義弟が私を“オトコの娘”だと言う

月咲やまな

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【監禁されちゃう覚悟ありで、このまま押し掛け旦那になってもいいんですよ】

私に足りないもの(青鬼陽・談)

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「…… 兄さん成分が足りない」
 朝起きて、カーテンのせいであまり光が入らないず、まだ薄暗い部屋の天井を見上げて一番最初に発した言葉がこれだった。本心だが、本心だだ漏れを朝一からやらかすとか。他に誰も居ないのだから問題は無いが、言葉にしてしまうと余計に兄さん不足を実感してしまう。
「…… っしょと」
 体を起こして意味も無く部屋を見渡す。
「居るわけ、無いよね。…… ははは」
 これがR18の漫画だったりAVだったのならば、朝起きたら隣に全裸の兄さんが赤い跡だらけになった姿で寝ているところなのだろうが、残念ながら現実ではそうはいかないみたいだ。
 無駄にデカイベッドの、空いたスペースがやけに寂しい空間に感じられる。二十七にもなってこんな気持ちを感じることになろうとは、兄さんに逢えるまで思ってもいなかった。
「兄さん…… 」
 居るはずのない相手を呼び、一度は起こした体を再びベッドに放る。
 枕やシーツだけで視界がいっぱいになると、余計に兄さんが愛しくって恋しくって切なくなる。

 何んで居ないの?私の側に居てくれないとダメだよね?『あぁ、仕方の無い弟ですね』って言いながら、膝枕とかして欲しいなぁ。

 そんな事を考えながら、ゆっくり瞼を閉じる。いつもみたいに二度寝する為じゃ無い。下腹部に手をずらし、兄さんの事を考えるだけで難無く硬さを持ち始めたモノに着ているパジャマ越しにそっと触れた。
「んくっ」
 昨日の夜だって出したというのに、まるでこれじゃ自慰に目覚めたばかりの中高生だ。いや、あの時だってここまではしなかったか。気持ち良いには気持ち良かったが、誰かを具体的に想像してスル事が無かったからか、余韻も何も無い。何となくモヤっとしたものを解消するだけの行為に近かった。
 ところが今はどうだ。年上の男性だとは思えぬ小さな体で私に膝枕をしてくれる兄さんを瞼の奥に思い描くだけで、息が上がりすごく気持ちがいい。

 優しく口元だけで微笑み、『柔らかな髮ですね』と言いながら、手櫛で髪を弄るみたいに頭を撫でてくれる。私は兄さん側の方を向いて寝転んでいるからか、彼の芳しい香りが鼻腔を擽り、うっとりとした心地になった。
 しばらくはベランダ近くにあるソファーで、揃って穏やかな時間を過ごしていたのだが、少しずつ、兄さんから美味しそうな匂いがし始める。さっきから私の吐息が下腹部に当たり、ゾクゾクッと震えていたからだ。『…… 兄さん、コレ』と言いながら、下着やズボンを穿いていても誤魔化しきれなくなっている部分を優しく手の甲で擦ると、『んあ!』と言いながら兄さんが背を逸らす。
『だ、ダメですよ。まだ昼間なのに…… しかも、兄弟で、とか』
『でも私達に血縁は無いよね、問題ないんじゃない?』
 そう言って、少し強く擦ると、兄さんの腰がもじっと動いた。欲しいんだ、私にシテ欲しいなら欲しいって、素直に言えばいいのに——

「あぁ、兄さん可愛いっ」

 現実では自分のいきり立つモノを宥めるみたいに擦り撫で、妄想の中では、兄さんが穿いていた物を無理矢理半端に脱がせて『体に似合わず、立派だよね。ふふ…… こんなに我慢しちゃって』と囁きながら、我慢出来ずに熱り勃つソレを口に含んだ。

「兄さん、にぃさ…… か、奏さ、ん。好きぃ、挿入たぃ、く、いっ!」

 可愛い、好き、愛してる。小さくって無表情で、でも雄弁な瞳が愛しくって堪らない。
 私は湯川さんが好きなのだなと思っていた時期には起こらなかった衝動で気が狂いそうだ。湯川さん程に全てを捧げてでも尽くしたくって側に居て嬉しい人は今まで他にはいなかったのに、兄さんが相手だと触れたくって一つになりたくってしょうがないとか、一体どんな差があるというのだ。

 あと少し、もう少しで…… 。

「あ、んあ、ん!」と、閉じる瞼に力が入り、左手でシーツをギュッと掴む。このままでは出てしまう。マズイ、でも妄想の中の兄さんは後ろ手で縛られていて、しかも口でご奉仕してくれているシュチュエーションの真っ最中だったもんだから、ベッドサイドの小さな丸テーブルの上にあるテッシュボックスにまで手が伸ばせない。
 もういっそ下着の中へ。後で洗えばいいか——と、ぼんやり快楽に浸りまくっている頭で考えていると、ピンポーン!という不快な音が室内に響いた。

「…… ま、まじか」

 勘弁してくれ、今は無理だ、出られない。
 何もネットで頼んでいないし、きっとセールスに違いない。

 ピンポーン。

 帰れ、早く!今いいところなんだってわからないのか?
 そんな事はわかるはずがないし、わかられても気持ちが悪いのに、そんな事を身勝手にも思ってしまう。逆ギレしつつも無視を決め込み、しばらく様子を伺っていたのだが、その後も数分おきにチャイムを押され、段々と気持ちも体も萎えてきた。

 五分、十分、十五分…… 。
 それでも相手は諦めず、間を開けては押され続ける。まるで私を起こしたいみたいな間隔で、これはもしかして知り合いが来ているのでは?と、やっと考える事が出来てきた。

 体をベットから起こし、先走りで濡れるモノをひとまず拭き取る。パジャマのままではあるが、どうせウチまで朝から押しかけて来るような奴なんて家族か友人だ。職場の人間なのだとしたら寺島くらいなもんだから、このままでいいだろう。
 寝室を出て、居間を通って玄関へ向かう。途中で壁に飾っている鏡で姿を見ると、寝癖があって不恰好だったが、手櫛で適当に整えて覗き穴を確認する事なく「五月蝿いよ、朝から何?」と言いながら開錠してドアを開けた。

「…… ども」

 目の前に居た兄さんの姿を見て、私が絶句した事は、あえて言うまでもない事だろう。
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