20 / 77
【第三章】いやしは隣のキミ一人
【第四話】約束(十六夜・談)
しおりを挟む
引っ越しから四日目。
朝食時に使った食器を台所に運び終え、叔母さんからの安否と近況メッセージを確認していると、部屋のチャイムが鳴った。
こんな時間から誰だろうか?
ネットで注文した品は無い。いや、そもそもこんな早朝に配達員は来ないか。
不思議に思いながら玄関に向かい、扉越しに「どちら様ですか?」と訊く。
「宵川です」
声変わり前の可愛らしい音で返答があった。
…… ハデス様?
こんな朝早くからどうしたのだろうか。
「今開けま、るね」
言葉を途中で言い直しながら解錠して扉を開けると、ちょこんと小さなハデス君が私を見上げながら立っていた。ランドセルを背負っているが登校するにはまだ時間が早過ぎる。『一体朝からどうしたんだろう?』と思いながら首を傾げると、彼はニッと笑った。
「まーた敬語!これで二回目だよ?」
「あはは…… 今のは不意をつかれたし、大目にみて欲しいなぁ。でも、こんなに早くどうしたの?何かあった?」
「今日も一緒に学校行こう?」
一緒に登校する様な友人は…… 。この容姿でいないはずはないと思うのだが、そちらとの関係はいいのだろうか。
「…… 良いけど、今から行くのは早いよね?」
まだ着替えも済んでいないので今の私は部屋着のままだ。着ていたのが、いかにもなパジャマじゃなかった偶然に感謝していると、ハデス君がもじっと体を動かす。
「ねぇ…… 十六夜さんの部屋で、時間まで待ってもいい?」
「いいよ。さぁどうぞ」
気恥ずかしそうな仕草をしながらお願いされては断れるはずがない。返事は即答で『はい』の一択だった。
扉を押さえて中に移動する為のスペースを開ける。「お邪魔します」と口にしながら靴を脱ぎ、ハデス君が小走りで室内に入って行く。遊戯施設にでも入って行く様な足取りが子供っぽくて本当に可愛い。
「わ!ウチと完全に正反対だ。おぉエアコンも新品だねー。やっぱ壁紙も綺麗なのか、いいなぁ」
きゃっきゃとはしゃぐ姿は愛らしくってしょうがない。部屋の中の物を勝手にいじったり、他の部屋を覗かない点も高評価しかつけられなかった。
「ソファーにでも座って待っていてもらってもいい?制服に着替えて来るから」
「うん、わかった」と笑顔で応えてくれる。
一刻も早く戻ろう。
そう考えながら自室に向かい、急いで勉強道具一式を鞄に詰め込んだ後、私は制服に着替えた。
「——お待たせ。ごめんね、一人にして」
居間に戻るとハデス君の姿は無かった。『あれ?』と周囲を見渡す。するとキッチンから水音がする事に気が付いた。すぐさま足を向けると予想通りハデス君の姿がそこに。食器を洗った後なのか、水道の蛇口を上にあげて水を止めている。
「わぁ。食器洗っておいてくれたの?どうもありがとう」
礼を言ったのだが、こちらに向ける彼の顔には眉間に皺が。大人である方の“ハデス様”では絶対にしない渋い顔のせいで、『何かしてしまっただろうか?』と冷や汗が背中を伝う。
「十六夜さん」
「は、はい」
子供らしからぬ重たい声に背筋を正す。
「今朝は…… 何を食べたの?」
拍子抜けする質問を耳にし、「食パンと野菜ジュースだけど」と短く答える。昨日も今日も、ジャムやバターの類も家には無いのでトースターでただ焼いただけのパンを一枚頂いた事を素直に話した。
「昨日の夜は?」
「…… えっと。確か鯖の味噌煮の缶詰、かな?」
「昨日の昼は⁉︎」
「学校の売店で買った、コッペパンを一袋」
「——全っ然、ダメじゃん!」
頭を抱え、ハデス君が叫んだ。何が駄目なのかわからないと言う程無知でもないので、『まぁそうだよねぇ』と無言で頷く。
「冷蔵庫、開けていい?」
ジト目で見上げられ、「…… はい」としか返事が出来ない。渋い顔のままハデス君が冷蔵庫を開ける。数秒後、彼は大袈裟な仕草で肩を落とし、口からは盛大なため息がこぼれ出た。
「呆れた…… 」
ウチにあるのは叔母の意向で家族向けの大きな冷蔵庫なのに、中に入っているのはせいぜい牛乳と醤油といった調味料くらいなものだ。こんなの見たら誰だってため息を吐きたくもなろう。
「学校とかあったから、買い出しに出るのすっかり忘れていて…… 」
