物語の始まりは…

江上蒼羽

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何をやっているんだろう?と覗き込むと、人の名前らしき文字と、数字等を含んだ文が箇条書きのような形式で書かれていた。

数字は身長と体重を表記しているっぽい。


「この桃瀬って人、筋肉質って割には体重少なくないっすか?」


パッと見えた部分で何となく疑問に思った事を口にした途端、黛先輩は高速でノートを畳んだ。

どうやら見てはいけなかったらしい。


「あー………何かすみません」


黛先輩は「や、別に……」とボソボソ呟く。


「………しょ、小説の簡単な人物設定というか……」


元が白いからか、顔が赤らんでいるのがよく分かる。


「て事は……架空の人物なんすね?リアルは求めない感じならその数字でもいいかもだけど、現実的に考えるのなら、180㎝で筋肉質な男は少なくともあと5㎏は重いっすよ」


先輩は小さく「なるほど」と呟いた後、閉じたノートを再度開いてペンを握る。


「勉強になる。ありがと」


すぐさま俺が指摘した通りに数字を修正している。


「先輩は小説家でも目指してるんですか?まぁ、文芸部に所属してるって事は、そうなんだろうけど」


俺が聞くと、先輩は首を左右に振った。

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