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side:透也―5
しおりを挟む「忙しそうな所悪いんですが………常務は?」
常務の所在を問うと、水川さんは「あぁ…」と声を挙げる。
「常務なら、少し前に出掛けました。行き先までは分かりませんが…」
「…………そうですか」
どこに行ったんだよ、クソババア………と言いたい所をぐっと抑える。
「ですが、30分ほどで戻ると仰っていましたから、直にいらっしゃると思います。何か言付けですか?」
「………いや、今日の仕事終わったんで、次の指示を仰ごうと思って……ちょっくら電話掛けてみますわ」
ズボンのポケットから携帯を取り出し、常務の携帯に着信を入れる。
ところが
呼び出し始めた途端、事務所の片隅で鳴り出す着信音。
「………チッ」
すぐに呼び出しを止めた。
用があってこちらから電話を掛けても、常務は大抵出ない。
理由は、基本的に携帯を持ち歩かない人間だから。
こっちが忙しい時にはしつこい位電話してくるくせに。
「もうすぐ帰ってくると思いますから…」
苛立つ俺を案じてか、水川さんが宥めるように言った。
「…………そうっすね」
携帯をそっとポケットに仕舞った。
いつもの事ながら、常務には呆れる。
次の指示を仰ごうにも、常務が居ないのでは仕方がない。
事務所の壁に備え付けられた大きなホワイトボードの前に立つ。
そこには1週間分の施工内容が記され、現場作業員の振り当てがなされている。
本日の割り振り箇所から自分の名が記されたマグネットを取り、この場所から一番近い現場の所へ貼り付けた。
流石に自分の担当の現場が終わったからといって、2時に帰宅は許されない。
手が空いたら、他の現場の手伝いに回るのがこの会社の暗黙のルール。
気が進まないが、遊んでいる訳にはいかない。
「………俺、専務達の現場の手伝い行ってきますわ。常務に伝えといて下さい」
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