ははっと空笑いをする。今の自分は“星十六夜”だが、主人格である“私”には『ヘンゼルとグレーテル』時に“グレーテル”として飢えと戦っていた記憶があるせいか、空腹を満たせるだけで幸せだと思ってしまう欠点が残ったままだ。そのうえ食事という習慣が元来の自分には無い事も影響し、より一層食に無頓着になってしまっているのかもしれない。だがそのせいでハデス君に呆れられてしまうなんて、申し訳ない気持ちになってくる。
「料理は苦手なの?」
「そんな事無いよ。祖母と住んでいた時はよく一緒に作ったりもしていたから」
もっとも、そういう“記憶”と“設定”があるというだけで本当に作った経験は皆無だが、嘘ではない。
「じゃあちゃんと作ろうよ。このままじゃ体壊しちゃうよ?」
小学生からオカンみたいな指摘をされた。彼は子供の割に随分と母親っぽいなというよりも、明らかに自分の行いの悪さのせいで出た発言だ。その不甲斐なさで胸が痛い。
「うーん…… 。今日の朝と昼は流石に食材が無さ過ぎて手の打ちようがないけど、今晩からはボクが作ってあげるよ!」
名案だ!とでも言いたげにパァと顔を輝かせるハデス君が眩しい。しかも私の制服の袖を掴みながら言うとか、甘え上手も程々にして頂きたい。
「流石に、小学生にご飯を作ってもらうのは…… 」
「大丈夫だよ。ウチは皆帰宅時間がバラバラだから基本的に夕飯は別で食べてるし、ボクも毎日自分の分は自分で作ってるから。朝も朝で皆バタバタしてて、結局は自分で用意してるしね」
宵川家のご両親は金銭面で苦労して育ったからか、子供達にはお金で困らせたくないとどちらも必死に働いている。そのせいで子供達が放置状態になっているのだが、そこまでは目が届いていないという“設定”だ。おかげで姉弟共に家事は完璧に出来る子に。将来的にも必要なスキルではあるが、『家族が側に居なくて寂しい』という感情を子供に抱かせるのは結果としてはどうなんだろうか。
あくまでもお話の“設定”だとはいえ、家庭の事情を知っている身としては断り難いなぁ。
「じゃあ一緒に作るってのはどうかな。年下の君にだけ作らせて、自分は待ってるってのは精神的に良くないし」
「ボクと一緒に?…… いいね、そうしようか」
「決まりだね」というと、ハデス君が小指を差し出してきた。
「指切りしよう?」
こんなにも愛々しい顔でせがまれて断れる者などいるのだろうか?
「指切りなんてよく知ってるね」
「マンガで見た!後は、ねぇちゃんともたまに」
漫画を読む、ハデス様…… ?
想像不能で、脳内に居る元のお姿にすらモザイクがかかる。そんな状態ながらも小指を絡めて約束を交わすと、ハデス君が満足気に頷いた。
「ねぇ、十六夜さんの連絡先教えてよ」
「連絡、先?」
お隣に住んでいるのに、これ以上どうしろと?
不思議に思って返事に困っていると、ハデス様が居間に戻り、ランドセルの中からスマホを一台取り出した。成る程、電話番号やメールアドレスなどの話か。一人納得していると、「ねぇ、早く」とせっついてくる。
「でも、子供ケータイとかスマホって登録に制限があるんじゃないの?」
「大丈夫。ボクは普段の行いがいいからね、制限無しで持たせてもらえてるんだ。その代わりに所在確認の為のGPSアプリは入れさせられてるけど」
「そうなんだ。…… でもなぁ」
お隣さんだとはいえ、いいのだろうか?
ご両親からしてみれば私とは会った事も無い為、他人に等しいはず。そんな女と息子さんが連絡先を交換とか通報案件では?と不安になる。
「親には今晩ちゃんと報告しておくから!…… ねぇ、ダメ?ボクとは、そんなにイヤだった?」
制服のスカートを掴み、上目遣いで懇願してくる。そんな瞳を見せられては魅せられないはずなどなく、結局私は望まれるままに一通りの連絡先を彼と交換したのだった。
朝食時に使った食器を台所に運び終え、叔母さんからの安否と近況メッセージを確認していると、部屋のチャイムが鳴った。
こんな時間から誰だろうか?
ネットで注文した品は無い。いや、そもそもこんな早朝に配達員は来ないか。
不思議に思いながら玄関に向かい、扉越しに「どちら様ですか?」と訊く。
「宵川です」
声変わり前の可愛らしい音で返答があった。
…… ハデス様?
こんな朝早くからどうしたのだろうか。
「今開けま、るね」
言葉を途中で言い直しながら解錠して扉を開けると、ちょこんと小さなハデス君が私を見上げながら立っていた。ランドセルを背負っているが登校するにはまだ時間が早過ぎる。『一体朝からどうしたんだろう?』と思いながら首を傾げると、彼はニッと笑った。
「まーた敬語!これで二回目だよ?」
「あはは…… 今のは不意をつかれたし、大目にみて欲しいなぁ。でも、こんなに早くどうしたの?何かあった?」
「今日も一緒に学校行こう?」
一緒に登校する様な友人は…… 。この容姿でいないはずはないと思うのだが、そちらとの関係はいいのだろうか。
「…… 良いけど、今から行くのは早いよね?」
まだ着替えも済んでいないので今の私は部屋着のままだ。着ていたのが、いかにもなパジャマじゃなかった偶然に感謝していると、ハデス君がもじっと体を動かす。
「ねぇ…… 十六夜さんの部屋で、時間まで待ってもいい?」
「いいよ。さぁどうぞ」
気恥ずかしそうな仕草をしながらお願いされては断れるはずがない。返事は即答で『はい』の一択だった。
扉を押さえて中に移動する為のスペースを開ける。「お邪魔します」と口にしながら靴を脱ぎ、ハデス君が小走りで室内に入って行く。遊戯施設にでも入って行く様な足取りが子供っぽくて本当に可愛い。
「わ!ウチと完全に正反対だ。おぉエアコンも新品だねー。やっぱ壁紙も綺麗なのか、いいなぁ」
きゃっきゃとはしゃぐ姿は愛らしくってしょうがない。部屋の中の物を勝手にいじったり、他の部屋を覗かない点も高評価しかつけられなかった。
「ソファーにでも座って待っていてもらってもいい?制服に着替えて来るから」
「うん、わかった」と笑顔で応えてくれる。
一刻も早く戻ろう。
そう考えながら自室に向かい、急いで勉強道具一式を鞄に詰め込んだ後、私は制服に着替えた。
「——お待たせ。ごめんね、一人にして」
居間に戻るとハデス君の姿は無かった。『あれ?』と周囲を見渡す。するとキッチンから水音がする事に気が付いた。すぐさま足を向けると予想通りハデス君の姿がそこに。食器を洗った後なのか、水道の蛇口を上にあげて水を止めている。
「わぁ。食器洗っておいてくれたの?どうもありがとう」
礼を言ったのだが、こちらに向ける彼の顔には眉間に皺が。大人である方の“ハデス様”では絶対にしない渋い顔のせいで、『何かしてしまっただろうか?』と冷や汗が背中を伝う。
「十六夜さん」
「は、はい」
子供らしからぬ重たい声に背筋を正す。
「今朝は…… 何を食べたの?」
拍子抜けする質問を耳にし、「食パンと野菜ジュースだけど」と短く答える。昨日も今日も、ジャムやバターの類も家には無いのでトースターでただ焼いただけのパンを一枚頂いた事を素直に話した。
「昨日の夜は?」
「…… えっと。確か鯖の味噌煮の缶詰、かな?」
「昨日の昼は⁉︎」
「学校の売店で買った、コッペパンを一袋」
「——全っ然、ダメじゃん!」
頭を抱え、ハデス君が叫んだ。何が駄目なのかわからないと言う程無知でもないので、『まぁそうだよねぇ』と無言で頷く。
「冷蔵庫、開けていい?」
ジト目で見上げられ、「…… はい」としか返事が出来ない。渋い顔のままハデス君が冷蔵庫を開ける。数秒後、彼は大袈裟な仕草で肩を落とし、口からは盛大なため息がこぼれ出た。
「呆れた…… 」
ウチにあるのは叔母の意向で家族向けの大きな冷蔵庫なのに、中に入っているのはせいぜい牛乳と醤油といった調味料くらいなものだ。こんなの見たら誰だってため息を吐きたくもなろう。
「学校とかあったから、買い出しに出るのすっかり忘れていて…… 」
ははっと空笑いをする。今の自分は“星十六夜”だが、主人格である“私”には『ヘンゼルとグレーテル』時に“グレーテル”として飢えと戦っていた記憶があるせいか、空腹を満たせるだけで幸せだと思ってしまう欠点が残ったままだ。そのうえ食事という習慣が元来の自分には無い事も影響し、より一層食に無頓着になってしまっているのかもしれない。だがそのせいでハデス君に呆れられてしまうなんて、申し訳ない気持ちになってくる。
「料理は苦手なの?」
「そんな事無いよ。祖母と住んでいた時はよく一緒に作ったりもしていたから」
もっとも、そういう“記憶”と“設定”があるというだけで本当に作った経験は皆無だが、嘘ではない。
「じゃあちゃんと作ろうよ。このままじゃ体壊しちゃうよ?」
小学生からオカンみたいな指摘をされた。彼は子供の割に随分と母親っぽいなというよりも、明らかに自分の行いの悪さのせいで出た発言だ。その不甲斐なさで胸が痛い。
