56 / 57
【56】
しおりを挟むアイブロウ先輩はひたすら「なるほど…」を繰り返していた。
今先輩が悩んでいる箇所が物語の中間部分なのか、終盤なのかは俺には見当が付かないけど、途中まで書いた小説を1から書き直すのは中々大変な事だと言うのは分かる。
「簡単に言ってくれるな!」と怒る先輩を想像していただけに、すんなり俺の意見に耳を傾けてくれた素直さに驚かされた。
そんなアイブロウ先輩の純粋さが、より百田の腹黒さを際立ててしまうから面白い。
「じゃあさ、清原くんならどんな物語の始まりにする?」
百田の策略にまんまとハマりつつある事が悔しいけど、それはそれでありなのかもしれない。
アイブロウ先輩の卒業までの数ヶ月間で、どれだけ彼女の物語を書き換えられるかは俺の腕次第だろう。
そもそも俺にそれが出来るのか?
「んー……そうだなぁ…」
アイブロウ先輩の中から、百田への恋心を根こそぎ奪い去ってしまいたい。
それが彼女への好意からなのか、はたまた単なる百田への当て付けなのかはまだよく分からないけど、一つだけ言えるのは―――…
「俺が描く物語の始まりは……」
アイブロウ先輩の物語の重要人物として俺の名を刻みたい。
ただ、それだけ。
***おわり***
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる