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第二章
【第十一話】「とんでもない夢を見た、気がする」①(瀬田・談)
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一晩経ち、火曜日の朝を迎えた。
喧しく鳴る目覚まし時計を叩くように止めて、枕の側にあるスマホを確認する。
「…… 俺は、いつ布団に入ったんだ?」
頭がぼぉっとしてなかなか体が動かない。寝起きだからというのもあるだろうが、それにしたってだ。どうしてだか、体に合わない薬を飲んだ後みたいに胸の奥が軽く気持ち悪い。
それにしても、随分変な夢を見たものだ。
風呂場で、知らない金髪の美少女と結婚の約束を交わしたうえ、いきなりセックスとか。寝た記憶の無いまま見る夢なんてものも本当にあるんだな。アレが『白昼夢』というやつなのだとしたら、俺は相当ヤバイ状態なのかもしれない。欲求不満も、ここまできたらもう病気だろ。
「早く嫁を貰わんと、ホントに性犯罪者になりかねんぞ、コレは…… 」
ベットの上で上半身を起こし、布団を捲る。生理現象だと片付けられないレベルで元気な息子が視線の先にあり、俺は自分の性欲の強さに、ただただ溜息を吐くことしか出来なかった。
◇
「おはようございます」
職員室に入り、隣の席に座っている華先生に朝の挨拶をした。
「おはようございます、瀬田先生」
俺に向かい、そう返事をした華先生の顔が少しニヤついている。一体何だ?気持ち悪いな。
「今日は、先生がちょーっと遅かったですね。時間にキッチリとしたタイプなのに、珍しいじゃないですか?」
あぁ、コレは昨日の仕返しか。
そういう部分があるから、なかなか相手が見付からないのでは?
思った事を口に出せば『瀬田先生はいつも一言多い!』と注意される気がしたので、言葉は頭の中だけに留め、机の側に鞄を置き、自分の席に座る。
「今日はちょっと…… 朝から頭の動きが鈍くてな」
ふぅと息を吐き、素直に理由を話した。
起きた時から続く違和感は少しづつ緩和されていってはいるが、まだちょっと変な感じがする。おかしな夢を見た影響…… なんて、まさかあったりするのか?
「あら、それはイヤね。大丈夫ですか?今日はお休みした方が良かったんじゃ。風邪のひき始めかもしれませんよ?」
「いや、そこまでじゃない。少しづつ良くはなっているから大丈夫だろ」
「でも無理はしないで下さいね。生徒にうつしたら迷惑なので」
キツイ眼差しを華先生が俺に向ける。俺の、心配はどうやら全くしていないみたいだ。
「そうだな。これは流石にマズイと思ったら、ちゃんと早退する」
華先生に対しそう答え、朝の準備を開始する。気分転換も兼ねて後でコーヒーでも買いに行くか。
◇
「…… ——んじゃ、今日のホームルームはここまで。日直、ちゃんと仕事しろよ。特に伊藤!お前、今回は日誌真面目に書けよ。手抜きしたらお前も追試に参加させるからな!」
「はぁ⁈んな理不尽な!」
「真面目に書けば、問題ねぇんだよ」
眼鏡越しに伊藤を睨み付けると、彼の肩が軽く震えた。やり過ぎたか?だが、本調子じゃないせいか、どうもダメだ。
「まぁとにかくだ…… 隅に描く絵ぐらいは毎度面白いから許す」
「マジで⁈」
一転して機嫌が良くなってホッとした。最近の子供は打たれ弱い奴が多いから加減に困る。叩いてもいないのに、『体罰だ』『虐待だ』と言い出す奴もいるそうだからタチが悪い。幸いそういった生徒は俺のクラスにはいないのでありがたいが、いつ化けるかとヒヤヒヤした気持ちは正直常に抱えている。
「じゃ、お前ら一時限目の準備しておけよ。のっけは国語だろ?」
「そうだ、華先生だ!座っておかねぇと」
俺の言葉を聞き、立っていた生徒達がそわそわとした様子で席に戻って行く。座れと注意されるかもという考えからくる焦りというよりは、ちょっと顔が嬉しそうなのが小憎たらしい。いったいアイツはどんな授業をしてるんだ?
