物語の始まりは…

江上蒼羽

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百田の愛車は、噂通りの真っ黒なランドクルーザーだった。


「清原の家は〇〇区の方だったよな?送るのは最寄り駅までだからな」

「きゃ~嬉し~!センセありがとう!!格好良い車の助手席に座れて超ハッピー!」


助手席に乗り込み、大袈裟にはしゃいでみせる。


「ちゃんとシートベルトしろよ?」


百田は俺の女子高生なノリには一切触れずにシートベルトをしてエンジンをかけた。


「百田センセってばノリ悪っ」


口を尖らせて毒づく俺の方をチラリと一瞥した百田は、ハンドルを操作しながら「……で?」と聞いてくる。


「で?……って?」


俺がしらばっくれると、百田は溜息混じりの口調で言う。


「俺に何か言いたい事があるんだろ?」


百田は察しがいい。


「待ち伏せなんかして………周りくどい事をするくらいだ。何か言いにくい事か?」


この察しの良さでアイブロウ先輩の気持ちに気付かない筈がない。


「………粗方分かってるっしょ?」

「さぁな。皆目見当もつかないよ」


シートにだらしなく寄っかかりながら、百田を挑発するように言う。


「ウソツキ」

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