義弟が私を“オトコの娘”だと言う

月咲やまな

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【出逢いの季節に変なのが義弟になるっぽい】

欲しいのは言質

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 四人がソファーに座り、一息つく。慌ただしい対面となってしまった中、どうにかして普通の対面に持っていこうと、青鬼が口を開いた。
ひかるは遅れて来るのか?」
 弟の光も来るものと思っていた青鬼が視線をホテルの入り口へと向けたが、見知った姿は誰もいない。
「光くんはね、『彼女の成績がヤバイ』って言って顔を真っ青にしていたから来ないと思うよ」
「おい、四月になったばかりだぞ?もう既にヤバイとか、相当壊滅的なのでは?というか、姉の結婚の話よりも彼女を取るとか…… 」
 兄も兄なら、弟も弟だ。通学の都合から実家を早々に出て、別々に暮らしてきた弊害がコレか?と、青鬼が額を押さえる。兄弟間の絆的なものがウチの家族は薄いと常々思ってはいたが、まさか結婚報告にまで影響するとは思っていなかった。
 妹の心中を察し、陽が「まぁまぁ」と言いながら頭を優しく撫でる。それだけでちょっと気分が回復し、青鬼がやっと顔をあげた。

「さてと、改めて自己紹介をさせてもらおうかな。青鬼明の兄、青鬼陽あおきようです。弟の光は大事な日なのに来られず、本当にすみません」

 そう言って、陽が椿原の二人に向かい頭を下げる。彼の隣に座る明も、兄に倣って頭を下げた。
「確か光君は高校生でしたよね。彼女さんを優先したくなる気持ちもわかるので、お気になさらず」
「だよねぇ。ボクが同じ立場でも、絶対に明の事優先するし」
 奏に引き続き、完全な恋愛脳である圭がうんうんと頷き、腕を組む。
「でも、圭君が同じ事をやったら自分は許しませんよ」
「あぁ確かに。姉ちゃんだったら問答無用で家に迎えにまで来そうだね。ボクが彼女の家に居ようがなんだろうが、さ」
 そう言うと『わかっているなら、よし』と言うみたいに奏が無言で頷いた。
 そんな仲の良さそうな姉弟の様子を見て、青鬼側の兄妹まで楽しい気分になってきた。だが、姉弟二人がじゃれ合う姿は完全に性別が逆転して見える。
「お二人は仲がとてもいいんだね。是非私も、同じくらい仲良くして欲しいな」
 にこやかに微笑まれ、陽に対する警戒心が奏の中で少し薄れる。
「えぇ、もちろんです」
 頷きながら答えた奏の言葉を聞き、陽は『言質取った』と思ったが、言葉にはしなかった。

「今日はプライベートの用件だからと、残念ながら名刺を置いてきてしまったんだ。でも是非色々と知って欲しいから、今から上に部屋でも取って来ようか。そこで朝まで、二人きりでじっくり私の事を知ってもらうとかは、どうだろうか」
「じゃ——」
 下心が微塵も無い、とっても爽やかな笑顔でサラッと変なことを言うもんだから一瞬意味がわからず、危うく奏が『じゃあお願いします』と言いそうになり、それに気が付いた椿原が慌てて姉の口を両手で塞ぐ。
 だが目の前に貞操の危機があった事に気が付かなかった奏は『何をするんですか』と口を塞がれたまま文句を言い、目の前に座る青鬼は兄の顔にアイアンクローを喰らわしていたのだった。
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