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【幕間の物語(短話詰め合わせ)・その二】
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とある日の就業時間後。
計画通りに仕事を終えた奏と、彼女と帰りたいが一心で色々詰め詰めで仕事を無理矢理終わらせてきた陽が並んで駅まで向かって歩いている。
待ち合わせをしたわけでもないのにロビーで待機し、奏を見付けるなり『一緒に帰ろう、兄さん』と声をかけ、断る理由も無い事からと——二人は今に至る。
順調(?)に終わったとはいえ、既定の就業時間はとっくに過ぎており、すれ違う人達は皆飲み屋からの帰りか、二次会へ行こうかと話合う人ばかりだ。流れ的には彼女を食事にでも誘う所なのだろうが、残念ながら奏が既に同僚の買ってきたお弁当で夕食を済ませている事を監視カメラで確認済の陽は、落胆しながらもそれは諦めた。
(まだチャンスはいくらでもあるし。明日も仕事だし)
そう自分に言い聞かせ、自分よりも遥かに小柄な奏の横顔を盗み見る。近くを走り抜けていく数種の色をした車のライトが彼女の顔を照らし、長めの前髪の隙間から見える大きな瞳がキラキラと輝いている様に感じられる。サラサラのショートヘアーのおかげでうなじは見放題だし、細くて白い首筋は赤い痕が映えそうだ。
あぁぁぁもうホント可愛いなぁ、ガチでパクッと今すぐにでも喰べちゃいたい!
——だなんて、隣を歩く陽が悶々としている事など梅雨知らず。コミュ障というわけでもない奏は、淡々とした口調で今日の仕事内容について軽く上司への報告気味に話しているのだが…… 陽が真面目に聞いていたのかはちょっと疑問だった。
「あ、そうだ。ごめん話変わってもいい?」
「えぇ。何かありましたか?」
「あ、いや、何かあるってわけじゃないんだけどね。兄さんって実家暮らしだよね?職場からはちょっと遠いでしょ?残業でもっと遅くなった時ってどうしてるのかなーと思って」
「そうですねぇ…… どうしても面倒な時とか、電車は動いていても実家近くのバスが終わっていそうな時は、会社に泊まっちゃう事が多いです」
「そうなんだ。あはは、なら私と一緒だね。私も…… やってもやってもやっても終わらない時とかはよく職場で寝泊りしてそのまま次の日もとかやるし」
「仕事多過ぎやしませんか?それって」
「あ、いや。仕事はね、大丈夫。ウチはブラックじゃないから仕事量が多い時は人員増やしたり、臨機応変に対応してるよ。研究職の人達は、なんか自主的にブラック的残り方しちゃってるけど…… まぁそこはね、どうしたって終われないタイミングとかあるだろうから今は置いておいて。私の場合は、経営の勉強とか他にもしないといけない事がどうしたって多くってさ。大学まで薬学科だったし、高校までは普通科で、実家では調香師の勉強三昧だったから、経営学とかさっぱりだから」
「…… そう、ですよね。いつもありがとうございます」
立ち止まり、奏が軽く陽に向かって頭を下げる。別にそんな事をさせたかったわけではなかった陽が驚き、慌てて彼女の肩を掴んだ。
「好きでやってる事だから、全然気にしないで。ね?」
「でも…… 」
「サポートに経営学科出身者も居るし、役員の方々や上役の面々も優しくってさ、支えてくれているから大丈夫。湯川さんの秘書っていう立場まま、社長業をしていても許してくれてるとか寛容過ぎだよねー。それに最近はね、勉強も随分進んで業務に打ち込めるようになったから時間に余裕が出てきたんだ。だから兄さんとだって、こうやって一緒に帰ることができるんだよ」
にこやかに微笑まれ、奏が顔を上げる。
確かに…… 遠くからただ見かける事があった時よりは顔色も良さそうだし、やつれてもいない。むしろ生き生きとしている気がする。欲求不満は過剰に増えているが、そこは奏には気が付けるはずもなく、彼女はほっと安堵の息を吐いた。
「なら良かったです。無理はしないで下さいね、みんな心配しますから」
「うん、ありがとう兄さん」
穏やかな笑顔で陽が笑うと、二人はまた駅へと歩き始めた。
「…… よくよく考えたらね、兄さんもよく会社に泊まっているんだろう?」
「えぇ、そうですよ」
「私も会社に寝泊まりする事が結構あるとなると…… あれ?ねぇ!これってもう、私達は同居しているも同義じゃない⁉︎」
なんてこった!素敵やん⁉︎とでも言い出しそうな顔をし、自らの赤く染まる頬を陽が手で覆う。
(やだどうしよう、同居!同棲!って事は、ヤりたい放題!)
