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最愛の君との未来を夢見る
最愛の君との未来を夢見る【最終話】
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「…… ここは?」
研究棟一階の隅にある部屋に連れて来られた奏がパソコン前にある椅子に座らされ、キョトン顔のまま室内をぐるりと見渡す。最初に入った一室は見慣れた研究室と似た様な作りになってはいたのだが、その奥にあるこの部屋には仮眠用として個人が使うには大きめなセミダブルのベッドがパーテーションの奥に設置してあった。その近くには何故か壁一面に大量のディスプレイが接続されたパソコンが数台横長な机の周辺に設置してあり、そこだけまるで警備室の様である。他にも小型の冷蔵庫や二人掛けのソファー、背の高い植木鉢、ガラスの飾り物などもあって、無機質なデザインの室内なのに、シンプル過ぎる陽の自室よりもちょっとだけ賑やかな雰囲気だ。
「あぁ、此処は私の新しい仕事部屋だよ。まぁ、こっちの部屋は個人的に用意してもらった仮眠室的な物だけれどもね」と陽が答え、ちょっと不自然に微笑む。明らかに“仮眠用”だけで終わらせるつもりは無いといった顔なのだが、幸か不幸か奏はそれを見抜けなかった。
「…… 新しい、職場?あれ?陽さんはお仕事を辞めるんじゃ?」と、無表情なまま、頭の中が疑問符だらけの奏が言った。
「何でそんな話になってるの⁉︎」
陽が大袈裟なくらいに驚き、冷蔵庫の横にある小さなテーブルの上に置かれた電気ポットでお湯を沸かしながら、眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた。無理もない、そんな噂が社内にあるなどと、半月近くも出社していなかった陽では知る機会すら無かったのだから。
「いや、確かにまぁ今の仕事は辞めると言えなくもないけど、それはあくまでも、秘書課から別の部署へ移動になるというだけの話だよ?」
「…… そう、なんですか?でも何で…… 」
「そりゃ、奏さんとの時間がもっと欲しいからだよ」
早々に電気ポットのお湯が沸け、事前に用意したカップに陽がハーブティーを淹れる用意をしていく。冷蔵庫からは事前に用意しておいてもらっていたお菓子を取り出すと、ちょっとしたお茶会の準備が整っていく。
「さぁどうぞ」と、奏の前にそれらを並べていく。甘い香りが鼻腔を擽り、そういえばちょっと小腹が空いてきたなと奏は思ったが、今はまだ就業時間中だ。慌ててちょっと出て来ただけだったので、彼女にはもうあまり時間がなかった。
「あ、ありがとうございます。でも私、話が終わったらすぐに戻らないと。この後職場で打ち合わせがあるんです」
すまなそうにしながら、奏が陽に話の続きをする様促そうとする。だが陽は「あぁ、それならもう早退の連絡をしておいたから問題ないよ」と、さらっと返した。
「い、いつしたんですか⁉︎」
「奏さんを椅子に座らせて、隣の部屋へ、ポットに水を入れに戻ったついでに」
「な、何でそんな?」
「何でって…… やっと彼氏に会えたってのに、奏さんは冷たいなぁ。久しぶりに会えたんだし、もっと喜んでくれてもいいのに」
陽がそう言いつつ、椅子に座る奏を背後からギュッと抱き締める。彼女の耳元に軽く頭を擦り寄せ、久しぶりに奏と寄り添える喜びを噛み締めた。
「奏さんの仕事の方は早退しても大丈夫だったよ。もう私は社長秘書じゃ無いけれど、一応まだ湯川さん達の七光を使えたからねー」
「…… わぁ」とまで言って、奏が絶句する。
でも疑問点はまだまだあって、知りたい事だらけだったので時間が出来た事は丁度良かったのかもしれない。
「わかりました。話を聞く時間が出来たのだと今回は喜んでおきます。まぁ…… 打ち合わせ以外では、今日は急ぎの案件も無かったですし、正直あまり仕事に集中も出来ていなかったので、結果的には良かったのかもしれません」
「んー…… 仕事に集中出来ていなかったのって、もしかして私のせい、だったりするのかな?」
そう訊く陽は、不謹慎にもちょっと嬉しそうだ。
