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エピローグ
番との子作り
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『ポリネシアン・セックスって知ってる?』
そんな話を二人でした日から三日程が経過した。その間十六夜は眠るに眠れぬまま、ずっと彼女の番であるハデスとベッドで抱き合っている。着ていたはずの服は初日の早い段階で脱がされ、彼も脱ぎ捨て、お互いに一糸纏わぬ姿だ。漆黒のベルベットをあしらっているベッドの天蓋は全て閉まっており、優しい暗闇が二人を包んでいる。中の籠った空気には十六夜の甘い体臭と雌っぽい匂いに加え、ハデスの匂いとか混じり合い、互いの鼻腔を刺激し続けていた。
「ハデ、ス…… さまぁ」
細く白いニの腕を甘噛みされ、色っぽい吐息を十六夜がこぼした。
「もう思い出話はいいのかい?」
思い出話と称してハデスはこの数日間ずっと、仮初の姿だった際におこなった様々な行為を、前戯の段階まで真似し続けているせいで十六夜は息も絶え絶えだ。なのに一番触って欲しい敏感な箇所は見事に避けられており、きちんとイクにイケず苦しくってしょうがない。思考する能力はすっかり衰え、まともに考えられなくなっている。
「も、許し…… て。——んぐっ!」
首筋を撫でられ、十六夜の体が跳ねる。軽く達してしまった様な感覚はあるが、半端なせいで熱と欲求は深くなる一方だ。
「こんな、思い出の…… 語り、合い、か、方は、——ッ」とまで言って、再び十六夜が体を震わせた。短い言葉ですらまともに紡げないのは絶対、太腿をそっと撫でられ、蜜口から流れ出ている愛液を指先で掬い取られたせいだ。
「可笑しいなぁ、十六夜からの提案だったのにかい?」
クスクスと笑い、ハデスが自身の指を十六夜に見せつけるみたいにしてゆっくり舐め上げた。その間ずっと熱っぽい瞳でじいっと見詰められ、十六夜の蜜口からまた、『早く彼をナカに欲しい』とせっつくみたいにじわりと愛液が溢れ出てくる。ベッドの白いシーツにまで落ちてシミを作ったが、すっと消えて無くなっていく。勝手に綺麗になっていくのはハデスの力によるものだ。だが、周囲に充満している匂いはそのままにしてある。無自覚に彼の匂いを吸い込み、その度にとろんと瞳を蕩かせている十六夜の姿をたっぷり堪能したいからだ。その姿はまるで媚薬を浴びる程飲んだかの様で、見ているだけでハデスの欲求が強くなり、鼓動が早くなる。
(僕の匂いに弱い事は知っていたけど、まさかここまでとはねぇ)
ゾクゾクッと体を震わせ、甘く溶けていく十六夜の姿に酔いしれる。触れたいと、永年募らせてきた想いが徐々に満たされていく感覚がたまらなく心地良い。
「もしかして、もう欲しいの?何処に?何が、欲しいのかなぁ?」
嬉しそうに細められた瞳の中に熱が宿る。十六夜の言葉で求めて欲しくって、いやらしい言葉を口にして欲しくって、彼は意地悪く彼女の胸の膨らみを下から持ち上げた。大きく育った胸は少し重く、柔らかさと共に感じられる弾力がハデスの手にとてもよく馴染む。
「——かはっ」
口を大きく開け、十六夜の体が勢いよく仰反った。口の端からは唾液がはしたなく流れ出ており首や胸の谷間を伝って落ちていく。『ここに灯りでもあれば淫猥に光り輝いていただろうに、残念だ』と悔やむハデスが大きな手で彼女の背中を支えた。桜色を連想する胸飾りは小ぶりで、弄ってと主張するみたいにツンッと尖っている。
「そんなに気持ち良かったの?先端を触ったワケでもないのに、また軽くイッたのかい?」
雑に呼吸を繰り返し、また胸の膨らみを軽く持ち上げる。「ふぐっ」と苦しそうに声を溢すと、十六夜はハデスの筋肉質な腕を力なく掴んだ。
「…… ハデス…… さ、まぁ」
腹に力を入れ、倒れかけていた上半身を無理矢理起こして縋り付くみたいに体を近づけ、十六夜がハデスに甘やかな声で懇願する。対面座位に近い状態にあった為、どれだけ彼が欲しいか示すために十六夜は自ら進んで彼の剛直の上に跨った。先走りに濡れる熱い剛直とお漏らしでもしたみたいに愛液で濡れている蜜口を形成している肉襞が触れ合った途端、彼女は腰を揺らし始めた。
