眠り姫の憂鬱

月咲やまな

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番外編(むしろここからが本編じゃ?って内容となっています_(:3 」∠)_)

発病時は安静に②

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『あ、ありがとう…… 』
 横抱きにされ、ベッドの上にヒョウガがアステリアをおろす仕草をする。精神体に対して果たしてそれが本当に意味のある行動なのかは不明だが、その行為をアステリアが受け入れたからなのか、天蓋から連れ出して運び、ベッドにおろされるという流れをきちんとおこなう事が出来た。
「どういたしまして」
 優しい笑みを浮かべながら言われ、アステリアの胸の中がキュンッとときめいた、気がした。気のせいであるとすぐに打ち消そうとしたが、そうしようと思えば思う程、ドキドキが止まらない。

『熱があるせいかしら、胸が苦しいわ』

 ぐっと胸を押さえ、ベッドの上でアステリアが軽く丸まる。
 綺麗な寝姿をしている体の横で精神体にコレをやられ、ヒョウガの脚から力が抜けてその場にガクンッと膝をついた。ベットの上に腕を伸ばし、シーツに顔を伏せる。プルプルと体を震わせて口呼吸を繰り返すヒョウガの姿を見て、アステリアが心配そうに体を起こした。

『どうしたんですか?まさか体調が悪いのでは?こちらの事は侍女たちに任せて、貴方も休まれては?』

「い、いえ…… 大丈夫です。ただアステリアが可愛くって可愛くって即座に喰べたいなと思う気持ちを堪えているだけなので」
 顔は伏せたまま、片手だけをあげて言ったヒョウガの言葉を聞き、アステリアが『…… うわ』と言いながら一歩分身を引き、心底気持ち悪そうな顔をしている。
「えっと、ここは気を取り直して、体を拭きましょうか」

『いやです、やめて下さい。ちゃんと寝ますから帰ってもらえませんか?』

 シーツの上でペタンと座り、アステリアがブンブンと首を横に振る。真顔で言われ、ヒョウガの心が少し傷ついたが、先程の彼女の姿を思い出してあっさりと復活を遂げた。
「まぁまぁ、そう言わずに、ね。きちんと汗を拭かないと、体に戻った時に気持ち悪いでしょう?」

『まぁ確かに…… その通りですけども』

 渋々といった様子で、アステリアがヒョウガから視線を逸らす。何度も毎夜見られているとはいえ、今はまだ昼間だ。レースのカーテン越しに豪奢な部屋には優しげな光差し込み、全てを晒している。こんな明るい部屋の中で彼に肌を見られるのだと思うと恥ずかしくってしょうがない。
「だから、ね?私にお任せ下さい」
 不自然な程の笑顔を向けられ、うっとアステリアが喉を詰まらせた。正直全く信用出来ない笑顔だ。でもだからといって、このまま断ってもどうせ押し通されてしまう事は、火を見るより明らかだった。

『わ…… わかり、ました』

 ぶすっとした顔でこぼす“声”を聞き、ヒョウガの胸にアステリアの可愛さが思いっきり刺さる。
 妻が可愛くって辛い…… 。
 が、必死にその感情を隠し、「はい。お任せ下さい」と返した。ついいつもは正直に感情のまま動いてしまう尻尾も微動だに動かなかったので、アステリアはすっかりヒョウガの言葉をそのまま信用し、ちょっと端の方へ避けた。
 ただ必死に尻尾が動かないよう堪えていただけなのだが、信用させる事に成功し、ヒョウガが心の中でガッツポーズを取る。

(触れる許可さえもらってしまえばこちらのもの。当初の予定通り、隅々まで看病してあげますよ、ふふふ)

 高揚する気持ちをぐっと心の奥に押さえつけ、ヒョウガが再び水桶の中の水を魔法で温める。
 彼の体温よりも少し温かいくらいの温度になると柑橘系の香りがふわりと漂い、体を通してそれを感じとったアステリアの表情が穏やかに緩む。そんな彼女の嬉しそうな顔を見て、ヒョウガはこれから彼女にしようとしている事をへの背徳感を強く感じ、ゾクリと快楽に打ち震えた。
「さぁ、汗を拭きましょうか」
 表情だけ見れば、すっかり優しい看護師のようなヒョウガなものだから、アステリアがほっとした顔をする。邪魔にならぬようすみっこで大人しく座り、ちょっと気恥ずかしい気持ちは抱きながらも、彼女は自分の体をヒョウガの好きにさせてやる事にした。

 先程のように頰から汗を拭き、額や首筋を優しくぬぐい、夜着の胸元のリボンを解いて寝ていてもなお深い谷間も綺麗にタオルで撫でていく。丁寧に、ヒョウガはアステリアを介護でもするような動きで、少しずつ前をはだけさせ、力の全く入っていない体から夜着を脱がせていった。
 最初は平然とその行為を享受していたのだが、どんどん露出面積が増え、上下共に下着姿になってしまった辺りで、流石に不安を感じ始めた。
 だが、ヒョウガは相変わらず穏やかな表情で淡々と体を拭いてくれているので、『やめて欲い』とは言い辛い。イヤラシイ気がすると勘繰っている方が間違いなのかもと思ってしまう程、あまりに普通に看病をしてくれているからだ。

 シーツの上でペタンと座り、じっと様子だけを伺い続ける。何かあってから言えばいい、ヒョウガには伝わらない程度の曖昧な思考の中でそう漠然と思っていると、彼がくるりとアステリアの体を回転させて、体をうつ伏せの状態にした。
「次は背中を拭かせていただきますね」

『お…… お願い、します』

 汗っぽい背中に手を近づけ、ヒョウガがアステリアの胸を覆っていたナイトブラを脱がせていく。まっさらな姿でベットの上で横になっている様子を見ていると、アステリアは精神体の方の胸元までスースーしてきた気がした。
「あぁ、やはり寝汗が酷いですね。シーツも交換した方が良さそうだ」
『そこまでは後ででいいです』
「おや、そうですか?でも明日の朝一ではやってあげますね」
『何も貴方がやらなくても、誰かに頼んでは?』
「いえいえ。私が看病する、と言ったじゃないですか」
 アステリアの無防備でぐったりとした姿をあまり自分以外には見せたく無いヒョウガは、迷わずに言った。

 またタオルを濡らし、絞り、アステリアの背中をヒョウガが丁寧に拭いていく。熱による寝汗が多かったせいか香る匂いが先程よりも濃く、彼の鼻奥を優しく擽る。抑えようと思っても否応なしに呼吸が苦しくなり、ヒョウガがゴクリと唾を飲み込んだ。

『どうかしましたか?』

「いえ、何もありませんよ」
 つい咄嗟の事で取り繕ったような笑顔での返答になってしまったが、手つきにいやらしさが出ないで済んだ為、アステリアには異変がバレずに済んだ。

(危ない危ない、意外に勘がいいですねぇアステリアは。…… あぁそれにしてもホント、いい香りだ。すぐにでもこの狭い背中に突っ伏し、存分に匂いを嗅いで、全体を舐め倒し、前面の胸に手を埋めたいものです。精液をたっぷりと撒き散らして、指で伸ばしてしまうというのも、白いこの肌にはよく似合いそうだ——)

 卑猥な考えがつい口元に出てしまい、『…… ヒョウガ?』とアステリアに声をかけられ、ヒョウガがハッと我に返る。危ない危ない、と気を取り直し、彼はなんとか全身をタオルで拭き終えた。

「これで終わりです。さて、どこかまだ拭いて欲しい箇所はありますか?」
 ショーツの中はまだではあるが、そんなとこまで拭いてくれとは言いたく無い。流れで何をされるか、誰であろうが安易に予想がつくからだ。なのでアステリアは笑顔で『ありません』と答えたのだが、見事にヒョウガに思考の流れがダダ漏れだった様で、「了解です!御要望に従いましょう」と敬礼をしながら元気にヒョウガが返事を返した。

『いゃ、む、や——』

 慌て過ぎてまともな言葉にならない。
 ヒョウガの方へと手を伸ばしたが、ペロンッとショーツを下げられ、たわわで程よく引き締まった形のいいお尻がいとも簡単に晒されてしまった。

『ひゃ!』

「…… んー思った通り、こちらも汗でベトついていますね、ふふふ」
 うっとりとした表情を隠す事なく、ヒョウガが言った。
「これはもう隅々まできちんと拭いてあげないと」

『ざっくりとでお願いします!』

 こうなってはやめてはもらえないのはわかっているので、せめて簡易的にと頼んでみる。だがそんな要望をヒョウガが聞いてくれることなど当然無く、腕や脚を拭いてくれていた時とは違う手つきのせいで、精神体の方がびくっと震えた。
『ま、まさか…… 今まで普通に拭いてくれていたのは…… 』

 油断させて、ほぼ全裸な状態にする為⁈

「いえいえ。看病ですよーちゃんと。でもご褒美くらいはもらってもいいですよねぇ」
 ぷりんっとしたお尻の上に濡れたタオルを置き、両手をその上にあてて優しく揉んでくる。汗を拭くよりも、揉む方がメインになっていて、ヒョウガの息があがっていく。

『や、あ、むっ!』

 上下左右と楽しそうに揉む感覚が全て精神体に伝わっていき、座るアステリアがその場で悶える。くすぐったいやら気持ちいいやら、でも怠いから頭がふらつくやらでもう、頭はパンク寸前だ。

 ぐちゅっ——

 淫猥な音が不意に二人の前でたち、同時に動きが止まった。


【続く】
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