花の終わりはいつですか?

江上蒼羽

文字の大きさ
上 下
34 / 37

side:妙香―19

しおりを挟む




知世の目の奥が光ったような気がした。


「どういう事?」


まるで取り調べを受けているかのような気分だ。


「浅倉さんて方がいて……私よりも歳下かな。まだ小さい子供がいる人なんだけど、ウチと同じ状況で……」

「ウチと同じって?」

「あの、その……つまり……」


どう言葉にしたら良いか暫し悩んでからモゴモゴと口にする。


「奥さん側からの………セックスレスで……お互いにしんどいですねって話してて……」


私が全てを言う前に「まさか!」と知世が口を挟む。


「しちゃったの?!」


鼻息荒く詰め寄ってくる知世に苦笑しながら「いやまさか」と首を振る。


「それだと完全な浮気になっちゃうし。心のって言ったじゃん」

「だ、だよね」


知世がホッとしたように笑う。


「その後ちょっとおふざけで手を握ってみたんだけど、年甲斐もなくドキドキしちゃって」

「うんうん」

「それからちょっと彼の事を意識してしまってる……」


言葉尻に「馬鹿みたいだよね」と付け加えて笑ってみせると、知世は意外にも「いいんじゃない?」と言う。


「いくつになってもトキメキは大切だよ。ドキドキと胸が高鳴る感じ……久しく感じてないなぁ」


恋い焦がれるように、どこか遠くを見ながら知世が言った後、すぐに私の方へと向き直る。


「た・だ・し!どっぷりとのめり込むのはダメだよ。心の浮気に留めておいてよ?」

「分かってるって。彼とどうにかなりたいとか思ってないから」

「絶対一線は越えちゃダメだからね。一線は!」


一線の部分を強調する彼女の真剣過ぎる表情にたじろぎつつ「ないから!」と否定する。


「こんなオバサンと一線越えたくないでしょ。もっと若い子に行くよ浅倉さんは。彼にも選ぶ権利あるだろうし」

「100%ないとは言い切れないでしょ?」 

「断言出来る!100%ないよ!第一お互い家庭があるもの」


浅倉さんは枯渇していた私の心を潤してくれた。

求めていた温もりを感じさせてくれた。

それがほんの一時でも私は満たされた気持ちになって、女としてまだ花咲いていたいと思えた。

だからといって彼とどうこうなりたい等とは思っていない。

ただトキメキを感じさせて貰いたいだけ。  

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

家出したとある辺境夫人の話

あゆみノワ@書籍『完全別居の契約婚〜』
恋愛
『突然ではございますが、私はあなたと離縁し、このお屋敷を去ることにいたしました』 これは、一通の置き手紙からはじまった一組の心通わぬ夫婦のお語。 ※ちゃんとハッピーエンドです。ただし、主人公にとっては。 ※他サイトでも掲載します。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

【完結】忘れてください

仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。 貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。 夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。 貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。 もういいの。 私は貴方を解放する覚悟を決めた。 貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。 私の事は忘れてください。 ※6月26日初回完結  7月12日2回目完結しました。 お読みいただきありがとうございます。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

処理中です...