眠り姫の憂鬱

月咲やまな

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番外編(むしろここからが本編じゃ?って内容となっています_(:3 」∠)_)

発病時はお大事に(ヒョウガ談)

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「…… 私に触らないで下さいませんか」
 横になっている私を見下ろすアステリアの視線が冷たい。可愛い妻が目の前にいて、触れるなとは貴女は東洋にいるとかいう噂の鬼ですか。冷たい物が欲しい状況ではあるが、それは今勘弁して欲しい。
「何故です?触れられる距離に、貴女が居るのに」
 私の本心をそのまま伝える。彼女の考えは私には伝わってくるが、逆は無理なので言葉にするのはとても大事なことなのだ。
「何故ですって!?そんな事は一番貴方が身体で解ってるじゃありませんかっ」

(この獣は、たまに言葉が通じていないんじゃないかしら。ホント困るわ)

 頭の中に直接響く言葉まで冷たいが、ソレがまた心地いいと感じても、私は心からアステリアを愛しているのだからしょうがないだろう。なので私は決して変態では無い…… はず。

「風邪で熱がある人は、黙って寝ていなさい!」

 彼女のベットを占有し、熱で大量の汗をかきながら横たわっているくせに、妻のお尻を当たり前の様に撫でてしまう私の手を払い除けながらアステリアがヒステリックに叫んだ。
 私に会う前まではこう大声をあげるタイプでは無かったのに、すっかり元気に…… あれ?私の、せいか?もしかして。

 気を取り直し、触る方に没頭する事にする。重ねまくっている布越しであろうともわかるほど妻のお尻は良い触り心地で、無心になってしまいそうだ。
「無理ですよぉ、『是非とも触って』と言わんばかりに目の前でお尻を振られたら、触らない男など男じゃない」
 熱で朦朧としているくせに、キッパリハッキリと言い切る。
 あれ?私ちょっとカッコイイかも!と、煮詰まった頭で一瞬思ってしまった。
「ば、馬鹿なのですか?ちょっと貴方の目の前を歩いただけです。意図的にお尻を振ったりなど、この私がする訳が無いでしょう!!風邪の時くらい、その異常なまでの性欲は減退して欲しいものだわ!」

(ゆっくり寝てくれないと、治るものも治らないじゃ無いの)

「まあまあ、あまり叫ぶと喉を痛めますよ?」
 熱で顔を真っ赤にしながらも、二重に聞こえるアステリアの言葉に対し笑みが溢れた。
 表情を読み解かなくとも、心配の裏返しで態度がキツイのだとわかるので、聞こえる事を心底嬉しく思う。今の注意力では仕草や表情からだけでは、彼女の本心を読み解く自信が流石に無いので、この仕様は本当にありがたい。
「叫ばせているのは、他ならぬ貴方でしょうに…… もう」

 ベットの脇にある腰位の高さしかない棚の上に、熱湯の入る桶が一つ。その中に、持っているタオルをゆっくり浸すと、アステリアが溜息をついた。
「こんな事、本当ならば召使にやらせる事ですよ?何故この私が——」
 ブツブツと呟くアステリアの事など全く気にする余裕は無く、私はベットの上で上半身を起こし、着ているパジャマの上を勢いよく脱いだ。体は熱いのに肌に当たる空気は冷たく感んじ、全身に悪寒が走る。
 半裸のままぼぉっ視線を彷徨わせ、座ったままでいる。すると、高い熱のせいで汗の雫が大量に肌の上を伝い落ちている様子を、じっと見ているアステリアが目に入った。手にはお湯に濡れたタオルを持っていて、ちょっと気恥ずかしそうだ。
「…… 熱、思っていたよりも高そうですね」
「すみません、体調管理の出来ない奴で」
 そう答えて苦笑する。
「本当にそうね、こんな季節に風邪だなんて」
 私の肩にそっと手を置き、熱いタオルで汗を拭いてくれる。嫌そうな事を言っていたのに、手つきは優しくってちょっと嬉しくなった。
「ありがとうございます。どうしてもアステリア以外の人間に触られたくないものでね」
「…… これっきりですよ。次は無いと思いなさい」
 あまり力を入れずに優しく背中の汗をふき取り、また桶の中へとタオルを戻す。ギュッとそれを再び絞ると、今度は前を——

(女性みたいな白い肌と、細くすらっとしたラインなのに、しっかり筋肉質だなんて。ちょっとドキドキしてしまうとか…… 正直悔しいわ)

「うぐぐっ」と言葉を詰まらせるアステリアの考えている事がありありと流れ込んできて、ちょっと照れてしまう。
 いつもノリと勢いで彼女を抱いてしまうので、こうもまじまじと体を見られた事があまりなかったが、改めると随分と恥ずかしいものなのだな。

(ホントに綺麗だわ。獣にしておくには惜しいと思うほど程——いや、獣だからと言うべきなのかしら…… )

 読まれている事にまだ慣れていないのか、ここまできてもまだ頭の奥底ではピンとこないのか、アステリアにとっては聞かれても平気な内容の範囲なのか、正直過ぎてこっちの頬が熱くなる。熱ですでにもう赤いので、照れているとはバレていないのが救いだ。

「見惚れてくれていますね?」
 ニコッと微笑み、アステリアの肩に手を置いてみる。嬉しくって触れたい気持ちが我慢出来ない。具合が悪いからか、尚更欲求を抑える事が難しい。
「そんな訳がないでしょう?自惚れないで欲しいわっ」
 私に本音を言の葉にされてしまった事で恥ずかしさを感じたのか、胸を拭いてくれる手つきがちょっと雑になる。
「あ、あの…… アステリア?」
「何ですかっ」
 ごしごしと汗を拭いながら、ちょっとイライラした声でアステリアが返事をしてくれる。
「…… あまり、その…… 乳首ばかり擦るのは、ちょっと流石に私でも——」
 擦られて痛いとまではいかないのだが、刺激が続くと下腹部に影響するので今は勘弁して頂きたい。
「え⁉︎あっ!や!」
 一気にアステリアの頰が真っ赤になる。勢いよく私から距離をとったせいで、濡れるタオルをベットのシーツの上に落としてしまった。
「アステリアから誘ってくれるなんて嬉しいな」
「そんな訳ないでしょう!?勘違いし過ぎです!」
 シーツに落ちたタオルを拾い上げ、アステリアへと差し出す。
「…… 続けて?」
 風邪のせいで熱っぽくなっている瞳でアステリアを見詰め、そうお願いしてみる。姑息かとは思ったが、悔しいけど、そんな表情に心が揺らいでくれたみたいだ。
「…… はい」
 珍しくアステリアが私に反発せず、素直にタオルを受け取り、そのタオルで再び熱い体を拭き始めてくれる。
 顔は赤く、ちょっとだけ夜伽の時みたいで色っぽい。そう感じてしまうせいか、はたまた体調のせいなのか、息遣いが少し荒くなってきた。

(ヒョウガったら、無理をしているんだろうか?)

 アステリアの気遣う“声”が心に染みる。
「…… 大丈夫?」
「えぇ、体調は大丈夫です。でも…… ちょっと肌が熱のせいで敏感になっているみたいで——」
 言葉が途切れ、ちょっと黙る。
 お願いしたい事があるのだが、言ったら怒るだろうか?だが、言わない後悔よりも言う後悔の方がマシだともいうし。
「アステリア、お願いがあるんです」
「何ですか?」
 いつもなら内容も聞かずに問答無用で『嫌です』と答えるアステリアなのに、何故かそうは返ってこなかった。私が今は弱っているからだろうか?
 ならばもう、この言葉を言うべきチャンスは今しかないだろう!