「んくっ、あぁ、ぁぁッ、ん!」
はしたなく勃起している小さな肉芽と蜜口が彼の剛直の上を滑って擦れに擦れ、腰の動きが止まらない。『こんな事をするなんて恥ずかしい』と一瞬頭に浮かんだが、胸の先がハデスの肌を掠めた瞬間、すぐに霧散していく。大きな胸が潰れて綺麗な形が崩れるほど体を彼に押し付け、口を開けて真っ赤に熟れた舌を晒して魅せて、激しいキスもして欲しいと必死にせがむ。
「何をシテ欲しいのか、ちゃんと言ってくれないとわからなよ?」
本当は全てわかっているくせに。わざとそう訊き、彼女の濡れる唇をすっと撫でた。『もっと、もっともっともっと!十六夜から、僕を求めてもらいたい』と強く感じる欲求が彼を完全に支配している。
「キス、して…… ほ、欲しいです」
「いいよ。でも、キスだけでいいのかい?」
ピクッと剛直が動き、十六夜の蜜口をささやかに刺激する。だが、全身が媚薬に浸ったみたいな状態にある彼女にとってはその程度の刺激であっても快楽をより高める糧となってしまう。
「んんっ!」
「可愛いなぁ、もうっ」
感極まったハデスは十六夜の背に左手を回すと、その腕で彼女を抱きしめた。右手の指先で十六夜の胸の尖りをくりっと弄り、叫ぶ時に大きく開けてしまった口内を貪り始めた。二人の舌が絡み合い、唾液が零れ出る。その間もずっと胸の先を弄られ、十六夜の体は快楽に浸り続けた。
「あ、んっ…… 」
いやらしい水音が響き、十六夜の耳奥をじわりと犯す。
押したり、摘んだりといった具合に指先が与えてくる刺激とハデスの美声。その二つだけならば彼女の身をトロ火で炙るみたいなものだったが、止まらぬ腰の動きのせいで擦れ続けている蜜口と剛直がもたらす甘い刺激が体を侵食し尽くし、とうとう最高潮まで上り詰め、弾けてしまった。つま先がぴんと伸び、十六夜の体に痺れが走る。
「やっ!あぁぁぁっ。——ぁぁ…… あっん…… っ」
何度も激しく体を震わせ、くたっと十六夜の体から力が抜けていく。三日も焦らされ続け、とうとう達したからか、すっかり放心状態だ。浅い呼吸を何度も繰り返し、はくはくと空気を食み、陸に上がった魚みたいになっている。
「あぁ…… イッたんだね。ナカを弄られなくてもイッちゃうだなんて、十六夜はいやらしい子だね」
ハデスの嬉しそうに甘く溶けた声と瞳が十六夜の下腹部をじりっと焼く。もっと強い刺激が欲しいと、欲深く。
「淫乱、なんだねぇ僕の番は。そうだよねぇ…… 何度も、何度も何度も。物語の中では繋がっているから、乳首とキスだけでイケちゃう子になっちゃったね。まだこの体は処女なのに、ね。なら…… もっと強い快楽が欲しいんじゃないかい?」
耳元で囁き、十六夜の下腹部を優しく撫でる。
昂りに体を震わせ、十六夜はゆっくりと頷いた。猛々しい剛直に蜜口を擦り付け、「ほし、ぃ、ですぅ」とお願いする声は枯れぎみでとても小さい。
「じゃあ、僕のお願いを聞いてくれる?」
十六夜の銀糸にも似た綺麗な髪を耳ごとくしゃりと軽く撫で掴み、ハデスが悪戯っ子みたいな声で言う。
「おね、がい?」
腰をヘコヘコと無自覚のまま動かし、蜜口と肉芽で甘い淫楽を味わいつつ、虚な瞳で十六夜が首を傾げた。
「このまま十六夜の事、孕ませてもいい?」
「…… はら、む?」
「そ。僕の番である十六夜の胎のナカに、たぁぷり精液を吐き出してぇ、番との初めてのセックスで妊娠しちゃうだなんて…… 考えただけでも興奮してこないかい?」
「ナ、カに…… ?」
視線を下に落とし、十六夜が自分の下腹部をそっと撫でた。注意をそちらに引かれている彼女の腰を軽く持ち上げ、蜜口に剛直の切っ先をそっと添える。先走りと愛液が混じり合い、くちゅりと淫猥な音が少しだけ鳴った。
「僕の愛し子…… 今から、子作りえっちを楽しもう——ね!」
最後の声と同時に、ずんっ!と十六夜の体をハデスの剛直が一気に穿った。声にならない叫びをあげ、破瓜の血を蜜口から流しながら十六夜が天を仰ぐ。串刺し刑にでもされたみたいな衝撃だったが、それ以上の強い快楽のせいで次第に顔が法悦に満ちていく。「あ、あぁっ…… 」と熱い吐息を零し、彼女はまた、快楽の絶頂を全身で受け止めた。まだナカに挿入っただけなのに、『気持ちいい』としか考えられず、もうハデスの声すらまともに聞こえない。
