眠り姫の憂鬱

月咲やまな

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番外編(むしろここからが本編じゃ?って内容となっています_(:3 」∠)_)

発病時は安静に③

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『…… え』
「…… わぁ♡」
 絶望感丸出しのアステリアの声と、歓喜に満ちたヒョウガの声がかぶる。
「私に触れられて気持ちいいんですね。あぁ、こんなに濡らして…… 」と言いながら半端にお尻の下で放置していたショーツを更にヒョウガがずらし、陰部とじっとりとした布の間をつなぐイヤラシイ糸を見て、彼の瞳がとろんと溶けた。
『ちがっ!』
「何が違うのです?コレはどう考えたって、ねぇ」
 呼吸を荒げ、ヒョウガの口元が弧を描く。
 アステリアにはヒョウガの黒目の部分が、一瞬ハートマークになているように見えたくらい興奮している。目の前で、完全に無防備な状態になっているままの体と、そのすぐ隣で肌を赤らめて高揚している精神体の相反する反応が刺激的過ぎて、ヒョウガは今にもイッてしまいそうだ。

「あぁぁ…… 私の、私だけの可愛い人」

 うっとりとしながら、くぷんっと指先を陰部の中に軽く挿入する。ちょっと入っただけなのに、アステリアが『んぁぁ!』と甘い声をあげながらベットの上へ完全に倒れ込んだ。
 体温の高い体の中は当然のようにかなり熱く、その中へ冷たい指先が入ってきたものだから、正直ちょっと気持ちがいい。毎晩のように、調教でもされるかの如く開発された蜜壺では、ちょっとした刺激を与えられただけでも奥から次々とイヤラシイ蜜が溢れ出してくる。こうなってきたら、いつもならすぐさま奥の方へと指を押し込み、一番気持ちいい箇所を丹念に攻めあげてくるヒョウガなのに、今日は第一関節分程度しか入れぬまま、ただただた入り口付近を弄るだけだ。たまに軽く肉芽をかすったりはするものの、それは意図した行為ではなさそうで、基本刺激が少ない。

 焦ったい…… 。

 言葉にならぬ思いからアステリアが少し身をよじったが、所詮今の彼女は精神体でしかなく、どんなに動こうともヒョウガの指の感触が奥へと入ってくる事は無い。体から伝わってくる感覚が精神こちらを狂わす事はあっても、眠る体の方を動かす力までは持っていないので、もどかしい気持ちで胸が苦しくなってきた。

 指に蜜がたっぷり絡むと、ヒョウガはアステリアから指を抜き取り、白い双丘を押し開き、奥に眠る蕾を露わにする。未開発であろうともヒクヒクと物欲しそうにしているソレに対し、勢い余ってヒョウガが軽いキスをすると、アステリアが『ギャァァ!』と酷い声をあげ、顔色が一気に悪くなった。

『な、何?何です?今のは…… 』

「だから、私は貴女の夫であり、痴漢じゃないのであまり変な声をあげないで下さい。何を企んでいるのかと心配せずとも、よ」

『今、は⁉︎』

「おっと失礼。イレマセン、イレマセンヨー」
 棒読みで言われても信じられる訳がない。
 我が身を抱きしめながら、じわじわとヒョウガから離れていく。だが、いくら広めではあってもベットの上では逃げる距離に限界があり、アステリアはすぐに逃げ場を失う事に。
「あ、でも今日はコレだけは入れさせて下さいね」
 にこりと笑いながら、ヒョウガがポケットから小さな袋を取り出す。その中から白くて小さな細長い物を一つ出すと、親指と人差し指とでソレを挟んで自身の顔の近くにやり、小首を傾げてみせた。

『…… 何ですか?ソレ』

 アステリアの問い掛ける声は小さく、とても震えている。
「コレですか?座薬ですよ」

『ざ…… ざやく?』

「はい、座薬です。決して、魔力で動く怪しい大人向けの玩具ではないので、ご安心を」
 お上品な育ち方をしたアステリアは、ヒョウガの言った言葉の意味を半分も理解出来なかったが、わからな過ぎてスルーする事にした。

