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第一章
【第八話】「胃袋を掴むつもりが、掴まれた…… 」(カシュ・談)
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「お風呂あがりましたー」
「丁度いいわね、こっちも用意が出来たわよ。すぐに食べれらるかしら?」
「はい!」
お風呂から上がり、勝手に借りたドライヤーを敢えて使って髪を乾かしてみた。お風呂も、着替えも、ドライヤーも…… ボクみたいな存在には全て不要なのだが、人の真似をするのはちょっと楽しい。魔力がほぼ枯渇していて何をするにもしんどいので、文明の利器に頼るのは何かと都合も良かった。
「うん、スッキリしたわね」
ニコニコと笑いながら、華さんがボクの頭を優しく撫でてくれる。温かな彼女の手がとても気持ちいい。彼女の長い指と爪が微かに角にぶつかり、ちょっとくすぐったい。尻尾ほどでは無いが、角も触られると色々感じてしまう為、軽く愛撫されているような気持ちになってくる。
あぁ、ホントこのまま僕と結婚して頂きたい!
でも、そう言ってしまわないよう、ぐっと堪える。今は『押してダメなら引いてみろ』の引いてみているタイミングにしようと思うので、『結婚、結婚!』と言ってしまうと全てがおじゃんだ。
「さぁ、食べましょうか」
そう言って、華さんはボクの髪を撫でるのもやめて、ローテーブルの前に腰掛ける。
手が離れる瞬間、少しだけ名残惜しそうな顔をしてくれたように見えたのは気のせいだろうか。もしボクの独りよがりな勘違いなどではなく、それが事実だったとしてもきっと、犬や猫を撫でた後程度の感覚なのだろうなぁと思うと、ちょっと寂しくなった。
ずらりと並ぶ料理の前に座り、ほぉと息を吐く。
昨夜必至に読み漁ったレシピ本をそのまま再現したのかと思う程のメニューがずらりとテーブルの上に並んでいる。
鶏肉の香菜焼き、サーモンのクリーム煮、柚子の香りがするサラダ、海老チリとハンバーグが隙間なく視界を埋める。
どれも美味しそうです。
人間の物を食べても空腹は少ししか満たされないが、でもまぁ無駄では無いので「いただきます」と言ってボクは箸を伸ばした。
一口、二口と食べるにつれ、不思議とお腹が満たされていく。
「…… なんで?」
こんな事は始めてで、ボソッと疑問が口を出た。
「どうしたの?口に合わない?」
不安そうに首を傾げる華さんに対し、「いえ!めちゃくちゃ美味しいですよ」と褒め称える。
「ホント…… すごく。こんな美味しいの、初めて食べました」
「ふっふっふ…… でしょう?伊達に幼少期から腕を磨いていたわけじゃ無いのよ。全てはいつか逢える誰かに、結婚対象として見てもらう為。管理栄養士の資格と野菜検定、食育指導士、フードコーディネーター、家庭料理技能検定とかだって持っているの!」
髪をさらりと後ろにやりながら、鼻高々に華さんが教えてくれた。どれもこれもボクはよくわからないけど、何かきっとすごいのだろう。
「…… なのに、何故結果につながらないのかしら?」
口元に手を当て、「んー」と華さんが唸る。
多分…… 色々やり過ぎだからじゃないでしょうか。
そう思ったけど、ボクは黙っておく事にした。気が付いてくれない方が都合が良いしね。
「まぁまぁ、美味しいから良いじゃないですか」
「そうね。冷めたら味が落ちるもの、話すのは後よね」
食べたら食べただけ腹が満たされる事を不思議には思いながらも、ボクは華さんの作ってくれた料理をどんどん食べていく。生まれてから初めて感じる『満たされる』という感覚がとても心地いい。今だったら何だって出来そうだ。
「沢山食べてね」
「はい!」
朝と昼とで華さんの胃袋を掴めればいいなと思っていたのに、掴まれたのは残念ながらボクの方だった。
「丁度いいわね、こっちも用意が出来たわよ。すぐに食べれらるかしら?」
「はい!」
お風呂から上がり、勝手に借りたドライヤーを敢えて使って髪を乾かしてみた。お風呂も、着替えも、ドライヤーも…… ボクみたいな存在には全て不要なのだが、人の真似をするのはちょっと楽しい。魔力がほぼ枯渇していて何をするにもしんどいので、文明の利器に頼るのは何かと都合も良かった。
「うん、スッキリしたわね」
ニコニコと笑いながら、華さんがボクの頭を優しく撫でてくれる。温かな彼女の手がとても気持ちいい。彼女の長い指と爪が微かに角にぶつかり、ちょっとくすぐったい。尻尾ほどでは無いが、角も触られると色々感じてしまう為、軽く愛撫されているような気持ちになってくる。
あぁ、ホントこのまま僕と結婚して頂きたい!
でも、そう言ってしまわないよう、ぐっと堪える。今は『押してダメなら引いてみろ』の引いてみているタイミングにしようと思うので、『結婚、結婚!』と言ってしまうと全てがおじゃんだ。
「さぁ、食べましょうか」
そう言って、華さんはボクの髪を撫でるのもやめて、ローテーブルの前に腰掛ける。
手が離れる瞬間、少しだけ名残惜しそうな顔をしてくれたように見えたのは気のせいだろうか。もしボクの独りよがりな勘違いなどではなく、それが事実だったとしてもきっと、犬や猫を撫でた後程度の感覚なのだろうなぁと思うと、ちょっと寂しくなった。
ずらりと並ぶ料理の前に座り、ほぉと息を吐く。
昨夜必至に読み漁ったレシピ本をそのまま再現したのかと思う程のメニューがずらりとテーブルの上に並んでいる。
鶏肉の香菜焼き、サーモンのクリーム煮、柚子の香りがするサラダ、海老チリとハンバーグが隙間なく視界を埋める。
どれも美味しそうです。
人間の物を食べても空腹は少ししか満たされないが、でもまぁ無駄では無いので「いただきます」と言ってボクは箸を伸ばした。
一口、二口と食べるにつれ、不思議とお腹が満たされていく。
「…… なんで?」
こんな事は始めてで、ボソッと疑問が口を出た。
「どうしたの?口に合わない?」
不安そうに首を傾げる華さんに対し、「いえ!めちゃくちゃ美味しいですよ」と褒め称える。
「ホント…… すごく。こんな美味しいの、初めて食べました」
「ふっふっふ…… でしょう?伊達に幼少期から腕を磨いていたわけじゃ無いのよ。全てはいつか逢える誰かに、結婚対象として見てもらう為。管理栄養士の資格と野菜検定、食育指導士、フードコーディネーター、家庭料理技能検定とかだって持っているの!」
髪をさらりと後ろにやりながら、鼻高々に華さんが教えてくれた。どれもこれもボクはよくわからないけど、何かきっとすごいのだろう。
「…… なのに、何故結果につながらないのかしら?」
口元に手を当て、「んー」と華さんが唸る。
多分…… 色々やり過ぎだからじゃないでしょうか。
そう思ったけど、ボクは黙っておく事にした。気が付いてくれない方が都合が良いしね。
「まぁまぁ、美味しいから良いじゃないですか」
「そうね。冷めたら味が落ちるもの、話すのは後よね」
食べたら食べただけ腹が満たされる事を不思議には思いながらも、ボクは華さんの作ってくれた料理をどんどん食べていく。生まれてから初めて感じる『満たされる』という感覚がとても心地いい。今だったら何だって出来そうだ。
「沢山食べてね」
「はい!」
朝と昼とで華さんの胃袋を掴めればいいなと思っていたのに、掴まれたのは残念ながらボクの方だった。
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