「うーん…… 。今日の朝と昼は流石に食材が無さ過ぎて手の打ちようがないけど、今晩からはボクが作ってあげるよ!」
名案だ!とでも言いたげにパァと顔を輝かせるハデス君が眩しい。しかも私の制服の袖を掴みながら言うとか、甘え上手も程々にして頂きたい。
「流石に、小学生にご飯を作ってもらうのは…… 」
「大丈夫だよ。ウチは皆帰宅時間がバラバラだから基本的に夕飯は別で食べてるし、ボクも毎日自分の分は自分で作ってるから。朝も朝で皆バタバタしてて、結局は自分で用意してるしね」
宵川家のご両親は金銭面で苦労して育ったからか、子供達にはお金で困らせたくないとどちらも必死に働いている。そのせいで子供達が放置状態になっているのだが、そこまでは目が届いていないという“設定”だ。おかげで姉弟共に家事は完璧に出来る子に。将来的にも必要なスキルではあるが、『家族が側に居なくて寂しい』という感情を子供に抱かせるのは結果としてはどうなんだろうか。
あくまでもお話の“設定”だとはいえ、家庭の事情を知っている身としては断り難いなぁ。
「じゃあ一緒に作るってのはどうかな。年下の君にだけ作らせて、自分は待ってるってのは精神的に良くないし」
「ボクと一緒に?…… いいね、そうしようか」
「決まりだね」というと、ハデス君が小指を差し出してきた。
「指切りしよう?」
こんなにも愛々しい顔でせがまれて断れる者などいるのだろうか?
「指切りなんてよく知ってるね」
「マンガで見た!後は、ねぇちゃんともたまに」
漫画を読む、ハデス様…… ?
想像不能で、脳内に居る元のお姿にすらモザイクがかかる。そんな状態ながらも小指を絡めて約束を交わすと、ハデス君が満足気に頷いた。
「ねぇ、十六夜さんの連絡先教えてよ」
「連絡、先?」
お隣に住んでいるのに、これ以上どうしろと?
不思議に思って返事に困っていると、ハデス様が居間に戻り、ランドセルの中からスマホを一台取り出した。成る程、電話番号やメールアドレスなどの話か。一人納得していると、「ねぇ、早く」とせっついてくる。
「でも、子供ケータイとかスマホって登録に制限があるんじゃないの?」
「大丈夫。ボクは普段の行いがいいからね、制限無しで持たせてもらえてるんだ。その代わりに所在確認の為のGPSアプリは入れさせられてるけど」
「そうなんだ。…… でもなぁ」
お隣さんだとはいえ、いいのだろうか?
ご両親からしてみれば私とは会った事も無い為、他人に等しいはず。そんな女と息子さんが連絡先を交換とか通報案件では?と不安になる。
「親には今晩ちゃんと報告しておくから!…… ねぇ、ダメ?ボクとは、そんなにイヤだった?」
制服のスカートを掴み、上目遣いで懇願してくる。そんな瞳を見せられては魅せられないはずなどなく、結局私は望まれるままに一通りの連絡先を彼と交換したのだった。
0
お気に入りに追加
69
あなたにおすすめの小説

君は番じゃ無かったと言われた王宮からの帰り道、本物の番に拾われました
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
ココはフラワーテイル王国と言います。確率は少ないけど、番に出会うと匂いで分かると言います。かく言う、私の両親は番だったみたいで、未だに甘い匂いがするって言って、ラブラブです。私もそんな両親みたいになりたいっ!と思っていたのに、私に番宣言した人からは、甘い匂いがしません。しかも、番じゃなかったなんて言い出しました。番婚約破棄?そんなの聞いた事無いわっ!!
打ちひしがれたライムは王宮からの帰り道、本物の番に出会えちゃいます。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
君は僕の番じゃないから
椎名さえら
恋愛
男女に番がいる、番同士は否応なしに惹かれ合う世界。
「君は僕の番じゃないから」
エリーゼは隣人のアーヴィンが子供の頃から好きだったが
エリーゼは彼の番ではなかったため、フラれてしまった。
すると
「君こそ俺の番だ!」と突然接近してくる
イケメンが登場してーーー!?
___________________________
動機。
暗い話を書くと反動で明るい話が書きたくなります
なので明るい話になります←
深く考えて読む話ではありません
※マーク編:3話+エピローグ
※超絶短編です
※さくっと読めるはず
※番の設定はゆるゆるです
※世界観としては割と近代チック
※ルーカス編思ったより明るくなかったごめんなさい
※マーク編は明るいです

断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる