上 下
79 / 83
○番外編・2○ 先生のお気に入り【八島莉緒エピソード】

家庭科教師だって恋をしたい・最終話(八島莉央・談)

しおりを挟む
「ひ、酷い…… 可愛い顔して、八島さんがこんなテクニシャンだったなんて…… 」
 狭いシングルベットに二人で横になり、うつ伏せ状態の狸小路さんが私の枕に顔を沈めて泣いている。生娘じゃあるまいに、まるで襲われた後のような反応をされ困りつつも、それすら可愛い奴めと思える自分はもう終わってるかもしれない。

 しかもテクニシャンって…… 。いやまぁ、ちょっとお口では色々しちゃいましたけど?でもそんなの、アナタをその気にさせるためだけに最初にちょーっとしたくらいで、後はご自分から色々なさっていましたよね?無理矢理人の口に指を入れて開かせて、達したばかりのモノを舐めさせてきたりとかしたの、そっちじゃないっすか。必死に全身を貪って、「もうキツイ」って言っても朝日が昇るまでいたしたの、そちらですよ?

 ——と色々思う所がありつつ、それらは口にしないまま、私は視線だけを窓の方へやった。
 遮光効果の無いカーテンの向こうはもう明るくなっており、車などの騒音が微かに聞こえる。御近所さんからは朝食を作る美味しそうな匂いが僅かに漂ってきて、私の鼻腔をくすぐった。

「発情期でもない僕をこんなにするなんて!」

 被害者感情丸出しの発言は流石に心外だ。
「五回も六回も出しちゃってたのに、ソレ言っちゃうのかい?」
 事後そのままの状態ないので、すごく眠いわ、全身ベタベタするわ、腹の中は色々な理由で重たいわで、文句を言いたいのはこっちの方だ。だがしかし、こちらが先に仕掛けたので言われてもまぁ仕方ないかとも思う。
「恥ずかしい事言わないで下さいぃぃ」
 そう言って、狸小路さんはより一層枕の中へ深く沈んだ。
「そんな事言ってぇ、狸小路さんだって、途中からめちゃくちゃノリノリだったのに。雄の顔してて、ビックリしちゃったよ。全部中出しだったし、子ども出来ちゃうかもだね」

「子ども…… 子ども欲しいです!沢山産んでくださいね。僕、ちゃんと面倒見ますよ」

 枕から勢いよく顔を上げた狸小路さんは、とても嬉しそうだ。種を残したいという思いは、化け狸であろうとも動物的本能として強いのだろうか。

 じっと私の顔を見つめてきたかと思うと、ペタンとベットに座り、私のお腹を嬉しそうな笑みを浮かべながらさすってくる。お互いに全裸のままなのでかなり恥ずかしいのだが、あまりに嬉しそうに撫でてくるので止めづらいし逃げ難い。
「…… 流石に、数時間前もらったものは、すぐに子どもに化けたりはしないはずですよ?」
 私の言葉で、ハッと我に返ったのか、狸小路さんが手を引っ込めた。
「す、すみません。子どもと聞き、つい…… 。ずっと自分の群れが欲しかったので、楽しみだなぁとか色々考えちゃって」
 照れ臭そうに鼻先を指でかき、尻尾がぱふんぱふんと布団を叩く。そういえば、狸はイヌ科だっけか。そりゃ尻尾に感情出ますよねぇ。

 世の中には子どもができたかもと言えば逃げる奴だっているというのに、こうも嬉しそうな反応をしてもらえると正直ホッとする。華先生や瀬田先生のように婚活をしていたわけじゃ無いが、結婚とかを視野に入れて交際をしてもいいかもしれない。いや…… むしろするべきだよねぇ、大量に中出しされまくってるのだからデキてるでしょうし。
 首の後ろを歯形がつくくらいに噛まれたり、脇や足裏など、長い時間舌で散々舐めまわされたりもしたのだ…… もう他の人と付き合うとかが、そもそも無理です。肉布団好きになった以外にも、彼のせいでこのまま変な性癖に目覚めさせられてしまいそうだ。

「あ、お腹とか減っていませんか?簡単なもので良かったら、何か作りますよ」
 空腹なので嬉しい提案だったが、今はとにかく眠い。
 なので私は、ちょいちょいっと手招きして、狸小路さんにこちらへもっと近寄るよう指示をした。
「…… ?どうかしましたか?」
 疑う事なく顔を近づけてきた彼の首に腕を回し、「うわ!」と驚く声と共に狸小路さんを布団の中に引きずり込む。
「今はちょっと寝ようか。仮眠して、お風呂入って…… ご飯はそれからで」
 褐色の額に額をコツンと重ねると、彼は無言で頷き、私の首に下に腕を差し入れてきた。どうやら腕枕をしてくれるみたいだ。普段の狸小路さんの腕とは違って筋肉質だから少し硬いけど、行為自体が嬉しいので甘えておくことにする。
 ふわりと香る彼の匂いが心地いい。抱かれ過ぎて疲れているせいもあってか、私はすとんと眠りの中へと落ちていった。


 この時見た夢は、私がカミーリャさんに拾われた時のものだった。
 懐かしい夢を見たおかげで、あの時先代の理事長が腕に抱えていた太った動物が、実は狸小路さんだったのだと気が付いたのは、言うまでも無い。
 私の人生の変える二人に同時に巡り逢っていたとか、「私は運が悪い」と嘆いていた頃の自分が知ったら、卒倒しそうだなぁ。


【終わり】
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

完結【R―18】様々な情事 短編集

秋刀魚妹子
恋愛
 本作品は、過度な性的描写が有ります。 というか、性的描写しか有りません。  タイトルのお品書きにて、シチュエーションとジャンルが分かります。  好みで無いシチュエーションやジャンルを踏まないようご注意下さい。  基本的に、短編集なので登場人物やストーリーは繋がっておりません。  同じ名前、同じ容姿でも関係無い場合があります。  ※ このキャラの情事が読みたいと要望の感想を頂いた場合は、同じキャラが登場する可能性があります。  ※ 更新は不定期です。  それでは、楽しんで頂けたら幸いです。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

【R18 大人女性向け】会社の飲み会帰りに年下イケメンにお持ち帰りされちゃいました

utsugi
恋愛
職場のイケメン後輩に飲み会帰りにお持ち帰りされちゃうお話です。 がっつりR18です。18歳未満の方は閲覧をご遠慮ください。

ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生

花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。 女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感! イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡

下品な男に下品に調教される清楚だった図書委員の話

神谷 愛
恋愛
クラスで目立つこともない彼女。半ば押し付けれられる形でなった図書委員の仕事のなかで出会った体育教師に堕とされる話。 つまらない学校、つまらない日常の中の唯一のスパイスである体育教師に身も心も墜ちていくハートフルストーリー。ある時は図書室で、ある時は職員室で、様々な場所で繰り広げられる終わりのない蜜月の軌跡。 歪んだ愛と実らぬ恋の衝突 ノクターンノベルズにもある ☆とブックマークをしてくれると喜ぶ。 感想を貰ったら踊り狂って喜ぶ。 してくれたら次の投稿が早くなるかも、しれない。

うちの娘と(Rー18)

量産型774
恋愛
完全に冷え切った夫婦関係。 だが、そんな関係とは反比例するように娘との関係が・・・ ・・・そして蠢くあのお方。 R18 近親相姦有 ファンタジー要素有

処理中です...