「子供の核となる物をもう、君の腹の中に移したから、あとは…… じっくりと、たっぷりと、子宮の中を僕の精液で満たしていけば二人の子供が出来るよ」
瞳を情欲に染め、ハデスは体勢を変えると十六夜の体を組み敷いた。子供と大人程では無いにしろ、それでもまだ体格差があるせいで、ハデスの腕の中に十六夜がすっかり隠されている。捕らえるみたいに、囲うみたいに。
「君の胎の中で混じり合えば、僕らの欠片が混じり合って、また違う個体に育つんだ」
汗ばむ十六夜の肌に何度も口付けを贈り、ハデスが微笑む。
「だからまた、『僕の分身なんじゃ?』だなんて事は思わないでよ?…… って、聞こえてないか」
ふふっと笑い、ハデスが腰を引き、ゆっくりと剛直をナカに押し入れる。ぱちゅんっと音が聞こえたかと思ったら、ハデスはじっと動かず、両腕で体を支えて十六夜の唇を貪り始めた。
五分、十分、十五分…… 。待てど暮らせどハデスがナカを愛してくれる気配が無い。肌を撫で、軽い口付けを繰り返すばかりで、彼のカタチをすっかり覚えた十六夜の蜜口は少しだけ焦ったさを感じ始めた。
「ハデ、ス…… 様?」
「んー?」
「あ、あの…… もっ…… 」
視線だけを少し逸らし、甘えるみたいな声を出す。腰も少し動かし、剛直で割り開いた先をもっと弄って欲しいとお願いしてみた。
『早く、早く動いて欲しいっ』
頭の中では何度も叫んでいるのに、その一言を言葉に出来ない。恥ずかしい、これ以上いやらしい子だと思われたくないと考えてしまう。
「あぁ、動いて欲しいのかな?ナカを僕のモノで擦って、激しく突いて、精液を子宮でごくごく飲みたいのかい?」
卑猥な事ばかり言われてカッと十六夜の顔が真っ赤に染まる。そんな彼女の表情を見て、膣内に居るハデスの剛直がビクッと動く。たったそれだけのささやかな刺激だったのに、十六夜の体は激しく跳ね、腰が浮いた。
(——え?)
驚きに目が開き、十六夜が顎を仰反らせる。ガクガクと震える体を制御出来ず、次の瞬間にはまた、絶頂状態に陥った。目の前でチカチカと光が散って頭の中が真っ白になる。『気持ち良過ぎて、つらい』とまで思い始め、口からは「い、いや…… も、無理で、すぅ」と情けない声が。瞳からは涙まで溢れ出し頬を濡らす。なのにハデスは嬉しそうに笑い、「すごいね、連続絶頂状態ってやつかな」と言って十六夜の涙を舐めた。
「ビックリした?感じ過ぎちゃって、驚いたでしょ」
耳奥で響く声で囁かれ、涙目の十六夜が声を出せぬまま目を見開く。
「今みたいにね、少ーし長めに慣らしてからナカを刺激すると、いつも以上に感じちゃう様になるらしいよ」
ハデスはニッと笑うと、上半身を少し起こして十六夜の細い脚を掴み、腰を動かしてナカを穿った。たった一度、たった一度の抽挿だけで十六夜は上気し、愉悦に染まった顔になる。濡れに濡れている狭隘な膣壁にぎゅぎゅっと剛直を抱かれ、ハデスも少し苦しそうな顔に。
「し、締められると…… すぐにイキそうに、なるから緩めて、十六夜っ」
「む、無理れ、すぅっ」
泣きながら十六夜が首を横に振る。緩めろと言われても出来るはずがなく、白いシーツをぎゅっと掴む。
「仕方ないなぁ、可愛いから許してあげる」
ふっと柔らかく笑い、ハデスがゆっくりと腰を動かし始める。一回、二回目までは膣壁の浅い辺りを弄っていた剛直だったが、その挿入は次第に深くなっていき、今はもう子宮膣部にまで届いている。彼の剛直の全ては入りきってはいないが、硬く、滾る番のモノを最奥まで咥え込み、十六夜の蜜口は歓喜に震えた。
「確か、『ポルチオ』だったかな?ココの名前は。この体でココに何度もキスをするのは初めてだよね。…… 膣内や奥ってね、クリと違って、開発しないと感じない箇所なんだって。なのに何でそんなに感じちゃうのか、十六夜はわかるかなぁ?」
「んぉっ!くっ、ふっ、んんーっ」
「ぜんーんぜん、聞こえてないかぁ」
満足気に二、三度頷き、十六夜の耳元に顔を寄せる。そしてハデスは、「ココが気持ちいいのはね、十六夜の体を構築している“記憶”と“経験”の賜物だよ」と熱い吐息混じりに囁いた。
「つまりは、だ」と言い、ハデスが言葉を続ける。
「今までの休暇は全て、十六夜の体を開発する為の前戯みたいなものだった…… と、言えなくもないかもね」
そう言って、ぐりっと奥を念入りに剛直の切っ先で擦った。腹の奥から甘やかな痺れが全身に広がり、十六夜の肌に大粒の汗が滲む。焦点の合っていない青藍色の瞳からは涙が、愛くるしい唇からは唾液が流れ、蜜口からも愛液が溢れているがそんな崩れた姿でさえもハデスの目には番が美しく見える。『可愛い、なのにとても綺麗だ』と歓喜し、乾いていた心が満たされていく。
「愛どころか、恋をする感情すらも理解していなかった君がここまで快楽に溺れてくれるなんて…… あぁ、ホント、嬉しくって堪らないよ!」
嬌声しかあげられずにいる十六夜の体をハデスが容赦無く攻める。互いの愛液で濡れに濡れている膣内をせせる水音が彼女の耳をも犯すせいで、十六夜の視界はずっと明滅しっぱなしで、睡眠も取っていないせいか今にも意識がどこかに飛んでしまいそうだ。
「も、む…… 無理っ」
力無くだが、イヤイヤと駄々っ子みたいに十六夜が首を振る。するとハデスがそんな番の左頬を撫で、「イヤ?本当にイヤなの?…… やめる?」と切なそうな瞳で問い掛けた。虚な彼女の瞳では、そんなハデスの頭に悲し気に伏せられた獣耳の幻覚が見えた気がした。
「ち、ちが…… 」
「じゃあ、続ける、ね!」
ばしゅんっばちゅんっと肌がぶつかり合い、天蓋に覆われたベッドの上に響いている。ハデスの動きが激し過ぎ、十六夜の声はもう叫びに近い。
「そろそろ、僕も…… イキそっ。文句言いたくなるくらいに、気持ち良過ぎだよ、君のナカは。ココの相性もいいのかなぁ、僕のをすっかり全部咥え込んでるもん」
容赦無く繰り返される抽挿によりイキっぱなしの状態に陥っている十六夜のナカが、更にきゅっと締まる。相性が良いと言われた言葉が、彼の番である身だからかとても嬉しかった。「んっ!」と小さくこぼし、ハデスが最奥に己の剛直を押し入れる。その状態のまままた少し動きを早めたかと思うと彼の猛りは欲望を弾けさせ、熱い白濁液を十六夜の子宮内になみなみ注ぎ込んだ。
「——あぁぁっ!」
言葉にならぬ声を発し、彼と同じタイミングで十六夜も何度目かもわからぬ絶頂を得て体を何度も震わせている。甘い痺れ、激しく打つ心臓、噴き出す汗の量を見る限り、今までで一番の波だったみたいだ。ぴんっと伸びていたつま先からゆっくりと力が抜けると、彼女は体をぐったりとさせ、瞼が落ちていった。達してすぐに、とうとう意識を失ってしまったのだろう。
「…… 十六夜?」
彼女の膣内からずるっと剛直を抜き、軽く頬を叩く。名前を呼んでも反応はなく、気を失ったのだと彼も気が付いた。だが、ナカから引き抜いた時の甘やかな刺激で彼の剛直は既に再度屹立している。一度も達してなどいないかの様な力強さを持って。
意識なく、ぐったりとしている十六夜の美しい稜線を懊悩しながらじっと見ていると、彼女の蜜口からこぽっと慎ましやかな音をたて、白濁とした精液が溢れ出てきた。そんな様子を間近で見て、今のハデスが正気を保てる筈がなく、ブチッと何かが彼の中で焼き切れた。元々絹糸程度の細さしか無かった、『今夜は初めてなのだし、愛し子にあまり無理はさせまい』と思う理性すら淫猥な光景を目視した事で焼き切れてしまった様だ。
「そういえば、睡眠姦も前にしたよね…… 」
焦点の合わぬ目、熱くて荒い息を何度も吐き出しながらハデスが十六夜の体に覆いかぶさる。勃起している剛直の切っ先からは先走りが溢れ出て、早く目の前のご馳走を再び犯し尽くしたいと主張するみたいに主張していた。
——十六夜がやっと意識を取り戻したのはそれから二時間後の事となるのだが、その間何度も何度もナカに出されていたのか下腹部が初期段階にある妊婦並みに膨れ、苦しくってしょうがなかったそうだ。一度も抜かぬまま何回も射精され続け、胎の中で順調に子供が育ち始めているからだった。人間とは体の仕組みがそもそも違うからか、育つのは相当早い様だ。
「僕らの子供、沢山産んでね」
たった数時間でもう膨れ始めた腹に十六夜は少し戸惑ったが、そう言うハデスの心待ちにしている表情を前にすると、彼女の感情も引っ張られて笑顔に変わる。
「はい」と十六夜は元気に応え、彼の首に腕を回した。
数ヶ月後にはもう三人程の子供達に囲まれる事になる二人だが、今はまだもう少し二人の時間を楽しもうとでもするみたいに唇を重ねる。彼らの休暇はまだ、当分、数百年程度は続きそうだ。
