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【第五章】君は僕の可愛い獣
【第二十三話】遭遇①(十六夜・談)
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「——起きて、十六夜。夕飯の時間になったよ」
何事も無かったみたいな穏やかな声と共にカーテンを閉める音が聞こえ、私は重たい瞼をゆっくり開けた。この数日ですっかり見慣れた天井を虚な瞳のまま、ぼぉっと見上げる。数度瞬きをして、やっと現状を理解した。どうやら私は半睡眠状態下での交尾の最中で気を失ってしまったみたいだ。薬のせいでずっと体が動かないままだったのに、股関節やら膣内部に少し違和感がある。アイデースさんが治癒系の神力を施してくれているおかげで回復効率が相当上がっているはずなのに、それでも違和感が残っているって事は、相当な負荷がかかったのだろう。
(…… 何度も何度もされたんだ、当然か)
一度として瞼を開けられなかったからハデスさんのいやらしい姿を見たわけじゃないけれど、聴こえていた音や感じ取っていた雰囲気からつい色々状況を想像してしまったせいでカッと顔が熱を持つ。その様子を悟られまいと私は勢いよくベッドから起き上がり、彼から顔を逸らした。
「大丈夫?傷は痛くないかな?」
『散々好き勝手に交尾をしておきながら、どの口が言うの?』と少しだけ思いつつ、ハデスさんの気遣う声に対して「平気です」と返した。
ベッドから降りて窓の側にある椅子に腰掛ける。真っ先に自分は彼に『何故、あんな事をしたんですか?』と訊くべき状況だろうに、一度は開いた口をそっと閉じてしまう。私に薬を飲ませてまで交尾をしたという事は、きっとそれなりの理由があるのだろう。
複数の許嫁がいるから。
真っ当に『番になりたい』と告げても私の許可は得られないと思った。
そのどちらかが有力な気がする。もしくはその両方かもしれない。
許嫁がいる相手と番になるなんて、心境的に絶対嫌だ。無理だ。
そのうえ、そもそも鳥獣人である私と人間である彼とではご時世的に番にはなれない。人間は人間と結ばれるものと決まっている。この村はその為の保護区な訳だし。
それなのに、番になってしまった。
あんなに激しく交尾をしてんだ、彼はもう私の番だ。
許嫁がいようが、彼を他に渡す気は毛頭ない。
(…… 待って、駄目だ、何も考えるな。でも——)
幸いにして彼らはまだ“許嫁”でしかない。結婚までしていたら相当問題があったが、“許嫁”であればまだどうにか出来るかもしれない。
“成人の儀”の時に婚儀が同時に行われる。確か式は今から一ヶ月くらい先のはずだ。でも私は後一週間もしたらこの村を出なければいけない。そうアイデースさんとも約束してしまった。治療院を出た辺りまでは素直にこっそり隙を見て、村から飛んで行こうと思っていたけど…… 。
「——どうかした?ずっと黙っているけど。やっぱりどこか痛いのかい?」
ハデスさんの声ではっと我に返る。彼の問い掛けに返事はしたが、その後ずっと黙ったままだったせいで心配させてしまったみたいだ。
「い、いえ!本当に大丈夫です。…… だい、じょうぶ」
そう言ったのに、不意に顔を間近から覗き込まれたせいで顔が更に熱を帯びた。真っ赤な瞳でじっとこちらを見詰めてくるもんだから、心拍数まで上がってきている気がする。
「なら良かった。お腹空いたよね?夕飯の用意は終わっているから、すぐに運んで来るよ。今夜は一緒に食べようか」
「いいですね。一人で食べるよりも嬉しいです」
アレだけの事を長時間したのにもうそこまで終えているとか、凄すぎる。私の体もベッドも、室内の匂いまでもが何事も無かったみたいに元通りになっているのに夕飯の用意までも、とか。体にはっきりと余韻が残っていなかったら、『イヤラシイ夢だったんじゃ?』と勘違いしていたかもしれない。古い雑誌や漫画に描かれていた『スパダリ』ってこう言う人の事を指した言葉だったのだろうか?…… なんか微妙に違う気もするが、まぁいいか。
いずれにせよ、お互いの合意の上では無いにしたって、どうしても私と番になりたかった彼の想いにはどうにかして応えねば。“人間”と“鳥獣人”という種族の差は昔とは違って障害にしかならないから何か手段を考えなちゃ。私に薬を飲ませ、何の断りもなく交尾するくらいにこの身を欲してくれたんだから。
◇
次の日。朝起きて、一番最初に思った事は『腰が痛い』だった。綺麗さっぱり記憶には無いが、どうやら治癒力がUPされている状態であっても回復が追いつかないくらいに昨夜も激しく抱き潰されてしまったみたいだ。こうも股関節や胸の先にまで鈍い痛みが残っていると、彼の中に何か言い知れぬ焦りでもあるんだろうか?と深読みしてしまう。
昨日は昼から夕方になるまでずっと何時間も交尾をしたから夜は完全に油断していて、夕食後にも飲んでいたらしい睡眠薬の解毒をする間も無かった。疲労困憊の体と心は眠気に即負けしてしまったせいで一度も意識を取り戻せないまま朝を迎えたのだが、『…… それで正解だったのかも』と彼の作ってくれた朝食を頂きながらしみじみ思う。もしまた意識のあるまま彼と交尾をしてしまっていたら、こうして私の目の前で黙々と朝食を食べるハデスさんをチラ見する事すら出来なかっただろう。
「どう?口に合うかな」
「とても美味しいですよ。いつもありがとうございます」
ちょっとだけ食べる手を休め、無理矢理貼り付けたみたいな笑顔を返す。
「そう?なら良かった。どうかな。この数日で、僕は君の胃袋を掴めた?」
昨日の昼前までだったら『はい!』と普通に返せたのに、「え?あ、えっと…… まぁ、はははっ」なんて微妙な反応しか返せない。表立ってはやんわりと、裏では激しく行動で散々示されても、『君と番になりたい』と直接言われた訳じゃないんだって考えると、なんと答えるのが正解なのかわからない。
決定打となる交尾は済ませている。
だから私達が番である事は間違いないのだが、私がその事に気が付いていない体である以上急に態度を変えるのはおかしいだろうし、困ったなぁ。
「…… (うーん)」
行儀悪く、フォークを口に咥えたまま必死に頭を使おうとしても妙案なんか浮かばない。そんな私の様子を見ても、クスッと微笑ましそうに笑うハデスさんは、私が何を必死に悩んでいるのか全く気が付いていないみたいだ。まぁ、当然か。どの状況でもパッと見には、どう考えたって深く深く眠っている様にしか見えなかっただろうから。
「——ご馳走様でした」
「昼は、何かリクエストとかあるかい?」
椅子から腰を上げ、食べ終わった後の食器をまとめながらハデスさんが私に訊く。『お粥以外なら何でも』と返事しようとした時、扉の奥の方から何処かの扉を開ける大きな音と共に話し声が聞こえてきた。二人の女性が何かを話しているが扉越しなせいか内容は全然聞き取れない。それと同時に感じる別の気配。ハデスさんは声のする方にばかり気を取られているのか、イラッとした表情をしながら「ごめん、煩いよね。すぐに帰ってもらうから君は休んでいて」と言い残し、食器を片手に寝室から足速に出て行った。
軽く手を振って彼の背中を見送る。だけど、ハデスさんは一度も振り返る余裕なくこの部屋を後にした。その行動が『早く二人きりになりたいから』だったら嬉しいなと思いながら私も席を立ち、窓際に立つ。もう一つの気配があるのは部屋のすぐ外の辺りだ。
「…… どなたですか?」
気配に向かいそっと声を掛けると、窓の外でガサガサッ、バタンッ!と騒々しい音がした。もう一人の気配の正体が私から声を掛けられた事に驚いて地面に倒れ込んだのだろう。
「あたたっ…… 」
長い黒髪をボサボサにしながら垣根の隙間に一人の女性が腰掛けている後ろ姿が見える。腰を何度も摩り、その女性がちらりとこちら側に振り返った時、彼女とばっちり目が合った。この声は間違いない。彼女は——
