花の終わりはいつですか?

江上蒼羽

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side:透也―10

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嫌々参加した会社の飲み会は、相変わらず参加する価値があるのか分からない程シケていて、開始数分で帰りたくなった。



『ちょっとだけ参加して帰るね。朝も言ったけど飯はいらないよ』


テーブル下で携帯を操作して友梨にLINEを送る。

すぐに既読が付いて『了解』のスタンプが返される。

こんな仲良し会社ごっこに付き合ってられない。


上機嫌で年甲斐もなくはしゃぐ常務の隣で黙々と酒を煽る社長。

社長がもっと主張する人だったら、常務に好き勝手される事もないのに。

一代で立ち上げ、従業員数は少ないながらも地元ではそこそこ名の知れた企業にした社長の手腕は評価してる。

その反面、嫁をコントロール出来ないでいる部分は頂けない。

まぁ、俺も他人の事言えた義理ではないが。



脂っこいだけで大して旨くもない料理を烏龍茶で流し込む。


「浅倉さんは今日も飲まないんですか?」


会社で1番若い田辺が俺の手元を覗き込む。


「ん……まぁ車だし」

「奥さんに送迎頼めばいいのに」

「いやいや赤ん坊の世話で忙しいのに頼めないでしょ」

「へぇ~奥さんの事気遣ってやっさしいですね」


独身者の田辺からしたら、俺は嫁の尻に敷かれた憐れな男なのだろう。

言葉に皮肉が込められているように感じるのは、俺の卑屈な性質故か。

「別に……」とだけ返してまた烏龍茶を煽る。



「妙香ちゃーん、飲んでるかー?」

「食え食え、もっと食え」


少し離れた年配組のテーブルは賑やかだ。

最近少しは小綺麗になったものの、体型は変わらず小太りの事務員を囲んで盛り上がっているよう。


「ビールついでよ妙香ちゃん」

「は、はいはい只今」

「次こっちもね」

「はい」


すっかり出来上がってるオッサン達に絡まれビール瓶片手に右往左往する水川さん。

男所帯の中じゃ女性というだけで重宝される人材だけど、この会社では年配者のコンパニオン扱い。 

悪酔いしたオッサンに尻を揉まれて顔を真っ赤にしてる様を目にして、俺を含めた一部の社員は苦笑いしている。


「……ありゃねーだろ」

「場末のスナックかよ」


オッサンの暴挙を批判しつつも、どこか面白がっている同僚達を見て、やっぱクソみてーな会社だな……と改めて思った。
 
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