恋も知らぬ番に愛を注ぐ

月咲やまな

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【第五章】君は僕の可愛い獣

【第九話】看病…… ?②(ハデス・談)

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 あぁ、本当に可愛いヒトだ。

 内心はヒヤヒヤしているだろうに、それっぽい嘘を平然とした表情で並べる様子を見ているのはとても楽しい。
 こちらの疑問に対して動揺を表に出す事無くスラッと並べる言葉は、僕とは違って、自分が生きているこの世界に対して疑念を抱いていない者ならば何の疑いもなく信じられるものばかりである。随分前に話した他の流民も同じ様な内容を口にしていた。まるで、教科書やお手本になる文面でもあるみたいに。
 二人以上が同一の内容を言うのならそれが真実であると受け止めておくべきなのだろ。だが十六夜が人間ではなく、普段この村にも来る流民の一人でもない事を僕がわかっている時点で、全てを疑うには充分な材料である。

 だからって、嘘を暴く気は更々無い。

 彼等は事情があって嘘をつき、何かを隠しているんだろう。だがそこに僕へ向けた悪意が無いなら別段興味は無い。
「察するに、十六夜が水浴びをしようとした時に何かに襲われたって事か。じゃあ、荷物や着替えは森の中に残っているよね。場所を教えてくれる?君の荷物を取って来るよ」
「いいえ!大丈夫です。まだ其処に私を襲った何かがいるかもしれません。森は危ないし、それに此処からは遠いですから」
 少し青い顔をして、十六夜が大きめの声で拒否の意を口にする。きっとそんな物は探しても無いのだろう。嘘を突き通す為だけに、僕を危険な状況に追い込んでまで無駄な行為をさせる気は無いみたいだ。

「大事な物だったりはしないのかい?廃墟で集めた物が沢山あったんじゃ?」

 たまに村までやって来る流民達は皆『廃墟や瓦礫の山の中から見付けて来た』と言って、色々な物を村に持ち込んで来る。過去の遺物や打ち捨てられた農園に実っていたらしい果物や野菜、缶詰といった類の保存食、日用品や衣類と、流民によって持って来るラインナップは多種多様だ。
 彼等には通貨は使えず、物々交換が基本である。再び物資調達の旅に出る時に重宝する干し肉みたいに日持ちする食べ物や、長距離を移動するので厚手の衣類や丈夫な靴などが喜ばれるが、レースの編み物みたいな手作り品もよく取引の対象としてくれる。それらの品は此処から独立していった別の村の者達が取引の対象として喜ぶそうだ。
「大丈夫です。私はまだ駆け出しで、ただあちこちブラブラしていただけなので、売り物になる様な物は特に持っていなかったから」
「そうなんだ。好奇心が旺盛なタイプ、なのかな?」
「そう、かもしれませんね。結構色々見て回っていますから」と言って、十六夜が視線を軽く逸らした。この話はもう続けたくないのだとその雰囲気から見て取れる。上手い嘘がもう無いのかもしれない。なら、あまり追求するような真似はしないでおこう。

 早く旅に出たいと、思わせない為に。

 こちらから話を逸らそうと、少し間を開けてから「——痒いところはない?」と訊いた。
「あ、はい。大丈夫です」
「じゃあ、そろそろ濯ぐね」
「はい」と答えて十六夜がぎゅっと瞼を強めに閉じる。ちょっと口元も食いしばっていて、絶対目に洗髪剤の混じるお湯を入れまいとしている様子がすごく可愛い。だけど同時に布越しにツンッと上向きになっている胸の先が目に入り、どうしたって気になってしまう。

 この三日三晩念入りに吸っていたから、過敏になっているのかもな。

 全裸に大きめの白い布をただ巻いているだけの状態なので、水分でべったり肌にくっつき、うっすらと肌色が透けている。髪色と同じ銀色の下生えは流石に肌と同化していてわからないが、綺麗に色づく乳輪は見て取れてしまい、彼女の髪を洗い流しながらも下っ腹の奥が疼いてきた。
 浴槽とは別に用意したお湯を小さな桶に移し入れ、腰までもある長い髪を丹念に洗い流してから小さなタオルで丁寧に水分を取っていると、「テキトウでも大丈夫ですよ。大変でしょう?」と十六夜が言う。
「あの、その…… 大きめのタオルは、ないんですね」
「んー…… 今は、ないって感じかな。最近使う機会が続いたから、今は全て洗濯屋に出しちゃっているんだよ。そろそろ新しい物を追加で調達しないとダメそうだなぁ」
 大鷲だった十六夜を撃ち落として囲い入れた日以降。毎晩の様に眠る彼女の体を貪っていたから、タオルを使う機会がグンッと上がったと、正直には言えない。
 唾液や愛液、精液で汚れた体を濡れタオルで綺麗にしたり、ベッドのシーツを汚さない為に腰の下に敷くのにも使っていたらすぐに大判タオルの在庫が尽きてしまった。肌着だけは手洗いするので洗濯する道具はあるが、面倒で汚れ物のほとんどは家で洗わないから、三日は洗濯屋から戻ってこない。普段はそれでも困らないのだが…… いや、眼福状態なので今も困ってはいないか。

 香油を手の平に垂らして温め、十六夜の髪を毛先側から手入れしていく。そして一旦髪を軽く結い上げて細長い布で包むと、今後は体を洗う用意を始めた。
「次は体を拭くから、前に少し体を倒してもらっていいかな?」
「じ、自分で——」と口を開けた十六夜の背中を軽く押し、「拭くねー」と強行する。石鹸を少しだけ擦って泡を作った物を手にのせてうなじから丁寧に洗っていく。独立型の湯船の中で膝を抱えて座っている十六夜の体はすっかり真っ赤になっているが、少しだけためているお湯のせいで茹ってしまったというよりは、背中を拭く為にと体を手で洗いながら十六夜の体を隠す布を下にさげたからだろう。
 前を隠そうと背中を丸める姿が愛らしい。耳まで赤くなっていて、かぷっと噛みついてしまいたくなってくる。細いうなじ、腰のライン、お尻の割れ目や膨らみがほとんど丸見えになっている。辛うじて前側にはまだ布で隠せているが、汗を洗い流しながらそちらにも手を回すと、「ひゃあ!」と甲高い声で悲鳴をあげられてしまった。

「自分で、自分でぇぇ!」

 壊れた玩具みたいに同じ言葉を十六夜が繰り返す。慌て過ぎてきちんとした単語が出てこないみたいだ。
 必死に無傷な右腕で布を押さえて前側を隠してはいるが、ツンとした乳嘴や細い太股は隠し切れていない。布がくしゃりとしているせいで秘部までちらりと見えているし、『間違った』『手が滑った』と言って彼女のナカに指をくちゅりと挿れてしまってもいいんじゃないかという気持ちになってくる。

「あまり暴れると、敏感な箇所にまで触れちゃうかもしれないよ?大人しくしていて欲しいな」

 ヒッと十六夜の喉が鳴る。まだ全身がプルプルと震えてはいるが、必死に動くのを堪えてくれる姿に胸の奥が鷲掴みにされた。堪え切れずに少しだけ乳房をいやらしく撫でると、十六夜が「——ひゃっ!」と慌てて短い声を発した。さっきから全く語彙力が消えてしまっていて、益々彼女の可愛さに拍車がかかる。

「肌を傷つけない為に手で洗ったりもするでしょう?女性の脚や胸はとても柔らかいからね、このまま優しーく洗っていこうか」

「大丈夫です!肌は丈夫です!そうだ、せめてタオルで、タオルで!——ぁんッ!」

「あ、ごめんね?何処かを掠ったかな」
 泡のついた手で脚を撫でつつわざと指先で肉芽を掠めると、愛らしい声を十六夜があげて内腿に力が入った。そのせいで僕の手が完全に彼女の脚に挟まれてしまい、抜くことが出来ない。こんな事をされてしまうと『もっと深くを触って欲しいのかな?』と勘違いしたくなってくる。しかも十六夜は腕に大怪我を負っていて激しい抵抗は出来ない。体だけは既に快楽を知っているからか、十六夜の瞳はすっかりとろんと溶けてしまい、無自覚なまま呼吸も荒くなっている。

 …… 続けたいけど、警戒されても厄介か。

 足やふくらはぎなど、お湯に浸かる事で汗や汚れを流せている箇所を洗う事は諦め、泡の残っている部位はお湯で洗い流す。
「はい、お終い。——さてと、体を拭いて着替えようか。服はまだ女性物を用意してい…… 出来ていないから、今夜も僕の物を着てもらう事になるけど、ごめんね」
「あ、あの!あとは自分でやれますから」
 羞恥に震えながらそう訴える十六夜に『だぁーめ。君の事は僕が全部したいから』と返したい衝動をグッと堪え、「そう?じゃあ、浴槽から立ち上がるのは手伝うね。その後は衝立の奥で待機しているから、自分でやってみて、難しかったら声を掛けてね」と笑顔で告げる。すると彼女は安堵の息を軽くつき、「はい」と頷いてくれた。
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