近くて遠い二人の関係

月咲やまな

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エピローグ

こぼれ話

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 すっかり夜も更け、眠る前の済ませたいアレコレの全てを終えた二人がベッドの中で仲睦まじく寄り添っている。
 本日は、旅館での一夜以降、やっと迎えた交合に勤しんでしまったので色々な面に支障が出てしまった。出かける用があったとか、誰かと予定があったなどといったものではないので挽回は十分可能だが、失った時間がそれなりに大きい。仕事の締め切りはまだまだ先であろうとも、筆が早いとは言い難い奈々美は明日からの算段の思案する為に瞼を閉じた。

「…… ねぇ、奈々美」

 手をぎゅっと握られ、甘えた声で名前を呼ばれた。
「ん?」と簡素に奈々美が返事をすると、電気も消していて室内は暗いにも関わらず、それでも尚分かるほどにキラキラと瞳を輝かせている透と目が合った。

 嫌な予感がする。

 奈々美は反射的にそう思ったが、もうどっちも体力の限界のはずだ。『散々射精しまくった後なのでいくらなんでも精液のストックは無いはず!』と、ゴミ箱の中に捨ててあった避妊具の数々を思い出す。二十代でほぼ絶倫アレでは、十代だった頃にこの関係に発展していたらいったいどんな目に遭っていたのだろうか?嬉しいやら怖いやら…… 考えるだけで奈々美は複雑な心境になってきた。

「三日に一度、朝から晩までえっちしまくるのと、毎晩だけど数時間だけえっちするのとだったら、どっちがいい?」

「…… んんんっ?」
「俺的には後者がオススメなんだけど。一日潰してとなると、次の日が辛いと思うんだよね」

『や、無理でしょ!』と思うも、先程の状況を振り返ってみると、無茶な理想を語っているとは考えられない。自己分析をきっちりしたうえで、『俺なら可能』と判断した結果の話なのだろう。もし途中で打ち止めになったとしても今の時代は大人の玩具の助けを借りれば時間も稼げる。目で楽しみつつ精力を回復させ、またズコバコと楽しむ事だって充分可能なのだ。
 え、狡くね?と、奈々美は叫びそうになった。受け手側だけが休む暇無く攻められ続け、達し過ぎて頭ん中が馬鹿になるパターンじゃないか。好きだという感情ありきの行為なので、犯されれば犯されるだけ性奴隷化するに決まっている。今の時点でも既に彼が居ないと生きていく甲斐がない程なのに、そこまで堕ちたらどうなってしまうのかと思うと、流石に肝が冷えた。

「他の選択肢は…… ないの?」
「むしろ、あるのか?」

「…… (何故そうなる)」
 嫌われたくないからと一歩引いていた頃の彼が懐かしくなってきた。『自分は、透の開花させちゃいけない部分を開発してしまったのでは?』と思い、奈々美が頭を抱える。

「…… 普通、そこまでしないんじゃ?」
「俺達は新婚だぞ?他を知らんけど、他に合わせる必要なんてあるのか?」
「ない、けど…… 」

 拒否する気はないが、ついていける自信もない。その目算はインドア派の体力の無さを考慮していない気がする。でもそう言うと、『奈々美は横になってくれているだけでいいよ』と笑顔で返される気がした。『もし私がHP切れで眠ってしまっても、透なら睡眠姦を楽しみそうだな』とも。

(…… あり、かもしれない)

 不安よりも『睡眠姦』というワードへの好奇心の方が上回り、「わかった。じゃあ、後者なら」と快諾してしまった。
「あ!でも、セーフワードは決めてほしいな。どうしてもこれ以上は無理だって判断したら使いたいから」
「わかった」と頷き、透が「ありがとう奈々美」と言って彼女の体を抱き締めた。

「…… 好きだよ」
「ん…… わ、私も」

 照れながらも奈々美はそう応え、啄むみたいに口付けを贈り合う。
 タガの外れた透が急に愛情剥き出しな態度を取ってくる事に戸惑いながらも、奈々美は嬉しくってしょうがない。無駄に長い時間を片想い同士で過ごしてきてしまったが、この先はずっと愛し合っていけるのだから良しとしようと考え直す。

 ただ先奈々美は、この先自分の腰が健康を保てるかどうかだけがひたすら心配だった。

【こぼれ話・完】
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