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【職場が同じとか、もうコレは有効利用するしかないよね】
あまりに凄い遅刻だと、もう待っていないで欲しい気持ちでいっぱいだ
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社員証をかざし、複数のセキュリティーを通過して奏が早足にロビーを目指す。途中で更衣室に立ち寄って私物の入る鞄を回収したので、後少しで到着出来るという頃にはもう時間は午後の三時半となっていた。
(まずいまずいまずい——)
同じ単語ばかりが奏の頭を駆け巡る。
大好きな仕事の出来る職場なのにクビになったらどうしよう?最悪の場合、弟達の結婚にまで影響するのでは?そうなったら自分はどうしたらいいのだ。 気持ちはやたらと焦るのに、『廊下は走っちゃいけません』が骨の髄まで染み込んでいるせいで走るまでは出来ない。
陽とは結局連絡先の交換をしていなかったのでメールなどでごめんなさいも出来なければ、今彼がどこにいるのかも不明だ。せめてお昼からずっとロビーで待ったままではありませんようにと思った後で、休憩時間が終わればそもそも仕事に戻っているのではないだろうかという当然の流れに気が付いた。
ならもう行く必要も無いのかな、と考えたが、もうロビーは目の前だ。
(ひとまずは待っていない事を確認して、自分だけでもご飯を食べに——)
…… 居た。
三階分が吹き抜けになっている見通しのいいロビーの端にあるちょっとした休憩スペースで、そこに並ぶソファーの一角に座り、長い脚を組み、タブレットを見ながら陽は大人しく奏の事を待っていた。
いつからそこに居るのかは不明だが、待ち続けて苛立った様子も無く、忠犬のような雰囲気を漂わせながら座る陽を見て、五体投地をしながら陽に対して謝罪をする自分の姿が奏の頭をよぎる。
(謝れば許してくれるだろうか。お詫びになんでもするから、クビだけは許して欲しいっ)
ただでさえ表情の乏しい奏の顔が強張り、青白くなっていく。せめて一秒でも早く謝罪を、と奏が歩くスピードを上げる。すると、その靴音に気が付いた陽が顔をあげ、彼女へと向かって嬉しそうに微笑んだ。
「兄さん!お仕事、お疲れ様」
眩しい笑顔に気後れし、謝罪を言おうと開けた口が声を失った。怒っている感じは無く、長い時間待ち続けていた様子も雰囲気からは感じ取れない。だがしかし、問題を放置するのが好きではい奏は、勇気を振り絞って、陽にいつから此処で待っていたのかをきちんと訊く事を決めた。
ぐっと拳を握り、奏が意を決して口を開く。
「お待たせ、しましたか?」
「いいや、私も今来たところだよ」
(…… あれ?青鬼さんも、時間を忘れて仕事をしていたのかな?)
都合の良い意味で奏が言葉を受け止める。
「兄さんがセキュリティーを通過した通知が着てから、職場を出て来たからね」
「あ、そうだったんですか。それで」
流石、実質社長的存在。本来ならそんな行為を秘書とはいえやって良いのかどうかはこの際隅に置いておいて、確実に時間を無駄にはしない方法だ。
「監視カメラで兄さんの様子を見ていたけど、お仕事が忙しそうだったからね。私はいつでも動けるようにしてあったから、各所での入・退出の通知を受け取れる様にしておいたんだ」
(あ、そうか、立場的にその手があったんですね!)
