近くて遠い二人の関係

月咲やまな

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エピローグ

新婚生活③

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「あ、のね…… 烏丸に、お願いが…… あるの」
 背筋正しく椅子に座り直す。見事なまでに吃っているが、それがまた可愛い!と透が激しく高鳴る胸を手で押さえた。

 気を取り直し、「何だ?」と訊く透の声がどこまでも優しい。表情も柔らかく、次の言葉をじっと待っているのだが、メカクレのせいできちんと伝わっているのかちょっと怪しい。

「…… また、協力してもらってもいい?ちょっと心境がわかんないシチュエーションが、あって…… 」

 恥ずかしそうに告げる仕草も愛らしい。
 体をもじっとさせる彼女の様子を見て、透はごくりと唾を飲み込んだ。言葉の続きに対して期待が膨らみ胸の奥が騒がしくなる。期待通りの言葉である事を切に願うが奈々美は透の予想外の事を言い出す事も多い。だから期待し過ぎない希求過多にならぬ様落ち着けと、彼は自分に言い聞かせた。

「声が小さくて聞こえづらいな。隣に座らないか?」

 充分聞こえているくせに誘うみたいな声音を透が使う。
「そう、だね」と返答した奈々美の声は微かに震えているが怖気付いた様子はない。ただ少し、緊張しているみたいだ。

 仕事用にと割り当てたこの部屋には横幅の広い机が二つ綺麗に並んで置いてある。それぞれの机には同じような配置でパソコンが置かれ、どちらもデュアルディスプレイになっている。もちろんこれらも全て新品で、今まで奈々美が使っていた物は全て透が宝物として回収済みだ。
 部屋の右側にある透の机には液晶タイプのペンタブレットが置かれているが、それ以外は全てお揃いの物で揃えているおかげか小物も多い割にはお洒落な雰囲気をギリギリ保っている。
 そんな部屋の左半分を使う奈々美が椅子から立ち上がり、部屋の出入り口付近に置かれたソファーの方へ足を向けた。一歩一歩足を前に進めるだけで呼応するみたいに心臓がばくんばくんと騒いでいる。
 透は手に持っていたカップをソファー横にあるサイドテーブルに預けると、やっと自分の目の前まで辿り着いた奈々美の手を取った。座るようにと促し、彼女がそれに従うと、三人掛けのソファーの中央に二人が寄り添う形に。

「今回のお願いは、どんな感じだ?」

 随分と前に似たようなお願い事を奈々美がしてきた時は“壁ドン”だった。なので今回はそれ外の何かである事は間違い無いだろう。きっと今までに一度も経験していないシチュエーションを望んでくるはずだ。もしくは“もう一度されてみたい事”、かもしれないが。
 息を飲み、奈々美がゆっくりと口を開く。同調するみたいに透の心臓も騒がしくなってきたが、彼はじっと次の言葉を待った。

「耳…… 元での、囁き、とか…… 」
「『とか』って事は、その先も?」

 返事が出来ず、奈々美の頬がカッと真っ赤に染まる。どうやら正解みたいだ。
「いいよ」と頷き、透がゆっくり奈々美の傍に体を寄せた。ビクッと彼女の体が少し跳ねたが警戒からでは無く気恥ずかしさのせいだろう。

「…… ねぇ、綾瀬」

「あぎゃっ!」
 耳に仕掛けてくるとわかっていたのに、吐息混じりに旧姓を呼ばれたせいで場の雰囲気を壊しそうなくらい変な声が出てしまった。だがどんな奈々美だろうが全部『可愛い!』と思ってしまう透は動じる事なく、伝えたい言葉を口にする。

