4 / 79
【出逢いの季節に変なのが義弟になるっぽい】
欲しいのは言質
しおりを挟む
四人がソファーに座り、一息つく。慌ただしい対面となってしまった中、どうにかして普通の対面に持っていこうと、青鬼が口を開いた。
「光は遅れて来るのか?」
弟の光も来るものと思っていた青鬼が視線をホテルの入り口へと向けたが、見知った姿は誰もいない。
「光くんはね、『彼女の成績がヤバイ』って言って顔を真っ青にしていたから来ないと思うよ」
「おい、四月になったばかりだぞ?もう既にヤバイとか、相当壊滅的なのでは?というか、姉の結婚の話よりも彼女を取るとか…… 」
兄も兄なら、弟も弟だ。通学の都合から実家を早々に出て、別々に暮らしてきた弊害がコレか?と、青鬼が額を押さえる。兄弟間の絆的なものがウチの家族は薄いと常々思ってはいたが、まさか結婚報告にまで影響するとは思っていなかった。
妹の心中を察し、陽が「まぁまぁ」と言いながら頭を優しく撫でる。それだけでちょっと気分が回復し、青鬼がやっと顔をあげた。
「さてと、改めて自己紹介をさせてもらおうかな。青鬼明の兄、青鬼陽です。弟の光は大事な日なのに来られず、本当にすみません」
そう言って、陽が椿原の二人に向かい頭を下げる。彼の隣に座る明も、兄に倣って頭を下げた。
「確か光君は高校生でしたよね。彼女さんを優先したくなる気持ちもわかるので、お気になさらず」
「だよねぇ。ボクが同じ立場でも、絶対に明の事優先するし」
奏に引き続き、完全な恋愛脳である圭がうんうんと頷き、腕を組む。
「でも、圭君が同じ事をやったら自分は許しませんよ」
「あぁ確かに。姉ちゃんだったら問答無用で家に迎えにまで来そうだね。ボクが彼女の家に居ようがなんだろうが、さ」
そう言うと『わかっているなら、よし』と言うみたいに奏が無言で頷いた。
そんな仲の良さそうな姉弟の様子を見て、青鬼側の兄妹まで楽しい気分になってきた。だが、姉弟二人がじゃれ合う姿は完全に性別が逆転して見える。
「お二人は仲がとてもいいんだね。是非私も、同じくらい仲良くして欲しいな」
にこやかに微笑まれ、陽に対する警戒心が奏の中で少し薄れる。
「えぇ、もちろんです」
頷きながら答えた奏の言葉を聞き、陽は『言質取った』と思ったが、言葉にはしなかった。
「今日はプライベートの用件だからと、残念ながら名刺を置いてきてしまったんだ。でも是非色々と知って欲しいから、今から上に部屋でも取って来ようか。そこで朝まで、二人きりでじっくり私の事を知ってもらうとかは、どうだろうか」
「じゃ——」
下心が微塵も無い、とっても爽やかな笑顔でサラッと変なことを言うもんだから一瞬意味がわからず、危うく奏が『じゃあお願いします』と言いそうになり、それに気が付いた椿原が慌てて姉の口を両手で塞ぐ。
だが目の前に貞操の危機があった事に気が付かなかった奏は『何をするんですか』と口を塞がれたまま文句を言い、目の前に座る青鬼は兄の顔にアイアンクローを喰らわしていたのだった。
「光は遅れて来るのか?」
弟の光も来るものと思っていた青鬼が視線をホテルの入り口へと向けたが、見知った姿は誰もいない。
「光くんはね、『彼女の成績がヤバイ』って言って顔を真っ青にしていたから来ないと思うよ」
「おい、四月になったばかりだぞ?もう既にヤバイとか、相当壊滅的なのでは?というか、姉の結婚の話よりも彼女を取るとか…… 」
兄も兄なら、弟も弟だ。通学の都合から実家を早々に出て、別々に暮らしてきた弊害がコレか?と、青鬼が額を押さえる。兄弟間の絆的なものがウチの家族は薄いと常々思ってはいたが、まさか結婚報告にまで影響するとは思っていなかった。
妹の心中を察し、陽が「まぁまぁ」と言いながら頭を優しく撫でる。それだけでちょっと気分が回復し、青鬼がやっと顔をあげた。
「さてと、改めて自己紹介をさせてもらおうかな。青鬼明の兄、青鬼陽です。弟の光は大事な日なのに来られず、本当にすみません」
そう言って、陽が椿原の二人に向かい頭を下げる。彼の隣に座る明も、兄に倣って頭を下げた。
「確か光君は高校生でしたよね。彼女さんを優先したくなる気持ちもわかるので、お気になさらず」
「だよねぇ。ボクが同じ立場でも、絶対に明の事優先するし」