「そうだったんですか。良かったです、無駄に待たせずに済んで」
「…… 」
流石にこの行動は『何をしているんだ、やり過ぎだ、気持ち悪い』と非難されると思っていた陽だったのだが、予想外な反応を奏がした為、黙ってしまった。
「待たせてしまっていたらどうしようかと思っていたんで、むしろ良かったです」
「うん、そうだよね。私もそう思うんだ」
ツッコミ不在な為、ニコニコと笑う陽に向かい奏がちょっとだけ安堵の表情を返す。今ここに彼らの弟妹が居たならば『ストーカーみたいだからソレはやめろ!』と指摘していたところだろう。
陽はといえば、『言質取った!好きに兄さんの行動をこの先も監視していていいんだね!』と、心の中で小躍りしていたのであった。
(まずいまずいまずい——)
同じ単語ばかりが奏の頭を駆け巡る。
大好きな仕事の出来る職場なのにクビになったらどうしよう?最悪の場合、弟達の結婚にまで影響するのでは?そうなったら自分はどうしたらいいのだ。 気持ちはやたらと焦るのに、『廊下は走っちゃいけません』が骨の髄まで染み込んでいるせいで走るまでは出来ない。
陽とは結局連絡先の交換をしていなかったのでメールなどでごめんなさいも出来なければ、今彼がどこにいるのかも不明だ。せめてお昼からずっとロビーで待ったままではありませんようにと思った後で、休憩時間が終わればそもそも仕事に戻っているのではないだろうかという当然の流れに気が付いた。
ならもう行く必要も無いのかな、と考えたが、もうロビーは目の前だ。
(ひとまずは待っていない事を確認して、自分だけでもご飯を食べに——)
…… 居た。
三階分が吹き抜けになっている見通しのいいロビーの端にあるちょっとした休憩スペースで、そこに並ぶソファーの一角に座り、長い脚を組み、タブレットを見ながら陽は大人しく奏の事を待っていた。
いつからそこに居るのかは不明だが、待ち続けて苛立った様子も無く、忠犬のような雰囲気を漂わせながら座る陽を見て、五体投地をしながら陽に対して謝罪をする自分の姿が奏の頭をよぎる。
(謝れば許してくれるだろうか。お詫びになんでもするから、クビだけは許して欲しいっ)
ただでさえ表情の乏しい奏の顔が強張り、青白くなっていく。せめて一秒でも早く謝罪を、と奏が歩くスピードを上げる。すると、その靴音に気が付いた陽が顔をあげ、彼女へと向かって嬉しそうに微笑んだ。
「兄さん!お仕事、お疲れ様」
眩しい笑顔に気後れし、謝罪を言おうと開けた口が声を失った。怒っている感じは無く、長い時間待ち続けていた様子も雰囲気からは感じ取れない。だがしかし、問題を放置するのが好きではい奏は、勇気を振り絞って、陽にいつから此処で待っていたのかをきちんと訊く事を決めた。
ぐっと拳を握り、奏が意を決して口を開く。
「お待たせ、しましたか?」
「いいや、私も今来たところだよ」
(…… あれ?青鬼さんも、時間を忘れて仕事をしていたのかな?)
都合の良い意味で奏が言葉を受け止める。
「兄さんがセキュリティーを通過した通知が着てから、職場を出て来たからね」
「あ、そうだったんですか。それで」
流石、実質社長的存在。本来ならそんな行為を秘書とはいえやって良いのかどうかはこの際隅に置いておいて、確実に時間を無駄にはしない方法だ。
「監視カメラで兄さんの様子を見ていたけど、お仕事が忙しそうだったからね。私はいつでも動けるようにしてあったから、各所での入・退出の通知を受け取れる様にしておいたんだ」
(あ、そうか、立場的にその手があったんですね!)
「そうだったんですか。良かったです、無駄に待たせずに済んで」
「…… 」
流石にこの行動は『何をしているんだ、やり過ぎだ、気持ち悪い』と非難されると思っていた陽だったのだが、予想外な反応を奏がした為、黙ってしまった。
「待たせてしまっていたらどうしようかと思っていたんで、むしろ良かったです」
「うん、そうだよね。私もそう思うんだ」
ツッコミ不在な為、ニコニコと笑う陽に向かい奏がちょっとだけ安堵の表情を返す。今ここに彼らの弟妹が居たならば『ストーカーみたいだからソレはやめろ!』と指摘していたところだろう。
陽はといえば、『言質取った!好きに兄さんの行動をこの先も監視していていいんだね!』と、心の中で小躍りしていたのであった。
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