「まぁ、はっきりと言えばそうですね。“義弟”という立場から“彼氏”になったはずの相手と早々に、しかも急に全然連絡が取れなくもなれば、やっぱり気になります。陽さんが自衛官で、潜水艦にでも乗っているのなら、お仕事で潜ったのかな?で済みますけど」
「それはごめんね、ホント反省してる。でもね、聞いてー聞いてー!」と言って、奏の肌に何度も陽が頭を擦り付ける。ふんわりとした髪が奏の肌を擽り、ちょっとくすぐったかった。
「わかりました!わかりましたから、一旦離れて、陽さんも椅子に座りませんか?」
「なら、一緒にベッドにすわっ——」と言う陽の言葉は、「それは話が中断しそうなんで、ソファーにして下さい」と頭を横に振りながら奏が即座に拒否した。
チッと心の中で舌打ちをし、「はーい」と陽が不自然な笑顔で返事をする。昼間は彼女のペースで交際すると約束している為、本音はさて置き、陽は我を通す事をきちんと諦めた。
ソファーに二人で並んで腰掛ける。ハーブティーの注がれたカップなども一式全てテーブルの前にずらしたので、お茶を飲みながら話の続きをする流れとなった。
「んで、どこから話そうか」
「そうですね、順を追って話してくれるとありがたいです」
「まぁそうだよね。…… えっとねー事の始まりは数ヶ月前に、湯川さんと久しぶりに食事をした時になるんだけど、その時に『好きな人が出来たから、私ももっと自由な時間が欲しいな』って話になってさ、『それだったら、ウチの父さんに復職してもらいましょうか』って言ってもらえたんだ」
「湯川社長の、お父さん…… 。その方って確か、ウチの前社長ですよね?」
「うん。湯川さんはもうこのまま裏方でいたいと考えているらしくってね、会社にそもそも来る気が無いんならもう、繋ぎでしかなかった私や、寺島みたいなちゃんとした社長秘書はもういらないねって話になったんだよ。あ、でも寺島は引き続き次の社長の第一秘書になるみたいだよ。アイツはかなり優秀だし、流れとしてはまぁ、当然だね」
「裏方?」と言い、奏が首を傾げる。陽の前では言えないが、『湯川社長ってウチで何か仕事してるんですか?』と思ってしまっている。彼が本来行うべき業務は、その一切合切を秘書課の陽が、そのサポートを寺島がやっていた事は公然の事実だったからだ。
「あ、うん。私に行動の指針を何となーくしてくれたり、ストレス発散にたまーに付き合ってくれたりとか。それとか『湯川さんならこういう時ってこんなふうに考えるだろうな』って思うと、色々簡単に経営判断や決断とか出来たから、本当に助かってたよ。あとはねぇ、大手取引先の病院で薬剤師の仕事もしてくれているから、その流れでの人脈の維持だとか…… まぁそんな感じかな」
口には出せなかったが、奏は『陽さんは頭の中に湯川社長のAIでも飼っているのかな?』と思った。
(今の話って色々とツッコミどころがありますね…… とも、ここは言わないでおきましょう。随分前に『青鬼さんが居るなら、ぶっちゃけ湯川社長いらないっすよね』と陽さんのご機嫌取りをするつもりで言って、『湯川社長を愚弄するな』と僻地に飛ばされた人もいたって噂も聞きましたし…… )
真相不明の噂話を思い出し、ぐっとツッコミたい言葉を堪え、奏が陽の話の続きを待つ。
「それでね、前社長の湯川さんが『息子ダメかー。んじゃ孫に継がせる約束が出来るんなら、社長業に戻ってもいいぞ。最近歳なのか、腰とか膝が痛くなってきたしね』って流れになってくれて、アマゾン川周辺でのフィールドワーク先までお迎えに行ってたんだよ」
そっちかー!と奏が心の中で叫び、額を押さえた。
『川』のワードもあの時一緒に送ってくれていれば、『自然消滅ですか?』とか『まさかそもそも体目当ての出任せ⁉︎』などと、また悩む様な事は無かったのにとも思う。
「いやぁ…… 完全に油断してたよ。まさか『此処まで来たならちょっと付き合え』って奥地まで連行されちゃってさ。その時持ってたスマホじゃ電波は繋がらないわ、電池も切れるわでもう」
「な、なるほど」
それは無理だ、確かに連絡出来ませんね!と奏が納得する。よくよく見ると、ちょっと前よりも日に焼けているのでどうやら事実みたいだ。
「帰りは帰りで、飛行機だ船だの中で『今のうちに引き継ぎしようか』とか言われて、奏さんに連絡する間も無いしでもう…… 。マイペース過ぎだ、あのクソオヤジめ…… 」
膝に肘をつき、陽が頭を抱える。この数週間の出来事を思い出し、どうやらかなりイライラしているみたいだ。
「えっと、その…… お疲れ様でした」と言い、奏がそっと陽の背中を優しく撫でる。事情を聞き、彼女の方はもうすっかり気持ちが落ち着いたみたいだ。
「ごめんね、奏さん。秘書課を辞めて、『これで奏さんの希望通り、もっと一緒に居られるよ』って驚かせたいなって思って最初は詳細を話すつもりじゃなかったんだけど、まさかこんな驚かせ方になっちゃうとは微塵も考えて無かったんだよ」
陽が顔をあげ、すまなそうな顔を奏に向ける。奏はそんな彼に対し口元だけで微笑むと、「もう陽さんを疑ったりとかしていませんよ」と答えた。
「ちなみに、さっき奏さんがぶつかったオジサンが湯川さんのお父さんで、明日から社長に戻る人だから覚えておくといいよ。って、奏さんが入社当時はまだあの人が社長だったから知ってるか」
「…… いえ、あまりあの方も表に出て来なかったので顔までは。と言うか、当時からフィールドワーク命で奥様と共に各国を飛び回っていましたからね。当時も、なんだかんだと副社長が色々職務を代行されていた感じでしたし」
「うわ…… ゴミだな、あのオヤジ」と、渋い顔を陽がする。
その表情を見て『…… 陽さんが敬愛する湯川社長と大差ないと思いますけど』と思った事も、奏はそっと心の奥に伏せた。
「でもまぁ、そのおかげで新薬に使えそうな新しい発見とかもかなりあって、結局は得られてる利益の方が大きいから、当時もあまり問題にならなかったんだろうな。それに、ウチの会社って基本的に重役陣は全て湯川家に恩義のある人達ばかりだから、あの人達が表立って何をしていようが、不正行為以外全部受け止めちゃうんだろうね」
奏と圭の両親である椿原夫婦も『湯川前社長には恩義がある』と言っていたのを思い出し、「なるほど」と奏が頷く。
「まぁ私としては、本当はこの流れに乗って奏さんと同じ職場に入りたかったんだけどね、それはいくら湯川さんの口添えがあっても、人事課に『得意分野が違うからダメよ。専門知識の乏しい貴方に医薬品の研究開発なんていきなり任せるワケないでしょ』と一蹴されちゃったよ」
はははっと苦笑する陽の顔を見て、『それはウチの母が言ったのだろうな』と奏は察した。
「それでもなんとか食い下がって、こうやって勉強の出来る環境は整えてもらえたし、しばらくは本業の調香師として真面目に仕事しつつ、医薬品開発の知識を地道に身に付けさせてもらうよ。——なーのーで、奏さん!」
「は、はい」
陽が奏の両手を掴み、そっとその手で包む。
「私が奏さんと同じチームで働ける様になるまで、ご教授の程よろしくね」
「…… へ?じ、自分が…… ですか?」
「うん。奏さんの研究チームに入りたいなら、奏さんに色々教えてもらうのが手っ取り早いよね?」
「まぁ、確かに」
「それと、まぁ呼称が“自分”に戻ってるよ?あぁ…… 久しぶりに、私にお仕置きでもされたかった?」
「ちが!違います!これはその、陽さんとは別れるのだろうなと思ってるうちに、自然と元に戻っただけで…… 」
「やだなぁ、奏さんとは別れないよ、絶対に。例えこの先何があろうと奏さんの事は一時たりとも離してはあげないから、そのつもりでいてね」
陽が淡々とした口調で言い、一切笑っていない瞳を奏に向ける。その眼差しを見て、奏の頭の中に『愛執』という言葉がふと浮かんだ。
(あぁ、この人はきっと、この先私が心変わりをする事があったとしても、自分から離れる気など毛頭無いのだろうな。奪い返すか、いや…… そもそも逃さないか。もしそれでも逃げたりなんかしたら、きっと陽さんは——いやいや、まさかね…… 。そんなのはドラマだけでの話ですよ、うん)
死を連想する様な考えが頭に浮かびそうになり、奏は慌てて打ち消す。
これが自分にとって、最初で最後の恋となるのなら、このくらい深く愛してくれる人で丁度良いのかもしれない。これがただの執着でしか無いのなら寂しいものを感じるが、そこに愛情があるのなら、きっとこの先もずっと大事にしてくれるだろうと奏が結論付ける。
「わかっていますよ。だから『結婚を前提にお付き合いをしましょう』と、じぶ…… 私も、言ったんですから」
「うん、そうだね。絶対にだよ、約束だからね」
「はい」
「…… そういえば、昔の吉原では、こういう時に小指そのものや無理矢理剥がした爪とかを贈り合ったりしたらしいね」
「え、何ですかそれ、怖いです。痛いのは無理です」と言い、奏が青冷めた顔を必死に横に振る。『愛情深い陽ならやりかねない…… 』と、勘違いから首を絞められた時の事を思い出し、ブルッと体が震えた。
「あ、うん。流石に私もそこまでは。でもね——」
言葉を一度止め、スーツのポケットから小さな箱を一つ陽が取り出した。
「このくらいだったら、奏さんも受け取ってくれるよね?」
青い色をした小箱を開け、中身がよく見える様にして奏の前にそれを差し出す。そこには銀色をしたリングに、アゲハ蝶の羽の様に輝く宝石が埋め込まれた指輪があった。
「綺麗な石ですね。白っぽいベースなのに、角度によって青にも黄色にも見えて、まるで虹みたいです」
見た目は少年っぽかろうとも、奏も一人の女性なので綺麗な物を前にするとテンションが軽く上がる。でも、宝石類に詳しくは無い為、何という石なのかはさっぱりわからなかった。
これは何?と見上げられ、陽が口元を綻ばせながら「それはね、レインボームーンストーンっていう宝石だよ」と奏に教える。
「洞察力や直感力を高める効果があるらしいから、奏さんに丁度いいかなって」
「…… まさか、これ。私へのプレゼント、ですか?」
「うん、もちろん。そうじゃないと奏さんに見せないよ」と言い、クスクスと笑う。
「婚約指輪として、もらって欲しいんだ」
「婚約…… こ、こ、婚約指輪⁉︎」
「そんなに驚く事かな。私達は結婚を前提に付き合ってるのに」
「あ、いや…… それもそうですよね、うん。でも、あの…… まさかコレ、給与の三ヶ月分とか言いませんよね?」
箱に入ったままの指輪を指差す奏の声が震えている。
「そこは心配されるだろうとも思ったから、ちゃんと常識の範囲だよ。その代わり、同じ宝石でブレスレットとチョーカーも作ってもらったけどね」
ニコッと笑いながら立ち上がると、いそいそとそれらも机の引き出しから出して、奏の元へ陽が戻ってくる。そして、有無を言わせず奏の細い首や、両手首にプラチナで作られらブレスレットをはめていった。
「あ、あの…… 陽さん?」
何故両腕?と不思議に思う。とても細いブレスレットではあるが、利き手だと少し邪魔そうだ。
「あぁ…… 手枷と首輪みたいで可愛い」
高揚した表情をして、うっとりとした声で陽が呟く。
奏はその言葉を聞き、『…… もしかして、陽さんはかなりの変態さんなのでは』と情報を書き換え、『いくら彼が好きでも、交際を決断した事は早計だったかな?』と考えた。だが、うっとり顔で首を撫でられただけで、勝手に心と体が喜んでしまう。
「とても似合ってるよ、奏さん。コレ、私ごと…… もらってくれるよね?」
「…… っ」
一瞬躊躇してしまい、奏の言葉が喉に詰まる。
「…… 奏さん、返事は?返事が聞きたいなぁ…… 」
陽が奏の両手を取り、恋人繋ぎの様に指を絡ませ、耳元で囁く。色気の漂う声色だったせいもあって、奏は体をビクッと震わせながら「…… はい」と、勢いだけで返事をしてしまった。
「あぁ、よかった。口約束だけじゃなく、ちゃんと目に見える形で奏さんが私のモノだってわかる様に出来てとても嬉しいよ」
そう言って、陽が奏の唇に軽い口付けを贈る。深くキスをしてしまいたい衝動は、まだ今は昼間だからと無理矢理堪えた。
(最初、『兄さんは“オトコの娘”か!』だなんて馬鹿な勘違いをしたせいでかなりの遠回りをしちゃったけど、もうこれからは絶対に何一つとして間違えない。奏さんが望むモノを与え、常に傍に居て、私だけを愛してもらうんだ——)
「好きだよ、奏さん。ずっと、ずーっと私と一緒に生きていこうね」
奏の首に巻かれたチョーカーと両手首のブレスレットが、本物の拘束具の様に思えてくる。彼の愛情を自分が受け止め切れるだろうか?と奏は不安を覚えたが、どうやらもう退路は断たれたみたいだ。
【終わり】
研究棟一階の隅にある部屋に連れて来られた奏がパソコン前にある椅子に座らされ、キョトン顔のまま室内をぐるりと見渡す。最初に入った一室は見慣れた研究室と似た様な作りになってはいたのだが、その奥にあるこの部屋には仮眠用として個人が使うには大きめなセミダブルのベッドがパーテーションの奥に設置してあった。その近くには何故か壁一面に大量のディスプレイが接続されたパソコンが数台横長な机の周辺に設置してあり、そこだけまるで警備室の様である。他にも小型の冷蔵庫や二人掛けのソファー、背の高い植木鉢、ガラスの飾り物などもあって、無機質なデザインの室内なのに、シンプル過ぎる陽の自室よりもちょっとだけ賑やかな雰囲気だ。
「あぁ、此処は私の新しい仕事部屋だよ。まぁ、こっちの部屋は個人的に用意してもらった仮眠室的な物だけれどもね」と陽が答え、ちょっと不自然に微笑む。明らかに“仮眠用”だけで終わらせるつもりは無いといった顔なのだが、幸か不幸か奏はそれを見抜けなかった。
「…… 新しい、職場?あれ?陽さんはお仕事を辞めるんじゃ?」と、無表情なまま、頭の中が疑問符だらけの奏が言った。
「何でそんな話になってるの⁉︎」
陽が大袈裟なくらいに驚き、冷蔵庫の横にある小さなテーブルの上に置かれた電気ポットでお湯を沸かしながら、眼鏡の奥の瞳を大きく見開いた。無理もない、そんな噂が社内にあるなどと、半月近くも出社していなかった陽では知る機会すら無かったのだから。
「いや、確かにまぁ今の仕事は辞めると言えなくもないけど、それはあくまでも、秘書課から別の部署へ移動になるというだけの話だよ?」
「…… そう、なんですか?でも何で…… 」
「そりゃ、奏さんとの時間がもっと欲しいからだよ」
早々に電気ポットのお湯が沸け、事前に用意したカップに陽がハーブティーを淹れる用意をしていく。冷蔵庫からは事前に用意しておいてもらっていたお菓子を取り出すと、ちょっとしたお茶会の準備が整っていく。
「さぁどうぞ」と、奏の前にそれらを並べていく。甘い香りが鼻腔を擽り、そういえばちょっと小腹が空いてきたなと奏は思ったが、今はまだ就業時間中だ。慌ててちょっと出て来ただけだったので、彼女にはもうあまり時間がなかった。
「あ、ありがとうございます。でも私、話が終わったらすぐに戻らないと。この後職場で打ち合わせがあるんです」
すまなそうにしながら、奏が陽に話の続きをする様促そうとする。だが陽は「あぁ、それならもう早退の連絡をしておいたから問題ないよ」と、さらっと返した。
「い、いつしたんですか⁉︎」
「奏さんを椅子に座らせて、隣の部屋へ、ポットに水を入れに戻ったついでに」
「な、何でそんな?」
「何でって…… やっと彼氏に会えたってのに、奏さんは冷たいなぁ。久しぶりに会えたんだし、もっと喜んでくれてもいいのに」
陽がそう言いつつ、椅子に座る奏を背後からギュッと抱き締める。彼女の耳元に軽く頭を擦り寄せ、久しぶりに奏と寄り添える喜びを噛み締めた。
「奏さんの仕事の方は早退しても大丈夫だったよ。もう私は社長秘書じゃ無いけれど、一応まだ湯川さん達の七光を使えたからねー」
「…… わぁ」とまで言って、奏が絶句する。
でも疑問点はまだまだあって、知りたい事だらけだったので時間が出来た事は丁度良かったのかもしれない。
「わかりました。話を聞く時間が出来たのだと今回は喜んでおきます。まぁ…… 打ち合わせ以外では、今日は急ぎの案件も無かったですし、正直あまり仕事に集中も出来ていなかったので、結果的には良かったのかもしれません」
「んー…… 仕事に集中出来ていなかったのって、もしかして私のせい、だったりするのかな?」
そう訊く陽は、不謹慎にもちょっと嬉しそうだ。
「まぁ、はっきりと言えばそうですね。“義弟”という立場から“彼氏”になったはずの相手と早々に、しかも急に全然連絡が取れなくもなれば、やっぱり気になります。陽さんが自衛官で、潜水艦にでも乗っているのなら、お仕事で潜ったのかな?で済みますけど」
