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最終章
【第八話】抜け道②
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二人の前には重苦しい重厚な扉が——…… だったのなら雰囲気が出て丁度良いのだが、残念ながら図書館内にある一室でしかない部屋の扉は、ただの会議室にでも続くみたいな風貌だ。扉の一部に嵌め込まれた縦長な曇りガラスの向こうには、何かが元気に動く姿がチラリと見て取れ、室内には既にもう誰かが居る事を二人に告げている。
「早速開けてもいいですか?」
「えぇ、もちろんよ」
ここを開ければ後戻りは出来ない。
もちろんする気も無いのだが、それでもちょっとだけ後ろ髪を引かれつつ、カシュが扉をゆっくりと開ける。すると、先に室内で待っていた甥っ子の葵が彼を目敏く見付け「母さん、叔父さん達が来たよ!」と大声で叫んだ。
「こら、騒ぐな!」と言い、瀬田が葵を担ぎ上げ、自分の肩に座らせる。目線が急に高くなったせいで「うわ!」と葵は驚いた声を一瞬だけあげたが、すぐに慣れ、瀬田の髪の毛をしっかりと掴みながら脚をバタバタとさせて喜んだ。
「…… すっかり子持ちのお父さんね」
子供に遊ばれている瀬田の姿を見上げ、頭から漆黒のべールを被った華がくすくすと笑う。
「そうだな。婚活だなんだと日々明け暮れていた時期が、今じゃ懐かしく思えるよ」
「ははは。数週間程度の子育てで、父親面される子供も大変だねぇ」
そう言ったのは、図書館の館長である本多さんだ。
彼は人間である母親の事が大好きなロマンスグレーなオジサマなのだが、本の精霊である自分の父親に対しては色々と複雑な心境を抱えているせいか、瀬田に恨みがあるわけでは無いのに言葉がつい辛辣になってしまった。
「いくら母親愛に飢えていても、新米パパさんな瀬田先生に当たっちゃダメですよ?本多さん。お父さんが邪魔でお母さんにかまってもらえない者同士、いっそ君達が仲良くするとかはどうだい?ねー葵君?」
ウルカの勤めるカフェの店長である野本が、普段とは全く違う風貌をして室内にある椅子に寄り掛かりながら本多と葵に声ををかけた。
優しい風貌をした白髪の小柄なご年配のオジサマでしかないはずの彼は今、腕には身の丈以上もある大鎌を持ち、顔には口元だけが見える髑髏の仮面を付け、黒衣のローブを全身に纏っている。コレがハロウィンのコスプレでもあればまだ可愛げもあるというものだが、見た目通りの生き物なせいで、彼の周囲は禍々しい空気で満ちていた。
「お前、ボクの仲間かよ!あはは!」
怖いモノ怖い知らずな子供が、本多を指差し声をあげて笑う。
「『お前』言うな!年上は敬え!」と、瀬田が葵の頭を容赦なく叩いた。
「痛いってば、父さん!」
「今のは口の悪いお前が悪い!」
などと、賑やかなやり取りをする瀬田と甥っ子の二人の様子を見て、華は肩の力が抜けていくのを感じた。
「——さてと、心の準備はいいかな?」
野本に問われ、華が無言で頷く。
穏やかな中年のオジサマな姿しか見たことが無かったので、地を這うみたいな響きを持つ彼の声に対し、華は少しだけ怖気付いてしまったが表には出さなかった。
「ただの空き部屋に棺を並べただけでは面白味が無いと思ってね、ちょっとだけ演出してみたんだけど、気に入ってもらえたかな?」と、華に向かい、気分転換になればと努めて明るい声色で本多が声を掛ける。クラシカルなスーツ姿の本多が腕を広げ、周囲をくるりと見渡した。
「コレはやっぱり館長の仕業でしたか。ふふっ、ありがとうございます。なんだか、いかにも黒魔術っぽい室内ですね」
カシュの手を握ったまま、華が部屋の中を彼と共に周囲へ視線をやった。
部屋は全体的にゆったりとした暗幕に覆われ、外が全く見えない。中心には大きめな棺が白い物と黒い物のそれぞれ一つづつ置かれ、すぐ側には短いナイフが用意してある。真っ赤な薔薇の花弁が床一面を埋め尽くし、天井からは薄明かりが灯るランタンが不規則に垂れ下がり、この部屋が図書館内にあるただの空き部屋である事を完全に忘れさせる演出がしっかりなされていた。
「父さんに頼めばもっと大それた事を出来たんだろうけど、私はあの人に貸しを作りたく無くってね、申し訳ない」
「いえ!もう私的には場所をお借り出来ただけでもう光栄と言うか、なんと言うか」
「…… ちょ、華さん、何でちょっと乙女っぽい顔をしてるの?」
じと目でカシュに見られ、華の肩がびくっと跳ねる。彼女的にはファン心理的な反応でしかなかったのだが、婚姻契約をしていなくても自称・華の伴侶である身としては、決して気分のいいものではなかったみたいだ。
グイッと腕を掴み、カシュが華の体を胸の中に引き寄せる。
「もうさっさと始めちゃいましょう、華さん」
「ここまで来たら、もうノリと勢いで押し切る感じね」
「えぇ、そうですよ。なので最後に…… キス、してもいいですか?」
「待って!ひ、ひ、人前よ⁉︎」
焦る華を無視し、カシュは顔を上げて瀬田をじっと見詰めた。
「瀬田先生、しばらくあっち向いていてくれませんか?」
「あぁ、わかったよ」
ハイハイ、と軽く手を振って瀬田が後ろを向く。人様のキスシーンなんぞ進んで見たいタイプでは無いので、むしろ一々指図された事の方が多少癇に触ったが、それを口にする程彼は子供ではなかった。
「ありがとうございます。さぁ華さん、コレで人間はあっちを向いてくれたんで、キスしてもいいですよね⁉︎」
「待て待て待て!ニタニタ顔でこっちを見てる葵君やウルカちゃんは⁉︎彼らは人外だから“人”としてカウントしないとか、まさか言う気じゃないでしょうね!」
ほっこり顔をしている本多とも目が合い、華が狼狽る。だけどそんな事はお構いなしに、「はい、ちょっと黙ってー!」と言いながらカシュは華の腰を抱き、立ったまま上から覆い被さるみたいにして彼女の唇を奪った。
「んー!んーんんっ!」
声にならない叫びをあげる華を無視し続けたまま、カシュが唇を重ね、舌を無理矢理に押し込み、彼女の呼吸をも奪う。この体の華とのキスはもう最後なのだと思うと、離れたく無い気持ちが胸の奥から湧き出てきてしまったが、胸をドンドンッと何度も叩かれてやっと彼はゆっくり離れていった。
「…… もしかして、怒っちゃいました?」
「…… はぁはぁはぁ…… いや、まぁ、うん。そうね」
んーコレはまた殴られるかな?とカシュが思い、くっと歯を喰いしばる。だけど華は彼の頰に軽く手を添えただけにとどめ、「気持ちはわかるから…… 叩いたりなんかしないわよ、流石に」と照れ臭そうに言った。
「人前でシタ事は!ちょっと腹が立つけどもね」
「教会での結婚式だって人前でキスしたりしますよね?アレみたいなものですって」
「いやいやいや…… 今からするのは、別に結婚式でもなんでもないから」
「そうなんですよねぇ、そうなんだよなぁ…… はぁ…… 」
カシュが華をスッと真っ直ぐに立たせて、ドレスのシワを綺麗に整える。呼吸を数回繰り返し、気持ちを落ち着けると「さてと、では…… ボクに、棺までエスコートさせて頂けますか?」と言い、華の手の甲にそっと口付けを贈った。
