花の終わりはいつですか?

江上蒼羽

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side:透也―13

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仕事の内容は肉体労働。

外仕事だから夏は死ぬほど暑くて、冬はこれまた死ぬほど寒い。

夏は熱中症対策、冬は凍傷対策に加わり、花粉症持ちだから春は花粉対策が必要。

外仕事なんて過酷そのもので、体力や腕力があってこその仕事だから、年老いて衰えていく事を考慮すれば長く続けるべき仕事ではない。

怪我は付き物だし、下手したら施工中に事故に巻き込まれる可能性もあるし。

室内でパソコンをカタカタしたり、リモートワークが出来るような仕事に就きたかったけど、ド田舎の底辺高校卒でスキルもコネもない、体力バカの俺には肉体労働が性に合っているっぽい。

人使いは荒いし、経営や人間関係はクソな会社だけど金払いはそこそこ良いし。

労働環境は過酷でも、大切な家族の為なら踏ん張れる………そう思っていたのに。




「明日天気良いみたいだよ。大和連れてちょっとドライブがてら海浜公園行かない?」


金曜の夜、洗い物をする友梨の背中に向かって言ってみた。

膝の上では大和が俺の腹を背もたれにしてふんぞり返っている。

下膨れた頬を軽く突っつくと重たそうな頭を精一杯持ち上げて不思議そうに俺を見上げてくる。

その仕草が非常に愛らしい。


「あーごめん」


タオルで濡れた手を拭きながら友梨が言う。


「明日はお母さんと1日出掛けるんだ。ほら、ショッピングモールに新しいお店入ったじゃない?可愛い輸入雑貨の。そこ行きたくて」


嬉しそうに声を弾ませる友梨を見て、またか……と小さく溜め息を吐く。


「大和いたらゆっくり見られないんじゃない?」

「大丈夫だよ、お母さんいるし」


どうせお義母さんと出掛けたら、ほぼ1日帰ってこないだろう。

友梨は二人兄妹。

お義父さんとお義母さんに甘やかされている傾向にある。

平日は車で10分程の実家からお義母さんが友梨の子育てのフォローをする為にやってくる。

そのお陰で手の掛かる月齢の子供がいても家の中はとても綺麗だ。

飯も作り置きをいくつか仕込んでおいてくれるらしい。

そこら辺は非常に感謝している。

だけど、親離れ子離れ出来ていない、べったりとした関係性がどうにも鼻につく。

平日もベッタリ、休日も頻繁に親子で出掛ける。

今時嫁に行ったとか、浅倉家の人間になったとか言うのは時代錯誤だけど、それでも友梨は俺と新しい家庭を築いた訳で、いつまでも娘気分でいて欲しくないというか。

いや、両親を大切にするのは良いと思う。

でもそれと同じように俺との時間も大事にして欲しいと思うのは我が儘なのだろうか。


「透也くんは、折角の休みなんだからゆっくりしてなよ」

「……ん、ありがと」


友梨が俺の体を気遣ってくれているのは分かるけど、どうにも疎外感に苛まれる。

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