「これからはずっと…… 名前で呼んでもいいか?夫婦なのに、いつまでも苗字のままはオカシイだろう?」

 わざと低めの、でも甘さを孕んだ声で囁きながら逆側の耳の輪郭を指の背でそっと撫でた。
 無言のまま何度も頷く奈々美は頬だけでなく、耳や首筋まで熱を持ち始めている。強く引き絞った口元は戦慄き、今にも艶のある吐息が零れ出しそうだ。
「ありがとう」と嬉しそうな声で呟き、透が一度言葉を切る。そして一呼吸置くと、吐息混じりに透は彼女の耳元で——

「…… 奈々美」と、愛おしげな声色で彼女を呼んだ。

 そのせいでゾクゾクッと奈々美の背筋が歓喜に震え、次の瞬間にはくたりと力が抜けて透の体に寄りかかっていった。まるで声だけで軽くイッたみたいな反応だ。イケボ至上主義の声フェチには堪らない攻撃だったのかもしれない。
 そんな彼女の体を支えてやりながら透が熱い舌先で優しく奈々美の耳朶を舐める。そのまま輪郭に沿って舌を這わせると、刺激に順応しきれないのか、奈々美が「あぁぁっ」と震える声をあげた。一度は脱力した体に一気に力が入り、すがるみたいに透の服を掴む。

「気持ちいい、のか?」

 小声で喋るたびに吐息を吹きかけられ、甘い痺れが彼女の体をじわじわと蝕んでいく。自分から始めた事なのに期待以上の行為をされてしまい、脳内は軽いパニック状態だ。
「可愛いなぁ…… 奈々美は」
 透の瞳はもう情欲に染まり始め、奈々美の反応を心の底から楽しんでいるみたいだ。彼とてずっとずっとその身に触れたかったのだから当然だろう。『健全な日々だろうと、一緒に生活出来ているだけで幸せだ』なんて所詮はただの言い訳に過ぎないのだと彼自身が一番理解している。

 クチュッという水音と共に、焼けるように熱い舌先が奈々美の耳の中に忍び込んでくる。こんな音などボイスドラマくらいでしか聴いた事などなかったが本当に耳から孕んでしまいそうな衝撃が奈々美の全身を駆け抜けた。
 うねる様に舌が動く事に驚き、逃げ腰になる奈々美の腰を透が腕で拘束して逃走を阻む。完全にスイッチの入ってしまった彼が今更逃げようと踠く事を許すはずがなく、奈々美はそのままの流れでソファーに押し倒されてしまった。

「逃げられる訳がないよな?」

 雑な呼吸を繰り返し、奈々美の胸が上下している。
 そんな彼女を見下ろす彼の瞳は完全に獣と化していて、ぺろっと自分の唇を舐めながら着ていたシャツを脱ぐと、床にそのまま服を投げ捨てた。

 興奮からか汗が滲み出し、粒になってぽたりと落ちていく。インドア派とは思えぬ筋肉質な英姿を汗が滴り落ちる様子は見事に奈々美の琴線に触れ、うっとりと見惚れてしまう程の逞しさだ。
 奈々美の両手首を片手で掴み頭の上で纏めると「手錠で拘束でもしてやろうか?」と透に言われ、彼女はハッと我に返った。

「まさか——私の私物、見たの⁉︎」

 彼女の頭の中に、個別に用意された私室の奥の奥に隠した大人の玩具数多の資料が入る秘密の箱の中身が浮かぶ。資料用にと買った物なので捨てるに捨てられず、結局は新居にまで持ち込んでしまったがソレを夫に見られたのかと、焦りで顔面は蒼白だ。

「…… 俺のを使うつもりだったんだけど、奈々美も持ってるのか?」

 ガチ勢のストーカーではなかった(自称)ので、透は彼女の持ち物や行動の全てを完全には把握してない。どうやら奈々美までそうった類の品を持っているとは知らなかったみたいだ。
 そんな彼にきょとん顔でそう訊かれ、奈々美が「あ」と叫び、顔を横に逸らす。拘束具を持っていると自白してしまったも同然だったので気不味くってしょうがない。