「…… えぇ。お願いしますね、カシュ」
影のある笑顔を黒衣のヴェールで隠し、華がダンス前の様に膝を折って礼をする。二人は手を取り合い、一歩、また一歩と空っぽの真っ黒い棺へと進んで行った。
棺の前に立ち、カシュが無言のまま華の体を横向きにして抱き上げた。そんな彼へ腕を伸ばし、首元にギュッと華が強く抱きつく。
「もし失敗しても、忘れないでいてね?」
「もちろんですよ、華さん」
華の髪にカシュが頰を何度もすり寄せる。そんな二人の様子を側で見ていた野本が、「そう不安がる事はありませんよ。私が居るじゃないですか。ね?」と禍々しいオーラを纏ったまま、低い声で言った。
「あぁ、それもそうですよね。もし失敗したら、野本さんのせいにして色々責任をとってもらいましょう」
「え⁉︎あー…… そうきましたか。いやまぁ…… いいですけどね、失敗しなければいいだけの話ですからねぇ」
そう言って、野本が仮面に隠れた頰を指で掻く様な仕草をした。
真っ黒い棺の中にカシュがそっと華の体を寝かせる。白いクッションに覆われた棺の中に彼女がきちんと横たわると、彼がドレスの裾やヴェールも中に詰め、見た目よくそれらを整えた。
寝転んでもなお大きめな胸の上で手を祈る様に組み、華が深呼吸をしながら目蓋をゆっくりと閉じる。ランタンのみで照らされた室内では、目蓋を閉じると彼女の視界は暗闇一色に染まった。
トクン…… トクン…… トクンッ——
心臓の音が華の耳奥で何度も響く。思ったよりもゆっくりで、今更全てを受け入れる決意を決める事が出来た。
「…… じゃあ、いいかな?命を頂いても」
「お願いします」と、二人が同時に野本へ告げる。その言葉を聴いたと同時に野本は手に握っていた大鎌を勢いよく振り上げると、カシュがすぐ側に居る事も気にしないまま、切っ先を華の胸へと突き立てた。
音も無く、ただ一度だけ華の体がビクッと震える。
享年三十一歳。徒結華は、野本と名乗る死神の手によって、強制的にその人生に幕を閉じたのだった。
「早速開けてもいいですか?」
「えぇ、もちろんよ」
ここを開ければ後戻りは出来ない。
もちろんする気も無いのだが、それでもちょっとだけ後ろ髪を引かれつつ、カシュが扉をゆっくりと開ける。すると、先に室内で待っていた甥っ子の葵が彼を目敏く見付け「母さん、叔父さん達が来たよ!」と大声で叫んだ。
「こら、騒ぐな!」と言い、瀬田が葵を担ぎ上げ、自分の肩に座らせる。目線が急に高くなったせいで「うわ!」と葵は驚いた声を一瞬だけあげたが、すぐに慣れ、瀬田の髪の毛をしっかりと掴みながら脚をバタバタとさせて喜んだ。
「…… すっかり子持ちのお父さんね」
子供に遊ばれている瀬田の姿を見上げ、頭から漆黒のべールを被った華がくすくすと笑う。
「そうだな。婚活だなんだと日々明け暮れていた時期が、今じゃ懐かしく思えるよ」
「ははは。数週間程度の子育てで、父親面される子供も大変だねぇ」
そう言ったのは、図書館の館長である本多さんだ。
彼は人間である母親の事が大好きなロマンスグレーなオジサマなのだが、本の精霊である自分の父親に対しては色々と複雑な心境を抱えているせいか、瀬田に恨みがあるわけでは無いのに言葉がつい辛辣になってしまった。
「いくら母親愛に飢えていても、新米パパさんな瀬田先生に当たっちゃダメですよ?本多さん。お父さんが邪魔でお母さんにかまってもらえない者同士、いっそ君達が仲良くするとかはどうだい?ねー葵君?」
ウルカの勤めるカフェの店長である野本が、普段とは全く違う風貌をして室内にある椅子に寄り掛かりながら本多と葵に声ををかけた。