ハデスさんの婚約者の一人だ。
何事も無かったみたいな穏やかな声と共にカーテンを閉める音が聞こえ、私は重たい瞼をゆっくり開けた。この数日ですっかり見慣れた天井を虚な瞳のまま、ぼぉっと見上げる。数度瞬きをして、やっと現状を理解した。どうやら私は半睡眠状態下での交尾の最中で気を失ってしまったみたいだ。薬のせいでずっと体が動かないままだったのに、股関節やら膣内部に少し違和感がある。アイデースさんが治癒系の神力を施してくれているおかげで回復効率が相当上がっているはずなのに、それでも違和感が残っているって事は、相当な負荷がかかったのだろう。
(…… 何度も何度もされたんだ、当然か)
一度として瞼を開けられなかったからハデスさんのいやらしい姿を見たわけじゃないけれど、聴こえていた音や感じ取っていた雰囲気からつい色々状況を想像してしまったせいでカッと顔が熱を持つ。その様子を悟られまいと私は勢いよくベッドから起き上がり、彼から顔を逸らした。
「大丈夫?傷は痛くないかな?」
『散々好き勝手に交尾をしておきながら、どの口が言うの?』と少しだけ思いつつ、ハデスさんの気遣う声に対して「平気です」と返した。
ベッドから降りて窓の側にある椅子に腰掛ける。真っ先に自分は彼に『何故、あんな事をしたんですか?』と訊くべき状況だろうに、一度は開いた口をそっと閉じてしまう。私に薬を飲ませてまで交尾をしたという事は、きっとそれなりの理由があるのだろう。
複数の許嫁がいるから。
真っ当に『番になりたい』と告げても私の許可は得られないと思った。
そのどちらかが有力な気がする。もしくはその両方かもしれない。
許嫁がいる相手と番になるなんて、心境的に絶対嫌だ。無理だ。
そのうえ、そもそも鳥獣人である私と人間である彼とではご時世的に番にはなれない。人間は人間と結ばれるものと決まっている。この村はその為の保護区な訳だし。
それなのに、番になってしまった。
あんなに激しく交尾をしてんだ、彼はもう私の番だ。
許嫁がいようが、彼を他に渡す気は毛頭ない。
(…… 待って、駄目だ、何も考えるな。でも——)
幸いにして彼らはまだ“許嫁”でしかない。結婚までしていたら相当問題があったが、“許嫁”であればまだどうにか出来るかもしれない。
“成人の儀”の時に婚儀が同時に行われる。確か式は今から一ヶ月くらい先のはずだ。でも私は後一週間もしたらこの村を出なければいけない。そうアイデースさんとも約束してしまった。治療院を出た辺りまでは素直にこっそり隙を見て、村から飛んで行こうと思っていたけど…… 。
「——どうかした?ずっと黙っているけど。やっぱりどこか痛いのかい?」
ハデスさんの声ではっと我に返る。彼の問い掛けに返事はしたが、その後ずっと黙ったままだったせいで心配させてしまったみたいだ。
「い、いえ!本当に大丈夫です。…… だい、じょうぶ」
そう言ったのに、不意に顔を間近から覗き込まれたせいで顔が更に熱を帯びた。真っ赤な瞳でじっとこちらを見詰めてくるもんだから、心拍数まで上がってきている気がする。
「なら良かった。お腹空いたよね?夕飯の用意は終わっているから、すぐに運んで来るよ。今夜は一緒に食べようか」
「いいですね。一人で食べるよりも嬉しいです」
アレだけの事を長時間したのにもうそこまで終えているとか、凄すぎる。私の体もベッドも、室内の匂いまでもが何事も無かったみたいに元通りになっているのに夕飯の用意までも、とか。体にはっきりと余韻が残っていなかったら、『イヤラシイ夢だったんじゃ?』と勘違いしていたかもしれない。古い雑誌や漫画に描かれていた『スパダリ』ってこう言う人の事を指した言葉だったのだろうか?…… なんか微妙に違う気もするが、まぁいいか。
