物語の始まりは…

江上蒼羽

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百田は仄かに笑みを浮かべながら「確かに……」と呟いた。


「じゃあ俺は戻るから。あんまり黛の邪魔するなよ?」


その言い草に俺は鼻で笑って言う。


「邪魔になるよう仕向けたくせに?」


俺の煽りをスルーして背を向ける百田は、あくまでもってやつで、精一杯の皮肉をぶつけてやりたくなる。


「……アンタみたいな汚い大人になりたくない」


百田は振り返る事なく言う。


「そうは言っても、皆一様に汚い大人になっていくもんだ」


淡々と言った百田は静かに続ける。


「大人の世界に純真さは必要ないからな」


それはまるで、何かを諦めたような口振りだった。

かつての百田には、純真さが備わっていたのだろうか?


「何年か後に百田センセがインコーで捕まったら、軽蔑しながらも盛大に馬鹿にしてやりますよ」


笑いを含ませて言うと、百田は俺に倣って笑いを含ませながら返してくる。


「言ってろよ」

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