「それはごめんね、ホント反省してる。でもね、聞いてー聞いてー!」と言って、奏の肌に何度も陽が頭を擦り付ける。ふんわりとした髪が奏の肌を擽り、ちょっとくすぐったかった。
「わかりました!わかりましたから、一旦離れて、陽さんも椅子に座りませんか?」
「なら、一緒にベッドにすわっ——」と言う陽の言葉は、「それは話が中断しそうなんで、ソファーにして下さい」と頭を横に振りながら奏が即座に拒否した。
チッと心の中で舌打ちをし、「はーい」と陽が不自然な笑顔で返事をする。昼間は彼女のペースで交際すると約束している為、本音はさて置き、陽は我を通す事をきちんと諦めた。
ソファーに二人で並んで腰掛ける。ハーブティーの注がれたカップなども一式全てテーブルの前にずらしたので、お茶を飲みながら話の続きをする流れとなった。
「んで、どこから話そうか」
「そうですね、順を追って話してくれるとありがたいです」
「まぁそうだよね。…… えっとねー事の始まりは数ヶ月前に、湯川さんと久しぶりに食事をした時になるんだけど、その時に『好きな人が出来たから、私ももっと自由な時間が欲しいな』って話になってさ、『それだったら、ウチの父さんに復職してもらいましょうか』って言ってもらえたんだ」
「湯川社長の、お父さん…… 。その方って確か、ウチの前社長ですよね?」
「うん。湯川さんはもうこのまま裏方でいたいと考えているらしくってね、会社にそもそも来る気が無いんならもう、繋ぎでしかなかった私や、寺島みたいなちゃんとした社長秘書はもういらないねって話になったんだよ。あ、でも寺島は引き続き次の社長の第一秘書になるみたいだよ。アイツはかなり優秀だし、流れとしてはまぁ、当然だね」
「裏方?」と言い、奏が首を傾げる。陽の前では言えないが、『湯川社長ってウチで何か仕事してるんですか?』と思ってしまっている。彼が本来行うべき業務は、その一切合切を秘書課の陽が、そのサポートを寺島がやっていた事は公然の事実だったからだ。
「あ、うん。私に行動の指針を何となーくしてくれたり、ストレス発散にたまーに付き合ってくれたりとか。それとか『湯川さんならこういう時ってこんなふうに考えるだろうな』って思うと、色々簡単に経営判断や決断とか出来たから、本当に助かってたよ。あとはねぇ、大手取引先の病院で薬剤師の仕事もしてくれているから、その流れでの人脈の維持だとか…… まぁそんな感じかな」
口には出せなかったが、奏は『陽さんは頭の中に湯川社長のAIでも飼っているのかな?』と思った。
(今の話って色々とツッコミどころがありますね…… とも、ここは言わないでおきましょう。随分前に『青鬼さんが居るなら、ぶっちゃけ湯川社長いらないっすよね』と陽さんのご機嫌取りをするつもりで言って、『湯川社長を愚弄するな』と僻地に飛ばされた人もいたって噂も聞きましたし…… )
真相不明の噂話を思い出し、ぐっとツッコミたい言葉を堪え、奏が陽の話の続きを待つ。
「それでね、前社長の湯川さんが『息子ダメかー。んじゃ孫に継がせる約束が出来るんなら、社長業に戻ってもいいぞ。最近歳なのか、腰とか膝が痛くなってきたしね』って流れになってくれて、アマゾン川周辺でのフィールドワーク先までお迎えに行ってたんだよ」
そっちかー!と奏が心の中で叫び、額を押さえた。
『川』のワードもあの時一緒に送ってくれていれば、『自然消滅ですか?』とか『まさかそもそも体目当ての出任せ⁉︎』などと、また悩む様な事は無かったのにとも思う。
「いやぁ…… 完全に油断してたよ。まさか『此処まで来たならちょっと付き合え』って奥地まで連行されちゃってさ。その時持ってたスマホじゃ電波は繋がらないわ、電池も切れるわでもう」
「な、なるほど」
それは無理だ、確かに連絡出来ませんね!と奏が納得する。よくよく見ると、ちょっと前よりも日に焼けているのでどうやら事実みたいだ。
「帰りは帰りで、飛行機だ船だの中で『今のうちに引き継ぎしようか』とか言われて、奏さんに連絡する間も無いしでもう…… 。マイペース過ぎだ、あのクソオヤジめ…… 」
膝に肘をつき、陽が頭を抱える。この数週間の出来事を思い出し、どうやらかなりイライラしているみたいだ。