『で、ソ、ソ、ソレを、一体貴方は、ど、どうするおつもりで?』

「もちろん、この、愛らしく物欲しそうにしてくれているココへ入れるんですよー」
 蜜で濡れる指先で、ヒョウガがアステリアの双丘奥に潜む蕾を撫でてよく濡らす。熱っぽい眼差しをしながら丁寧に優しく撫でられ、『ふぁぁぁっ!』と叫びながら彼女が背を逸らした。
「ここ数十年の間で開発されたお薬の形状なので、アステリアが知らないのも無理ないですよね。コレは肛門や膣に挿入するタイプのもので、成分を直接吸収出来るので、肝臓を通過しないおかげで薬が分解されにくく、比較的安定した効果を得ることが出来るんですよ」

『…… 』

 アステリアの頭の中に疑問符がいっぱい浮かぶ。砕いて話してもらおうとも、肝臓がどうこうとちょっとでも医学的話しになってしまうとまだまだ教養が追いつかない。薬である事だけは理解出来たが、恥ずかしい事には変わりなかった。

 だから?で?——イヤなものはイヤ!

『そんなモノを入れたりなどしたら、もう貴方とは離婚です!』

 涙目にはなってしまったが、きっぱりはっきりとした口調で言い切る。
 アステリア的にはきっと、ヒョウガは獣耳とふさふさな尻尾をしゅんとさせながら『それだけは勘弁してください』と懇願してくるに違いないと予想していたのだが——

「あぁ?」

 闇落ちした者かのようなドスのきいた声がヒョウガから聞こえ、アステリアは彼に対して一番言ってはいけない台詞を自分は発してしまったのだと咄嗟に理解し、そして激しく後悔した。
 先程まではたおやかなだった彼の尻尾の毛が一斉に逆立ち、黒い煙にも似たモノがヒョウガの体から立ち昇る。涼やかな目鼻立ちはキツく険しいモノとなり、今にも指先に持つ薬を砕きそうな勢いだ。

「…… 私からアステリアを奪うと言うのですか?そんな事、たとえ本人だろうが、私が許すとでも?」

 淡々とした口調が余計に怖い。
 首を軽く傾かせ、ヒョウガがアステリアに視線を投げる。ただそれだけの事なのに、彼女は寿命が縮まる思いだった。

『ご、ごめんなさい…… 』

 歯と歯がぶつかり、ダカダカと音が鳴る気がする。夫が怖い、と心底アステリアは思ったが、同時に深過ぎる愛情を垣間見た気もした。
「あまり巫山戯た事を言うと、私の部屋に閉じ込めて一生出しませんからね。王としての業務も全て放棄し、ずっとアステリアを孕ませる為だけに抱き潰し続けるので、そのおつもりで」

『無理!ソレは確実に速攻で死ぬわ!』

「本当は今すぐにでもそうしたいところを堪え、愛おしい貴女にもっとも相応しい立場と生活を与える為に日々努力しているのですから、少しは私の事を認めて下さい」

 この国で最高の地位を贈り、美しい物で彼女の周囲を囲み、したことのない経験を共にする。

 アステリアの全てを自分色に染め上げたい欲求だけをやや強めに満たす事で、巣に押し込んで孕ませ続けてしまいたい衝動を日々必死に堪えている。夜はどうしたって本能の方が強くなってしまい、立場的にも世継ぎが欲しいという事もあってつい暴走してしまうが、まぁ本当にしてしまいたい行為と比べればぬるいものだろう。
 だがそんな想いは個人的な問題なので話す気などなかったので、怒り任せに言ってしまった事を後悔し、ヒョウガは軽く肩を落とした。怯えきったアステリアの精神にも悪い事をしたなと思ったが、謝る気は無い。これは引く気の無いラインの話で、当然だった。
「…… わかりましたか?アステリア」

『は、はい』

 穏やかだが、有無を言わせぬ表情のせいで、アステリアは頷くことしか出来ない。どこにももう自分は逃げられぬのだと思うと、先行きが怖くなった。
「よろしい」と言いながら頷き、次にヒョウガが顔を上げた時にはもういつもの優しい笑顔になっていた。愛情に溢れ、妻が好きでならないと目を合わすだけで伝わる程穏やかな顔だ。

『貴方の言葉など信じられない』と言われた事があったので、態度で伝える努力を彼はあの日以来ずっと続けている。アステリアを何者にも奪われないよう、逃げられない為に。


【続く】
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