【終わり】
そんな話を二人でした日から三日程が経過した。その間十六夜は眠るに眠れぬまま、ずっと彼女の番であるハデスとベッドで抱き合っている。着ていたはずの服は初日の早い段階で脱がされ、彼も脱ぎ捨て、お互いに一糸纏わぬ姿だ。漆黒のベルベットをあしらっているベッドの天蓋は全て閉まっており、優しい暗闇が二人を包んでいる。中の籠った空気には十六夜の甘い体臭と雌っぽい匂いに加え、ハデスの匂いとか混じり合い、互いの鼻腔を刺激し続けていた。
「ハデ、ス…… さまぁ」
細く白いニの腕を甘噛みされ、色っぽい吐息を十六夜がこぼした。
「もう思い出話はいいのかい?」
思い出話と称してハデスはこの数日間ずっと、仮初の姿だった際におこなった様々な行為を、前戯の段階まで真似し続けているせいで十六夜は息も絶え絶えだ。なのに一番触って欲しい敏感な箇所は見事に避けられており、きちんとイクにイケず苦しくってしょうがない。思考する能力はすっかり衰え、まともに考えられなくなっている。
「も、許し…… て。——んぐっ!」
首筋を撫でられ、十六夜の体が跳ねる。軽く達してしまった様な感覚はあるが、半端なせいで熱と欲求は深くなる一方だ。
「こんな、思い出の…… 語り、合い、か、方は、——ッ」とまで言って、再び十六夜が体を震わせた。短い言葉ですらまともに紡げないのは絶対、太腿をそっと撫でられ、蜜口から流れ出ている愛液を指先で掬い取られたせいだ。
「可笑しいなぁ、十六夜からの提案だったのにかい?」
クスクスと笑い、ハデスが自身の指を十六夜に見せつけるみたいにしてゆっくり舐め上げた。その間ずっと熱っぽい瞳でじいっと見詰められ、十六夜の蜜口からまた、『早く彼をナカに欲しい』とせっつくみたいにじわりと愛液が溢れ出てくる。ベッドの白いシーツにまで落ちてシミを作ったが、すっと消えて無くなっていく。勝手に綺麗になっていくのはハデスの力によるものだ。だが、周囲に充満している匂いはそのままにしてある。無自覚に彼の匂いを吸い込み、その度にとろんと瞳を蕩かせている十六夜の姿をたっぷり堪能したいからだ。その姿はまるで媚薬を浴びる程飲んだかの様で、見ているだけでハデスの欲求が強くなり、鼓動が早くなる。
(僕の匂いに弱い事は知っていたけど、まさかここまでとはねぇ)
ゾクゾクッと体を震わせ、甘く溶けていく十六夜の姿に酔いしれる。触れたいと、永年募らせてきた想いが徐々に満たされていく感覚がたまらなく心地良い。
「もしかして、もう欲しいの?何処に?何が、欲しいのかなぁ?」
嬉しそうに細められた瞳の中に熱が宿る。十六夜の言葉で求めて欲しくって、いやらしい言葉を口にして欲しくって、彼は意地悪く彼女の胸の膨らみを下から持ち上げた。大きく育った胸は少し重く、柔らかさと共に感じられる弾力がハデスの手にとてもよく馴染む。
「——かはっ」
口を大きく開け、十六夜の体が勢いよく仰反った。口の端からは唾液がはしたなく流れ出ており首や胸の谷間を伝って落ちていく。『ここに灯りでもあれば淫猥に光り輝いていただろうに、残念だ』と悔やむハデスが大きな手で彼女の背中を支えた。桜色を連想する胸飾りは小ぶりで、弄ってと主張するみたいにツンッと尖っている。
「そんなに気持ち良かったの?先端を触ったワケでもないのに、また軽くイッたのかい?」
雑に呼吸を繰り返し、また胸の膨らみを軽く持ち上げる。「ふぐっ」と苦しそうに声を溢すと、十六夜はハデスの筋肉質な腕を力なく掴んだ。
「…… ハデス…… さ、まぁ」
腹に力を入れ、倒れかけていた上半身を無理矢理起こして縋り付くみたいに体を近づけ、十六夜がハデスに甘やかな声で懇願する。対面座位に近い状態にあった為、どれだけ彼が欲しいか示すために十六夜は自ら進んで彼の剛直の上に跨った。先走りに濡れる熱い剛直とお漏らしでもしたみたいに愛液で濡れている蜜口を形成している肉襞が触れ合った途端、彼女は腰を揺らし始めた。
「んくっ、あぁ、ぁぁッ、ん!」
はしたなく勃起している小さな肉芽と蜜口が彼の剛直の上を滑って擦れに擦れ、腰の動きが止まらない。『こんな事をするなんて恥ずかしい』と一瞬頭に浮かんだが、胸の先がハデスの肌を掠めた瞬間、すぐに霧散していく。大きな胸が潰れて綺麗な形が崩れるほど体を彼に押し付け、口を開けて真っ赤に熟れた舌を晒して魅せて、激しいキスもして欲しいと必死にせがむ。