「えっと、その…… お疲れ様でした」と言い、奏がそっと陽の背中を優しく撫でる。事情を聞き、彼女の方はもうすっかり気持ちが落ち着いたみたいだ。
「ごめんね、奏さん。秘書課を辞めて、『これで奏さんの希望通り、もっと一緒に居られるよ』って驚かせたいなって思って最初は詳細を話すつもりじゃなかったんだけど、まさかこんな驚かせ方になっちゃうとは微塵も考えて無かったんだよ」
陽が顔をあげ、すまなそうな顔を奏に向ける。奏はそんな彼に対し口元だけで微笑むと、「もう陽さんを疑ったりとかしていませんよ」と答えた。
「ちなみに、さっき奏さんがぶつかったオジサンが湯川さんのお父さんで、明日から社長に戻る人だから覚えておくといいよ。って、奏さんが入社当時はまだあの人が社長だったから知ってるか」
「…… いえ、あまりあの方も表に出て来なかったので顔までは。と言うか、当時からフィールドワーク命で奥様と共に各国を飛び回っていましたからね。当時も、なんだかんだと副社長が色々職務を代行されていた感じでしたし」
「うわ…… ゴミだな、あのオヤジ」と、渋い顔を陽がする。
その表情を見て『…… 陽さんが敬愛する湯川社長と大差ないと思いますけど』と思った事も、奏はそっと心の奥に伏せた。
「でもまぁ、そのおかげで新薬に使えそうな新しい発見とかもかなりあって、結局は得られてる利益の方が大きいから、当時もあまり問題にならなかったんだろうな。それに、ウチの会社って基本的に重役陣は全て湯川家に恩義のある人達ばかりだから、あの人達が表立って何をしていようが、不正行為以外全部受け止めちゃうんだろうね」
奏と圭の両親である椿原夫婦も『湯川前社長には恩義がある』と言っていたのを思い出し、「なるほど」と奏が頷く。
「まぁ私としては、本当はこの流れに乗って奏さんと同じ職場に入りたかったんだけどね、それはいくら湯川さんの口添えがあっても、人事課に『得意分野が違うからダメよ。専門知識の乏しい貴方に医薬品の研究開発なんていきなり任せるワケないでしょ』と一蹴されちゃったよ」
はははっと苦笑する陽の顔を見て、『それはウチの母が言ったのだろうな』と奏は察した。
「それでもなんとか食い下がって、こうやって勉強の出来る環境は整えてもらえたし、しばらくは本業の調香師として真面目に仕事しつつ、医薬品開発の知識を地道に身に付けさせてもらうよ。——なーのーで、奏さん!」
「は、はい」
陽が奏の両手を掴み、そっとその手で包む。
「私が奏さんと同じチームで働ける様になるまで、ご教授の程よろしくね」
「…… へ?じ、自分が…… ですか?」
「うん。奏さんの研究チームに入りたいなら、奏さんに色々教えてもらうのが手っ取り早いよね?」
「まぁ、確かに」
「それと、まぁ呼称が“自分”に戻ってるよ?あぁ…… 久しぶりに、私にお仕置きでもされたかった?」
「ちが!違います!これはその、陽さんとは別れるのだろうなと思ってるうちに、自然と元に戻っただけで…… 」
「やだなぁ、奏さんとは別れないよ、絶対に。例えこの先何があろうと奏さんの事は一時たりとも離してはあげないから、そのつもりでいてね」
陽が淡々とした口調で言い、一切笑っていない瞳を奏に向ける。その眼差しを見て、奏の頭の中に『愛執』という言葉がふと浮かんだ。
(あぁ、この人はきっと、この先私が心変わりをする事があったとしても、自分から離れる気など毛頭無いのだろうな。奪い返すか、いや…… そもそも逃さないか。もしそれでも逃げたりなんかしたら、きっと陽さんは——いやいや、まさかね…… 。そんなのはドラマだけでの話ですよ、うん)
死を連想する様な考えが頭に浮かびそうになり、奏は慌てて打ち消す。
これが自分にとって、最初で最後の恋となるのなら、このくらい深く愛してくれる人で丁度良いのかもしれない。これがただの執着でしか無いのなら寂しいものを感じるが、そこに愛情があるのなら、きっとこの先もずっと大事にしてくれるだろうと奏が結論付ける。
「わかっていますよ。だから『結婚を前提にお付き合いをしましょう』と、じぶ…… 私も、言ったんですから」