担当の教室から出て、一階にある自動販売機の前まで来た。缶コーヒーでもと思ったんだが、どれを見ても珍しくピンとこない。いつも買っているやつすらも魅力を感じない始末だ。体調が悪いから、なんだろうか。
どうせ飲むならちゃんと美味しい物を飲みたい。
そんな衝動を感じ、俺は珍しく、学校の敷地内にあるカフェにコーヒーを買いに行く事にした。
喧しく鳴る目覚まし時計を叩くように止めて、枕の側にあるスマホを確認する。
「…… 俺は、いつ布団に入ったんだ?」
頭がぼぉっとしてなかなか体が動かない。寝起きだからというのもあるだろうが、それにしたってだ。どうしてだか、体に合わない薬を飲んだ後みたいに胸の奥が軽く気持ち悪い。
それにしても、随分変な夢を見たものだ。
風呂場で、知らない金髪の美少女と結婚の約束を交わしたうえ、いきなりセックスとか。寝た記憶の無いまま見る夢なんてものも本当にあるんだな。アレが『白昼夢』というやつなのだとしたら、俺は相当ヤバイ状態なのかもしれない。欲求不満も、ここまできたらもう病気だろ。
「早く嫁を貰わんと、ホントに性犯罪者になりかねんぞ、コレは…… 」
ベットの上で上半身を起こし、布団を捲る。生理現象だと片付けられないレベルで元気な息子が視線の先にあり、俺は自分の性欲の強さに、ただただ溜息を吐くことしか出来なかった。
◇
「おはようございます」
職員室に入り、隣の席に座っている華先生に朝の挨拶をした。
「おはようございます、瀬田先生」
俺に向かい、そう返事をした華先生の顔が少しニヤついている。一体何だ?気持ち悪いな。
「今日は、先生がちょーっと遅かったですね。時間にキッチリとしたタイプなのに、珍しいじゃないですか?」
あぁ、コレは昨日の仕返しか。
そういう部分があるから、なかなか相手が見付からないのでは?
思った事を口に出せば『瀬田先生はいつも一言多い!』と注意される気がしたので、言葉は頭の中だけに留め、机の側に鞄を置き、自分の席に座る。
「今日はちょっと…… 朝から頭の動きが鈍くてな」
ふぅと息を吐き、素直に理由を話した。
起きた時から続く違和感は少しづつ緩和されていってはいるが、まだちょっと変な感じがする。おかしな夢を見た影響…… なんて、まさかあったりするのか?
「あら、それはイヤね。大丈夫ですか?今日はお休みした方が良かったんじゃ。風邪のひき始めかもしれませんよ?」
「いや、そこまでじゃない。少しづつ良くはなっているから大丈夫だろ」
「でも無理はしないで下さいね。生徒にうつしたら迷惑なので」
キツイ眼差しを華先生が俺に向ける。俺の、心配はどうやら全くしていないみたいだ。
「そうだな。これは流石にマズイと思ったら、ちゃんと早退する」
華先生に対しそう答え、朝の準備を開始する。気分転換も兼ねて後でコーヒーでも買いに行くか。
◇
「…… ——んじゃ、今日のホームルームはここまで。日直、ちゃんと仕事しろよ。特に伊藤!お前、今回は日誌真面目に書けよ。手抜きしたらお前も追試に参加させるからな!」
「はぁ⁈んな理不尽な!」
「真面目に書けば、問題ねぇんだよ」
眼鏡越しに伊藤を睨み付けると、彼の肩が軽く震えた。やり過ぎたか?だが、本調子じゃないせいか、どうもダメだ。
「まぁとにかくだ…… 隅に描く絵ぐらいは毎度面白いから許す」
「マジで⁈」
一転して機嫌が良くなってホッとした。最近の子供は打たれ弱い奴が多いから加減に困る。叩いてもいないのに、『体罰だ』『虐待だ』と言い出す奴もいるそうだからタチが悪い。幸いそういった生徒は俺のクラスにはいないのでありがたいが、いつ化けるかとヒヤヒヤした気持ちは正直常に抱えている。
「じゃ、お前ら一時限目の準備しておけよ。のっけは国語だろ?」
「そうだ、華先生だ!座っておかねぇと」
俺の言葉を聞き、立っていた生徒達がそわそわとした様子で席に戻って行く。座れと注意されるかもという考えからくる焦りというよりは、ちょっと顔が嬉しそうなのが小憎たらしい。いったいアイツはどんな授業をしてるんだ?
担当の教室から出て、一階にある自動販売機の前まで来た。缶コーヒーでもと思ったんだが、どれを見ても珍しくピンとこない。いつも買っているやつすらも魅力を感じない始末だ。体調が悪いから、なんだろうか。
どうせ飲むならちゃんと美味しい物を飲みたい。
そんな衝動を感じ、俺は珍しく、学校の敷地内にあるカフェにコーヒーを買いに行く事にした。
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