「何をシテ欲しいのか、ちゃんと言ってくれないとわからなよ?」
本当は全てわかっているくせに。わざとそう訊き、彼女の濡れる唇をすっと撫でた。『もっと、もっともっともっと!十六夜から、僕を求めてもらいたい』と強く感じる欲求が彼を完全に支配している。
「キス、して…… ほ、欲しいです」
「いいよ。でも、キスだけでいいのかい?」
ピクッと剛直が動き、十六夜の蜜口をささやかに刺激する。だが、全身が媚薬に浸ったみたいな状態にある彼女にとってはその程度の刺激であっても快楽をより高める糧となってしまう。
「んんっ!」
「可愛いなぁ、もうっ」
感極まったハデスは十六夜の背に左手を回すと、その腕で彼女を抱きしめた。右手の指先で十六夜の胸の尖りをくりっと弄り、叫ぶ時に大きく開けてしまった口内を貪り始めた。二人の舌が絡み合い、唾液が零れ出る。その間もずっと胸の先を弄られ、十六夜の体は快楽に浸り続けた。
「あ、んっ…… 」
いやらしい水音が響き、十六夜の耳奥をじわりと犯す。
押したり、摘んだりといった具合に指先が与えてくる刺激とハデスの美声。その二つだけならば彼女の身をトロ火で炙るみたいなものだったが、止まらぬ腰の動きのせいで擦れ続けている蜜口と剛直がもたらす甘い刺激が体を侵食し尽くし、とうとう最高潮まで上り詰め、弾けてしまった。つま先がぴんと伸び、十六夜の体に痺れが走る。
「やっ!あぁぁぁっ。——ぁぁ…… あっん…… っ」
何度も激しく体を震わせ、くたっと十六夜の体から力が抜けていく。三日も焦らされ続け、とうとう達したからか、すっかり放心状態だ。浅い呼吸を何度も繰り返し、はくはくと空気を食み、陸に上がった魚みたいになっている。
「あぁ…… イッたんだね。ナカを弄られなくてもイッちゃうだなんて、十六夜はいやらしい子だね」
ハデスの嬉しそうに甘く溶けた声と瞳が十六夜の下腹部をじりっと焼く。もっと強い刺激が欲しいと、欲深く。
「淫乱、なんだねぇ僕の番は。そうだよねぇ…… 何度も、何度も何度も。物語の中では繋がっているから、乳首とキスだけでイケちゃう子になっちゃったね。まだこの体は処女なのに、ね。なら…… もっと強い快楽が欲しいんじゃないかい?」
耳元で囁き、十六夜の下腹部を優しく撫でる。
昂りに体を震わせ、十六夜はゆっくりと頷いた。猛々しい剛直に蜜口を擦り付け、「ほし、ぃ、ですぅ」とお願いする声は枯れぎみでとても小さい。
「じゃあ、僕のお願いを聞いてくれる?」
十六夜の銀糸にも似た綺麗な髪を耳ごとくしゃりと軽く撫で掴み、ハデスが悪戯っ子みたいな声で言う。
「おね、がい?」
腰をヘコヘコと無自覚のまま動かし、蜜口と肉芽で甘い淫楽を味わいつつ、虚な瞳で十六夜が首を傾げた。
「このまま十六夜の事、孕ませてもいい?」
「…… はら、む?」
「そ。僕の番である十六夜の胎のナカに、たぁぷり精液を吐き出してぇ、番との初めてのセックスで妊娠しちゃうだなんて…… 考えただけでも興奮してこないかい?」
「ナ、カに…… ?」
視線を下に落とし、十六夜が自分の下腹部をそっと撫でた。注意をそちらに引かれている彼女の腰を軽く持ち上げ、蜜口に剛直の切っ先をそっと添える。先走りと愛液が混じり合い、くちゅりと淫猥な音が少しだけ鳴った。
「僕の愛し子…… 今から、子作りえっちを楽しもう——ね!」
最後の声と同時に、ずんっ!と十六夜の体をハデスの剛直が一気に穿った。声にならない叫びをあげ、破瓜の血を蜜口から流しながら十六夜が天を仰ぐ。串刺し刑にでもされたみたいな衝撃だったが、それ以上の強い快楽のせいで次第に顔が法悦に満ちていく。「あ、あぁっ…… 」と熱い吐息を零し、彼女はまた、快楽の絶頂を全身で受け止めた。まだナカに挿入っただけなのに、『気持ちいい』としか考えられず、もうハデスの声すらまともに聞こえない。
「子供の核となる物をもう、君の腹の中に移したから、あとは…… じっくりと、たっぷりと、子宮の中を僕の精液で満たしていけば二人の子供が出来るよ」
