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【職場が同じとか、もうコレは有効利用するしかないよね】
お昼ご飯のはずが……
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「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「検査結果まとめておく作業いつまでの終わりそう?」
「今日中にはやっておきます」
「わかった、ありがとう。あ、宮本さん治験の方なんだけど——」
いくつかのセキュリティーを通過し、早めに職場へ来た奏だったが、もう研究室内はバタバタと同僚達で賑わっていた。
私服の上に白衣を着用した奏も挨拶をそこそこに席へと座った。時間的にはまだまだ基本的な就業開始時間ではないし、わりと自由なタイミングで出勤しても問題ないのに、もうチームメンバーの全員が揃っている。『お前らどんだけ仕事好きなんだよ』と、別の部署に指摘される事もあるほど、ここのメンツは研究人間ばかりだ。もちろん、奏も含めて。
「椿原さん、おはよう」
「おはようございます」
「そっちは試験結果とかまとめるのいつになりそう?」
「自分も今日中には」
「りょうかーい。んじゃお願いね」
二、三軽く状況を確認し、パソコンを起動して早速作業を始める。弟の結婚相手に会う為に休みを取ってはいたが、結局その後どうしても気になって、職場に戻ってきて試験をした結果を、メモと出力したデータを元にせっせとまとめ始めた。
◇
——二時間、三時間…… と、時間が淡々と過ぎていく。そういえば空腹だなと感じ、奏が顔を上げ、時計を見てサーッの奏の血の気が引いた。室内の壁掛け時計の針が、すでにもう午後三時を指していたからだ。
(オカシイ…… 前に時計を見た時は、まだ十一時だったのに。なのでまだ作業が出来ると思って、再度取り掛かったのに何故もうこんな時間に?)
「…… お、お昼」
ボソッと奏が呟くと、隣に座って同じくデータの入力作業をしていた佐々木が「あ、昼飯?いいよ、行っておいでよ」と言いながら時計を見て、「うお!いつの間にこんな時間に⁉︎」と慌てだした。どうやら彼も無心でデータと睨めっこしていたらしく、その間にこんな時間になっていたとは全く思っていなかったみたいだ。
「佐々木さんはいいんですか?お腹、空いてますよね?」
「あ、俺はいいのー。コレ食べるし。腹一杯になると眠くなるタイプだから、まともには夜飯しか食べないんだ…… って、まさか知らんかった?」
そう言って、佐々木が白衣のポケットから固形の栄養補助食品を取り出し、奏の方へ団扇の様に振ってみせる。二人が同じ研究室になってからかれこれ一年程経っていたので、奏が気が付いてすらいなかった事に少し驚き、切なくもあった。
「す、すみません」
固い表情で謝られ、佐々木が「あ、ごめんごめん。深い意味は無いんだ。事実を確認したかっただけで」と言い、まぁまぁと言いたげな仕草をする。責める気は全く無かったので、むしろそう勘違いさせる発言をしてしまった事を、申し訳なく思った。
「まぁ、ってな訳だから行っておいでよ。今なら絶対にどこも混んでないだろうから、むしろラッキーなんじゃない?」
「そのかわり、ランチセットは終わってますけどね」
「あ、確かにな」
そんなやり取りをして、お互いに微笑み合う。でも奏の方は、内心『遅刻どころの話じゃ無い』と冷や汗をダラダラとかいている。待ち合わせの約束をした相手は、立場的には秘書とはいえ、仕事をしない代表取締役の代わりに全てを仕切っているので実質社長みたいな存在だ。そんな相手を三時間近く待たせたままでいるかもしれないと思うと、今すぐにでも走って確認しに行きたい気持ちでいっぱいだった。
でも、奏は表情の乏しいタイプである為、雑談をし始めた佐々木には一切気が付いてもらえていない。そのせいで、彼女がロビーへ向かうことが出来たのは、この十五分後だった。
「あぁ、おはよう」
「検査結果まとめておく作業いつまでの終わりそう?」
「今日中にはやっておきます」
「わかった、ありがとう。あ、宮本さん治験の方なんだけど——」
いくつかのセキュリティーを通過し、早めに職場へ来た奏だったが、もう研究室内はバタバタと同僚達で賑わっていた。
私服の上に白衣を着用した奏も挨拶をそこそこに席へと座った。時間的にはまだまだ基本的な就業開始時間ではないし、わりと自由なタイミングで出勤しても問題ないのに、もうチームメンバーの全員が揃っている。『お前らどんだけ仕事好きなんだよ』と、別の部署に指摘される事もあるほど、ここのメンツは研究人間ばかりだ。もちろん、奏も含めて。
「椿原さん、おはよう」
「おはようございます」
「そっちは試験結果とかまとめるのいつになりそう?」
「自分も今日中には」
「りょうかーい。んじゃお願いね」
二、三軽く状況を確認し、パソコンを起動して早速作業を始める。弟の結婚相手に会う為に休みを取ってはいたが、結局その後どうしても気になって、職場に戻ってきて試験をした結果を、メモと出力したデータを元にせっせとまとめ始めた。
◇
——二時間、三時間…… と、時間が淡々と過ぎていく。そういえば空腹だなと感じ、奏が顔を上げ、時計を見てサーッの奏の血の気が引いた。室内の壁掛け時計の針が、すでにもう午後三時を指していたからだ。
(オカシイ…… 前に時計を見た時は、まだ十一時だったのに。なのでまだ作業が出来ると思って、再度取り掛かったのに何故もうこんな時間に?)
「…… お、お昼」
ボソッと奏が呟くと、隣に座って同じくデータの入力作業をしていた佐々木が「あ、昼飯?いいよ、行っておいでよ」と言いながら時計を見て、「うお!いつの間にこんな時間に⁉︎」と慌てだした。どうやら彼も無心でデータと睨めっこしていたらしく、その間にこんな時間になっていたとは全く思っていなかったみたいだ。
「佐々木さんはいいんですか?お腹、空いてますよね?」
「あ、俺はいいのー。コレ食べるし。腹一杯になると眠くなるタイプだから、まともには夜飯しか食べないんだ…… って、まさか知らんかった?」
そう言って、佐々木が白衣のポケットから固形の栄養補助食品を取り出し、奏の方へ団扇の様に振ってみせる。二人が同じ研究室になってからかれこれ一年程経っていたので、奏が気が付いてすらいなかった事に少し驚き、切なくもあった。
「す、すみません」
固い表情で謝られ、佐々木が「あ、ごめんごめん。深い意味は無いんだ。事実を確認したかっただけで」と言い、まぁまぁと言いたげな仕草をする。責める気は全く無かったので、むしろそう勘違いさせる発言をしてしまった事を、申し訳なく思った。
「まぁ、ってな訳だから行っておいでよ。今なら絶対にどこも混んでないだろうから、むしろラッキーなんじゃない?」
「そのかわり、ランチセットは終わってますけどね」
「あ、確かにな」
そんなやり取りをして、お互いに微笑み合う。でも奏の方は、内心『遅刻どころの話じゃ無い』と冷や汗をダラダラとかいている。待ち合わせの約束をした相手は、立場的には秘書とはいえ、仕事をしない代表取締役の代わりに全てを仕切っているので実質社長みたいな存在だ。そんな相手を三時間近く待たせたままでいるかもしれないと思うと、今すぐにでも走って確認しに行きたい気持ちでいっぱいだった。
でも、奏は表情の乏しいタイプである為、雑談をし始めた佐々木には一切気が付いてもらえていない。そのせいで、彼女がロビーへ向かうことが出来たのは、この十五分後だった。
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