場所を交代し、今度はカムイが体を洗い始めた。巴から見れば多少の雑さはあるものの、髪も体もしっかりと洗っていく。入る直前までは『背中でも流してあげるか』と彼女は思っていたのだが、今はその言葉を言う気にはなれない。ただ身長が低いというだけで、不思議と大人の男性っぽい雰囲気があり続けているせいだ。

 シャワーで泡を流し終え、長い髪を再び結い上げてカムイが湯船に再度入ろうをした。何となく『先にあがる』とも言えず、そっとスペースを開けようとしたその時、不覚にも彼の下半身に目がいってしまった。好奇心などといった気持ちから見ようとして見たというわけでは無かったからか、驚きと気まずさと背徳感とか入り混じった感情が巴を襲い、体がぴたりと固まってしまった。

(——弟達のと、なんか違う!)

 じっと見られ、「…… 何か、気になるのか?」とカムイが首を傾げる。
「いいえ!何でもございません!」
 咄嗟に出た言葉が可笑しなものだったせいか、カムイが笑い、「そうか」と言いながら湯船に浸かった。大人の女性と子供サイズの男性。それでもやはり二人で入るには狭く、どうしたって肌が密着してしまう。
「私は先に出ようかな」
「ならばワシもあがろう」
「え、でもまだ温まってないでしょ」
「じゃが、巴と一緒がいい」
 少し拗ねた顔をしながらそう言われては断れない。結局カムイの体がしっかりと温まるまで、二人は密着しながら湯船に浸かった。巴はその間ずっと恥ずかしさでいっぱいだったが、必死にその思いは表情には出さない様にしていた。


       ◇


 風呂から二人が上がり、カムイが大きめのタオルで髪を拭く。
「また一緒に入ろうな」
 血色の良い顔に笑顔を浮かべながら言われた巴は、つい「…… はい」と返してしまった。そのうえ夜には、やたらと既視感のある巨体で白髪の男性と激しい“営み”を繰り広げる夢を見てしまったのだが、巴は『そんな夢は見ていないっ!』と記憶に分厚い蓋をしたのだった。
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