「そっか、そうだよな。好きだもんな、奈々美。縛られたりして自由を奪われたり、目隠しをされて無理矢理に…… とかさ」

 する側とされる側。
 その差はあれども興味の対象は同じ様だ。

 自由を奪われているのに快楽に浸る奈々美の姿を想像しながら興奮気味にそう言うと、透はニヤリと意地の悪い顔で笑った。病み気味の表情なのに、そんな姿さえも奈々美の心をくすぐってしまう。そのせいで彼女の秘裂がじわりと湿り気を帯び始めたが、流石に透は気が付いていないみたいだ。
「複数でとかNTRは真似事であろうが死んでもお断りだけど、拘束系は大歓迎だよ。奈々美がシテ欲しいんなら今からで手足を縛ってヤろうか?」

(に、二度目で⁉︎)

 旅館での一夜以降、今回はまだ二度目の閨事なのにと内心焦ったが、性癖にはクリティカルヒットしてしまったせいで表情に心境がバッチリ出てしまった。
「でーも。…… 後で、な」と耳元で言われ、奈々美が瞼をぎゅっと強く閉じる。もう降参ですぅと言いたい気分だ。だけどこの先に待つ行為をもう知っている体は期待に満ち満ちて、より一層昂ってしまう。

「だって今は、耳を弄って欲しいんだもんな?」

 そこまではお願いしていないはずだが、享楽欲しさにゆるりと首肯してしまった。奈々美も言外にそう匂わせた自覚があるからだ。
「いやらしいなぁ。でも、素直で可愛い」
 クスクスと笑いながら透は奈々美の耳に近づき、はむっと福耳気味の柔らかな耳たぶを再び噛む。あやすみたいに優しくソレを繰り返し、たまに口の中に含んで吸ったり輪郭を舐めるなどの愛撫を舌先で施され続け、じわじわと奈々美の体がまた、悦楽の波に呑まれていく。たっぷりと時間を掛け、トロ火で炙るみたいにゆっくりと果てまで追い込まれる感覚のせいで、奈々美は体の震えが止まらない。だらしなく開きっぱなしになっている口からは意味をなさない音ばかりを鳴き叫び、透をより一層興奮させていく。穿いているズボンの奥に潜む陰茎は見事なまでにそそり勃ち、服ごしでもわかる程に押し上げているが、奈々美を焦らしたい気持ちの方が今はまだ上の様だ。

「いい声で鳴くんだな。…… いいよ、もっと沢山聴かせて?」

 片腕で体を支えたまま、もう片方の手で透は奈々美の首筋をそっと掴んだ。まるで首を絞めるみたいな触れ方なのに、奈々美の表情がふっと嬉しそうに笑ったせいで、透の理性を繋ぎ止める細い糸が益々焼き切れていく。だが彼女を傷付けたい性癖を持ち合わせてはいない透はただそのまま首を撫でるだけに留めた。

(鳴かせたいが、泣かせたくはないからな)

 彼女の幸せの為なら他の奴に譲れる程の奇特な良心なんぞこれっぽっちも持ち合わせてはいないが、快楽の為なら何でもする程には狂っちゃいない。でも…… 首を掴んだ手で奈々美の脈動を感じると、妙に胸が高鳴ったのも確かだ。彼女の全てを握った様な感覚には心地良さすら感じてしまう。だがその手をもう少し下へと移して女性らしい柔らかな膨らみに触れた途端、安堵するその感触に方に数倍もの喜悦を抱いた事で透は、『自分はまだ大丈夫だ』と心底安堵した。

 自分は真っ当に奈々美を愛せる。
 そう確信したからだ。

「あー…… ホント、俺の奥さんは可愛いなぁ…… 」
 愛おしい気持ちを包み隠す気の無いその声は奈々美の耳を打ち、心の一番柔い部分をぎゅーっと鷲掴んだ。油断するとすぐに愛されている実感が薄れていく彼女の心に深く染み込み、奈々美の頬を感涙が伝う。