「私を抱いてくれませんか?」

 真剣な表情で、タオルを持つアステリアの手首を掴む。とうとう言ってやった!と思う気持ちが表情に出ぬよう気を付けて、じっとアステリアの返事を待つ。

 鬼が出るか蛇が出るか——結果がちょっと怖い。

「…………はい?」
「アステリアが初めて自分から発情してくれているのに、熱で思うように動けないんで、貴女にに上になって欲しいんです」

「はっ——は、発情なんてしている訳がないでしょう!?あまりふざけた事を言っていると部屋から追い出しますよ⁉︎」

 ベットの側から一歩後ろへ下がり、私から少しでも離れようとする。そんな彼女の手首を咄嗟に掴み、私が勢いよく引っ張ったせいで、アステリアが脚の上に倒れこんできた。
「やっ!」
 アステリアの美しい顔が布団越しで固いモノに当たり、ちょっと喉が鳴った。このまま擦りつけたい衝動をグッと堪え、「でも、コレじゃ寝れませんし」と言い、力なく笑う。

「我慢したらいいだけでしょう!?」

 頭を少し持ち上げ、顔に当たってしまうモノから逃げるように少し動き、私を見上げながらアステリアが叫んだ。
「無理ですよ。アステリアと一緒に、ここで寝るのに」
「自室に戻ればいいじゃないですか。一緒に寝て、今度は私が風邪をひいたらどう責任を取るおつもりで?」
「もちろん、誠心誠意看病致しますよ。それに、高熱の病人に動けと?流石に酷いなぁ…… 」
「こんな場所にばかり熱を持たせている人に言われたくなどありませんっ」
「そうさせたのはアステリアですし、責任取って下さらないと」
「してません!!」
「でも、今だってアステリアが動く度に胸が当たって、すごく気持ちいいんですよ?」
「へ?」
 彼女は視線を下にやると、病人とは思えぬ状態にまで元気になっているモノの上にたわわな両胸が覆い被さっている状態になっている自分の体勢をやっと自覚したみたいで、ギョッとした顔になった。

「きゃああああっ!!」

 軽くパニックになりながらアステリアは体を起こそうとしたので、彼女の背中をぐっと押し、起き上がれないようにした。こんな美味しい状況はまたとない機会だとしか思えず、このまま押せばなんとかなったりしないかと期待してみる事に。

(病人のクセに、どうしてこんなに力が出るのよ!)

 この程度でも抜け出せないとは。力を入れたつもりはないのだが、体調不良のせいで加減も出来なくなっているのだろうか。
「せっかくなので続けましょう?ほら、下着を脱いで上に乗って?」
「出来る訳がないでしょう!?そんなはしたない事!」
「でも今の私じゃ動くのは辛いですし。アステリアも、このままはツライと思いますよ?」と言いながら、熱い手をアステリアの着ているドレスのスカートの中へと強引へ入れる。鼻がきかず、彼女の匂いの僅かな差まではわからないが、多分きっと、私の予想通りならばこのまま押し通せるだろう。
「ぎゃあああああ!」
「夫の手なのに、何痴漢にあったみたいに叫んでいるんですか」
「当たり前でしょう!?そんな所さわ——んあっ」
「ほら、やっぱり」
 そう私が言った途端、アステリアの体がビクッと少し震えた。自覚があったのだろう、下着の奥が濡れているって。
「く…… ぅ…… 」
 悔しさからなのかアステリアが喉を詰まらせる。頭の中も悔しさで一杯なのか、“声”にすら出来ぬ思いで満たされている様だ。
 言葉無く、脚の上に覆い被さっているアステリアのドレスのスカートを巻くり上げ、彼女の下半身を露にする。今穿いている白いレースのショーツを目の前にして、私は思わずニヤリと笑った。
「この下着、私が贈った物じゃないですか」

(マズイ、可愛いしキツくなくって楽だから穿いていたけど、よりにもよってヒョウガにバレるなんて。昼間だしと油断していたわ!)

「使わないのはもったいないから!——であって、他意なんかっ」
 夜着に着替える前には違う物に交換しつつも、昼間は好んで使ってくれていた事が推測出来て嬉しくなる。これだから贈り物はやめられないんだ。
「いいんですよ。口で言わなくてもアステリアの事は、全部わかっていますから」
「んあ!」
 己の喜びをアステリアに伝えるべく、熱い指を、私の上にうつ伏せになったままである彼女の陰部の中ににゅるっといきなり入れる。あまりにも自然に、あまりにも容易く入ってしまったからか、アステリアの体が動かない。お試しにと、一本だけにしたのも良かったみたいだ。
「だ…… だめぇ」

(やだ、いきなりなのに、気持ちいいっ)

 私の指が『気持ちいい』とか、憤死寸前の“声”のせいで鼻血が出そうだ。まさか出血死でもさせたいのでは?と疑いたくなる程素直で驚く。

 溢れ出るアステリアの蜜を指に絡ませ、膣壁を撫でる。滴る程に伝い落ちるとは、相当気持ちが良さそうだ。
 まともに呼吸が出来ず、アステリアが私の脚の上で体を快楽に震わせながら、ベットのシーツにしがみ付く。具合の悪い私に勢いよく倒れ込んでしまわない様必死に堪える姿がまた愛おしい。
「もっと、私の体を貴女の胸で撫でてもらいたいな」
 あぁ、コレは風邪だけのせいじゃないな。
 呼吸のリズムがすごく崩れていて、自分が興奮状態なのが嫌でも判る。そんな状態である事がアステリアにもバレバレであるとありありとわかるが、もうどうでもいいや。
「で…… 出来る訳がないでしょう?」
 口ではそう言いながらも、アステリアの体がちょっと動いてしまっている。気持ちいよくって無意識にそうしてしまっているのだろう。
 捲り上がったスカートから伸びる脚とお尻は絶景そのものだ。
 もっと私の指の熱さを感じたいと体が求めているのか、指を入れやすいような位置まで体をゆっくりアステリアがずらしつつ、全身が怠いくせに元気なモノの上に体を擦り寄せて重圧をかけてくれる。
「くっ…… これは、ご褒美あげないといけませんね」
 悪戯っ子な笑顔を向けながらそう言い、陰部に入る指の数を一気に三本にまで増やし、膣壁を優しく撫で始めた。
「んあっ!」
 涙目になりながら、アステリアが陰部に感じる快楽に負けまいと耐えている。だがしかし、あられもなく口が開き、端からは涎が零れ落ちてしまうのを止められていない。
「おやおや、はしたない。快楽に浸り過ぎではありませんか?」
「そう言うのなら…… もうぬぃ…… てくださぃな」
「いいんんですか?ココはとてもいい声で鳴いていますよ?」と言うと、わざと水音が激しくたつように指で中を弄る。怠かろうがなんだろうが、アステリアの淫猥な姿はいつ見ようが唆るな。
 くちゅくちゅと陰部からたつ音が二人の耳の奥でやけに響いて聞える。
「ほら、可愛い声」
「いや…… ヤダッ」
 頰を桜色に染め、涙目で快楽に打ち震えながら嫌だと言われても、説得力は皆無である。淫楽に浸っている体が勝手に動いてしまっているので余計に。

 鼻腔の奥でアステリアからたつ雌の匂いと仄かな香水の香りとが入り混じり、脳髄を直接刺激する。
「…… 上にきて?」
 アステリアの耳にかかる長い金髪をそっと熱い手が除け、ボソッとか細い声で懇願する。喋ると喉が少し痛い気がするが、コレを言わないとかあり得ないだろう。
 震える腕で無理に体を起こし、ゆっくりとアステリアが私の上に跨る様に動こうとしてくれる。だがその間もずっと熱っぽい指が膣の中を弄り続けていたので、動き難そうな上、気持ちよくて力が入らないみたいだ。
「もう、充分濡れていますからこの指は入りませんよね」と言いながら、アステリアの陰部の中から指を一気に引き抜く。もっと触れていたかったのでちょっと名残惜しい。
「んあああああっ!」
 珍しくこの状況に酔ってくれているのか、膣の中を一気に抜け落ちる指の感触にビクッとアステリアの全身が震え、軽く達してしまったみたいだ。
「ふふふ、可愛いですね。でもこの程度じゃアステリアも全然足りないですよね。ほら、ちゃんときて?」
 こんな簡単に達してしまった恥ずかしさと、自分から異性に跨る屈辱的行為をしているからか、ポロポロと涙を零しながらも、体が魔法にでもかかったみたいにアステリアが私の脚に跨る。濡れて気持ち悪いであろう下着とシーツ越しではあったが、自分でドレスのスカートを捲り上げ、固く滾る怒張に自身の陰部を擦りつけ始めた。
「んっ…… ぁ…… 」
 彼女の動き合わせて甘い声をこぼし、熱っぽい顔を快楽に少し歪める。
「…… 気持ちいぃ…… の、ですか?」
 汗の滴り落ちる私の頬を両手で包み、アステリアが問いかけてくる。
「当たり前じゃないですか、愛おしいアステリアが相手なんですから」
 答える声にいつもの余裕がない。布越しであろうとも、こんな行為をしてもらえて嬉しくない男がいるだろうか。いるはずがないと断言できる。だって好きな人が相手からなのだから!

(——ふぐっ!)

 アステリアから変な“声”が聞こえた。その声色が、キュッと心臓を掴まれた時みたいな感じがするのだが、私の都合の良い解釈だろうか。

(よ、よ、弱ってるヒョウガがいけないのよ。いつものヒョウガじゃないから、私もこんな可笑しな気分になるのよ!)

 いい訳じみた“声”が可愛らしい。
 調子にのった私は「止まらないでもっと動いて?」と、アステリアの両手にそっと手を重ねてお願いしてみた。
 獣耳を伏せ、出来る限り可愛さをを演出したおかげか、彼女から否定の言葉は出てこない。
 だが私はちょっとやり過ぎてしまったみたいだ。無性に唇を奪ってしまいたい衝動をアステリアは感じてしまったのか、初めて彼女の方から、私の唇に向かい震えながら唇をそっと近づけてきてくれた。

「駄目です!」

 掠れ声で、咄嗟にキスを避ける。
 してもらいたい、もったいないという気持ちはもちろんあったが、今だけは絶対に駄目だ。不可抗力で移ってしまうのなら『看病してあげられる機会を得られるかも』と割り切れるが、確実にうつす様な行為は流石に気が引ける。妻を苦しませたいなど思ってはいないのだ。

(何故?やっと自分からしたい気分になったというのに…… )

 寂しげな“声”の呟きが心に伝わり胸が痛い。
「風邪を本当にうつしてしまったらアステリアが可哀相ですからね。私の口は、今は駄目です」
「あ……そ、うよね。嫌だ、私ったら」
「治ったら、またいっぱいしましょう?」
「…… それは嫌です」
 ちょっとの間があったから、きっと迷ってくれたのだろう。こんな時でも素直じゃないとか、可愛い奴め。
「いいえ、しますよ。ね?」と言い、アステリアの細い体をギュッと抱き締める。可愛くって愛おしくって喰べてしまいたくって、怠い体を必死に動かし、頑張って回した腕に力を入れた。
 私とは違い、平熱の体が心地いい。胸の感触も最高だし、このまま胸の中で眠ってしまいそうだ。

 でも——

「…… 続きをちゃんとしたいと言ったら、流石に怒ります?」
 夜着の中で滾るモノが興奮し過ぎてちょっと痛い。布越しで擦れている柔らかなアステリアの陰部に思い切り押し込み、欲望の全てを吐き出してしまいたくって辛い。いつも我慢などせずに彼女を抱き倒しているので尚更に。

「当然です。そんな事をしたら、絶対に我慢出来ずに私を下に押し倒すじゃないですか!」

 キッパリ、ハッキリとお断りされた。
 でも、アステリアだってもじもじと腰を無意識に動かしており、焦ったくて苦しそうなのを耐えている感があったので、ここは素直に肯くことにする。熱で怠くなければ確かにそうしていたので、アステリアの言葉が耳に痛い。

(…… な、治ったら、まぁ、その時は…… )

 照れ臭そうな“声”が聞こえた瞬間、背後の尻尾が無意識に動き、パタンパタンと布団や枕を叩いてしまう。
 楽しみで、嬉しくって堪らない。これは早く風邪を治さねば。そうしたら、上になって動いてもらったり、その小さくって赤く美しいお口で咥えてもらったり、白くて細い脚や脇で挟んでもらったり——欲望や要望が膨らみ、心が躍る。今この瞬間の熱を発散できない苦しさはあるが、そこはもう瞑想でもして散らす他無いだろう。

「とにかく、今はちゃんと休んでください」
 コツンと額に額を重ねてお願いされては、もう白旗を挙げざるおえない。だがしかし、アステリアの熱だけでもどうにかしてあげたいのだが。
「アステリアは、辛くはないのですか?」
 一度は軽く達してはいるが、きちんとする事で得られる快楽を知っている身では生殺しで辛いだろう。
「…… ヒョウガ程ではありませんので、ご心配なく」と言い、アステリアがゆるゆると首を横へ振る。
 頰は赤いままだし、腰は微かに揺れて陰部同士が擦れ、香りたつ淫猥な匂いだってすごいというのに、理性と体調を心配してくれる気持ちだけで欲望を抑え込んでくれている感じがしっかりと伝わってくる。
 あんな始め方をしてしまった私でも、今はちゃんと妻に愛されているんだなと、胸の中が喜びに満ちた。
「じゃあ、せめて添い寝を頼んでも?」
 小首を傾げて頼んでみる。男がやっても気持ち悪いかもしれないが、容姿には自信があるのできっと通じるだろう。

(…… うぐっ)

 案の定、また変な“声”がアステリアから聞こえてきた。
「仕方ないですね…… そ、添い寝だけですよ?エッチな事を少しでもしたら、即自室へ追い払いますからね?」

 保証は出来ないなー。お尻に擦り付けたりとか、脚で挟んだりくらいはしちゃったり出来ないかなー。

 ——なんて思ったせいで、「………… はい」と返事をするまでにちょっと間が開いてしまった。そのせいで『コイツ、ヤル気だ!』とアステリアから飛んでくる疑いの眼差しが刺さって痛い。

「わ・か・り・ま・し・た・か?」

 ゆっくり釘を刺すように問われ、「はい!」と慌てて答える。だがまぁ彼女が寝てしまってからこっそりやればバレないだろう。彼女は眠りが深いですしね。

「じゃあ私は着替えてからまた戻ってきますから、先に寝ていて下さい」
「あぁ、そのままでは眠られないですもんね」
 受け答えをしながら、アステリアが私の脚の上からおりてしまう。具合が悪いせいか、彼女のと距離が離れてしまった事が物凄く寂しい。

「早く戻ってきて下さいね」

 もうすっかり中身が冷めてしまった水桶とタオルを腕に抱え、部屋から出ようとする背中に声をかける。寂しさを感じたおかげか、無駄な熱はもう引いたみたいだ。

(全くもう…… 困った獣ね、寂しがり屋なんだから)

 えぇその通りですよ。
 私は貴女がいないと駄目なんです。
 なんたって人生そのものもと言っても過言ではない程、私の行動の指針でもあるのですからね。

 想いは伝えず、寂しげに微笑みだけをアステリアに向ける。
 入室時よりも柔らかな笑顔を返してくれ、「えぇ、すぐに戻りますよ」と答えてくれた。

 今夜は高熱になろうとも、彼女の添い寝のおかげでゆっくり眠れそうだ。


【終わり】
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