瞳を情欲に染め、ハデスは体勢を変えると十六夜の体を組み敷いた。子供と大人程では無いにしろ、それでもまだ体格差があるせいで、ハデスの腕の中に十六夜がすっかり隠されている。捕らえるみたいに、囲うみたいに。
「君の胎の中で混じり合えば、僕らの欠片が混じり合って、また違う個体に育つんだ」
汗ばむ十六夜の肌に何度も口付けを贈り、ハデスが微笑む。
「だからまた、『僕の分身なんじゃ?』だなんて事は思わないでよ?…… って、聞こえてないか」
ふふっと笑い、ハデスが腰を引き、ゆっくりと剛直をナカに押し入れる。ぱちゅんっと音が聞こえたかと思ったら、ハデスはじっと動かず、両腕で体を支えて十六夜の唇を貪り始めた。
五分、十分、十五分…… 。待てど暮らせどハデスがナカを愛してくれる気配が無い。肌を撫で、軽い口付けを繰り返すばかりで、彼のカタチをすっかり覚えた十六夜の蜜口は少しだけ焦ったさを感じ始めた。
「ハデ、ス…… 様?」
「んー?」
「あ、あの…… もっ…… 」
視線だけを少し逸らし、甘えるみたいな声を出す。腰も少し動かし、剛直で割り開いた先をもっと弄って欲しいとお願いしてみた。
『早く、早く動いて欲しいっ』
頭の中では何度も叫んでいるのに、その一言を言葉に出来ない。恥ずかしい、これ以上いやらしい子だと思われたくないと考えてしまう。
「あぁ、動いて欲しいのかな?ナカを僕のモノで擦って、激しく突いて、精液を子宮でごくごく飲みたいのかい?」
卑猥な事ばかり言われてカッと十六夜の顔が真っ赤に染まる。そんな彼女の表情を見て、膣内に居るハデスの剛直がビクッと動く。たったそれだけのささやかな刺激だったのに、十六夜の体は激しく跳ね、腰が浮いた。
(——え?)
驚きに目が開き、十六夜が顎を仰反らせる。ガクガクと震える体を制御出来ず、次の瞬間にはまた、絶頂状態に陥った。目の前でチカチカと光が散って頭の中が真っ白になる。『気持ち良過ぎて、つらい』とまで思い始め、口からは「い、いや…… も、無理で、すぅ」と情けない声が。瞳からは涙まで溢れ出し頬を濡らす。なのにハデスは嬉しそうに笑い、「すごいね、連続絶頂状態ってやつかな」と言って十六夜の涙を舐めた。
「ビックリした?感じ過ぎちゃって、驚いたでしょ」
耳奥で響く声で囁かれ、涙目の十六夜が声を出せぬまま目を見開く。
「今みたいにね、少ーし長めに慣らしてからナカを刺激すると、いつも以上に感じちゃう様になるらしいよ」
ハデスはニッと笑うと、上半身を少し起こして十六夜の細い脚を掴み、腰を動かしてナカを穿った。たった一度、たった一度の抽挿だけで十六夜は上気し、愉悦に染まった顔になる。濡れに濡れている狭隘な膣壁にぎゅぎゅっと剛直を抱かれ、ハデスも少し苦しそうな顔に。
「し、締められると…… すぐにイキそうに、なるから緩めて、十六夜っ」
「む、無理れ、すぅっ」
泣きながら十六夜が首を横に振る。緩めろと言われても出来るはずがなく、白いシーツをぎゅっと掴む。
「仕方ないなぁ、可愛いから許してあげる」
ふっと柔らかく笑い、ハデスがゆっくりと腰を動かし始める。一回、二回目までは膣壁の浅い辺りを弄っていた剛直だったが、その挿入は次第に深くなっていき、今はもう子宮膣部にまで届いている。彼の剛直の全ては入りきってはいないが、硬く、滾る番のモノを最奥まで咥え込み、十六夜の蜜口は歓喜に震えた。
「確か、『ポルチオ』だったかな?ココの名前は。この体でココに何度もキスをするのは初めてだよね。…… 膣内や奥ってね、クリと違って、開発しないと感じない箇所なんだって。なのに何でそんなに感じちゃうのか、十六夜はわかるかなぁ?」
「んぉっ!くっ、ふっ、んんーっ」
「ぜんーんぜん、聞こえてないかぁ」
満足気に二、三度頷き、十六夜の耳元に顔を寄せる。そしてハデスは、「ココが気持ちいいのはね、十六夜の体を構築している“記憶”と“経験”の賜物だよ」と熱い吐息混じりに囁いた。
「つまりは、だ」と言い、ハデスが言葉を続ける。
「今までの休暇は全て、十六夜の体を開発する為の前戯みたいなものだった…… と、言えなくもないかもね」
そう言って、ぐりっと奥を念入りに剛直の切っ先で擦った。腹の奥から甘やかな痺れが全身に広がり、十六夜の肌に大粒の汗が滲む。焦点の合っていない青藍色の瞳からは涙が、愛くるしい唇からは唾液が流れ、蜜口からも愛液が溢れているがそんな崩れた姿でさえもハデスの目には番が美しく見える。『可愛い、なのにとても綺麗だ』と歓喜し、乾いていた心が満たされていく。
「愛どころか、恋をする感情すらも理解していなかった君がここまで快楽に溺れてくれるなんて…… あぁ、ホント、嬉しくって堪らないよ!」
嬌声しかあげられずにいる十六夜の体をハデスが容赦無く攻める。互いの愛液で濡れに濡れている膣内をせせる水音が彼女の耳をも犯すせいで、十六夜の視界はずっと明滅しっぱなしで、睡眠も取っていないせいか今にも意識がどこかに飛んでしまいそうだ。
「も、む…… 無理っ」
力無くだが、イヤイヤと駄々っ子みたいに十六夜が首を振る。するとハデスがそんな番の左頬を撫で、「イヤ?本当にイヤなの?…… やめる?」と切なそうな瞳で問い掛けた。虚な彼女の瞳では、そんなハデスの頭に悲し気に伏せられた獣耳の幻覚が見えた気がした。
「ち、ちが…… 」
「じゃあ、続ける、ね!」
ばしゅんっばちゅんっと肌がぶつかり合い、天蓋に覆われたベッドの上に響いている。ハデスの動きが激し過ぎ、十六夜の声はもう叫びに近い。
「そろそろ、僕も…… イキそっ。文句言いたくなるくらいに、気持ち良過ぎだよ、君のナカは。ココの相性もいいのかなぁ、僕のをすっかり全部咥え込んでるもん」
容赦無く繰り返される抽挿によりイキっぱなしの状態に陥っている十六夜のナカが、更にきゅっと締まる。相性が良いと言われた言葉が、彼の番である身だからかとても嬉しかった。「んっ!」と小さくこぼし、ハデスが最奥に己の剛直を押し入れる。その状態のまままた少し動きを早めたかと思うと彼の猛りは欲望を弾けさせ、熱い白濁液を十六夜の子宮内になみなみ注ぎ込んだ。
「——あぁぁっ!」
言葉にならぬ声を発し、彼と同じタイミングで十六夜も何度目かもわからぬ絶頂を得て体を何度も震わせている。甘い痺れ、激しく打つ心臓、噴き出す汗の量を見る限り、今までで一番の波だったみたいだ。ぴんっと伸びていたつま先からゆっくりと力が抜けると、彼女は体をぐったりとさせ、瞼が落ちていった。達してすぐに、とうとう意識を失ってしまったのだろう。
「…… 十六夜?」
彼女の膣内からずるっと剛直を抜き、軽く頬を叩く。名前を呼んでも反応はなく、気を失ったのだと彼も気が付いた。だが、ナカから引き抜いた時の甘やかな刺激で彼の剛直は既に再度屹立している。一度も達してなどいないかの様な力強さを持って。
意識なく、ぐったりとしている十六夜の美しい稜線を懊悩しながらじっと見ていると、彼女の蜜口からこぽっと慎ましやかな音をたて、白濁とした精液が溢れ出てきた。そんな様子を間近で見て、今のハデスが正気を保てる筈がなく、ブチッと何かが彼の中で焼き切れた。元々絹糸程度の細さしか無かった、『今夜は初めてなのだし、愛し子にあまり無理はさせまい』と思う理性すら淫猥な光景を目視した事で焼き切れてしまった様だ。
「そういえば、睡眠姦も前にしたよね…… 」
焦点の合わぬ目、熱くて荒い息を何度も吐き出しながらハデスが十六夜の体に覆いかぶさる。勃起している剛直の切っ先からは先走りが溢れ出て、早く目の前のご馳走を再び犯し尽くしたいと主張するみたいに主張していた。
——十六夜がやっと意識を取り戻したのはそれから二時間後の事となるのだが、その間何度も何度もナカに出されていたのか下腹部が初期段階にある妊婦並みに膨れ、苦しくってしょうがなかったそうだ。一度も抜かぬまま何回も射精され続け、胎の中で順調に子供が育ち始めているからだった。人間とは体の仕組みがそもそも違うからか、育つのは相当早い様だ。
「僕らの子供、沢山産んでね」
たった数時間でもう膨れ始めた腹に十六夜は少し戸惑ったが、そう言うハデスの心待ちにしている表情を前にすると、彼女の感情も引っ張られて笑顔に変わる。
「はい」と十六夜は元気に応え、彼の首に腕を回した。
数ヶ月後にはもう三人程の子供達に囲まれる事になる二人だが、今はまだもう少し二人の時間を楽しもうとでもするみたいに唇を重ねる。彼らの休暇はまだ、当分、数百年程度は続きそうだ。
【終わり】
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