「うん、そうだね。絶対にだよ、約束だからね」
「はい」
「…… そういえば、昔の吉原では、こういう時に小指そのものや無理矢理剥がした爪とかを贈り合ったりしたらしいね」
「え、何ですかそれ、怖いです。痛いのは無理です」と言い、奏が青冷めた顔を必死に横に振る。『愛情深い陽ならやりかねない…… 』と、勘違いから首を絞められた時の事を思い出し、ブルッと体が震えた。
「あ、うん。流石に私もそこまでは。でもね——」
言葉を一度止め、スーツのポケットから小さな箱を一つ陽が取り出した。
「このくらいだったら、奏さんも受け取ってくれるよね?」
青い色をした小箱を開け、中身がよく見える様にして奏の前にそれを差し出す。そこには銀色をしたリングに、アゲハ蝶の羽の様に輝く宝石が埋め込まれた指輪があった。
「綺麗な石ですね。白っぽいベースなのに、角度によって青にも黄色にも見えて、まるで虹みたいです」
見た目は少年っぽかろうとも、奏も一人の女性なので綺麗な物を前にするとテンションが軽く上がる。でも、宝石類に詳しくは無い為、何という石なのかはさっぱりわからなかった。
これは何?と見上げられ、陽が口元を綻ばせながら「それはね、レインボームーンストーンっていう宝石だよ」と奏に教える。
「洞察力や直感力を高める効果があるらしいから、奏さんに丁度いいかなって」
「…… まさか、これ。私へのプレゼント、ですか?」
「うん、もちろん。そうじゃないと奏さんに見せないよ」と言い、クスクスと笑う。
「婚約指輪として、もらって欲しいんだ」
「婚約…… こ、こ、婚約指輪⁉︎」
「そんなに驚く事かな。私達は結婚を前提に付き合ってるのに」
「あ、いや…… それもそうですよね、うん。でも、あの…… まさかコレ、給与の三ヶ月分とか言いませんよね?」
箱に入ったままの指輪を指差す奏の声が震えている。
「そこは心配されるだろうとも思ったから、ちゃんと常識の範囲だよ。その代わり、同じ宝石でブレスレットとチョーカーも作ってもらったけどね」
ニコッと笑いながら立ち上がると、いそいそとそれらも机の引き出しから出して、奏の元へ陽が戻ってくる。そして、有無を言わせず奏の細い首や、両手首にプラチナで作られらブレスレットをはめていった。
「あ、あの…… 陽さん?」
何故両腕?と不思議に思う。とても細いブレスレットではあるが、利き手だと少し邪魔そうだ。
「あぁ…… 手枷と首輪みたいで可愛い」
高揚した表情をして、うっとりとした声で陽が呟く。
奏はその言葉を聞き、『…… もしかして、陽さんはかなりの変態さんなのでは』と情報を書き換え、『いくら彼が好きでも、交際を決断した事は早計だったかな?』と考えた。だが、うっとり顔で首を撫でられただけで、勝手に心と体が喜んでしまう。
「とても似合ってるよ、奏さん。コレ、私ごと…… もらってくれるよね?」
「…… っ」
一瞬躊躇してしまい、奏の言葉が喉に詰まる。
「…… 奏さん、返事は?返事が聞きたいなぁ…… 」
陽が奏の両手を取り、恋人繋ぎの様に指を絡ませ、耳元で囁く。色気の漂う声色だったせいもあって、奏は体をビクッと震わせながら「…… はい」と、勢いだけで返事をしてしまった。
「あぁ、よかった。口約束だけじゃなく、ちゃんと目に見える形で奏さんが私のモノだってわかる様に出来てとても嬉しいよ」
そう言って、陽が奏の唇に軽い口付けを贈る。深くキスをしてしまいたい衝動は、まだ今は昼間だからと無理矢理堪えた。
(最初、『兄さんは“オトコの娘”か!』だなんて馬鹿な勘違いをしたせいでかなりの遠回りをしちゃったけど、もうこれからは絶対に何一つとして間違えない。奏さんが望むモノを与え、常に傍に居て、私だけを愛してもらうんだ——)
「好きだよ、奏さん。ずっと、ずーっと私と一緒に生きていこうね」
奏の首に巻かれたチョーカーと両手首のブレスレットが、本物の拘束具の様に思えてくる。彼の愛情を自分が受け止め切れるだろうか?と奏は不安を覚えたが、どうやらもう退路は断たれたみたいだ。
【終わり】
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