物語の始まりは…

江上蒼羽

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「アイブロウ先輩、帰りますよ」


まだしゃがみ込んだままの先輩の隣にカバンを置いた。


「あ、これ……私の?」

「そうですよ。机の上の物、テキトーに詰めたんで中グチャグチャですけど」


先輩は蚊の鳴くような声で「ありがと……」とだけ言った。



二人で並んで廊下を歩く。

心做しかいつもより先輩との距離が離れている気がする。

どうやら思いっ切り警戒されているらしい。

そして沈黙が長い。

いつもは他愛もない話を駄弁っているのに。

気まずさを感じていると、先輩の歩みが止まる。


「アイブロウ先輩?」


俺が振り返ると、先輩は俯いている。


「………何で……あんな事、したの……?」


俺を問い掛けてくる先輩の声は震えていて、思わず


「そんなに嫌だった?」


と、質問に質問を返してしまう。

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