「泣いてるのか?」

 さっきまで胸に触れていた手を頬に添え、心配そうに透が訊く。
「うん…… でも、嬉し涙だから」
 奈々美がはにかんだ笑顔を浮かべた次の瞬間、透は奪うみたいに彼女の唇に唇を重ね、舌を絡ませ始めた。愛おしくってしょうがなく、いっその事喰べてしまいたいくらいの激しい感情だ。
 熱い口内でうねる舌は容赦なく彼女の内部を蹂躙し、艶のある吐息を吐き出しながら上顎や歯茎までもを刺激して容赦無くその身を苛んでいく。鼻で呼吸をしようが激しい口付けのせいで追いつかず、息が苦しくって頭がぼぉっとしてきた。だがソレさえも気持ちがいいと感じてしまうのは、相手が心底愛してやまない者だからだろう。
 端から飲み込めずにいる唾液が溢れ出し、互いの顎や首を伝って落ちていく。そんな感触さえも気持ちいいと奈々美が思っていると、また耳に触れられ、全身がビクッと跳ねた。

(同時は…… 狡い!)

 うっすらと瞼を開けて恨みがましい瞳を透に向けた奈々美だったが、彼の炯眼と視線がぶつかった途端に脳内が蕩け出し、腰が砕けてしまう。端正な顔の彼が雄そのものの瞳で見てくるとは反則そのものだ。耳や口内だけでも一杯一杯だったのに、視線にまでやられた奈々美はもう息も絶え絶えの状態に。あと少しの刺激でも気を失いかねないくらい追い詰められている。
 その事を知ってか知らずか、「…… ココ、立ってるね」と囁きながら胸の先を服ごと摘まれ、奈々美の視界が明滅した。腰がビクッと二、三度跳ね、汗ばんだ太腿をぎゅっと閉る。

「あはは…… イッたみたいな反応だ」

 確かにソレに近い感覚だが、残念ながらソレによって体が満足する事はなく、悔しいくらいに下っ腹の奥が疼いてしょうがない。甘美な刺激を欲し、硬いモノで沢山弄ってくれと騒ぐみたに密路がひくついている。物欲しそうに奥から流れ出てくる愛液のせいで下着は濡れに濡れ気持ち悪いくらいだが、そうだと彼に知られるのは恥ずかしい。
 そんな状態だというのに、透はまるで知らぬと言うみたいに彼女の下腹部には触れようともせず、口付けを繰り返しながら指先を使って乳嘴で遊ぶ。せめて直接ならもっと違ったろうに、布ごしなせいで焦ったい。
 誘うみたいにもじっと脚を動かしてみても状況が変わる気配は一向にない。舌をじゅるっと吸われたり、ねだりあうみたいに絡んだりするのも心地いいが、もう奈々美は忍耐の限界が近かった。『早く挿れて欲しい』という言葉で頭の中がいっぱいになり、ソレ以外に何も考えられない。今だったら何だって言う事を聞いてしまいそうだ。

「烏ぅまぁ…… もっ」
「違うだろう?自分だってもう、烏丸なんだから」

 胸の膨らみをぎゅっと強めに掴まれ、奈々美の体が跳ねた。少し痛くってお仕置きみたいな感覚がいい刺激になってしまっている。
「…… と、とおる」
「よくできました」
 褒めるみたいに撫でてくれたが、その対象が乳嘴だったせいで「んあぁ!」と奈々美が声をあげた。布ごしとはいえ、手の甲でぐりぐりされると気持ちよくってしょうがない。
 唸るみたいな音をこぼし、涙目になりながら『もう欲しいってわかってるくせに』と、恨みがましい視線を透に向ける。そんな表情を前にして、透の体が歓喜に震えた。欲しい気持ちに争い続けてきたが、奈々美も求めてくれるならばそろそろ…… と上半身を起こす。
 すると奈々美が透の予想に反した行動を取り始めた。

「お、お願い…… もう、挿れてぇ」

 泣き声で懇願し、穿いているスカートを自ら捲し上げる。両脚を大胆に開き、いつでも受け入れる体勢をしてくれた以上に透が驚いたのは、彼女が身に付けている下着のデザインだった。白いそれは大半の部分が半透明の材質なせいで淡い下生えが透けて見えている。レースを使った愛らしい作りでありつつ、最も隠すべき箇所には穴が開いていて丸見えだ。穿いたままでも交合出来る様にと考えられたショーツの奥ではもう愛液が滴り落ち、太腿をじっとりと濡らしている。淫猥な匂いは透の鼻腔を刺激し、衝動のままに彼はベルトを勢いよく外すとズボンの前側を開け、ボクサーパンツを下げて己の猛りを奈々美の前に晒した。
 脈動するソレの鈴口からは愛液が滴り落ち、快楽を欲しているのが見て取れる。赤黒い屹立は今までよくまぁ服の中に収まっていたなと感心する程の大きさで、奈々美はごくりと唾を飲み込んだ。

(…… 挿入るとはわかってるけど、やっぱ信じられんっ)

 前回は暗い室内での交合だったからじっと見る事なく流されていったが、いざ目の前のソレが小柄な自分の体内に挿入るとはとても信じられぬせいで今更怖気付いてしまい、スカートを捲り上げていた手から力が抜けた。でも、胎は彼の猛りを求めてやまず、期待に震えているのだから大概己も欲深いなと奈々美は思った。

「奈々美…… 奈々美っ」

 何度も名前を呟き、奈々美の脚の間に透が膝をつく。ベッドと違って狭いからか、彼は奈々美の片脚を持ち上げると、背もたれにその脚を預けさせた。大きく股を開かれた体勢が恥ずかしいのか、奈々美が両腕で顔を隠す。かろうじて見えている口元は引き絞り震えているが抵抗する様子のない。その事を確認し、透は安堵しながら扇状的な奈々美の秘裂に猛る切っ先を押し当てた。肉花を鈴口で擦ると、愛液と先走りとが混じりあってグチュグチュといやらしい音が鳴る。たまに陰茎が肉芽を擦ると、彼女は体を震わせてよがり声をあげた。
「ねえ、早く挿れて欲しい?」
 透に意地悪く訊かれ、必死に何度も首肯する。
「挿れて欲しいって、ちゃんと言わないと」
「…… い、挿れて…… 欲しい、ですぅ」
「偉いな、ちゃんと言えて」
 きちんと言葉と行動で求めてもらえたという事実が透を胸の中を満たしていく。『どうせ俺では』と卑屈だった心が解れていくのを感じた。
 後ろポケットの中から避妊具を一枚取り出し、怒張する熱塊をソレで包む。『いやいやこのまま生で』という欲求をどうにか隅に押しやると、秘裂に再び己の切っ先を押し付け、ゆっくりと腰を動かして中に中にと挿入していった。少し進むだけで奈々美が悲鳴に近い声をあげているが、痛いというよりは押し広がるせいで苦しい、けど気持ちいいといった感じだ。蜜路は愛液で濡れそぼっているがとても狭く、剛直を食い締め侵入を拒むみたいだ。

「体の力…… 抜いて、奈々美。狭くって…… 気持ち良すぎるっ」
「無理い、言わないでぇ。透のが、硬くて、おぉきす、過ぎる——あぁぁっ!」

 興奮からか質量が増し、奈々美の体への負荷が上がった。
「煽るな!」
 そんなふうに叱られても、煽った自覚がなく困ってしまう。でも反射的に奈々美が「ごめんなさいぃ」と謝ると、透は堪えきれずに最奥まで一気に剛直を押し挿れた。先端に子宮口をずんっと押し上げられ、奈々美の視界に花火が散った。動かれるたびにぐぽぐぽと卑猥な音や肌がぶつかり合う音が部屋に響く。理性を失って激しく抽挿を繰り返す透の姿を、腕と腕の隙間からチラリと見た瞬間、彼女の淫道がぎゅっと剛直を締め付ける。彼が提供してくる音容にやられ、奈々美はまたもや軽く達してしまったみたいだ。

