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カフェにて
こぼれ話←【NEW】
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「ども!椎名ですー。あの後って、結局どうなりましたか?」
カフェで待ち合わせ、偶然居合わせた綾瀬の元に早く行きたいとソワソワし始めた烏丸のせいで、早々に解散となった打ち合わせの日から数日経ったある日の事。突然かかってきた電話に烏丸が出た途端、開口一番、彼の担当者である椎名が挨拶もそこそこのまま遠慮なしに質問を投げかけてきた。
「私的には雨降って地固まる的に交際へ発展し、長年恋心を拗らせた勢いでホテル直行、その後は監禁の末に孕ませエンドを期待しているんですけど」
「…… 何言ってんだ、アンタは」
「わ!口が悪いですよ?そんなにキレるって事は…… 何も無かったんですね?やーん。実に残念です」
「いやいやいや。そもそも彼女との間には何もありませんから。ただの幼馴染です」
努めて冷静にゆっくり淡々と烏丸は答えたのだが、「んなワケ無いでしょ」と、椎名に一蹴されてしまった。
「いいですか?烏丸さん。あんな見るからに、『誰かと待ち合わせか?邪魔してやる』って嫉妬心剥き出しのまま早々に向こうへ移動して行って、『ただの幼馴染』だなんて、あるはずが無いでしょ。彼女側もソワソワとこっちの様子を伺っていましたし、少なくとも烏丸さんに対して無関心では無いはずですよ?それなのに!何も進展なしとか、どんだけヘタレなんですか、貴方達は!」
「うぐっ」と声を詰まらせ、烏丸が黙った。
年の功でバレたのか、誰から見ても嫉妬心ダダ漏れ状態だったのかが気になり、少し不安になる。
「それにしても、彼女って清楚な印象の人ですねー。烏丸さんの描くヒロイン達の欠片を繋ぎ合わせた感じの人で、一目で『あの人がモデルかー』って納得しちゃいましたよ」
その通り過ぎて何もコメントが出てこない。だが相手は仕事の関係者だ、急に電話を切る事も出来ず、かといって咄嗟に何かを言える程頭が働いてくれずに困っていると、椎名はそんな烏丸をスルーしたまま話を続けた。
「んでも意外に細身の方ですよね?とても、烏丸さんの漫画のヒロインとは体型が近いとは思えなかったんですが…… 」
「…… 痩せたんです。最近急に」
「あ、やっと喋った。なるほどなるほど。…… もしかしてそれって、モデルにしたとバレたのでは?」
「…… アンタ、盗聴でもしてんのか?」
「や、んなワケ無いでしょ。やってたら私は犯罪者ですよ。締切から逃げ回る人ならいざ知らず、烏丸さんみたいな優良作家さん相手には絶対に企みすらしませんって。ってか本当に口が悪いですよ?実はソレが素ですね?打ち解けてもらえて、担当としても嬉しい限りです」
「まぁ…… そう取ってくれるのなら助かります。ぶっちゃけそうですね、色々あってあっさりとバレました。モデルにしたと知った直後は『ここまで酷くない』と半泣きされましたが」
「しますよーそりゃぁ。ホントガチで忠実に描いたんじゃないですか?体型を気にしている女性なら、ショックで殴ってる所です。もしかして既に殴られました?殴られなかったのなら、温厚な幼馴染さんで良かったですねぇ」
「殴られはしなかったです」
それを武器に脅された件は、結果的に烏丸にとって良い結果になったので黙っておく事にした。そこまで話す程の関係性でもないのも理由の一つだ。
「ところで、私がただの担当者だってちゃんと幼馴染さんには話しましたか?」
「あ。してませんね、そういえば」
「何やってんですか、貴方は。早く話しておいた方がいいですよ、最悪のパターン、幼馴染さんの中だけで私達は交際中の可能性も捨てきれませんからね」
「何だってそんな誤解を」
誤解を生むような行動をした記憶が無いため、烏丸には椎名からのアドバイスがイマイチピンとこない。だが女性視点からのアドバイスならば自分の理解を超えた部分だろうから、逆に素直に聞いておこうと烏丸は思った。
だが、今更急に何の前触れもなく『あの人は自分の担当さんだ』と話されても、『だから何?』と言われそうだ。何とも想っていない相手からそんな言い訳じみた話をされても気持ち悪いのでは?自意識過剰だと笑われるんじゃ?とも考えてしまう。
(さて、どうしたものか…… )
「些細な誤解が意外と根深いものに発展したりするものですから、ホント、タイミングを見てちゃんと話しておくんですよ?億劫だなとか思っちゃダメですからね?」
お姉さん視点からのコメントをきちんと受け止め、烏丸が「わかりました」と返事をした。
案の定。いや、椎名の予想よりも更に斜め上に、『烏丸は“オトコの娘”と秘密の交際中である』なんて勘違いを綾瀬にされているとは露知らず、「素直ですねー。ホントに幼馴染さんの事がお好きなんですねー、うふふっ」と言う椎名に対し、「他言無用ですからね」なんてやり取りを、電話で悠長にする二人なのであった。
