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【初デートは蜜の味(の予定である)】
前夜の確認①(椿原奏・談)
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陽さんと映画を観に行く約束の日の前夜。
私は今、ガラスの容器に入る綺麗な薔薇を見詰めている。上部は丸みを帯びていて、まるで試験管をひっくり返したみたいな形だ。下部は金の装飾の入った台座があり、その中には小さな小物入れもついている。LEDライトで下からバラの花を仄かに照らす細工もしてあり、イメージとしては『美女と野獣』に出てくる、呪いの期限を告げる魔法の薔薇だ。
これは買ったものでは無い。まぁ…… 正確に言えば、バラバラに買った物を、私が分解してイメージ通りの品に合体させた物、と言うべきかもしれない。薔薇は生花をプリザーブドフラワーにし、枯れないようにもしたので長い期間飾っておいてもきっと見栄えはするはずだ。
よく見れば素人クオリティかもしれないが、少し離れれば立派な市販品に見えなくも無い。不器用では無い自分をちょっと誇り、私は部屋で一人胸を張った。
「間に合ってよかったです。あとは、喜んでくれるといいんですけど」
この品は、いつか義弟になる陽さんの為に作った物だ。
前に突然部屋に訪問した時に、あまりに殺風景な部屋を見て『これでは彼女さんか居づらいのでは?』と思い、コツコツと組み上げた。頼まれてもいないのにこんな物を用意するのは迷惑だろうか?とも思うが、彼の喜ぶ顔を想像すると、つい何かしたくなってしまう。義理でも弟が増えるという嬉しさから、無自覚のまま有頂天にでもなっているのだろう。
「さて、問題はいつ渡すか…… ですね」
んーと首を傾げ、真剣に悩む。サイズがそこそこ大きいので、明日の待ち合わせ場所に持って行くのは迷惑だろう。かといって、後日職場で渡すのも何か違う。壊れ物なので宅配に頼むのも怖い。となると、家に届けるのが一番か。
でも、いつ?気持ち的には明日の映画に合わせて渡すのがベストなのだが、ソレが無理である以上残るのはもう今夜しかない。
「だけど…… 」
壁掛け時計を見上げて時間を確認した。時刻はまだ十九時半だ。明日の為にと定時であがったので、まだまだ時間的には問題なさそうではある。
「でも、彼女さんが来ているかもしれませんよね」
そんなタイミングで訪れては迷惑極まりない。だけど…… あの部屋を思い出し、私は首を傾げた。殺風景で女性の気配がまるで無いあの部屋は、何度考えても彼女が遊びに来ている様には思えない。物があまりにも少ないとなると、何かしら部屋に持ち込みたくなるものではないだろうか?少なくとも、化粧品や歯ブラシの類くらいは置いておきたくなるのでは?
会社でも私にべったりで彼女さんとご飯を食べる様子も無く、何度それとなく訊いても『彼女はいない』と否定する。いくら秘密だとはいえ、あの陽さんが、そこまで徹底出来るだろうか?義姉でしか無い私相手にすら好意を剥き出しにしてくれるのに、交際相手ともなればもっとスゴイのではないのだろうか。
「…… もしかして、これは要確認案件なのでは?」
一度気になると落ち着かず、そわそわしてしまう。しかも丁度目の前には訪問する理由まであるではないか。
となれば、後は行動あるのみの様な気がしてきた。だけど直球で『彼女はいるんですか?』と改めて訊いても、どうせ『いない』で済まされると今までの流れ的に目に見えている。ならばこれはもう、自分の目で確認するしかない。何をどう判断していいかはこれから調べるとして、これから訪問するべく、私はひとまず目の前のプレゼントを梱包する事にした。
私は今、ガラスの容器に入る綺麗な薔薇を見詰めている。上部は丸みを帯びていて、まるで試験管をひっくり返したみたいな形だ。下部は金の装飾の入った台座があり、その中には小さな小物入れもついている。LEDライトで下からバラの花を仄かに照らす細工もしてあり、イメージとしては『美女と野獣』に出てくる、呪いの期限を告げる魔法の薔薇だ。
これは買ったものでは無い。まぁ…… 正確に言えば、バラバラに買った物を、私が分解してイメージ通りの品に合体させた物、と言うべきかもしれない。薔薇は生花をプリザーブドフラワーにし、枯れないようにもしたので長い期間飾っておいてもきっと見栄えはするはずだ。
よく見れば素人クオリティかもしれないが、少し離れれば立派な市販品に見えなくも無い。不器用では無い自分をちょっと誇り、私は部屋で一人胸を張った。
「間に合ってよかったです。あとは、喜んでくれるといいんですけど」
この品は、いつか義弟になる陽さんの為に作った物だ。
前に突然部屋に訪問した時に、あまりに殺風景な部屋を見て『これでは彼女さんか居づらいのでは?』と思い、コツコツと組み上げた。頼まれてもいないのにこんな物を用意するのは迷惑だろうか?とも思うが、彼の喜ぶ顔を想像すると、つい何かしたくなってしまう。義理でも弟が増えるという嬉しさから、無自覚のまま有頂天にでもなっているのだろう。
「さて、問題はいつ渡すか…… ですね」
んーと首を傾げ、真剣に悩む。サイズがそこそこ大きいので、明日の待ち合わせ場所に持って行くのは迷惑だろう。かといって、後日職場で渡すのも何か違う。壊れ物なので宅配に頼むのも怖い。となると、家に届けるのが一番か。
でも、いつ?気持ち的には明日の映画に合わせて渡すのがベストなのだが、ソレが無理である以上残るのはもう今夜しかない。
「だけど…… 」
壁掛け時計を見上げて時間を確認した。時刻はまだ十九時半だ。明日の為にと定時であがったので、まだまだ時間的には問題なさそうではある。
「でも、彼女さんが来ているかもしれませんよね」
そんなタイミングで訪れては迷惑極まりない。だけど…… あの部屋を思い出し、私は首を傾げた。殺風景で女性の気配がまるで無いあの部屋は、何度考えても彼女が遊びに来ている様には思えない。物があまりにも少ないとなると、何かしら部屋に持ち込みたくなるものではないだろうか?少なくとも、化粧品や歯ブラシの類くらいは置いておきたくなるのでは?
会社でも私にべったりで彼女さんとご飯を食べる様子も無く、何度それとなく訊いても『彼女はいない』と否定する。いくら秘密だとはいえ、あの陽さんが、そこまで徹底出来るだろうか?義姉でしか無い私相手にすら好意を剥き出しにしてくれるのに、交際相手ともなればもっとスゴイのではないのだろうか。
「…… もしかして、これは要確認案件なのでは?」
一度気になると落ち着かず、そわそわしてしまう。しかも丁度目の前には訪問する理由まであるではないか。
となれば、後は行動あるのみの様な気がしてきた。だけど直球で『彼女はいるんですか?』と改めて訊いても、どうせ『いない』で済まされると今までの流れ的に目に見えている。ならばこれはもう、自分の目で確認するしかない。何をどう判断していいかはこれから調べるとして、これから訪問するべく、私はひとまず目の前のプレゼントを梱包する事にした。
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