いずれにせよ、お互いの合意の上では無いにしたって、どうしても私と番になりたかった彼の想いにはどうにかして応えねば。“人間”と“鳥獣人”という種族の差は昔とは違って障害にしかならないから何か手段を考えなちゃ。私に薬を飲ませ、何の断りもなく交尾するくらいにこの身を欲してくれたんだから。
◇
次の日。朝起きて、一番最初に思った事は『腰が痛い』だった。綺麗さっぱり記憶には無いが、どうやら治癒力がUPされている状態であっても回復が追いつかないくらいに昨夜も激しく抱き潰されてしまったみたいだ。こうも股関節や胸の先にまで鈍い痛みが残っていると、彼の中に何か言い知れぬ焦りでもあるんだろうか?と深読みしてしまう。
昨日は昼から夕方になるまでずっと何時間も交尾をしたから夜は完全に油断していて、夕食後にも飲んでいたらしい睡眠薬の解毒をする間も無かった。疲労困憊の体と心は眠気に即負けしてしまったせいで一度も意識を取り戻せないまま朝を迎えたのだが、『…… それで正解だったのかも』と彼の作ってくれた朝食を頂きながらしみじみ思う。もしまた意識のあるまま彼と交尾をしてしまっていたら、こうして私の目の前で黙々と朝食を食べるハデスさんをチラ見する事すら出来なかっただろう。
「どう?口に合うかな」
「とても美味しいですよ。いつもありがとうございます」
ちょっとだけ食べる手を休め、無理矢理貼り付けたみたいな笑顔を返す。
「そう?なら良かった。どうかな。この数日で、僕は君の胃袋を掴めた?」
昨日の昼前までだったら『はい!』と普通に返せたのに、「え?あ、えっと…… まぁ、はははっ」なんて微妙な反応しか返せない。表立ってはやんわりと、裏では激しく行動で散々示されても、『君と番になりたい』と直接言われた訳じゃないんだって考えると、なんと答えるのが正解なのかわからない。
決定打となる交尾は済ませている。
だから私達が番である事は間違いないのだが、私がその事に気が付いていない体である以上急に態度を変えるのはおかしいだろうし、困ったなぁ。
「…… (うーん)」
行儀悪く、フォークを口に咥えたまま必死に頭を使おうとしても妙案なんか浮かばない。そんな私の様子を見ても、クスッと微笑ましそうに笑うハデスさんは、私が何を必死に悩んでいるのか全く気が付いていないみたいだ。まぁ、当然か。どの状況でもパッと見には、どう考えたって深く深く眠っている様にしか見えなかっただろうから。
「——ご馳走様でした」
「昼は、何かリクエストとかあるかい?」
椅子から腰を上げ、食べ終わった後の食器をまとめながらハデスさんが私に訊く。『お粥以外なら何でも』と返事しようとした時、扉の奥の方から何処かの扉を開ける大きな音と共に話し声が聞こえてきた。二人の女性が何かを話しているが扉越しなせいか内容は全然聞き取れない。それと同時に感じる別の気配。ハデスさんは声のする方にばかり気を取られているのか、イラッとした表情をしながら「ごめん、煩いよね。すぐに帰ってもらうから君は休んでいて」と言い残し、食器を片手に寝室から足速に出て行った。
軽く手を振って彼の背中を見送る。だけど、ハデスさんは一度も振り返る余裕なくこの部屋を後にした。その行動が『早く二人きりになりたいから』だったら嬉しいなと思いながら私も席を立ち、窓際に立つ。もう一つの気配があるのは部屋のすぐ外の辺りだ。
「…… どなたですか?」
気配に向かいそっと声を掛けると、窓の外でガサガサッ、バタンッ!と騒々しい音がした。もう一人の気配の正体が私から声を掛けられた事に驚いて地面に倒れ込んだのだろう。
「あたたっ…… 」
長い黒髪をボサボサにしながら垣根の隙間に一人の女性が腰掛けている後ろ姿が見える。腰を何度も摩り、その女性がちらりとこちら側に振り返った時、彼女とばっちり目が合った。この声は間違いない。彼女は——
ハデスさんの婚約者の一人だ。
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