カフェで待ち合わせ、偶然居合わせた綾瀬の元に早く行きたいとソワソワし始めた烏丸のせいで、早々に解散となった打ち合わせの日から数日経ったある日の事。突然かかってきた電話に烏丸が出た途端、開口一番、彼の担当者である椎名が挨拶もそこそこのまま遠慮なしに質問を投げかけてきた。
「私的には雨降って地固まる的に交際へ発展し、長年恋心を拗らせた勢いでホテル直行、その後は監禁の末に孕ませエンドを期待しているんですけど」
「…… 何言ってんだ、アンタは」
「わ!口が悪いですよ?そんなにキレるって事は…… 何も無かったんですね?やーん。実に残念です」
「いやいやいや。そもそも彼女との間には何もありませんから。ただの幼馴染です」
努めて冷静にゆっくり淡々と烏丸は答えたのだが、「んなワケ無いでしょ」と、椎名に一蹴されてしまった。
「いいですか?烏丸さん。あんな見るからに、『誰かと待ち合わせか?邪魔してやる』って嫉妬心剥き出しのまま早々に向こうへ移動して行って、『ただの幼馴染』だなんて、あるはずが無いでしょ。彼女側もソワソワとこっちの様子を伺っていましたし、少なくとも烏丸さんに対して無関心では無いはずですよ?それなのに!何も進展なしとか、どんだけヘタレなんですか、貴方達は!」
「うぐっ」と声を詰まらせ、烏丸が黙った。
年の功でバレたのか、誰から見ても嫉妬心ダダ漏れ状態だったのかが気になり、少し不安になる。
「それにしても、彼女って清楚な印象の人ですねー。烏丸さんの描くヒロイン達の欠片を繋ぎ合わせた感じの人で、一目で『あの人がモデルかー』って納得しちゃいましたよ」
その通り過ぎて何もコメントが出てこない。だが相手は仕事の関係者だ、急に電話を切る事も出来ず、かといって咄嗟に何かを言える程頭が働いてくれずに困っていると、椎名はそんな烏丸をスルーしたまま話を続けた。
「んでも意外に細身の方ですよね?とても、烏丸さんの漫画のヒロインとは体型が近いとは思えなかったんですが…… 」
「…… 痩せたんです。最近急に」
「あ、やっと喋った。なるほどなるほど。…… もしかしてそれって、モデルにしたとバレたのでは?」
「…… アンタ、盗聴でもしてんのか?」
「や、んなワケ無いでしょ。やってたら私は犯罪者ですよ。締切から逃げ回る人ならいざ知らず、烏丸さんみたいな優良作家さん相手には絶対に企みすらしませんって。ってか本当に口が悪いですよ?実はソレが素ですね?打ち解けてもらえて、担当としても嬉しい限りです」
「まぁ…… そう取ってくれるのなら助かります。ぶっちゃけそうですね、色々あってあっさりとバレました。モデルにしたと知った直後は『ここまで酷くない』と半泣きされましたが」
「しますよーそりゃぁ。ホントガチで忠実に描いたんじゃないですか?体型を気にしている女性なら、ショックで殴ってる所です。もしかして既に殴られました?殴られなかったのなら、温厚な幼馴染さんで良かったですねぇ」
「殴られはしなかったです」
それを武器に脅された件は、結果的に烏丸にとって良い結果になったので黙っておく事にした。そこまで話す程の関係性でもないのも理由の一つだ。
「ところで、私がただの担当者だってちゃんと幼馴染さんには話しましたか?」
「あ。してませんね、そういえば」
「何やってんですか、貴方は。早く話しておいた方がいいですよ、最悪のパターン、幼馴染さんの中だけで私達は交際中の可能性も捨てきれませんからね」
「何だってそんな誤解を」
誤解を生むような行動をした記憶が無いため、烏丸には椎名からのアドバイスがイマイチピンとこない。だが女性視点からのアドバイスならば自分の理解を超えた部分だろうから、逆に素直に聞いておこうと烏丸は思った。
だが、今更急に何の前触れもなく『あの人は自分の担当さんだ』と話されても、『だから何?』と言われそうだ。何とも想っていない相手からそんな言い訳じみた話をされても気持ち悪いのでは?自意識過剰だと笑われるんじゃ?とも考えてしまう。
(さて、どうしたものか…… )
「些細な誤解が意外と根深いものに発展したりするものですから、ホント、タイミングを見てちゃんと話しておくんですよ?億劫だなとか思っちゃダメですからね?」
お姉さん視点からのコメントをきちんと受け止め、烏丸が「わかりました」と返事をした。
案の定。いや、椎名の予想よりも更に斜め上に、『烏丸は“オトコの娘”と秘密の交際中である』なんて勘違いを綾瀬にされているとは露知らず、「素直ですねー。ホントに幼馴染さんの事がお好きなんですねー、うふふっ」と言う椎名に対し、「他言無用ですからね」なんてやり取りを、電話で悠長にする二人なのであった。
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