陽の頭の中が、オトコの娘な奏の裸エプロンや彼シャツなど卑猥な姿でパンクしそうだ。
そんな妄想をしてるなど微塵も感じ取れぬまま、奏が冷静にツッコミを入れる。
「ちょっと無理があり過ぎかと。同じく泊まっている方が他にも居ますので、どう頑張ってもルームシェアの方が近いのでは?」と、無表情のまま言った。
「じゃあ二人でマンションでも借りて同居しようよ、兄さん!家族だったら普通だよね?ほら、兄弟で同居とかよく聞く話だろう?」
「それは否定しませんけ。ですが血縁のある兄弟や、親同士の結婚で兄弟や姉妹になった人達ならまだしも、弟達などの結婚で義姉弟などになった方々では、流石に聞いた事が…… 」
義理の姉と弟での同居など無理以外の何ものでも無い。しかも陽が相手では、上役なので気遣い疲れで倒れそうだ。自分へ彼が、えっろえろで邪な感情を持っていると、ここまでされても気が付けていない奏はそんな心配にばかりに気を取られていた。
「ええぇぇ、だめ?どうしても?」
「そうですね」
「…… 兄さんが相手だったら、私はネコにだってなってもいいのに」
そう言って陽は、自らが奏に抱かれ、スーツを乱しながら後ろから攻められまくる姿を想像する。両腕はネクタイで縛られており、『ご自分のネクタイで逃げられなくなるとか、想像もしなかったでしょう?ふふふ』なんて言い、意地悪な笑みを浮かべて白衣だけを着る半裸の奏までしっかり脳内で再現できた。もちろん男性体で、だ。
「…… 猫?陽さんが猫に?」
奏の想像した猫はもちろんにゃーと鳴く可愛いお猫様である。真っ黒で尻尾の長い子だ。そんな子が、大きな体をしながら奏に甘える姿が徐々に変化し、陽の頭に猫耳が、お尻辺りからは長い尻尾が生える。首には大きな鈴をつけ、子犬みたいに構って攻撃をしてくる猫な陽が案外可愛くって、奏が珍しくクスッと笑った。
「陽さんの猫姿も、案外可愛いかもしれませんね」
彼がどんな想像をしつつ言った発言なのは読み解けるはずもなく、奏が笑顔で言った。
激レアな笑顔が陽の胸に思いっ切り突き刺さり、彼の心臓は止まる寸前だ。トキメキ過ぎて辛いとか、もうそういった次元も超えており、三途の川と花畑が見える気さえする。
(ネコな私を可愛いとか!カ・ワ・イ・イとか!イケメン過ぎでしょ。やだもう、いっそこの流れで抱いてくれて構わない!)
萌え死ぬ寸前のまま、陽が鼻先を手で覆う。
「もう好きにしてください…… 」
陽はボソッとそう一言呟き、なぁなぁにしていた受け手側対応の準備を真面目にやろうと決心したのだった。
◇
「——って事があってさ、本気で色々用意をしないとなって思ってるんだよね」
仕事の隙間時間。寺島は前日の経緯を陽から詳しく聞かされ、飲んでいたコーヒーを吹き出そうになった。同僚でもあり友人でもある陽の性事情をまたまた聞かされる事になるとは思っていなかったからだ。
(いやまぁ、俺が悪いのか?買い物の時にあんな話をしたからだよな?多分。その前までは抱きたいしか言ってなかったもんな。…… すまん)
「汚いな、これで拭いたらいいよ」と、陽がティッシュを箱ごと寺島に渡す。
それを受け取り、彼は「ありがと」と短く礼を言った。
「やる気満々のとこ悪いんだけどな。多分それ、またお前の勘違いだと思うぞ?」
「勘違い?」
「あぁ。だってさ、同居がなんたらからネコの話になったんだろう?その過程でお前の脳内以外にはエロ要素の話が出てないじゃん。って事はだ、椿原さん側は動物の猫を連想したんじゃないか?」
「動物の、猫?」
「んでもって、『陽さんの猫姿も案外可愛い』って事はだ、猫耳姿のお前でも想像して笑ったんじゃないかって思うんだ、俺は。なのでお前がこの先するべきなのは、ケツ穴の拡張工事とかじゃなくって、猫耳のカチューシャでも買って甘えてみた方がよっぽど体には優しいんじゃね?ハメたいが故の可愛いじゃねぇよ、きっと」
広い廊下の隅。コーヒーを片手に、窓辺に寄りかかりながら言った言葉はちょっと卑猥だったが、周囲には誰も居ないので寺島は話を続けた。
「手錠だ足枷だとかも難易度高そうだしさ、もっと普通に攻めていけよ。お前は顔面偏差値のバケモノなんだから、正攻法の方が上手くいくって」
(って言っても、男同士だとそれが通じるかわかんねぇけど…… まぁいいか)
ちょっと無責任かなとも思いつつ、寺島がそっと隣に居る陽の様子を伺う。奏が女性であると寺島はまだ認識しておらず、不要な心配材料をちょっと抱えたままだ。
「そっか…… 猫耳か。え、でも似合うのは兄さんであって私じゃないよね」
「ホントソレな!」
互いを指差し、断言する。二人のノリは完全に男子高校生だ。
「尻尾も可愛いよね。小柄だし、瞳も大きめだから猫っぽいし。お尻に入れちゃう動物尻尾の玩具は難易度高いからまだやめておくとしても、何かしら用意しておこうっと」
「…… 尻?…… まだ?お、おい!買うなよ⁉︎絶対に買うなよ!可哀想だろ、似合うけど!エロエロで、俺だってぶっちゃけ興味はあるけどもさぁ」
こうやってまた、奏の知らぬ所で陽の中の『兄さんにしたい事』が追加されていくのだった。——合掌。
計画通りに仕事を終えた奏と、彼女と帰りたいが一心で色々詰め詰めで仕事を無理矢理終わらせてきた陽が並んで駅まで向かって歩いている。
待ち合わせをしたわけでもないのにロビーで待機し、奏を見付けるなり『一緒に帰ろう、兄さん』と声をかけ、断る理由も無い事からと——二人は今に至る。
順調(?)に終わったとはいえ、既定の就業時間はとっくに過ぎており、すれ違う人達は皆飲み屋からの帰りか、二次会へ行こうかと話合う人ばかりだ。流れ的には彼女を食事にでも誘う所なのだろうが、残念ながら奏が既に同僚の買ってきたお弁当で夕食を済ませている事を監視カメラで確認済の陽は、落胆しながらもそれは諦めた。
(まだチャンスはいくらでもあるし。明日も仕事だし)
そう自分に言い聞かせ、自分よりも遥かに小柄な奏の横顔を盗み見る。近くを走り抜けていく数種の色をした車のライトが彼女の顔を照らし、長めの前髪の隙間から見える大きな瞳がキラキラと輝いている様に感じられる。サラサラのショートヘアーのおかげでうなじは見放題だし、細くて白い首筋は赤い痕が映えそうだ。
あぁぁぁもうホント可愛いなぁ、ガチでパクッと今すぐにでも喰べちゃいたい!
——だなんて、隣を歩く陽が悶々としている事など梅雨知らず。コミュ障というわけでもない奏は、淡々とした口調で今日の仕事内容について軽く上司への報告気味に話しているのだが…… 陽が真面目に聞いていたのかはちょっと疑問だった。
「あ、そうだ。ごめん話変わってもいい?」
「えぇ。何かありましたか?」
「あ、いや、何かあるってわけじゃないんだけどね。兄さんって実家暮らしだよね?職場からはちょっと遠いでしょ?残業でもっと遅くなった時ってどうしてるのかなーと思って」
「そうですねぇ…… どうしても面倒な時とか、電車は動いていても実家近くのバスが終わっていそうな時は、会社に泊まっちゃう事が多いです」
「そうなんだ。あはは、なら私と一緒だね。私も…… やってもやってもやっても終わらない時とかはよく職場で寝泊りしてそのまま次の日もとかやるし」
「仕事多過ぎやしませんか?それって」
「あ、いや。仕事はね、大丈夫。ウチはブラックじゃないから仕事量が多い時は人員増やしたり、臨機応変に対応してるよ。研究職の人達は、なんか自主的にブラック的残り方しちゃってるけど…… まぁそこはね、どうしたって終われないタイミングとかあるだろうから今は置いておいて。私の場合は、経営の勉強とか他にもしないといけない事がどうしたって多くってさ。大学まで薬学科だったし、高校までは普通科で、実家では調香師の勉強三昧だったから、経営学とかさっぱりだから」
「…… そう、ですよね。いつもありがとうございます」
立ち止まり、奏が軽く陽に向かって頭を下げる。別にそんな事をさせたかったわけではなかった陽が驚き、慌てて彼女の肩を掴んだ。
「好きでやってる事だから、全然気にしないで。ね?」
「でも…… 」
「サポートに経営学科出身者も居るし、役員の方々や上役の面々も優しくってさ、支えてくれているから大丈夫。湯川さんの秘書っていう立場まま、社長業をしていても許してくれてるとか寛容過ぎだよねー。それに最近はね、勉強も随分進んで業務に打ち込めるようになったから時間に余裕が出てきたんだ。だから兄さんとだって、こうやって一緒に帰ることができるんだよ」
にこやかに微笑まれ、奏が顔を上げる。
確かに…… 遠くからただ見かける事があった時よりは顔色も良さそうだし、やつれてもいない。むしろ生き生きとしている気がする。欲求不満は過剰に増えているが、そこは奏には気が付けるはずもなく、彼女はほっと安堵の息を吐いた。
「なら良かったです。無理はしないで下さいね、みんな心配しますから」
「うん、ありがとう兄さん」
穏やかな笑顔で陽が笑うと、二人はまた駅へと歩き始めた。
「…… よくよく考えたらね、兄さんもよく会社に泊まっているんだろう?」
「えぇ、そうですよ」
「私も会社に寝泊まりする事が結構あるとなると…… あれ?ねぇ!これってもう、私達は同居しているも同義じゃない⁉︎」
なんてこった!素敵やん⁉︎とでも言い出しそうな顔をし、自らの赤く染まる頬を陽が手で覆う。
(やだどうしよう、同居!同棲!って事は、ヤりたい放題!)
陽の頭の中が、オトコの娘な奏の裸エプロンや彼シャツなど卑猥な姿でパンクしそうだ。
そんな妄想をしてるなど微塵も感じ取れぬまま、奏が冷静にツッコミを入れる。
「ちょっと無理があり過ぎかと。同じく泊まっている方が他にも居ますので、どう頑張ってもルームシェアの方が近いのでは?」と、無表情のまま言った。
「じゃあ二人でマンションでも借りて同居しようよ、兄さん!家族だったら普通だよね?ほら、兄弟で同居とかよく聞く話だろう?」
「それは否定しませんけ。ですが血縁のある兄弟や、親同士の結婚で兄弟や姉妹になった人達ならまだしも、弟達などの結婚で義姉弟などになった方々では、流石に聞いた事が…… 」
義理の姉と弟での同居など無理以外の何ものでも無い。しかも陽が相手では、上役なので気遣い疲れで倒れそうだ。自分へ彼が、えっろえろで邪な感情を持っていると、ここまでされても気が付けていない奏はそんな心配にばかりに気を取られていた。
「ええぇぇ、だめ?どうしても?」
「そうですね」
「…… 兄さんが相手だったら、私はネコにだってなってもいいのに」
そう言って陽は、自らが奏に抱かれ、スーツを乱しながら後ろから攻められまくる姿を想像する。両腕はネクタイで縛られており、『ご自分のネクタイで逃げられなくなるとか、想像もしなかったでしょう?ふふふ』なんて言い、意地悪な笑みを浮かべて白衣だけを着る半裸の奏までしっかり脳内で再現できた。もちろん男性体で、だ。
「…… 猫?陽さんが猫に?」
奏の想像した猫はもちろんにゃーと鳴く可愛いお猫様である。真っ黒で尻尾の長い子だ。そんな子が、大きな体をしながら奏に甘える姿が徐々に変化し、陽の頭に猫耳が、お尻辺りからは長い尻尾が生える。首には大きな鈴をつけ、子犬みたいに構って攻撃をしてくる猫な陽が案外可愛くって、奏が珍しくクスッと笑った。
「陽さんの猫姿も、案外可愛いかもしれませんね」
彼がどんな想像をしつつ言った発言なのは読み解けるはずもなく、奏が笑顔で言った。
激レアな笑顔が陽の胸に思いっ切り突き刺さり、彼の心臓は止まる寸前だ。トキメキ過ぎて辛いとか、もうそういった次元も超えており、三途の川と花畑が見える気さえする。
(ネコな私を可愛いとか!カ・ワ・イ・イとか!イケメン過ぎでしょ。やだもう、いっそこの流れで抱いてくれて構わない!)