奏に引き続き、完全な恋愛脳である圭がうんうんと頷き、腕を組む。
「でも、圭君が同じ事をやったら自分は許しませんよ」
「あぁ確かに。姉ちゃんだったら問答無用で家に迎えにまで来そうだね。ボクが彼女の家に居ようがなんだろうが、さ」
そう言うと『わかっているなら、よし』と言うみたいに奏が無言で頷いた。
そんな仲の良さそうな姉弟の様子を見て、青鬼側の兄妹まで楽しい気分になってきた。だが、姉弟二人がじゃれ合う姿は完全に性別が逆転して見える。
「お二人は仲がとてもいいんだね。是非私も、同じくらい仲良くして欲しいな」
にこやかに微笑まれ、陽に対する警戒心が奏の中で少し薄れる。
「えぇ、もちろんです」
頷きながら答えた奏の言葉を聞き、陽は『言質取った』と思ったが、言葉にはしなかった。
「今日はプライベートの用件だからと、残念ながら名刺を置いてきてしまったんだ。でも是非色々と知って欲しいから、今から上に部屋でも取って来ようか。そこで朝まで、二人きりでじっくり私の事を知ってもらうとかは、どうだろうか」
「じゃ——」
下心が微塵も無い、とっても爽やかな笑顔でサラッと変なことを言うもんだから一瞬意味がわからず、危うく奏が『じゃあお願いします』と言いそうになり、それに気が付いた椿原が慌てて姉の口を両手で塞ぐ。
だが目の前に貞操の危機があった事に気が付かなかった奏は『何をするんですか』と口を塞がれたまま文句を言い、目の前に座る青鬼は兄の顔にアイアンクローを喰らわしていたのだった。
0
お気に入りに追加
57
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】
腹黒上司が実は激甘だった件について。
あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。
彼はヤバいです。
サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。
まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。
本当に厳しいんだから。
ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。
マジで?
意味不明なんだけど。
めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。
素直に甘えたいとさえ思った。
だけど、私はその想いに応えられないよ。
どうしたらいいかわからない…。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。

美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。※R6.5/18お気に入り登録300超に感謝!一話書いてみましたので是非是非!
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。 ※R7.2/22お気に入り登録500を超えておりましたことに感謝を込めて、一話お届けいたします。本当にありがとうございます。

俺のねーちゃんは人見知りがはげしい
ねがえり太郎
恋愛
晶は高校3年生。小柄で見た目が地味な晶の義理の弟は、長身で西洋風の顔立ちのイケメンだった。身内の欲目か弟は晶に近づく男に厳しい。過保護で小言の多い弟を『シスコン』だと呆れながらも、すっかり大人のように成長してしまった弟の、子供っぽい執着に『ブラコン』の晶はホッとするのだった―――
※2016.6.29本編完結済。後日談も掲載しております。
※2017.6.10おまけ追加に伴いR15指定とします。なお★指定回はなろう版と一部内容が異なります。
※2018.4.26前日譚姉視点『おとうとが私にかまい過ぎる』及び番外編『お兄ちゃんは過保護』をこちらに纏めました。
※2018.5.6非掲載としていた番外編『仮初めの恋人』をこちらに追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる