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【過去の記憶②】
しおりを挟む卑怯だと思う。
男3人で取り囲んで脅すように無理矢理承諾させるなんて。
今の自分なら毅然とした態度ではっきり無理だと断れるだろうけれど、当時の気弱な女子高生だった私にそれが出来る筈なかった。
『番号交換しておかないとね』
『あ………ちょっ…』
半ば取り上げられるような形で携帯を奪われ、勝手に携帯番号とLINEのIDを抜かれて強引に番号交換させられた。
嫌だとか、やめてなんて言えなかった。
言ったら何をされるか分からなかったし、ただただ怖かったから。
『カップル成立ー!』
『いやぁ、めでたいめでたい』
次の日からは、学校帰りに校門前で待ち伏せされた。
周囲の視線を浴びながらの下校は、居心地悪くて泣きそうだった。
“彼”との交際は、瞬く間に噂として広まり、私の評価を一気に落とした。
『朝比奈さんって、大人しい見た目の割にかなり派手な人と付き合ってるみたいだね』
『あぁーいるいる、隠れビッチってやつ?』
『人は見掛けによらないね、こっわー』
聞こえよがしに心ない悪口を言われ、傷付いた日々。
一緒にクラス委員をやっていた男子と良い雰囲気だったのに、最終的には距離を置かれ、涙を飲んだ。
“彼”との交際は、私にとってとてもじゃないけれど生きた心地のしないもので、拷問のようだった。
無口で無愛想で威圧感たっぷりで……
怖くてまともに顔を見れなかったし、隣に居るだけで常に心臓はバクバク。
何か話し掛けられる度にビクッとしてた。
とにかく彼の存在が恐怖でしかなくて、彼と居るところを人に見られるのが嫌で嫌で堪らなくて、いつも俯いていたのを今でもよく覚えてる。
“彼”の所為で、順調に培ってきた人間関係は翳り、楽しい学校生活は途方もなくつまらない物になった。
充実した高校生活を楽しいまま、最高の状態で卒業式を迎えたかった。
なのに、たった一人のヤンキーの為に台無しに……
“彼”との交際期間は、およそ一月半。
東京の大学への進学を理由に、無理矢理終わりにした。
その時のやり取りはさっぱり思い出せない。
最後に“彼”が何て言っていたのかも覚えていない。
そもそも、最後の最後まで“彼”の顔をちゃんと見られなかったし。
初めての彼氏がダッサイ田舎のヤンキーとか、黒歴史にも程がある。
というか、彼氏としてカウントしたくない。
だから“彼”に関する事は、ほぼ全て記憶から抹消させて頂いた。
勿論、携帯の番号はすぐに削除し、LINEもブロック。
そもそも私は“彼”の事なんて殆ど知らない。
“彼”に関する事で唯一知っていたのは、“彼”の名がシゲという事と、私と同じ高校3年生だったという事くらい。
それくらいだ。
第一、“彼”は自分の事を多く語る人じゃなかった。
いや、もしかしたら、付き合いの中で語っていたのかもしれないけれど、“彼”といる時の極度の緊張状態の私に“彼”の話に耳を傾ける余裕なんかなかったのかもしれない。
いずれにしても、過去の事だ。
それも苦い苦い嫌な思い出……
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