「また…… イッた?上手なんだな、奈々美は」

 首筋を手の背で撫でられ、奈々美が愉悦に浸る。快楽を拾い取る事を褒められたのが妙に嬉しい。
 透は透で、服を全て着ているままの奈々美との交合が、まるで強姦でもしているみたいで際限なく興奮してしまっている。乳嘴が服を押し上げている様子がより一層いやらしく見える。こうなる事を期待して淫靡なショーツを穿いていたのかと思うと、尚更腰の動きが早くなった。奈々美のペースなど完全に無視し、自分の快楽だけに浸るこの動きは完全に肉便器かオナホ扱いだ。
 なのに、そんな扱いが余計に奈々美を果てへと追い立てる。『烏丸に強姦されているみたいだ。…… あぁ、名前で呼ばなかったら、またお仕置きされるかも』と、この状況に浸り、陵辱される事を喜んでいた。

 ここは本来二人が仕事をする為の部屋なのに、嬌声、水音、肌がぶつかるぱちゅんっという響きが部屋の中を満たし異質な空間になっている。淫靡な世界に堕ちに堕ち、繰り返される律動のせいで、透も限界が近づいてきた。隘路を激しく擦る剛直は更に質量を増し、奈々美をもっと追い立てる。『いけ、いけ、いけ』と攻めるみたいな動きに追いやられ、奈々美の身悶える体も限界寸前だ。頭の中は気持ちいいとしか考えられず、まともな言葉を発する事すら出来やしない。

「あぁっ!ングッ!ふ、んあっ…… 奥、く、くるっ!」
「イク?いいよ、イッて…… あぁぁ、可愛い、可愛いよ!…… 俺のモノ、本当にもう、俺のモノなんだ!」

 奈々美の体に覆いかぶさり、ぎゅっと強く抱き締める。同時に蜜壺の最奥を剛直で捏ね回すみたいにぐりぐりと擦ると、その刺激のせいでとうとう奈々美を今までで一番大きな波が襲った。頭の中が真っ白になり、全身が激しく震える。足の指先はぴんっと伸びて痛いくらいだ。
 急速に締め付けられ、透も「んぐっ…… 」と短くこぼしながら熱い白濁液を大量に蜜壺の中に吐き出していく。避妊具の助けがなければ確実に孕むだろうなと思う程の量と濃さだ。奈々美の体を、そして味を知って以降自慰を楽しめず、悶々とウチに溜め込んだモノだったので納得もいく。

 だけど…… 足りない。

 一度で済む程度の欲求ではなかったからか、すぐに硬さを取り戻し、すっかり完勃ちした剛直で肉壁を撫で回され、奈々美の顔が強張った。
「全然足りない…… 。ねぇ、奈々美もそうだよな?」
 甘える声で言いながら、抱き締める腕に力を込める。
 狡い…… あざとい、と思いはすれども、どこまでも彼に甘い奈々美は無言のまま頷き、膣壁をぎゅっと締めた。奈々美とてまだまだ足りないと思うくらいに欲求不満だったのだろう。

 もっと、もっとと更に求め合い、愛情を深めていく。
 おやつを食べるには丁度いい時間から始まったこの目合いが終わりに差し掛かった頃にはもう、夜の帳はすっかり下りていた。激しい疲労感のせいで怠惰な息を吐きながらも、二人の心は喜びで満ちていた。
 深いながらも明後日の方向を向き合っていた互いの愛情が綺麗に重なる日は、もう近いかもしれない。


【エピローグ・完】
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