優しい風貌をした白髪の小柄なご年配のオジサマでしかないはずの彼は今、腕には身の丈以上もある大鎌を持ち、顔には口元だけが見える髑髏の仮面を付け、黒衣のローブを全身に纏っている。コレがハロウィンのコスプレでもあればまだ可愛げもあるというものだが、見た目通りの生き物なせいで、彼の周囲は禍々しい空気で満ちていた。
「お前、ボクの仲間かよ!あはは!」
怖いモノ怖い知らずな子供が、本多を指差し声をあげて笑う。
「『お前』言うな!年上は敬え!」と、瀬田が葵の頭を容赦なく叩いた。
「痛いってば、父さん!」
「今のは口の悪いお前が悪い!」
などと、賑やかなやり取りをする瀬田と甥っ子の二人の様子を見て、華は肩の力が抜けていくのを感じた。
「——さてと、心の準備はいいかな?」
野本に問われ、華が無言で頷く。
穏やかな中年のオジサマな姿しか見たことが無かったので、地を這うみたいな響きを持つ彼の声に対し、華は少しだけ怖気付いてしまったが表には出さなかった。
「ただの空き部屋に棺を並べただけでは面白味が無いと思ってね、ちょっとだけ演出してみたんだけど、気に入ってもらえたかな?」と、華に向かい、気分転換になればと努めて明るい声色で本多が声を掛ける。クラシカルなスーツ姿の本多が腕を広げ、周囲をくるりと見渡した。
「コレはやっぱり館長の仕業でしたか。ふふっ、ありがとうございます。なんだか、いかにも黒魔術っぽい室内ですね」
カシュの手を握ったまま、華が部屋の中を彼と共に周囲へ視線をやった。
部屋は全体的にゆったりとした暗幕に覆われ、外が全く見えない。中心には大きめな棺が白い物と黒い物のそれぞれ一つづつ置かれ、すぐ側には短いナイフが用意してある。真っ赤な薔薇の花弁が床一面を埋め尽くし、天井からは薄明かりが灯るランタンが不規則に垂れ下がり、この部屋が図書館内にあるただの空き部屋である事を完全に忘れさせる演出がしっかりなされていた。
「父さんに頼めばもっと大それた事を出来たんだろうけど、私はあの人に貸しを作りたく無くってね、申し訳ない」
「いえ!もう私的には場所をお借り出来ただけでもう光栄と言うか、なんと言うか」
「…… ちょ、華さん、何でちょっと乙女っぽい顔をしてるの?」
じと目でカシュに見られ、華の肩がびくっと跳ねる。彼女的にはファン心理的な反応でしかなかったのだが、婚姻契約をしていなくても自称・華の伴侶である身としては、決して気分のいいものではなかったみたいだ。
グイッと腕を掴み、カシュが華の体を胸の中に引き寄せる。
「もうさっさと始めちゃいましょう、華さん」
「ここまで来たら、もうノリと勢いで押し切る感じね」
「えぇ、そうですよ。なので最後に…… キス、してもいいですか?」
「待って!ひ、ひ、人前よ⁉︎」
焦る華を無視し、カシュは顔を上げて瀬田をじっと見詰めた。
「瀬田先生、しばらくあっち向いていてくれませんか?」
「あぁ、わかったよ」
ハイハイ、と軽く手を振って瀬田が後ろを向く。人様のキスシーンなんぞ進んで見たいタイプでは無いので、むしろ一々指図された事の方が多少癇に触ったが、それを口にする程彼は子供ではなかった。
「ありがとうございます。さぁ華さん、コレで人間はあっちを向いてくれたんで、キスしてもいいですよね⁉︎」
「待て待て待て!ニタニタ顔でこっちを見てる葵君やウルカちゃんは⁉︎彼らは人外だから“人”としてカウントしないとか、まさか言う気じゃないでしょうね!」
ほっこり顔をしている本多とも目が合い、華が狼狽る。だけどそんな事はお構いなしに、「はい、ちょっと黙ってー!」と言いながらカシュは華の腰を抱き、立ったまま上から覆い被さるみたいにして彼女の唇を奪った。
「んー!んーんんっ!」
声にならない叫びをあげる華を無視し続けたまま、カシュが唇を重ね、舌を無理矢理に押し込み、彼女の呼吸をも奪う。この体の華とのキスはもう最後なのだと思うと、離れたく無い気持ちが胸の奥から湧き出てきてしまったが、胸をドンドンッと何度も叩かれてやっと彼はゆっくり離れていった。
「…… もしかして、怒っちゃいました?」
「…… はぁはぁはぁ…… いや、まぁ、うん。そうね」
んーコレはまた殴られるかな?とカシュが思い、くっと歯を喰いしばる。だけど華は彼の頰に軽く手を添えただけにとどめ、「気持ちはわかるから…… 叩いたりなんかしないわよ、流石に」と照れ臭そうに言った。
「人前でシタ事は!ちょっと腹が立つけどもね」
「教会での結婚式だって人前でキスしたりしますよね?アレみたいなものですって」
「いやいやいや…… 今からするのは、別に結婚式でもなんでもないから」
「そうなんですよねぇ、そうなんだよなぁ…… はぁ…… 」
カシュが華をスッと真っ直ぐに立たせて、ドレスのシワを綺麗に整える。呼吸を数回繰り返し、気持ちを落ち着けると「さてと、では…… ボクに、棺までエスコートさせて頂けますか?」と言い、華の手の甲にそっと口付けを贈った。
「…… えぇ。お願いしますね、カシュ」
影のある笑顔を黒衣のヴェールで隠し、華がダンス前の様に膝を折って礼をする。二人は手を取り合い、一歩、また一歩と空っぽの真っ黒い棺へと進んで行った。
棺の前に立ち、カシュが無言のまま華の体を横向きにして抱き上げた。そんな彼へ腕を伸ばし、首元にギュッと華が強く抱きつく。
「もし失敗しても、忘れないでいてね?」
「もちろんですよ、華さん」
華の髪にカシュが頰を何度もすり寄せる。そんな二人の様子を側で見ていた野本が、「そう不安がる事はありませんよ。私が居るじゃないですか。ね?」と禍々しいオーラを纏ったまま、低い声で言った。
「あぁ、それもそうですよね。もし失敗したら、野本さんのせいにして色々責任をとってもらいましょう」
「え⁉︎あー…… そうきましたか。いやまぁ…… いいですけどね、失敗しなければいいだけの話ですからねぇ」
そう言って、野本が仮面に隠れた頰を指で掻く様な仕草をした。
真っ黒い棺の中にカシュがそっと華の体を寝かせる。白いクッションに覆われた棺の中に彼女がきちんと横たわると、彼がドレスの裾やヴェールも中に詰め、見た目よくそれらを整えた。
寝転んでもなお大きめな胸の上で手を祈る様に組み、華が深呼吸をしながら目蓋をゆっくりと閉じる。ランタンのみで照らされた室内では、目蓋を閉じると彼女の視界は暗闇一色に染まった。
トクン…… トクン…… トクンッ——
心臓の音が華の耳奥で何度も響く。思ったよりもゆっくりで、今更全てを受け入れる決意を決める事が出来た。
「…… じゃあ、いいかな?命を頂いても」
「お願いします」と、二人が同時に野本へ告げる。その言葉を聴いたと同時に野本は手に握っていた大鎌を勢いよく振り上げると、カシュがすぐ側に居る事も気にしないまま、切っ先を華の胸へと突き立てた。
音も無く、ただ一度だけ華の体がビクッと震える。
享年三十一歳。徒結華は、野本と名乗る死神の手によって、強制的にその人生に幕を閉じたのだった。
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