萌え死ぬ寸前のまま、陽が鼻先を手で覆う。
「もう好きにしてください…… 」
陽はボソッとそう一言呟き、なぁなぁにしていた受け手側対応の準備を真面目にやろうと決心したのだった。
◇
「——って事があってさ、本気で色々用意をしないとなって思ってるんだよね」
仕事の隙間時間。寺島は前日の経緯を陽から詳しく聞かされ、飲んでいたコーヒーを吹き出そうになった。同僚でもあり友人でもある陽の性事情をまたまた聞かされる事になるとは思っていなかったからだ。
(いやまぁ、俺が悪いのか?買い物の時にあんな話をしたからだよな?多分。その前までは抱きたいしか言ってなかったもんな。…… すまん)
「汚いな、これで拭いたらいいよ」と、陽がティッシュを箱ごと寺島に渡す。
それを受け取り、彼は「ありがと」と短く礼を言った。
「やる気満々のとこ悪いんだけどな。多分それ、またお前の勘違いだと思うぞ?」
「勘違い?」
「あぁ。だってさ、同居がなんたらからネコの話になったんだろう?その過程でお前の脳内以外にはエロ要素の話が出てないじゃん。って事はだ、椿原さん側は動物の猫を連想したんじゃないか?」
「動物の、猫?」
「んでもって、『陽さんの猫姿も案外可愛い』って事はだ、猫耳姿のお前でも想像して笑ったんじゃないかって思うんだ、俺は。なのでお前がこの先するべきなのは、ケツ穴の拡張工事とかじゃなくって、猫耳のカチューシャでも買って甘えてみた方がよっぽど体には優しいんじゃね?ハメたいが故の可愛いじゃねぇよ、きっと」
広い廊下の隅。コーヒーを片手に、窓辺に寄りかかりながら言った言葉はちょっと卑猥だったが、周囲には誰も居ないので寺島は話を続けた。
「手錠だ足枷だとかも難易度高そうだしさ、もっと普通に攻めていけよ。お前は顔面偏差値のバケモノなんだから、正攻法の方が上手くいくって」
(って言っても、男同士だとそれが通じるかわかんねぇけど…… まぁいいか)
ちょっと無責任かなとも思いつつ、寺島がそっと隣に居る陽の様子を伺う。奏が女性であると寺島はまだ認識しておらず、不要な心配材料をちょっと抱えたままだ。
「そっか…… 猫耳か。え、でも似合うのは兄さんであって私じゃないよね」
「ホントソレな!」
互いを指差し、断言する。二人のノリは完全に男子高校生だ。
「尻尾も可愛いよね。小柄だし、瞳も大きめだから猫っぽいし。お尻に入れちゃう動物尻尾の玩具は難易度高いからまだやめておくとしても、何かしら用意しておこうっと」
「…… 尻?…… まだ?お、おい!買うなよ⁉︎絶対に買うなよ!可哀想だろ、似合うけど!エロエロで、俺だってぶっちゃけ興味はあるけどもさぁ」
こうやってまた、奏の知らぬ所で陽の中の『兄さんにしたい事』が追加されていくのだった。——合掌。
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